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栗のソナタ


あの頃、僕らは若かった。若い日の思い出とは苦いものだ。


あれは、僕が大学2年生の頃だ。大学で経済学を学んでいた僕は、資本家階級が生産手段を掌握する特殊な階級社会、資本主義に嫌気がさしていた。しかし、そんな僕にも少なからず生きる喜びがあった。それは、ブラジルからやってきた日系二世の留学生”レーコ”栗林の存在だ。彼女の美しい顔、体、声は僕を虜にした。彼女が僕の生きがいといっても過言ではなかった。

彼女と一緒に歩いた学校の帰り道。僕は恥ずかしさのあまり、彼女の5m後ろを歩いた。時折、彼女が振り返るときに見せた鬼気迫る表情は今でも僕の脳裏に焼きついている。僕は毎日毎日、大学から、自分の家とは正反対にある彼女の家まで見送った。彼女が安全に帰宅したことを確認すると、いつも僕は彼女の家に電話をかけた。彼女の家の電話は、女の子の一人暮らしということで、いつも留守電になっていた。でも「彼女に僕の声を聞かせてあげたい」、その一心で僕は帰宅後1時間ごとに留守電にメッセージを残した。

「僕だよ。愛してる。」

そして、プレゼントもたくさんあたえた。彼女が自宅でいつどんな危険にさらされてもすぐにわかるように小型カメラつきの置物や集音マイクつきの抱き枕などをあたえた。どれも、僕が真心こめて作った手作りの品だ。

そんな生活を続けていたある日、僕は突然ポリスメンに声をかけられた。
「くりばやしさんから通報を受けた警察ですが、ご同行願えますか?」と。

「クリバヤシ・・・?」







「クリリンのことかー!!」


婦人警官との新たな恋の予感がした20歳の冬。