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おじいさんと僕(後編)


そして僕はおじいさんを愛し、おじいさんに愛されるようになった。そしてまたおじいさんは僕を愛し、僕に愛されるようになった。



おじいさんと僕の新しい生活が始まった。

生計を立てるため、僕はバイトを始めた。コンビニでバイト、ファーストフード店でバイト、工事現場でバイト、AV撮影現場でバイト。なかなか職は手につかず、職場を転々とした。そう、事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こっているのだ。
朝から晩まで、僕は身を粉にして働いた。時には辛い仕事もあった。しかし僕は弱音一つ吐く事なく、働いた。おじいさんがいたから。
家庭では僕は夫、そしておじいさんは主夫だった。毎晩くたくたになって帰ってくる僕。おじいさんは毎日温かい食事で僕を迎えた。
ある日は、ちゃんこ。
そしてまた別の日は、ちゃんこ。
朝、出かける前のちゃんこ。
お昼の楽しみ、ちゃんこ弁当。
たまの休みには、朝昼晩と二人でちゃんこ。
そしてお待ちかね、夜の営みとしてのちゃんこ。
おじいさんの正装、ちゃんちゃんこ。
驚異の視力、オスマン・チャンコン。
めざましテレビといえば、「きょうのちゃんこ」。
世界共通語、エスペチャンコ。

決して裕福ではなかったが、それでもこの上なく、幸せな日々。しかし始まりのあるものには終わりがある。どんなに抵抗しても逆らえない、この世のさだめ。


ある朝、おじいさんは動かなくなった。

悲しみにくれる僕。いや、あまりに突然の出来事に僕はあっけにとられ、呆然としていただろうか。僕がおじいさんに出会った、あの日のように。


その夜、おじいさんは脱皮した。

寝室に横たわった、まだ動かないままのおじいさん。その隣に僕はおじいさんの抜け殻を発見した。

翌朝、おじいさんはまた脱皮した。

寝室に横たわった、まだ動かないままのおじいさん。その隣のおじいさんの抜け殻のその隣に、僕はまた新たなおじいさんの抜け殻を発見した。
おじいさんは脱皮する。まるで・・名前は何だったかな、ロシアの有名な、人形の中から小さな人形が出てくる、あの人形のように。脱皮の先に待つものは?僕は何を得るの?希望の光は?僕は何かに憑かれたようにおじいさんの殻を剥がし続けた。

その果てに僕が見つけたもの・・

おじいさんの皮をかぶった「何か」それは、サル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ケン・ヒライ、おじいさん、その進化の最終過程としての、小さな、小さなおじいさんだった。



僕は小さなおじいさんを胸ポケットにこっそりと忍ばせた・・・



「南くんの恋人」エピソード1はこれにて終了です。