なんか全年齢対象の ADV ゲーム作りたいんだけど

木十豆寸 ◆itsukiyD4I

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立ち絵
  • 主人公=同じ学校の男子A
  • ヒロイン=根暗系少女の立ち絵plz
  • 降霊術の祖霊=謎の少女A
  • 依頼者=同じ学校の女子
  • 黒幕=同じ学校の男子B



ネタバレ注意です。あらすじが最後まであります。
































名前:oshi ◆X0/NEiO/9M 投稿日:2008/02/14(木) 22:55:21.63 ID:HtXEkes0
あらすじ

とある高校の旧校舎、その内一つの教室でオカルト研究部(扉には心霊処理委員会の張り紙)はひっそりと活動している。
部員は二人、主人公(名前未定)はヒロイン(名前未定)のみ。
主人公は読書、ヒロインは杖の手入れをいつも通りしていると、約3ヶ月ぶりの依頼者が扉を叩く。
依頼の内容は最近の欠席者の増加について、風邪の流行とは考えにくいので何とかして欲しいとの事。
(オカ研は学校では爪弾きに遭っているので、依頼者はあらゆる手段を尽くした上での最後の手段であった)
ヒロインは無反応、それをいつもの事のように主人公は依頼者と共に捜査へ。
校舎を一通り周る、途中で黒幕と出会うが、その時は軽い会話のみ。
翌日、休んでいる生徒の家へ。話を聞くと風邪というよりも衰弱、過労に似た症状。
オカ研に戻りヒロインと合流、再度捜査開始。
旧校舎のチャイム(鐘の音)にヒロインが反応。(オカ研部は防音改造+放送スピーカ破損中)
ヒロインの合図で主人公離脱、ヒロインと依頼者は旧校舎の鐘楼へ向かう。
鐘楼へ登ると黒幕と対面、自分の脆弱な身体を補う為に鐘を使って精気を他人から奪っていた。
主人公到着、金属バット所持。鐘を破壊しようとするが、物理結界の影響で破壊不能。
ヒロイン「ああ、やっぱり」主人公「分かってたならやらせるな!」
結界を破る為、ヒロインが杖を地面に突き立て、降霊魔術を使い、古代の魔術師(巫女)を降ろす。
鐘の術式ごと結界を解呪。逆凪(結界を破られた反動)により黒幕気絶。
数週間後、リハビリに励む黒幕とオカ研の手伝い(といっても主人公に本の解説を聞くだけ)をする依頼者。
ヒロインが空を見上げた所でED

備考等
  • 始点変更複数回
  • 台詞以外の部分が多くなる可能性が高いので字数制限に注意
  • 鐘楼の背景は取れるのか微妙、背景描くか夕空背景でごまかすかは未定
  • デフォネームがあればそれで使う










;chapter.0「捕食」
 ――吸血鬼。

 ブラム・ストーカーの小説、『吸血鬼ドラキュラ』により人ならざる物の代名詞となっているモンスター。

 東欧・バルカン地域ではヴァンパイア、ヴコドラク、ストリゴイ、モロイなどの名前で呼ばれている。

 弱点は既知の通り、太陽、銀、ニンニク、そのほかにも流水、茨の上は通れない等の制約が存在する。

 ブラム・ストーカー以前の吸血鬼は吸血鬼というよりも不死者という色合いが強く、血以外にも人肉、精液等、食料は多岐に渡っている。

 極端な例には教会の鐘の音で精気を摂取をしたり、淫魔や夢魔へも派生していると考えられている。

;chapter.1「依頼」
;視点:寺田光一(主人公)

「ふう……」

 ぱたん、と俺は幻想生物辞典を閉じる。

 旧校舎の一階隅の教室、そこが俺たちオカルト研究部の部室だ。

 静かな環境を作るため、スピーカーが壊れているのと、こっそり防音改造できる教室がこの教室のみだったのだ。

「ん、んっ……」

 肩と首を回し、音を鳴らす、暫く読みふけっていた所為か景気のいい音が二、三回連続する。

「光一、ウルサイ」

 教卓の上に座り、杖の手入れをしている少女が口を開く。肩を回した時、椅子がガタガタ鳴ったのが気に食わないらしく、非難の眼をこちらに向けている。

「外に比べたら十分静かじゃないか? 部長」

 彼女がオカルト研究部の部長であり、俺以外唯一の部員、氷室皐月だ。

「委員長、訂正して」

 ちなみにこのチビ部長が勝手にオカルト研究部を心霊処理委員会と無理矢理に名称変更した上、自らを委員長と呼んで欲しいらしい。

「ごめん、委員長」

 委員長は暫く不満そうな顔をこちらへ向けていたものの、暫くすると溜息を吐いて、手元の杖を磨き始めた。

 まあ、部長もとい委員長が電波な上、部員も二人、学校から半ば村八分を食らっている俺たち、やはり仲良くしなければならないだろう。

「光一」

 俺もまた別のオカルト資料に目を通そうとロッカーを改造した本棚へ向かおうとした時、委員長が声を掛けて来た。

 適当な返事をしつつ、振り向くと、教室のドアを指差して静止していた。よく見れば擦りガラスの向こうに人影が見える。

 俺は一つ溜息を吐くと、本を持ったままドアを開けた。

;視点:西村華蓮

「ねえ華蓮、本当に行くの? 関わらない方がいいよ……」

「しょうがないでしょ、もう頼れるのあの人たちしかいないんだし」

 女友達が止めるのも分かる。私自身、彼らの危険性、というよりも異常性だが、それについては十分把握していると自負している。

 そう、四月の部活動オリエンテーションでの異臭騒ぎ、事後処理と気分の悪くなった生徒の誘導を行ったのは他でもない、生徒会委員の私達だ。

 しかし、あの変な人間達ならもしかすると、淡い、本当に淡い期待を持っていた。

「でも華蓮……」

「ああ、もういいわよ! 私一人で行くから!」

 歯切れの悪い彼女を一括して私は渡り廊下を進む。十メートルほど進んで振り返ると、既に彼女は何処かへ行ってしまっていた。

 私は女の友情に絶望しつつ、オカルト研究部への廊下を歩き始める。

 ぎい、ぎい、と歩くごとに古い木造の廊下は悲鳴を上げる、その音を意識すると余計に大きく聞こえ、怪物の鳴き声にも聞こえてくる。

 こんな事ではいけない。そう思って頬を叩いて気合を入れた。そして無心のまま廊下の突き当たり、つまりオカルト研究部の前まで歩ききる。

 部室のドアには心霊処理委員会、と書いてある。確かにここだ、私はノックをしようとして異変に気付く、部屋の中から音がしないのだ。

 誰も居ないの? そんなはずは無いと思っても、一度ためらった所為か、ノックする力は萎えてしまう。

 やっぱり止めましょう、一週間もすれば問題は解決するかもしれない。そう自分に言い聞かせて一歩、ドアから離れたその時。

「いらっしゃい、入部希望? それとも相談事?」

 私よりも頭一つほど大きい男子生徒が、オカルト研究部のドアを内側から開けた。

「……」

「大丈夫かー?」

 いきなりの事で面食らっている私の目の前でひらひらと揺れる手、危うく腰を抜かすところだった。

「……」

 私は混乱して、彼は恐らく話すことが特に無いためか、私達は数瞬見つめあう。

「光一、とりあえずドア閉めて」

「っと、悪いな……どうする? 冷やかしなら閉じるぞ?」

 彼は自分の背後から聞こえた小さな声に応えた後、私に質問を投げかけた。

 部屋に入った時、最初に眼に入ったのは、木で出来た杖を布で磨く小柄な女の子だった。

 彼女は私に気付いたのか気付いていないのか分からないが小さく身体を揺らした。

 確か、彼女の名前は氷室皐月。一学年上の先輩だが、あまり授業に出ていない、という事を生徒会の先輩から聞いている。

「さて、まずは一応、自己紹介をしようか」

「知ってるからいいわ寺田光一君、」

 私が名前を言い当てると、彼は一瞬驚いた表情を見せるが

「ああ、有名人だもんな」

 と言って近くに置いてあるポットから急須にお湯を注いでお茶の仕度を始めた。

「で、君の名前は?」

「西村華蓮、生徒会の書記よ」

 ほうほう、と相づちを打ちつつ、彼は湯飲みに若草色の液体を注ぐ。

 コポコポという音だけが聞こえ、私はこの部屋が防音加工してある事に気付いた。

「で、詳しい話を聞こうか」

 自分の分だけお茶を注いで、彼は私に向き直った。

;視点:寺田光一

「まずは、これを見て」

 目の前の彼女は鞄から数枚の書類を取り出し、机の上に乗せる。

 書類は生徒名簿だった、そのうち約三割に蛍光ペンで印がつけられている。

「これは?」

 手にとって眼を通してみても、ラインが引かれている名前は完全にランダムのように見えた。

「体調不良で休んでいる生徒にラインが引いてあるの」

「風邪でも流行ってるのか?」

 率直な感想を口にする、それ以外でこんな人数が休む理由が今のところ見当たらない。

「他校の出席率はいつも通りよ。」

「じゃあ食中毒か?」

「うちの高校、学食無いってば」

 そういえばそうだな、近くのコンビニ使ってたから別段気にしていなかった。

「じゃあ、何で休んでるんだ?」

「それの原因を調べて欲しいの、教師も私以外の生徒会委員も気にも留めていないし……でも、おかしいと思わない?」

 まためんどくさい依頼も来たもんだ。俺は頭をかきむしる。

「……」

 部長に視線を送ってみる、しかし彼女は杖の手入れに没頭してこちらを見ていない。

 先に見つけやすい所は探しておいて、私は暇じゃないの。

 日本語訳するとこんな空気だろう。

 仕方ない、と頭で割り切り、緑茶を飲み干して俺は立ち上がる。

 さて……やりますか。

「つーことで部長、校内散歩してきます」

「委員長、訂正して」

「……委員長、行ってきます」

;chapter.2「探索」
;視点:寺田光一

 既に授業時間は終了しているので、体育会系の部員たちがグラウンドで声を上げているのが聞こえてくる以外は、校舎はとても静かだった。

 俺は新校舎の一階、昇降口で下駄箱を一つ一つ見て周っている。

 全校生徒がむら無く感染している事から、教室自体に何か仕掛けがあるとは考えにくい。

 全校生徒が校内で使う場所と言えば校門から昇降口までの道のり、下駄箱、そして体育館とグラウンド位だろう。

 グラウンドは魔術的仕掛けを取り付けるには何かと不向きだ、恐らくここか、落書きの多い体育館の壁くらいだろう。

 念のため最寄のコンビニもチェックした方がいいかもしれない。

 下駄箱を一つ一つ開けるのは本当に骨が折れる。

「……そういや書記さん」

「ひゃい?」

 さっきからずっと俺に好奇の視線を送っていた生徒会書記の……誰だっけ? 彼女は声を掛けられるとは思って居なかったのか、変な声で反応した。

「最近何かに印を刻むまじないか何かが流行ってないか?」

 変な反応を馬鹿にしようとも思ったが、へそを曲げられても困るので、ノータッチの方向で話を進める。

 どっかの馬鹿が『両思いになれるおまじないなのー』とか言って適当な印を意味も知らず刻むと今回のような事態が起きないとも限らない。

「……特に無いわね」

「そうか」

 んーこりゃ本気で黒魔術かウィルスか……明日は休んでる奴に様子見がてら見舞いに行かないとなぁ……

;視点:西村華蓮

 相変わらず彼は下駄箱の中を一つ一つ覗いて何かを探している。

 傍から見れば変な行動、私はそれを傍観していた。

『そんなに気にする事じゃないですよ、ただ単にここで風邪が流行っているだけでしょう』

 担任教師の言葉が頭をよぎる。

 友人も口では同意したような反応はしていたものの、さっき逃げられた事も含めて、内心は教師と同じ事を考えていたのだろう。

「そういや書記さん」

「ひゃい?」

 突然の問いかけに驚き、私は素っ頓狂な声を上げた。

「最近何かに印を刻むまじないか何かが流行ってないか?」

 少し考え、応える。

「特に無いわね」

「そうか……」

 淡々とした会話が終わり、彼は顎に手を当てて思案するように擦った。

「ねえ、寺田君」

「ん?」

 私は、ふと思った質問を彼にする。

「なんで私の相談に乗ってくれたの?」

 教師も、友人さえも協力してくれなかったのに、初対面の人間がここまでしてくれていることが意外だった。

「書記さんにとって都合のいい回答と本音の回答、どっちが聞きたい?」

「本音でお願い」

 嘘だと分かっている回答なんて聞いても仕方ない、私は即答する。

「頼まれたから協力してる、それだけだ」

 そう言って肩をすくめる彼の顔はとても気だるそうで、

 頼まれなければ今頃は帰って寝ている。

 とでも言いたそうだった。

「さて、次は体育館だな……ん?」

 視線が廊下の方向で止まる。

 それにつられて私もそちらを向くと、見知った人影があった。

;視点:寺田光一

「やあ、オカルト研究部員と生徒会書記の二人組みなんて珍しいね」

 夕暮れの校舎に立つ男子生徒が馴れ馴れしく話しかけてきた。

「書記さん、コイツ誰だかグホッ!?」

 普通の質問をしたはずなのに書記さんから目立たない範囲のツッコミが入った。

「夕晩は、結城先輩」

 礼儀正しく挨拶すると、結城先輩と呼ばれた男子学生は顔をほころばせた。

「ちょっと本気? うちの学校の生徒会長くらい知っておきなさいよ」

「そう言われても知らんもんは知らんし」

「いつもあんな部室に籠っているからよ、少しは外に出たら?」

「まあまあ、僕は暫く休んでいたしね、知らないのも仕方ないよ」

 始まりかけた口論を結城先輩が止める。

「暫くって言うと……」

 二年位か?

「学期の初めからよ、一週間くらい前に復帰したの」

「ふーん」

 あんまり興味ない事柄なので聞き流す事にする。

「どうしたんですか先輩、こんな遅くまで」

 しかしこのまま何もしないというのも癪だ。

「僕かい? ちょっと調べ物をね、君は?」

 という事で、俺は今日の夕飯についての有意義な物思いに耽ることにした。

 今日の夕飯は何にしようか。

「あはは、こっちも似たような事です」

 いい加減カップ麺も飽きてきたし、外食は金がかかる、自炊できないって言うのは辛いなぁ……

「そうか、じゃあ、僕はお先に」

 たまには肉じゃがとは言わないけど手製の味噌汁が欲しいなぁ……

「ええ、さよなら、先輩」

 誰か作ってくれないだろうか。

「ねえ」

 やっぱり料理教本でも買うかなぁ……

 しかし、その金を使うくらいなら店屋物……いやいや。

「ねえってば!」

「うおう!?」

 突然耳元で叫ばれて、俺は身体をビクつかせる。

「叫ぶなよ書記さん、肩を叩くとかいろいろあったろうに……」

 あー、耳鳴りが酷い……

「やったわよ、あなたが気付かなかっただけじゃない」

「へぇ、やってた? 全然気付かなかったわ」

「……」

 溜息混じりに軽蔑したような視線を向けられて俺は視線をそらした。

 そこでふと気付く、さっきまでもう一人居たような……

「そういえば、あの人は? 生徒会長の」

「さっき別れたところよ、ほんとに話聞いてないのね」

 もう一つ、深い溜息を吐かれ、俺はほんの少し申し訳ない気分になった。

「あれ? 首に何をつけてるの?」

 どうにもばつが悪いので、暑くも無いのにシャツのボタンを外してパタパタと揺らすと、書記さんは俺の胸元を覗き込んできた。

「ん? これか?」

 胸元のネックレスを持ち上げてやる。

「宝石?」

「いや、護符だ」

 アスマンダスの埋め込まれた護符は呪術系魔術を無効化する効果があるのだ。

 ちなみに部長は術中の集中力を強化するエメラルドのタリスマンを持っている。

「護符?」

「俗っぽく言えばパワーストーンだ」

 パワーストーン、という単語で途端に胡散臭そうな顔をする。

 だから普通の人は嫌いだ。

;視点:西村華蓮

「刻印したような跡は無かった、ということで明日、休んでる生徒に直接話を聞く事にした」

 私は体育館へ行き、落書きを一つ一つ見て何かブツブツ言う彼の側で刺さる視線に耐えた後、またこの部室へ戻ってきた。

「そう」

 机の上で木の杖の手入れをしていた氷室さんは、何処からか持ってきた書類に目を落としていた。

「こっちも少し調べたけど、血液型、予防接種の回数、病歴……共通点は一切無いわね」

 個人情報保護法に抵触しないのかな。

 そう思ったけど、二人の真面目な会話に突っ込む度胸は、私には無かった。

「強いて言えばこの高校の生徒、か」

 二人は頷きあい、寺田君だけがこちらへ向き直った。

「聞いたとおりだ、調査は明日に持ち越し、今日は家帰って寝よう」

 気だるげな表情で言う。

「ささ、帰ろうね」

「え、ちょっと……」

 私の背中をぐいぐい押して、寺田君は部室から追い出した。

「どうしてよ、まだ六時にもなって無いじゃない」

「文化系部の活動時間は文化祭準備前を除いて六時まで、生徒会の人間なのに知らないのか?」

「あ……」

 たしかに、六時以降は運動部以外の生徒は残る事を禁止されている。

「思い出した? こっちは帰る仕度があるからもうちょっと残るけど、書記さんはさっさと帰ったほうがいいぞ?」

 そう言って、彼はドアを閉めた。

;視点:西村華蓮

 閉じられたドアを見ても開く気配は一向に無い。

「ハァー、やっぱりね……」

 溜息と独り言を洩らしても事態が変化するわけでもない。

 私は見切りをつけて、ドアから離れて歩き始めた。

 初めから期待していたわけではない。

 むしろ誰にも相手にされなかった為の最後の手段だった。

 途中までは相談に乗ってくれたが、やはり部活動の一環なのだろうか。

 やっぱり、一人で解決するしかないのかもしれない……

「西村さん」

 振り返るとそこには結城先輩が立っていた。

「あ、探し物は終わりましたか? 先輩」

「ああ、それなんだけどね……?」

 何かに気付いたかのように辺りを見回す。

 私が不審に思っていると先輩は口を開いた。

「あのオカルト研究部員は? 彼だけ先に帰ったのかな」

「ああ、いまは部室で帰りの仕度していると思いますよ」

「そうか……なら丁度いい、僕と少し話さないか?」

 先輩は真面目な顔で話し始めた。

;chapter.3「」
;視点:寺田光一

 午前の授業が終わると、早々に早退届を出し、欠席者の診断を兼ねたお見舞いに行き、俺たち二人は部室へと戻ってきていた。

「悪いな、手配やら何やらであの糞爺どもの小言に付き合う羽目になってさ」

「気にしないで、光一と一緒の時にしてって言っておいたから」

 うげ、結局俺もかよ……

 爺どもは無視しておくとして、俺は一つ気がかりな事があった。

「書記さん来ないな、パッと見の性格からして終業のチャイムが鳴ったらすぐに来ると思ってたんだが」

「昨日ので失望したんじゃない?」

 ああ、そういや半分追い出したようなもんだもんな、昨日のアレは。

「まあ、いいか、始めようか」

 委員長がコクリと頷き、欠席者の症状を二人で分析し始める。

 倒れた時点の症状はめまい、倦怠感、動悸。そして現在殆どの人間が食欲不振や胸の痛み……

 病原体の仕業、というよりも過労などの肉体的疲労が原因の症状だと思われる。

「やっぱり呪いね」

 委員長が口を開く。

「悪いな、俺じゃ見つけられなかった」

 めぼしい位置には呪いの痕跡は見つけられなかったが、委員長が言うのならそうなのだろう。

「特殊な感染魔術かもしれない……」

「厄介だな…俺たちだけで処理できるか?」

「負けたら本隊が動くから」

 大丈夫ってわけか……そうすると小言がまた増えるな……

「まあ、仕方ないな、取り敢えず昨日周らなかった……?」

 ドアを開けた途端、鐘の音が鳴った。

 この音は……この校舎のチャイムか。

 ……でも、随分前に故障して止まったはずなんだが……

「……っ」

「部長?」

 気が付くと、部長が何時になく蒼い顔で杖にすがっている。

「……鐘の音に呪いを仕込んだのね」

 部長は荒い息遣いのまま懐から未使用のチョークを取り出し、床に正円を描く。

「鳴り終ったら……処理」

 呼吸を整えつつ部長は言う、簡易結界に入っている限りは霊障の影響は皆無だ。

 円の中は閉鎖された世界の為、召喚魔術以外で防御に使うときはきちんとした模様を刻む必要は無い。

「黒魔術ね、人の精気を奪って自分の力に変換しているよう……光一はアスマンダスがあるから動けるでしょ、準備しておいて」

「了解」

 俺は教室の端まで進み、掃除用具入れに手を掛けた。

;場面変更:鐘楼(旧校舎最上階)
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