『覇王の娘と勇者の末裔』
エピローグ
勇者バッドエンド



「姫様、一体、民達にどう説明をするおつもりですか!?」
城内の一室で長椅子に背を預ける女性に宰相である
ヘスタトールが声を上げた。
しかし、その長椅子に腰掛ける女性は何も言わない。
「宰相、ティルフィード様はもう『姫様』ではありませんよ?」
補佐官であるヘスタプリンが宰相を嗜めるように言った。
「む…、失礼しました。女王陛下、大臣達は納得しても民達に――――――」
「民達の間には私と先王との間にもうけた子という噂が流れているのだろう
ヘスタプリン補佐官?」
長椅子に腰掛けていた女王が静かな声で言った。
「はい。それはもう…」
ニコリと笑ってヘスタプリンは言った。
「で、ですが――――――」
「………つまるところ、夫は誰か?と」
ふぅ…と息をつき、女王は言った。
「は、はい……」
「私が心を許した相手……だけでは納得できぬか?」
「そんなどこの馬の骨ともわからぬ者――――――」
「どこの馬の骨ともわからぬ者に心を許すと?私をそのような女王と?」
静かな声であったがその声には有無を言わせぬ迫力があった。
「い、いえ……これは失言でした、お許し下さい」
ささっと畏まり頭を垂れた。


「女王陛下、そろそろお時間です」
「うむ………」
女王がその身体を起こそうとした。ささっと侍女が駆け寄り、手を貸す。
そして城の窓に近づいた。
城下には多くの民が詰めかけ、これから処刑される者達が斬首台に
固定されている。その数は20……処刑人が声を張り上げ、民達を煽った。
『帝国の親愛なる民達よ!これにあるは先王様の代より、仇なす勇者共だ
我が帝国に最後まで刃向かった者共の末路だ!これより処刑を執行する』
ティルフィードはその者達を見た。見知った者が二人いる。
一人目はエルフの神官、アリス。牢屋番にかわるがわる犯され続けられたのだろう、
神官服はボロボロに引き裂かれておりその凄惨さを物語っている。
想い人の目の前で剥かれ、何人もの男に犯され続けられたのだ
同性として哀れすぎる。
そしてもう一人……それはこのお腹にいる子の父だ。
胸にこみ上げてくる言葉ではあらわせないモノ……
愛した者を自らの命令をもって失わなければならない。
女王は膨らんだ腹部を撫で、誰にも聞き取れないような声で呟いた。
(…………リューイ)
処刑人がこちらを見上げた。執行の合図を待っているのだろう。
涙が一筋こぼれた。
「……………執行しろ」

END

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最終更新:2010年04月24日 19:19