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シャワー


上海から北京までの列車に乗り、気の向くまま途中下車の旅を続けていた。
そんな中降り立った、さして有名でもない田舎町での出来事。

久々の熱いシャワーにありついた私は、鼻歌まじりにシャンプーにいそしんでいた。
ガッシュ、ガッシュっと軽快にあわ立てる。
サーッという水音の心地よさを感じながら、
いざ洗い流そうと思ったときのこと。

ガビ、ガビ、ガビッ、、、、ピチョン、、ピチョン、、ピチョン

え・・・・・?

シャワーが止まってる・・・。
今こそ、おまえの出番だろっ!
目をつぶれっ!歯を食いしばれっ!

 ・・・・・。

お湯が出なくなった目には何度もあっている。
しかし、今度は水自体が出なくなった。
しかも、最悪のタイミングだ。
私の頭は泡だらけ。

しかし、旅なれた私は動じない。
まだ、洗面所の水がある。

ふん・ふふーーんと、胸の同期を静めるように鼻歌を歌う。
おもむろに洗面所の蛇口をひね・・・・・・。

蛇口がない・・・・・。

バックパッカーにとって、宿を選ぶ際の水周りチェックは常識だ。
当然、私もチェックした。
でもシャワーをひねって、トイレを確認しただけで終えてしまっていたことに気付く。
真っ先にシャワーを浴びたので、全く気付かなかった。
失態だ。

しかたない。
貴重な飲み水を消費するしかない。

「おーーーい、水取って。
 シャワーが壊れた。
 シャンプー流したいんだよね。」

「無理。」

「・・・・・え?
 いやいやいや、泡だらけだよ。
 かぶれちゃうよ。
 っていうか、すでにかゆいんだよ。
 まじ、おねがい。」

「うん。飲んじゃった。
 あと、500mmの半分くらいしかない。
 どうせ足りないから、買ってこいよ。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

ここは田舎町だ。
確か500メートルくらい行ったとこにお店があったような気配は感じた。
むしょうに頭がかゆい。
あきらかにかぶれている。

次からは、厳選されたパートナーと旅をしようと決意し、
ダッシュするしかないと覚悟を決める。

電灯がまばらな暗い道を、店があったような気がする方向へダッシュする。
私の頭からは、シャンプーがシャボン玉のように飛び立っていく。
さながら、たんぽぽだ。

しかし、そんなメルヘンな気分ではない。
猛烈に頭が熱い。
そろそろ骨に達していそうだ。
毛根の100や200は死んでいるだろう。

幸いなことに、周りがくらいので、店はすぐに分かった。
店にたどり着いた私は、店内を物色。
たむろっているジモティーを押しのけ、お目当てのペットボトルコーナーにたどりつく。

オレンジジュース、コーラ、緑色の炭酸飲料、黄色の炭酸飲料、オレンジの炭酸飲料・・・・

み・・・・・水が無い。

当たり前か。
ここは一般のお店だ。
観光客のための店じゃない。

こちらでは、まだ水を買う習慣などない(1996年)。
非常に迷う。
さすがに炭酸飲料はまずいだろ。
でも、オレンジジュースもどうかと思う。
っていうか、砂糖はやだ。

猛烈に頭が熱い。
心なしか風景がゆがんでいる。

愕然と立ちすくむ私にジモティー達が何やら話しかけてきた。
そりゃ、突然日本人が泡だらけで飛び込んでくれば興味も湧くだろう。
だが、中国語は一切分からないし、今はコミュニケーションを図っている場合ではない。
 ・・・・・・・・・・・・・そうだっ!
この人達に助けてもらおう。

そこで必殺の筆談+ジェスチャー攻撃にでる。

「我 願 頭 泡 消」
「我 欲 水 多」
「多謝 多謝」

この内、いくつの漢字が伝わったのかは分からないが、
すぐにジモティーの人達が店の女主人にわめき立てる。

私の肩をバンバン叩く人。
ゲラゲラ指差して笑っている人。
ただただわめく人。

大丈夫。
何とか伝わっていそうだ。
きっと女主人が水を持ってきてくれるはず。

じらすように中々現れない女主人。
もし熱い烏龍茶が出てきたら、日中友好なんて無しだと思い始めていた矢先、
バケツをもった女主人が現れる。
一人の男性がバケツを女主人からひったくり、私を店外へ連れ出す。
頭を下げると、大量の水が私の頭にっ!!!

「くーーーーーーっ、気持ちいいーーーーっ!!!!!」

シャンプーを洗い流す水は、私の心も洗い流してくれた。
その後、筆談しながらジモティーの人と素敵な時間が過ごせた。
こんな時間が持てたのだから、毛根の100や200どってことない。

ただ、女主人から5元取られたのは内緒・・・。