ソレンスタム共和国は、大陸北端に位置する、その名の通り共和制の国である。
王政が崩壊したのは三年前、隣国ベルイマン王国との戦争終結と同時だった。
十年にわたる戦争で人心が荒む中、最終的にベルイマン王国に領土を割譲する形で決着がついたことで、国民の不満は爆発。
王都において大規模な反乱が起こり、元老院と政務官、民会を中心とした共和制に移行、王家は一貴族に身を落とすことになった。
それから三年。
共和政下、戦争で荒廃した国土は再び緑を取り戻し、国民の生活も豊かになりつつあった。
が、異変が起こった。
突如、ベルイマン王国が国境付近で軍事行動を起こし、要衝の砦を制圧してしまったのだ。
ソレンスタム共和国首脳部はベルイマン王国を条約違反だと批判したが、そんなものはどこ吹く風で、王国は共和国に再度宣戦布告をした。
共和国は慌てて軍を編成したが、王国軍には優秀な指揮官と精兵の前に連敗を重ねた。
いまや、王国軍は共和国首都の間近に迫っており、共和国の敗北は時間の問題と思われていた。
ある前線の兵士は言った。
「このまま敗れて蹂躙されるのと、悪魔の力を借りてでも勝利するのと……どちらを選ぶか」
また別の兵士が言った。
「当然、勝利だ。清らかであっても、死んでしまっては意味が無い」
彼らの脳裏には、一人の人物の姿があった。
美しい金髪を風になびかせ、操る黒い炎で敵を次々と薙ぎ払っていった美姫の姿。
「あの方が居れば……」
彼女の勇士を知る兵たちは皆、その再臨を願っていた。
共和国軍士官エイナル・グンナー・イェールオースは、首都の北に向かって馬で駆けていた。
周囲は国内有数の穀倉地帯とだけあって、青々とした春の田園風景がどこまでも広がっている。
彼方に見える、雪を冠した山々の姿もまた見事なものであったが、彼は景色に見惚れているような暇はなかった。
「急がなければ……ベルイマンの連中がいつ動き出すとも限らんのだ……」
エイナルが首都を出発したのは昨日の深夜のこと。
すでに十五時間、何度も馬を乗り継いで、休まずに駆けてきていた。
彼が目指しているのは、この地方を支配する領主、ラベリ公爵の所有している館だった。
「見えた……!」
道の先に鬱蒼と茂る森。
その中に、無骨な岩山のような砦があった。
かつて壮麗を誇った領主の館の、現在の姿だった。
もう一息だと馬に鞭を入れ、数刻後、エイナルは砦の前に立っていた。
砦には、入り口が一つあるだけで、他は戸はおろか窓さえも無かった。
固く閉ざされた鉄門の前に立った兵士二人のうち一人が、エイナルに近付いてきた。
「イェールオース様……本日はまた、どのようなご用事で?」
「ここに来たということは一つだろう」
「は、私はいいのですが、しかし、本日の門番のもう一人は……」
もう一人の兵士を気にしながら、小声でもごもごと言う男に、エイナルは笑って言った。
「安心しろ、今日は合法だ。元老院の方々からの御命令だよ」
「は……? え、元老院が……?」
「命令書だ。通してくれ」
男はもう一人の門番と書簡の内容を確認し、頷いた。
「わかりました。一応、お気をつけて」
厚い鉄の門が開かれる。
砦の中からは、ひんやりとした風が流れ出してきていた。
外見とは違い、砦の中は豪華な調度品に満ちた、貴族の屋敷そのものだった。
ただ、外部を岩で固められているだけあって明かりは一切無く、真の暗闇で満たされている。
エイナルは片手にランプを持ち、足元に気をつけながら長い廊下を歩いた。
やがて、エイナルは大広間に出た。
そここそが、彼の目指した場所だった。
いくつかある天窓、その上部に微かに開いた岩の隙間から太陽の光が一筋差し込み、周囲の情景を淡く蘇らせている。
光の下にはソファーが一つ。
そこには、美しい金髪の少女が、もたれるようにして座っていた。
少女は透き通った青い瞳をエイナルに向けて、ふ、と笑った。
「何だ、月半ばに来るとは珍しいな」
美しい外見に似合わぬ、ぶっきらぼうな言葉遣いだった。
「食料は足りているぞ。髪もまだ切らずともよい。本も読み終えていないものがいくらかある。無いものは、自由くらいか」
「その自由をお届けにあがりました」
「ほう?」
「国難です。元老院の方々が、クリスティーナ様のお力をお借りしたいと申しております」
クリスティーナと呼ばれた少女は、ゆっくりと身を起こし、目を細めて笑った。
「ふん……元老院が? 奴ら、自分達の方が上手い政治ができるからと、王族を追い払ったのではないのか?」
「戦争についてはそうもいかなかったようです」
「戦争が下手なら戦争を起こさぬよう国を動かせばいいものを」
「戦争には相手が存在する以上、自分の努力だけではいかんともし難いものがあるのでしょう」
エイナルの言葉に、クリスティーナは脚を組み、再びその身をソファーにもたれかけさせて、彼を睨みつけた。
「気にいらんな、エイナル。元老院の連中を庇うようなことを言いおって」
「彼らを庇うつもりは毛頭ありません。ただ私自身の意志として、クリスティーナ様には是非ともお力を貸していただきたいのです」
「ふん……ならばもう少し気分を盛りたてることを言ったらどうなのだ」
クリスティーナは肩にかかった髪を手で払った。
「大体な、奴らにとって、私の力は許されざるものではなかったのか? 連中、悪魔の呪法だの禁忌の技だの、言いたい放題言ってくれたぞ」
「自分達の生死の前には、小さな問題だったようですね」
「結局は国権簒奪のための口上か……力を貸して、また同じ事をされたらたまらんな」
不快気に言うクリスティーナの前に進み出て、エイナルは膝をついた。
「私が……不肖このエイナル・グンナー・イェールオースが、命に代えてもそのような事態は阻止します。ですから、どうか……どうかお力を。このままでは、市民も兵士達も皆……」
「ああ、いい、いい、馬鹿なことを言うな。貴様の命くらいで防げるものなら、私が片手を振るうだけで解決できる。すなわちそのようは発言は無意味だ。まったく、身の程を知らぬな、貴様という男は……」
やれやれとため息をつき、クリスティーナは立ち上がった。
「まあ、いい。そこまで言うならやってやろう。ただし条件は付けるぞ」
エイナルが喜色を露に顔を上げた。
「は、はい! どのような条件も呑ませてみせます! あ、いや、元老院全員の命となれば難しいですけど……」
「そんなものは要らぬ。戦時の独裁官としての地位を用意しろ。権限は、かつての独裁官と国王を合わせたものだ」
「はい!」
「あとは……そうだな。この館の持ち主をいただくことにするか」
「ラベリ公爵をですか?」
「娘のアネッテもだ。奴らにはしてやられたからな。我が生贄としてはちょうどいい」
「恐らくは可能だと思います。他に何か要求はありますか?」
「これで全てだ」
「一応、戦後のことも考えて、他の敵対的な者たちも排除しておくべきだとは思いますが……」
エイナルの言葉に、クリスティーナは微笑んだ。
「先ほど貴様が言ったのではないか。元老院を全員殺すのは難しいと」
「確かにそうですが、数を減らすくらいなら可能かと」
「奴らの権力闘争に絡めれば、やりようはあるのだろうな。だが、かまわんさ。そこまでしたら、また揉める。その間に兵が死んで行くのはさすがに我慢がならん」
「やはり、クリスティーナ様はお優しいですね」
「優しい? 私が? 貴様は知っているだろう、私が何を力の源としているのかを」
クリスティーナはまた笑った。
美しいながら酷薄な笑みだった。
「民なくして私の力は成り立たぬ。だから守るというだけのことだ」
それに、とクリスティーナは続けた。
「私という存在自体も、やはり彼ら抜きには成り立たぬ。それが王族というものだ」
少女の名はクリスティーナ・マデリーネ・ソレンスタム。
暗黒神の娘と呼ばれた戦場の英雄であり、旧ソレンスタム王国の紛れもなき王女であった。
ベルイマン王国との十年戦争の末期、国全体が疲弊し劣勢にあったソレンスタム王国軍に、一人の魔術師が現れた。
クリスティーナ・マデリーネ・ソレンスタム。
時の国王マグヌス・イクセル・ソレンスタムの娘であり、士官学校を飛び級で卒業した、若干十三歳の少女だった。
士官学校を飛び級で卒業したのは、国王の係累だからなどといった理由からではなく、彼女の強大な力ゆえだった。
もともと百人に一人ほどの割合で魔法の能力は発現されるため、魔術師そのものは珍しい存在ではなかったが、
彼女の力は群を抜いていて、研究者の中には人類史上最強の力を持つ魔術師であると言う者まで居た。
実際、クリスティーナは圧倒的な魔力を以って敵軍を次々と撃破し、敗戦の危機にあった王国の救世主となった。
細身の体を取り巻くように現れる黒い炎。
それを縦横無尽に操って敵を焼き尽くし、どんな時にも最前線に立って軍勢を率いた。
兵士達の士気は否応にも高まり、一度は国土の半分をベルイマン王国に支配されていたのが十ヶ月で全土を奪還、逆にベルイマン王国領に深く切り込むまでに至ったのである。
戦勝の予感に国民達は大いに喜んだが、それを快く思わない者たちもいた。
元老院や政務官を中心とした、多くは貴族から成る国の官僚機構の人間たちだった。
彼らは長引く戦争で人心が王家から離れる中、着実にその権力を増大し、いつしか国家を動かす権力を手中に収めることを目指すようになっていた。
そんな彼らにとって、王家の人間の活躍により戦争が勝利に終わるという結末は、都合が悪かった。
国権簒奪のためには、クリスティーナを排除し、国民が王家に対して不満を抱く形で戦争を終わらせる必要があったのである。
元老院を構成する十二の貴族は、協力してことに当たった。
王家には内密に、ベルイマン王国と交渉し、和平の協定を結んだ。
内容としては、ソレンスタムは国土の一部を割譲し、ベルイマン側は国境付近のいくつかの街の支配権を譲り渡すというものだった。
割譲する国土は不毛の土地であり、一方で支配権を得る街のいくつかは不凍港を持つため、全体としてソレンスタムに利益をもたらすものであった。
だが、一般の国民には地図の形が変わるということは大きな問題に映る。
そのあたりを上手く喧伝して国民の不満を煽ろうという考えのもとで結んだ和平協定であった。
しかし、国としての条約を締結する権限は、国王にのみ与えられたものだった。
国王マグヌス・イクセル・ソレンスタムは取り立てて優秀と言うわけではなかったが、このまま戦争を続ければ勝てるという状況にあって、
こんな和平協定を呑んで終戦とするようなお人よしではない。
彼に和平協定を呑ませるためには、これ以上の戦争続行が得にならないと思わせる必要があり、そのためにはやはりクリスティーナを亡き者にしなければならなかった。
これについては、元老院の面々はさらに慎重に策を練った。
何しろ相手は史上最強と言われる魔術師であり、前線兵の間での人気も高かったことから、下手を打つと自分達が殺される恐れがあったのだ。
彼らが目をつけたのは、クリスティーナが遠征先で行っている行為だった。
クリスティーナは戦場で得た捕虜に容赦ない拷問を加え、その悶え苦しむ様子を楽しんだ。
また、解放した地域から男女を適当に徴発し、目の前で様々な背徳的行為をさせたりもしていた。
中年の醜い男に幼い少女を抱かせたり、婚約者の目の前で別の男に娘を抱かせたり、奇妙な道具を使った性交をさせたりと、異常な状況を好んで強制した。
これらはクリスティーナの趣味ではあったのだろうが、きちんとした意味もあった。
理屈はわからないが、男女が苦しんでいる姿や異常な性行為を行っている姿を見て感情を昂ぶらせることで、クリスティーナはさらに強大な魔力を溜め込むことができたのである。
つまりは彼女が勝利を重ねるためには必要な行為ではあったのだが、元老院はこれを悪魔の所業であると批判した。
クリスティーナを大陸で忌避される暗黒神信仰の信徒であると糾弾し、単独での出頭を求めたのである。
クリスティーナ自身は熱心ではないがれっきとした聖教会の信徒であり、元老院の糾弾に対して何度も書面で抗議をしたが、彼らの主張は変わらなかった。
エイナルは士官学校の頃のクリスティーナの同輩で、彼女が戦場に出るようになってからは、ずっとその副官を務めていた。
貴族の間にクリスティーナに対する敵意があることに気付いていた彼は、元老院の呼び出しに応じることは危険と判断、ベルイマンの王都を落としてから忠誠厚い軍を率いて戻るのがクリスティーナの安全のためには一番だと考えていた。
が、しかし、ラベリ公爵の言にこの考えを変えてしまった。
「私が根回しをして、クリスティーナ様が罪に問われるようなことは起こらないようにしましょう。このまま出頭命令に逆らい続ければ、さらに立場が悪くなるばかりです」
情報収集能力の限界で、ラベリ公爵がクリスティーナに対して敵対的な立場にあることを、エイナルは掴んでいなかった。
ラベリ公爵の一人娘であるアネッテが、クリスティーナとは幼少時からの仲で親友と言える存在だったことも、警戒心を緩めることに繋がった。
結局クリスティーナはラベリ公爵の提案に応じ、彼の所有する館で審問に対する準備の話し合いをすることとなり――
そこで幽閉の身となったのである。
元老院は当然クリスティーナを殺すつもりだったのだが、それが幽閉で済んだのは、ひとえに彼女の常識外れの強さゆえだった。
もともと魔術師は、魔力を体内に溜めることで体そのものが強化される傾向にあるため、死ににくい。
当然ラベリ公爵もそのことを考慮に入れて入念な作戦を練ったが、それでも彼はクリスティーナを殺すことが出来なかったのである。
彼女と戦うためだけに、建材ひとつひとつに強力な封魔の呪法を施した館を領地の森に建てた。
そこで話し合いをすると言って、恐らく信頼を得ているであろうアネッテが毒を盛る。
万が一殺せなくても、伏せていた兵たちで囲んで斬り殺す。
魔法が使えない状態のクリスティーナなら、楽勝であると思われた。
が、クリスティーナは致死毒を盛っても死ななかった。
魔法も遠距離に飛ばせなくなっただけで、自らの周囲にはその影響力を維持していた。
結局、三百人以上の死者を出した挙句、ラベリ公爵はクリスティーナに傷をつけることもかなわなかったのである。
ただ、さすがの彼女も致死毒を盛られた後では力が弱まり、封魔の建材で作られた建物そのものを破壊することはできなかった。
そこでラベリ公爵は彼女をその場で殺すことを諦め、建物の中に幽閉してしまうことにしたのである。
館の表面を岩で固め、さらに強力な封印を何重にも施し、絶対に外に出られないようにして、そのまま彼女が衰弱死するのを待った。
しかし、また驚いたことに、一週間経っても十日経っても、彼女は死ななかった。
人間の限界を無視した健在ぶりで、様子を見に行った兵士が殺されることもままあった。
ただ、やはり少しずつ衰弱している様子ではあったので、最終的には彼女の身に蓄えられた魔力が消え失せるのを待つ方針に落ち着いた。
館から出られない以上、彼女の排除には既に成功していたので、ことを急ぐ必要は無くなっていたのである。
その後、元老院はクリスティーナを暗黒神信仰の罪で幽閉することを決議、彼女が不在となった以上戦争の継続は不可能とし、国王に和平協定を認めさせた。
そして、かねての計画通り和平協定への国民の不満を煽り、ついに王族を国政から追放、共和制を敷くに至ったのである。
一方、クリスティーナ幽閉の報を聞いたエイナルは、彼女をラベリの館に行かせたことをひどく後悔した。
政体が移り変わる激動の数ヶ月間で、彼は何とかクリスティーナを自由の身に出来ないかと動いたが、それは叶わなかった。
彼にできたことは、いまや岩山のごとき砦となった、クリスティーナが封じられた館の門番の兵士達を買収し、彼女が飢えぬように密かに食料を送るくらいだった。
一ヶ月に一度は会いに行き、彼女を結界から連れ出そうとしたが、やはりかなわなかった。
元老院の貴族達はクリスティーナ幽閉の際の惨劇を知っていたので、皆一様に彼女を恐れ、直接様子を見に来ることは無かった。
おかげでエイナルの接触は元老院に見咎められることは無く、彼は三年間、クリスティーナを生かすことに成功したのである。
「あれから三年か……さすがに変わるものだな。私のものなど、見事に無くなっている」
大理石で作られた広い部屋の中に、クリスティーナは居た。
窓からは、城下に広がる街並みが見える。
今は元老院と政務官達による政治の場となっている王城の、かつて彼女が住んだ部屋だった。
「実際、貴様には感謝している。さすがの私も、貴様からの援助が無ければ、三年はもたなかっただろう」
「いえ。そもそも、私の考えが浅かったゆえに、クリスティーナ様を危険な目に遭わせてしまったわけですから」
エイナルは俯いて言った。
当時を思い出すと、今でも彼には後悔の念が襲ってくるのだ。
そんなエイナルに、クリスティーナは笑いかける。
その首には、独裁官に就く者の証である、剣の紋章の入ったネックレスをかけていた。
「気にするな。最後に判断したのは私自身だ」
「……」
「そんなに申し訳ないと思うなら、これからの働きで返してくれればいい」
「はい……」
「しかし、元老院の奴ら、こうもあっさり独裁官を任せるとは、よほど切羽詰っているのだな」
クリスティーナは首にかけたネックレスを指先で弄びながら笑った。
「もともと戦時に独裁官を任命するのが慣わしですからね。それほど違和感は無かったのでしょう。ただ、国王の権限も併せ持つ独裁官は歴史上初めてでしょうが……」
「これぞ真なる独裁者というわけだ。……ところで、父上はどうしておられるのだ? いち貴族となったと聞いてはいたが」
「マグヌス様は、北東山岳領を与えられ、国政に参加することは許されずお過ごしです」
なるほど、とクリスティーナは特に感慨もなく頷いた。
そこで、部屋の扉が開いた。
「エイナル様、お連れしました」
侍女が先導してきたのは、厳めしい顔つきの初老の男と、対照的に澄ました表情の少女だった。
少女はクリスティーナと同じくらいの年頃で、ウェーブのかかった栗色の髪を背に伸ばしている。
艶やかな深紅のドレスに身を包んだ姿は上品で美しく、社交界では男達の引く手数多であろうことは想像に難くなかった。
「久しいな、ラベリ公爵とその御令嬢」
クリスティーナの声に、男も少女も、身を硬くした。
そう、この二人こそ、三年前にクリスティーナの暗殺を企てた中心人物、ブロル・シェスティン・ラベリとその娘アネッテだった。
「十一対一の賛成多数で元老院罷免が決定したらしいな。ご苦労だった」
「クリスティーナ姫……!」
ラベリ公爵は、強い敵意を持ってクリスティーナを睨んだ。
「やはりあの時……何としてでも殺しておくべきだったようですな」
ラベリ公爵の憎しみの言葉に、クリスティーナは腰まで伸びた金色の髪を揺らして笑った。
「それはそうだろうな。だがラベリ、お前に私は殺せなかった。そして、時代が必要としているのは、どうやらお前ではなく私らしい」
「く……!」
クリスティーナが音も無く二人の方へと近付く。
ラベリ公爵もアネッテも、思わず一歩引いていた。
「そう怖がるな。それとも、少しは私に悪いことをしたと思っているのか?」
「……恨まれることをしたとは思っておりますが、悪いことをしたとは思っておりませぬ。王政など、愚かな王、残虐な王が王位についてしまえば民にとっては地獄。変える必要があったのです」
「変えたことで、国と民が繁栄したのなら、怒りを忘れることも出来たのだがな。今のところ、そうではないようだ」
クリスティーナは、心からの笑みを浮かべた。
どこまでも冷たい、残酷な笑みだった。
「この度、貴様らの無能のおかげで、私は再び戦場に出ることとなった。ラベリよ、責任を取ることくらいはできるな?」
「……! ま、まさか……私とアネッテをここに呼んだのは……」
ラベリ公爵の表情が凍りついた。
「わかっているようだな。いや、当然か。貴様ら元老院が散々喧伝してくれたのだからな。王女殿下は己が力のために父と娘でも交わらせる、暗黒神の娘だと」
「……!」
突如、ラベリ公爵がクリスティーナに飛び掛った。
「アネッテ! 逃げるのだ!!」
叫んで、クリスティーナの細首を両手で掴み、そのまま押し倒そうとする。
が――
「無謀だな」
「!!?」
クリスティーナの言葉と同時に、見えない力に弾かれるようにしてラベル公爵は宙を舞い、床に落ちた。
「ぐぁっ!」
「お父様!?」
アネッテが慌てて駆け寄り、公爵を助け起こす。
クリスティーナは二人の前に悠然と立った。
「ラベリよ、アネッテを抱け。ここで私に禁断の交わりを見せてみよ。それで許してやる」
「ふ、ふざけるな! そのようなことができるか!!」
「国のためでもあるのだぞ。貴様らの交わりは私の力となり、侵略者どもを打ち倒すことになるだろう」
「だからと言って……だからと言って、そのような汚らわしい真似ができるか! 獣に身を落とすくらいなら、死んだ方がましだ!!」
クリスティーナがエイナルに目配せする。
エイナルは即座にラベリ公爵の首筋に手刀を入れ、気絶させた。
「お、お父様!?」
「自殺などさせては命の無駄遣いだからな。さて、アネッテよ……」
クリスティーナは冷たい目で、かつての親友を見下ろした。
「あ……あぁ……お許しに……お許しになって! クリスティーナ様!!」
アネッテは涙を流し、美しい容貌を歪めて懇願した。
「仕方なかったのです! ひ、姫様を裏切りたくて裏切ったのではないのです……!」
「貴様の心の内など興味はない。私が重んじるのは行動だ。やるのか、やらないのか」
「そ、そんな……お父様となんて……考えられません」
「できぬか」
「お願い……お許しになって……」
瞳を潤ませ、アネッテはクリスティーナを見上げる。
見る者の胸を打つ、美しく儚げな貴族の少女の姿にしかし、クリスティーナはあくまで冷酷だった。
「エイナル、薬を使え」
エイナルが頷き部屋の扉を開く。
二人の侍女が静々と中に入ってきた。
「アーネ、メルタ、頼む」
アーネと呼ばれた侍女が心得た様子で、エイナルと共に怯えるアネッテの両腕を掴み、床にうつ伏せに引き倒す。
メルタはその間にアネッテの背後に回り、彼女の深紅のドレスを捲くり上げた。
「いやぁあ! 何をするの!?」
悲鳴に何ら動じることなく、メルタはアネッテの下着を脱がした。
十代の張りのある尻が露になった。
「やあっ! いやあああああっ!! やめ……ああっ……」
アネッテは逃れようとするが、エイナルとアーネに押さえつけられ、ただ情けなく尻を振るだけとなってしまった。
「ひどい……こんな……いやぁ……」
「お静かに。暴れると、あなた様が痛い思いをすることになりますよ」
言いながら、メルタがアネッテの尻肉を手で割り開く。
肛門が空気に晒される感触に、アネッテはさらに悲鳴を上げた。
「やめて! やめて! そんなところ見ないでえ!!」
「アネッテ様、綺麗な菊門ですこと」
メルタはくすりと笑って、そのままアネッテの尻に顔をつけた。
「ひうっ……!」
アネッテは床に組み伏せられたまま目を見開き、口をぱくぱくと動かした。
ねっとりと生温かいものが肛門から侵入する感覚。
彼女は今自分がされていることを信じることができなかった。
「そ、そんな……お尻の穴を……ぁあ……」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて、メルタはアネッテの肛門を舌で舐り、ほじくった。
「ぁあぁ……ひぅ……ぁあ!」
自分すらも見ることの無い排泄のための穴を、他人に、舌で弄くられる恥辱。
そして、否応も無く襲ってくる奇妙な感覚に、アネッテは体を震わせた。
「やめてぇ……そんな汚らわしい……あぁ……」
「アネッテ様はこちらの穴も感じるようですね」
メルタがアネッテの尻から顔を離し、今度は人差し指で揉むようにして肛門を責めた。
さらに中指を入れ、かき混ぜるようにして二本の指を動かす。
アネッテはもはや何も言わず、目をぎゅっと閉じて耐えるのみとなっていた。
「よろしい、だいぶ柔らかくなったようです」
メルタは傍らに置いていた道具類の中から、銀色の漏斗を取り出すと、先端の部分を唾液で濡らし、アネッテの肛門にぴたりと当てた。
そしてそのまま、ずぶずぶと彼女の腸内に金属の管を沈めていった。
「きゃっ! な、なに?」
冷たい金属の感触に驚くアネッテをよそに、メルタは透明の液体の入った瓶を取り出す。
片手で器用に蓋を開けると、漏斗にその中身を注ぎ始めた。
腹の中に直接液体を注ぎこまれる感覚に、アネッテはただ混乱するしかできなかった。
「あ、あ、いや……!」
「すぐに良くなりますよ」
アーネがアネッテの耳元で呟いた。
実際、液体を注ぎ終える頃には、アネッテはその言葉の意味を文字通り体で知ることになった。
「あ……あぁ……あああ……」
下腹から全身に、じんじんと疼きのようなものが広がるのがわかった。
体が熱を帯び、声が自然と出てしまう。
露出された下半身に触れる微かな空気のそよぎが、言い知れぬ快楽となって少女を襲った。
「あ……あぁー……あぅう……! うぅう……っ」
意識せぬまま、漏斗が挿入されたままの尻を上下に揺らし、もどかしげに身を捩らせた。
メルタが漏斗を引き抜くと、それだけで声にならない声をあげ、ちょろちょろと小便を漏らしてしまった。
「相変わらず見事な手並みだな……またそなた達と会えて嬉しいぞ」
「私たちもでございますよ」
クリスティーナの褒めに、メルタは嬉しそうに微笑んだ。
メルタもアーネも、三年前クリスティーナが幽閉されるまで彼女に仕えた侍女であった。
クリスティーナの幽閉後は二人とも王城を追放されていたが、この度こうして呼び戻されたのである。
二人とも、クリスティーナのよき理解者であり、協力者であった。
「これでアネッテ様は、半日は色狂いとなるでしょう」
「目を覚まさぬうちに、ラベリにも盛るのだ」
「はい」
アーネとメルタが同時に返事をして、アネッテのもとを離れた。
彼女達がアネッテに注いだのは、強力な媚薬だった。
性の何たるかを知らない幼女ですら発情させてしまうほどの効果を持つ薬。
それを腸から直に吸収させられるとなれば、どんな人間もたちどころに淫乱の極みに堕ちてしまう。
アネッテはもはや、ただそこに居るだけで快楽の渦に揉まれていた。
「あぐっ! はぁあー……おぁああああぁぁあー……ぐっ! ふんん~! くぁあっ……!」
貴族の令嬢らしからぬ叫び声を上げ、白い肢体を床に跳ねさせる。
両腕の拘束を解かれた今、狂ったように自分の股間をまさぐっていた。
薄い毛の生えた秘所は、陰唇がぴくぴくと蠢き、クリトリスは真っ赤に充血している。
愛液の溢れ出る秘所を涙ぐんだ目で見つめながら、がむしゃらに擦り上げ、その度に白目を剥いて仰け反った。
「あぁあああ~! いいっ! いいっ! あふっ……ぅうっ……! ぅあぅうう~!」
ぬちょ、ぬちょ、と、粘着質な音が次第に大きく、速く響いていく。
もはや澄まし顔の令嬢の姿は無かった。
ただいかに快楽を得るかに腐心する雌の姿がそこにはあった。
「クリスティーナ様、ラベリ様の方もご用意ができました」
アーネとメルタがクリスティーナの前にかしずき、告げた。
ラベリは仰向けに寝かされていた。
意識がまだ戻らないのだろう、その体はぴくりとも動かない。
ただ、股間の膨らみから、彼にも薬の効果は十分に出ていることが見て取れた。
「よしよし。エイナル、叩き起こしてやれ」
言われるままにエイナルはラベリ公爵の上体を起こし、後頭部を刺激した。
しばらくするとラベリ公爵はうっすらと目を開け――
「なっ……!」
声を上げた。
目の前で痴態を繰り広げる愛娘の姿を見て、驚きと絶望の悲鳴を上げた。
「アネッテ! おお……な、なんという……! おおお……」
床に仰向けに寝転んで、ドレスの上から張った胸を揉みしだき、膣口に指を入れてひたすらかき回す娘。
彼女は潤んだ瞳で父親を見つめた。
「お、お父様……お父様ぁ……駄目……私……ぁあ……熱い……」
舌足らずに言いながら、脚を開いたり閉じたりする。
その度に、彼女の膣口は体内を見せつけるように開閉し、ねっとりとした愛液を吐き出した。
「娘が苦しんでいるぞ、ラベリよ」
クリスティーナが嘲笑いながら言った。
「き、貴様か……貴様が娘をこんな……!」
「ああ、そしてラベリ、貴様もな」
「……?」
ようやくラベリは自分の体の違和感に気がついた。
体の熱さと、どうしようもなく湧き出る性欲に。
「く……そんな……」
脳が瞬く間に思考力を失っていくのを、ラベリは自覚した。
自分の発している声すらも正しく認識できない。
ただ雌の香りを求める本能が、むくむくと頭をもたげていた。
「娘を抱く……? 馬鹿な……そんなことは絶対に……」
ラベリは駆け出した。
理性の残っているうちに、窓から身を投げて命を絶とうと考えたのだ。
しかし、もはや彼から正しい方向感覚というものは失われていた。
ふらふらと蛇行して走り、壁に正面からぶつかってしまった。
「ぐ……おおぉおおおぉおおおお!!」
飛び降りることがかなわぬとわかると、ラベリは壁に頭を打ち付けた。
叫びながら、何度も何度も。
そうして理性を保つか死ぬかしようとした。
「大した精神力だな。娘の惰弱は母親譲りか」
感心したようにクリスティーナは呟いた。
「ラベリよ、それはそれで面白いのだがな。お前がここでアネッテと交わらないなら、アネッテは罪人として貧民街に放り出すぞ。乞食の精液で子宮を満たすことになるだろう」
「……!」
「当然、お前が自殺をした場合もだ。そうでもしないと、私の魔力は満たされないからな」
「あ……ああ……ぁあああぁ……」
ラベリは壁に張り付くようにして、絶望の呻き声を上げた。
既に額は切れ、血が流れ出していた。
「お父様……」
切なげな声に、ラベリは虚ろな目を向ける。
床から浮かせた腰をがくがくと震わせ、自慰による何度目かの絶頂を味わっている最中の娘の姿がそこにはあった。
「お……おお……アネッテよ……おおお……」
床に手をつき、這いずるようにしてラベリはアネッテに近付いていった。
「アネッテ……アネッテ……!」
「お父様……熱い……熱いです……助けてください……熱い……」
「どこが……どこが熱いのだ……?」
「こ、ここが……」
アネッテは震える脚で腰を浮かせ、父親の前に秘所を突き出した。
両の手を性器の脇に添えて、そのまま割り開く。
いやらしい音を立てて膣穴が口を開け、ピンクの媚肉がひくひくと蠢く様をまざまざと父に見せ付けた。
「ここが……この中が……熱いのです……」
「お……おおぁああああああ!」
体内を媚薬に侵され、精神的にも追い詰められたラベリの理性は、もはや限界だった。
雄叫びをあげて娘に覆いかぶさり、ドレスを引きちぎって、柔らかな胸を乱暴に揉みしだいた。
「ああ……! お父様っ……!」
「アネッテ! アネッテよ……!」
ラベリは邪魔だとばかりにズボンを脱ぎ去り、下半身を露にする。
かつて無いほどに勃起したペニスを握ると、その先端をアネッタの秘所につけた。
アネッタは、何ら抵抗することなく、父のその行為を受け入れた。
「アネッテ、いいのか? いいのだな?」
息を荒くして問うラベリに、アネッテは鮮やかに頬を紅潮させて小さく頷いた。
亀頭が膣口に入るように手で位置を合わせ、ラベリは腰を進ませる。
ぬぷぷ……と音がして、父の肉棒が娘の秘所に押し込まれていった。
「んぁ、あ……!」
わずかに入っただけで、アネッテが切なげな声をあげた。
その声に、ラベリの心のうちに微かに残っていた父親としての優しさは吹き飛んでしまった。
彼はアネッテに覆いかぶさり、細い体をしっかりと抱きしめると、全体重をかけてアネッテの貞操を貫いた。
「んぁああああああああああっ! あぁあ~……っ! ぐ……んぐっ……はぅおぉお……」
初老の男の太く黒いペニスが、可憐な少女の秘所に根元まで一気に収まってしまった。
アネッテは声にならない声をあげ、中空でもがくように脚をがくがくと動かした。
「アネッテ! アネッテ!!」
「あ、お、お父様! お父様ぁあ!」
ラベリは夢中で腰を振った。
ずぷ、ずぷ、と、二人の結合部から激しく淫音が響いた。
アネッタの貫かれた秘所からは、大量の愛液に混じって、処女の証である赤い血の筋が下りていた。
その様子をクリスティーナは興奮した面持ちで見つめ、金の髪を振り乱して哄笑した。
「ふふ……ははははは! そうか! アネッテ、惰弱ではあったが婚前に操を守るくらいの心はあったか! 良かったな、ラベリよ! 貴様が娘の初めての男だ! くく……ははははははっ!!」
クリスティーナの言葉に、ラベリはもはや怒りというものを感じなかった。
彼女の嘲り笑う声さえも、いまや性欲を増進させるひとつの要素となってしまっていた。
「わ、私が娘の……アネッテの初めての男……!」
ラベリの肉棒はますます硬さを増し、男を覚えたばかりのアネッテの膣肉を蹂躙した。
深く浅く、解きほぐすように膣口を掘る。
その度にアネッテの小陰唇は巻き込まれ、未熟にも思えた秘所は突かれる毎に淫らに開花していった。
「あ、いい、いい! お父様、気持ちいい! いいです! あそこが……痺れちゃう……ぁあ……んぁああああ! ぉあぁあ~っ!!」
処女を喪失したばかりだというのに、アネッテは狂ったように首を振り、よがり泣いた。
全身が溶けてしまいそうな快感だった。
気付けばアネッテは父の腰の動きにあわせるようにして、自ら腰を擦り付けていた。
「お父様! お父様! もっと! もっと動いてください!」
「いいのか? わ、私のこれが、そんなにいいのか!?」
「い、いいです! すごく! 素敵です!!」
「どこがだ? どこがどんな風にいいんだ? い、言ってみなさい」
「あそこが……お、おまんこが……ぁあ……お父様のおちんちんでほじくられて……か、感じちゃうの! おまんこ気持ちいいのっ!」
貴族の子女として受けた教育で、決して使ってはいけないと戒められていた下品な言葉の数々が、口から流れ出た。
アネッテは口の端から涎を流し、目をとろんとさせて自らの背徳的な言動に酔っていた。
「あぁ~……駄目なのに……こんなの駄目なのに、私……ぁあああ~……!」
「アネッテ! お前と言う奴は……!」
普段の上品な娘の姿からは想像もできない乱れように、ラベリはさらに興奮し、激しく腰を振った。
水音はより粘着質に、淫らに変わり、愛液が床をてらてらと濡らした。
やがてアネッテも腰使いを覚えたのか、二人が腰を打ち付け合うタイミングはぴたりと合い、肉と肉のぶつかり合う音が室内に響いた。
ラベリとアネッタは互いに唇を求め、舌を絡ませあった。
父と娘は、完全に禁断の交わりに没頭してしまっていた。

「面白いものだな」
クリスティーナが目を細めてエイナルを見た。
「何がでしょう」
「人は同じだということだ。幾度もこうした交わりを見てきたが、平民でも貴族でも、一度堕ちてしまえばやることはまったく変わらぬ」
「それは……そうですね」
「我々王族も貴族も、平民とは違うと血の貴さを誇りにするが、そこに価値が本当にあるのか、疑問だな」
ふと笑って、クリスティーナは自らの手を見た。
「結局は力だ。上に立つ者とそうでない者を真に分かつのは、能力の有無なのだ」
「力が血によって子孫に伝わる傾向が強いこともまた事実ではありますが」
「そうだな……となると、貴族による支配もあながち間違っては居ないのか。奴らも祖先が優秀だったからこそ、現在の地位をその血に与えられたわけだからな」
ふむ、とクリスティーナは頷いた。
「それにしても貴様は相変わらず動じぬな。普通の男ならこんな光景を見たら我慢できぬだろうに」
目の前で繰り広げられる痴態に、エイナルの股間は反応した様子は無かった。
「クリスティーナ様もご存知でしょう。士官学校では敵の諜報活動に屈せぬよう、こういったことに対する教育をきっちり受けさせられるのですよ」
「それにしたって貴様は平然とし過ぎる。もう少し楽しんでくれた方が、私としては嬉しいのだがな」
呟いて、クリスティーナはラベリ親子に目を向けた。
「ふふ……そろそろか」
しばらく話し込んでいる間に、ラベリとアネッテの交わりはさらに激しくなっていた。
形の良い胸を揺らし、あられもない嬌声をあげ続け、背筋を反らして何度も絶頂を迎えるアネッテ。
それを雄の荒腰で責め続けるラベリ。
彼はまだ射精していないが、そろそろ限界であろうことは見て取れた。
「あひぃいっ! またイク! イってしまいますぅう!! ま、また! もう駄目! いい!! おまんこまたイっちゃう!! っっ!!」
つま先まで脚をぴんと伸ばして、アネッテは絶頂する。
ぐねぐねと蠢き、急激に締め付けを増す膣内に、ラベリは顔をしかめた。
「く……!」
こみ上げる射精感に、慌てて腰を引き抜こうとする。
が、クリスティーナはそれを許さなかった。
彼女はラベリの腰を足で思い切り踏みつけたのだ。
ラベリは腰を引き抜くどころか、さらに深くアネッテの体内に肉棒を埋めることになってしまった。
「んひっ!」
突然の強い突き上げに、アネッテがまた締め付けを強くする。
ついにラベリは限界に達し、そのまま娘の胎内に精液を注いでしまった。
「おお……おおお!」
「ああぁああ……」
身を震わせて、お互いきつく抱き合いながら快楽の深淵へと堕ちゆく父と娘。
クリスティーナは満足気に笑って言った。
「アネッテ、尻の穴でするまぐわいもいいものだと聞くぞ」
「んあ……は、はい……」
射精を終えてぐったりとした父親から身を離すと、アネッテは今度は四つん這いになった。
そして美しい尻を突き出し、右手の人差し指と中指を自らの肛門にねじ込み、肛門を割り開いた。
ぽっかりと黒く開いた穴から腸内を晒しながら、アネッテはうっとりと酔った目で言った。
「お父様……お尻にも、ください」
ラベリのペニスがあっというまに硬さを取り戻す。
彼は低く唸り声をあげ、獣のように娘に襲い掛かった。
完全に色地獄にはまり込んだ二人を見て、クリスティーナは深く息をついた。
「ふふ……なかなかのものだったな。満足した。魔力も十分に溜まったぞ」
「……この二人はいかがいたしますか?」
「そうだな、二人一緒に地下牢に放り込んでおいてやれ。心置きなく交わることができるだろうよ」
言って、クリスティーナは羽織ったマントを翻した。
「行くぞエイナル。ベルイマンの糞どもを血祭りにあげてやる」
「はい」
全てを忘れて交わり続ける親子を捨て置き、王女と騎士は部屋を出た。

一週間後、クリスティーナとエイナルは、首都から西に行ったところにある大河のほとりにいた。
ソレンスタム西部と中原を分かつ、青竜の川。
雪解け水のために増水し、流れも速く、渡れるところはいくつかある橋のみ。
国内に侵入したベルイマン王国軍を迎え撃つには格好の、そして最後の要害と言えた。
金剛の月十八日午後――
ソレンスタム共和国軍は、渡河すべくやってきたベルイマン王国の大軍と交戦を開始。
突撃してくる敵兵の第一陣を、最前線で待ち構えたクリスティーナの黒い炎が焼き尽くした。
幽閉され狂死したと伝えられていた彼女の復活を、兵達は熱烈な歓迎を以って迎え、沈んでいた魂を奮い立たせて、かつてない武勇を見せた。
かくしてソレンスタム共和国軍は開戦以来初めてベルイマン王国軍を打ち破り、逆襲を開始することとなる。
暗黒神の娘、クリスティーナ・マデリーネ・ソレンスタムの進軍の始まりであった。

 

 

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最終更新:2008年12月27日 05:39