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恐怖小話 その弐

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恐怖小話 その弐


第二弾ですけど何か?


茹でた孫を喰うじいさん

皆さんは知っているだろうか?20世紀初頭、当時「史上最悪の美食家(グルメ)」と呼ばれた殺人鬼を。彼の犯した殺人は少なくとも15件といわれるが、その正確な数字は今となっては闇の中である。というのも・・・彼に殺された者は一人残らず彼に文字通り「喰われて」しまい、この世から跡形もなく消え去ってしまうのだから。行方不明というカテゴリーの中でひとくくりにされてしまった可哀想な人たちの中には、もしかしたら彼の胃袋に納まってしまった人がいたかもしれない。
彼が獄中で書いた日記には、こう記されていた。
「普通の人間が食うものをいくら食っても、体の中のどこかが満たされていないんだ。食っても食っても食っても食っても食っても、それは満たされない。俺の見えない胃袋は決して満たされない。それを満たすのは人の肉なんだ。生き血なんだ。普通の人間だって、食うなと言われても腹は減るだろう?それと同じなんだよ、俺にはどうすることもできない・・」

これは、一見幸せそうに見えた一家を飲み込んだ「見えない胃袋」の物語である。


山梨県に住む主婦Mさんは先月、念願のマイホームを購入し、夫の両親と夫、子供二人の合計六人での新生活をスタートさせたばかりだった。しかし1週間ほど前からだろうか、Mさんはしばしば、家の中から聞こえる真夜中の物音で目を覚ますようになった。初めのうちはあまり気にも留めなかった。ところがそれは毎日のように繰り返し起こり、Mさんは勇気を振り絞って音のする場所へ行ってみることにした。
真夜中の2時。家中が寝静まったなかで、その音はキッチンから聞こえてくるようだった。真っ暗なはずのキッチンからは、薄ぼんやりとした光と単調な物音が漏れてくる。Mさんはおそるおそる、忍び足でキッチンに近づいていった。
「くちゃ・・くちゃ・・」
何かを噛む音。
「・・くちゃ・・・くちゃ・・・」
Mさんは、キッチンのドアを開けた・・・

薄ぼんやりとした光の中に、ずんぐりとした物影があった。
「おじいさん!こんな時間に、何やってるんですか!」
「は・・腹が減ったんじゃぁ・・・どうしても我慢できなかったもんだから・・」
「もう、一人で勝手にゆで卵なんか食べて!最近、卵の減りが早かったのは、おじいさんのせいだったのね!」

以上。






夜動く死んだ医者

もうパターンが分かりきってますね。そりゃ寝台車は夜動くもんですよ。






悪の十字架

十字架(名詞)
①罪人をはりつけにする十字形に組み合わせた柱。
②キリスト教徒のしるしとして持つ、十字架をまねた形のもの。
③犠牲として強制される、重い負担の意。

これは、些細な早とちりから、その背に重い十字架を負ってしまった男の物語である。

東京都在住S氏は、この春から社会人1年生として、新生活を始めることになっていた。その記念すべき出社第一日目、彼はものすごい寒気とともに目を覚ました。
「ハックション!だぁ・・っあぁ」
「ファックション!・・ファ・・ファ・・ファックス!」
彼のくしゃみは紙一重であった。
頭がガンガン鳴り、喉が痛い。寒気がする。鼻水とくしゃみが止まらない。
そう、彼は風邪をひいてしまったのだ。出社一日目から休むわけにはいかない。彼は焦った。動かない体を無理矢理起こし、仕度を始めた。鏡の前に立つ。ひどい顔色だ。
朝5時。幸い時間には余裕がある。とにかく薬を買いに行こう。

信じられないほどの高熱のためろくに動かない体を引き摺るように、彼は歩いた。歩いた。普段なら5分とかからない距離にある薬局が信じられないほど遠く感じられた。

家を出てもう何分たっただろうか、彼は朦朧とした意識のなか、やっとの思いで薬局に辿り着いた。そこで彼が見たもの・・・

「★CLOSED★ 営業時間;AM10:00~PM10:00」

彼は最後の力をふりしぼって、言った。
「開くの、十時か!!」


それっきり、彼はその場に倒れこんだまま、二度と立ち上がることはなかった。
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