なんか全年齢対象の ADV ゲーム作りたいんだけど
http://w.atwiki.jp/stupid_episode/
なんか全年齢対象の ADV ゲーム作りたいんだけど
ja
2008-06-06T10:25:23+09:00
1212715523
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登場人物
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/12.html
*登場人物
少年 A 寺田光一 or 健太郎 線画中
少年 B 一之瀬 or 男子A 基本完成
少年 C 結城 or 佐々山 or 男子B 基本完成
少年 D 黒魚下男
少女 A 西村華蓮 or ヘロイン 基本完成
少女 B 浮月 表情差分完成
少女 C 愛姫 基本完成 ポーズ差分完成
少女 D 氷室皐月 表情差分完成
男性 A 名無しさん 基本完成
男性 B 山田太郎
女性 A 名無しさん 基本完成
老人 A 富士 ラフのみ
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2008-06-06T10:25:23+09:00
1212715523
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企画説明
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/11.html
表裏からの分裂企画かっぱADV
しかし、発起人のシナリオさんが離脱
そして……
「絵を描きたいです」
「スクリプトやりたいです」
そんな二人のスタッフが残った
すでに少し進めていたキャラ絵、スク仕様
このままやめてしまうのは、ちょっとせつない
「何かADVっぽいゲーム作りたいね」
「息抜き程度でいい、自分のペースで進めていこう」
かっぱ企画がスタートした時の雰囲気を保ったまま、企画の練り上げを重ねていた
シナリオがなければ、ゲームは出来ない
残っているのはスクと絵
&bold(){シナリオさん大募集するしかない!!!!!!!!!!}
----
・短編の詰め合わせのようなものを作ったらどうだろう
・絵を見て好きなキャラを使って、好きな設定で書いて欲しい(登場人物一人でもおk)
・キャラの名前や設定は、シナリオ書いてやんよ!という神が現れたら託そう
・演出指定なしの丸投げもおk シナリオさえ完成させれば、生存報告などのうるさい決まりはなし
・出来るなら、ゲームだから選択肢はちょっと欲しい
・全年齢対象であれば、ジャンルは問わない
----
&bold(){正直、ほとんどシナリオさんまかせです}
[[詳しくはこちら http://episode.gepper.net/>http://episode.gepper.net/]]
**参加者
【シナリオ】
F5 ◆xx.R7rYPp2(完成 二本目執筆中)
木十豆寸 ◆AryJkLuBwk(完成)
miki ◆y5UvD8MGzo
カフェオーレ ◆igAbCY3D3w
いちご ◆qTdZoiFI1A(完成)
ジュリエット ◆uS0wTV.wKI(完成)
厨房◆K4AmyubbLo
el
【Web】
猫の飯 ◆pbbE5Jbg9o
【スクリプト】
スク ◆gbB6.mQ37Y
【絵】
絵 ◆GEZiLPVT1Y
2008-06-06T10:22:36+09:00
1212715356
-
パラレルワールド
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/19.html
|参加中のシナリオ|miki ◆y5UvD8MGzo[[大きな杉の木の下で。]]|厨房 ◆K4AmyubbLo[[死解(仮)]]|
|F5 ◆xx.R7rYPp2[[パラレルワールド]]|F5 ◆xx.R7rYPp2[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]|F5 ◆xx.R7rYPp2摩天楼|
|ジュリエット ◆uS0wTV.wKI[[秋の世界]]|カフェオーレ ◆igAbCY3D3w[[オンリバティー(仮)]]|[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]|
|いちご ◆qTdZoiFI1A[[SHM-世界の平和を守ります-]]| | |
*パラレルワールド
【あらすじ】
謎の少女Aはいつからかもう一人の自分が自分に介入してくる感覚に襲われる。
初めは夢の世界でしか見なかった幻が現実を段々と蝕んでいく。
極限まで侵食された謎の少女A。
その時彼女は自らの数奇な運命を知る…
>ネタバレ注意です
※ 『』は???で「」は主人公の名前を表示
※ 最初の文章に戻るってのはこの話の冒頭に戻るって事です
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/10(日) 01:15:16.05 ID:f8K19N7QO
謎の少女Aを題材に
輪廻。何回も何回も同じ場所をぐるぐる回っている。私はぐるぐる回っている。
今日の私はだぁれ?今日の私はおしゃれさん?それとも活発な女の子?
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる…
目が覚めた。天井しか見えない。またいつもの嫌な夢だ。自分の人格がミキサーにでもかけられたような感覚。自分が掴めない。時々思う。私はだぁれ?
…いや、私は私。それ以上でもそれ以下でもない。バカな事を考える暇があったら学校の支度をしなくては。遅刻なんて恥ずかしい。
私の横を何人もの同級生が走り抜けていく。私は足が遅い方なので、あまり気にはならない。
『本当に?』
ーー誰?振り向いても、私に声をかけている人間はいないように見える。気のせいだ。変な夢を見たからだ。
一歩足を踏み出す。その時、まるで私の足が誰かに掴まれているかのように重くなった。
『私は私、私は私』
声が脳に響く。嫌、誰か!
ねとっとした感触が足に触れる。誰かの手?ヌルヌルと光沢を帯びたソレは徐々に私の体を這い上がる。振り払おうにも、体が言うことを聞いてくれない。
ソレは私の顔までやってきた。やはり手。それもどす黒い。その手から視線をたどっていく。腕がある。肩がある。首がある。そして…私と同じ顔がある。
私は校門の前に立っていた。8時10分。幻覚?それにしてはリアルすぎる。…だが、少なくとも今は目の前にあるものが現実。今日はきっと体の調子が優れないだけだ。私はゆっくりと歩みを進めた。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/10(日) 21:34:04.06 ID:f8K19N7QO
前回の続き
目が覚めた。天井が見える。
デジャブ。その事が頭に浮かんだ。
だがよく思いだせば、アレは夢の話。また嫌な夢を見たようだ。
私は巫女。学校にはもう通っていない。
いつものように着替えて外の掃除を始める。
朝の風は気持ちがいい。嫌な気分も綺麗に吹き飛ぶ。まるでこの木の葉達のように。
木の葉が風に巻かれ宙に舞う。私は慌てて飛び散った木の葉をかき集める。
『それはまるでアナタ』
誰かの声が聞こえた。それは夢で聞いた。あの声。私ははまだ夢を見ているのか?
『小さな小さな私が集まってアナタを作る』
どこから聞こえてくるのか分からない。どこを見ても人影はない。
急に木の葉が舞い上がり、人の形を作る。私は声を出す事も出来なかった。ただその場にしりもちをつくしか。
『サア、私ヲ認メナサイ』
夢で見たのと同じだ。もう一人の私がそこにいる。その顔は憎しみとも悲しみともつかない表情。
ソイツは私の首を掴んだ。木の葉の集合体とは思えない力強さ。私はただ暴れる事しか出来なかった。
私は走っている。後ろから恐ろしいモノが私を追いかけてくるから。
広い道を私は走っている。このままでは追いつかれる。私は家と家の間のい路地に逃げ込む。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/10(日) 22:31:55.12 ID:f8K19N7QO
さて続きを
目の前にソイツがいた。私は急いで反対方向に走る。
何故?私の後ろにいたのでは?
足がもつれそうになる。ダメだ。止まってはいけない。私は走る。
『バァ』
後ろから?いや、前。
追いつかれた。
何が起こるか分からない。何が恐いのかも分からない。
いや、何故恐いのかは分かっている。ソイツは私を憎しみの目で睨んでいたから。そして私と同じ顔をしていたから。
箒を握っているのに気づいた。そうだ、私は掃除の途中だった。
木の葉は綺麗に集められている。気のせいか、まだ頭が痺れているような感覚がある。
夢、いや幻覚だ。多分私は疲れているのだろう。お父様に言って少し休む暇をもらおう。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/11(月) 00:05:28.70 ID:LUBb8Ws+O
続き
「お父様」
返事がない。いつもならこの時間はいるハズなのに。
私は家中を探した。しかし誰もいない。もしかしたら外にいるのだろうか。
「お父様ー」
やはり返事はない。今日は特に用事はなかったハズなのに。
『おい』
振り向く。誰かがナイフを向けている。助けーーー
目が覚めた。天井が見える。何度目だろうか。これも夢なのだろうか。
自分の手をつねってみる。
痛い。間違いなく現実だ。
そうだ、買いたい本があるんだった。買いに行かなくちゃ。
コートを羽織り、家を飛び出す。楽しみにしていたんだ。急がないと。
坂道にさしかかった。息を切らしながらも坂を駆け上がっていく。
…何かが転がってくるのが見える。アレは…ビー玉?
コロコロと私の足元に一つ転がってきた。何故こんな所にビー玉が?子供が遊んでいるのだろうか。
するとまた一つ、いや二つ三つ…段々と転がってくる量が増えている。
怖くなった私は坂道を戻る事にした。ふと、振り返る。
ビー玉の津波が背後に迫っていた。それは大口を開けた人間のように見える。
抵抗出来ず、私はビー玉の波に飲み込まれていった。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/11(月) 22:22:55.42 ID:LUBb8Ws+O
続き続き
これは現実?理解出来ない。
私が何をしたというの。私は何も悪くないの。
気づくと私は家の中で倒れていた。
今の私は巫女服。だが本当の私なのかは分からない。
私はどうかしてしまったのだろうか。すごく不安になる。
分岐点
A「とにかく外に出る」
B「もう寝る」
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/11(月) 22:50:22.00 ID:LUBb8Ws+O
分岐点Aストーリー
ダメだ。気が狂いそうだ。
訳も分からず私は外に飛び出した。
晴天。雲一つない。
何故私はこんな目にあっているのだろう。
この空も夢なのか。私の体も私ではないのか。
道行く人全てが私に見える。いや、実際にそう見えている訳じゃない。
だが私はそう見える気がする。
私は誰?アナタは誰?
皆が私を見ている。私の瞳で私を見ている。
気をしっかり保たなくては。
しかしあまりに現実に近い幻覚の連続で、私の精神は悲鳴を上げていた。
あれは夢あれは夢あれは夢。誰も見てない私じゃない。
あれは他人、今は現実。きっと現実。
私がしっかりすれば幻覚なんてきっと見ない。
アレ?
私は何をしているんだ?
手にはしっかりと箒を持っている。
多分今の私は叫んでいただろう。私には聞こえない。
私は私を殴った。先にやられる前にやった。
だがもう一人の私なんていなかった。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/11(月) 23:18:16.47 ID:LUBb8Ws+O
分岐点Aストーリー続き
私は今病院にいる。
ここまでの記憶はほとんどない。
が、誰かを殴ってしまった事。そして警察に連れて行かれた事は覚えている。
多分頭がおかしい人として入れられたのだろう。何もない、真っ白で無機質な部屋。
後悔している。何て事をしてしまったのだろうか。
今は考える気力もない。ただ、時間の流れを待つしかない。
『クックックッ』
「…誰?」
ああ、私だ、私がいる。もう慣れてしまっている自分がいる。
アナタは私に何を伝えたいの?アナタはどうして私と同じなの?アナタは私に恨みでもあるの?
『ある』
何?私は何をした?
『まだ終わらせない…』
私の私は姿を消した。何も考えたくなかった。
気づいたら夜になっていた。だが眠るつもりはない。
アイツはきっと私の夢に現れる。いや、もしかしたら今が夢なのかもしれない。
それに、眠ってしまったら私は自分を維持出来る自信がない。
布団を頭から被り、ささやかな平穏を楽しむ。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/11(月) 23:38:34.93 ID:LUBb8Ws+O
分岐A続き
ふと、素朴な事を考えた。
そもそも何故アイツは私と同じ姿をしているのか。
ドッペルゲンガーの話を思い出した。自分と全く同じ人間が存在し、それに出会すと死んでしまうという話。
もしかしてアイツは霊魂の一種なのでは?
そうだ、幸いにも私は巫女。寺院とは違うが、霊魂を鎮める方法も心得ている。
この力がどこまで通用するか分からない。だが試す価値はあるハズだ。
まずはアイツに出会わなくてはいけない。
私は静かに目を閉じた。
学校。あの夢の続きだろうか。私は今家に帰ろうとしている所らしい。
背後から誰かが近づいてくるのを感じた。アイツなのだろうか。
急に肩を掴まれる。それもかなり強い力で。私は全力でそれを振りほどき、後ろを向く。
やはり、私。だが今回は怯まない。私の全力をアイツにぶつけてみる。
ダメかもしれない。効かないかもしれない。だが、やってみなくては分からない。
私は…
分岐点Aー1
A「常に持ち歩いている御守りを握る」
B「相手の頭にイメージを送る」
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/12(火) 00:07:13.21 ID:CgmylGj/O
分岐点Aー1A
私は強く御守りを握りしめ、頭の中で強く祈った。
お願いだから消えて。お願いだからこれ以上私を苦しめないで。お願いだから…お願い…
お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い
『uzukiーsystem set up』
え?
御守りが熱くなっているのが分かる。
それだけじゃない。御守りと私の手が一つになっている。
「浮月…誕生………でとう…」
突然お母様との思い出が蘇る。この御守りは私が10歳の誕生日に貰ったもの。
何か困った事があった時、怖い事があった時、御守りが守ってくれると教わった。
アイツは…とても臆病な顔をしている。御守りがそんなに恐ろしいのだろうか。
御守りはさらに私の体の中に入ってくる。御守りと私が一つになっていく…
一体何が起こっているのだろう。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/12(火) 01:06:52.31 ID:CgmylGj/O
分岐点Aー1A続き
『全テノウヅキニアクセススル権限ヲ発動シマシタ。命令ヲ入力シテクダサイ』
全ての浮月?全ての私?
訳が分からない。どうすればいいの。
『止めろ止めろ止めろ止めろ』
私、いやアイツの声。アイツはコレを恐れている?
『命令ヲ入力シテクダサイ』
命令。つまり私が何か言えば何かが起きるという事か。
今の私の願いは一つ。
「ソイツを消して!」
『了解致シマシタ。ウヅキー35ヲ消去シマス』
『う、うわっ、ぎゃあああああああっっっ!!』
断末魔。
まるで砂の城が崩れるかのようにアイツが消えていく。
私の体の芯がさらに熱くなっている。私は何をしたのだろう?
私は私を消した。消したとは何だ?アイツはやはり霊魂だったのか?
結局私の除霊は成功したことになるのか。少なくとも、アイツは消えた。
目が覚めた。天井が見える。
あれは夢?夢としか考えられないが。
私の手にはしっかりと御守りが握りしめられていた。
夢…アイツは消えて…私は除霊…いや、除霊?私は何をしたんだろう?
分からない。ただ、今は私の現実である事は確かなようだ。
END?「エンディングA終了」
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/15(金) 23:34:58.09 ID:xnR31.AO
分岐点Aー1B
まずは相手と話す事。理解出来る出来ないじゃない。
「アナタは何なの…?私と何の関係があるの?」
『クハッ!ハハ!アッハッハハハハハハ!!』
何故笑うの?答えて!
『お前は一生私から逃げられない』
「どうして!どうして!?」
アイツが私に近づいてくる。
顔を私の顔の正面に持ってきた。私と同じ顔なのに、醜く歪んだ笑顔を浮かべている。
『いい気味』
私は突き飛ばされた。だが、すぐに来るであろう地面の衝撃の感触が感じられない。
深い闇へ、深い闇へ落ちていく。
あぁ、私は何をしているんだろう。結局アイツは何だったんだろう。
闇の中から無数の手が伸びて、私の体を無理やり掴んでいく。
私の体を千切っては投げ、千切っては投げ。不思議と痛みはない。
そうだ、これは夢なんだ。夢…。
アイツが私を見下している。恐らく肉片だけの存在になっているであろう私を。
『また、後で』
※最初の文章に戻る
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/15(金) 23:34:58.09 ID:xnR31.AO
分岐点Aー1B
まずは相手と話す事。理解出来る出来ないじゃない。
「アナタは何なの…?私と何の関係があるの?」
『クハッ!ハハ!アッハッハハハハハハ!!』
何故笑うの?答えて!
『お前は一生私から逃げられない』
「どうして!どうして!?」
アイツが私に近づいてくる。
顔を私の顔の正面に持ってきた。私と同じ顔なのに、醜く歪んだ笑顔を浮かべている。
『いい気味』
私は突き飛ばされた。だが、すぐに来るであろう地面の衝撃の感触が感じられない。
深い闇へ、深い闇へ落ちていく。
あぁ、私は何をしているんだろう。結局アイツは何だったんだろう。
闇の中から無数の手が伸びて、私の体を無理やり掴んでいく。
私の体を千切っては投げ、千切っては投げ。不思議と痛みはない。
そうだ、これは夢なんだ。夢…。
アイツが私を見下している。恐らく肉片だけの存在になっているであろう私を。
『また、後で』
※最初の文章に戻る
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/26(火) 19:25:17.22 ID:EX004AAO
分岐点B
寝よう。たった1日でこんな思いをするなんて。
もしかしたら今も夢かもしれない。だが、それならば尚更起きたくない。
布団に入ると、嘘のように眠気に襲われた。まるで私をどこかへ導くかのように。
333 名前:F5 ◆xx.R7rYPp2[] 投稿日:2008/03/03(月) 21:23:19.78 ID:HtG9yQAO
分岐点B続き
ふわふわしてる。まるで体が風船。
あぁ、これは夢なんだ。
あれ?
あれは私だ。私がいる。
学校?通学途中だろうか。
その光景を私は空から見ている。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/03/06(木) 22:35:38.24 ID:mdjQn2AO
分岐点B続き
どうする?近づいてみる?
分岐点B1
「近づく」
「その場で見守る」
分岐点B1
近づいてみよう。
近くで見れば見る程私。
だが不思議と恐怖は感じない。だが、何故か怒りは感じる。
私を苦しめたのはコイツではないか?私を苦しめる私。
人間とは妙なものだ。自分がされた事を他人にもしたくなる。
理性や道徳を超えた感情が私を支配していた。
コイツが…コイツがコイツがコイツがコイツがっ!!
私の手は自然に目の前の私の首に伸びていた。
エンディングB
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/03/10(月) 23:51:41.26 ID:ebXo8MAO
分岐点B1
「見守る」
私は空から私を見守る。同級生と思われる男女が楽しそうに私に話しかけている。
見ていて、微笑ましくなる。
その時、私は気づいた。
私の背後にあの私が近づいて来ている。あの憎しみの塊のような顔で。
「逃げて!!」
私は叫んだ。
その声が届いたのか、私と襲われかけている私は目が合った。
吸い込まれる。
私は渦巻きに飲み込まれたように意識を失っていった。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/03/13(木) 01:01:37.53 ID:ikcIhYAO
続き
今度はいきなり私の目の前に私がいた。
しかし、もう一人の方の私は私に気づいている様子がない。ただじっと、大木を見つめている。
自分と同じハズなのに、その私はすごく純粋な目をしていた。この私はどんな人生を歩んできたのだろう。
……
そもそも、何故私はこんなに存在しているのか?
夢で済ませれば簡単だ。しかし今の私にはそうは思えない。
この私って一体何なの?
もしかしたら、私を追い詰めようとしていたあの私も私と違った別の人生を送っていたのだろうか。
しかし、怨まれる覚えは私にはない。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/03/28(金) 22:00:08.61 ID:7VZ4mkAO
『その目!その目が気に食わない!!』
アイツだ!やはりアイツは私を、いや『私達』を憎んでいる!
何故かは分からない。でも止めないと私のような思いをしてしまう…!
分岐点B2
「腰が抜けているのか動けない」
「思い切って飛びかかる」
分岐点B2
「腰が抜けているのか動けない」
どうして!?私は何を怖がっているの?
あの私が私を取り込んでいっている。闇に。
あぁ…侵食されていく…。
<神の名において汝に伝える。時の旅人よ、罪は無し>
最初の文章に戻る
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/01(火) 01:54:54.37 ID:M0BF8gAO
分岐点B2
「思い切って飛びかかる」
「ダメッ!」
私は私を庇うように飛びかかった。純粋な目をした私が私を見ている、ような気がした。
瞬間、閃光が私の視界を奪う。立ち眩みのみたいな感覚に体が支配される。
まただ。また私は飛ぶんだ。
青いんだ。青い世界に光が差し込んでいる。
ここは海?だが息苦しさは全く感じない。まるで空を飛んでいるかのよう。
誰かが私の頭の中に語りかけてくる。
『ココはアナタの世界。アナタの全てが集う世界。この青はアナタの心。でも…アレを見て』
まるで直線を辿るように私の目が動く。視線の先の空間には、澄んだ青を汚すかのような赤があった。
『あれはイレギュラー。アナタも本来ならイレギュラー。でも、アナタじゃないと解決出来ないの。だから呼んだの』
赤い空間がさらに広がっていくのが見える。
『可哀想だけど、それがアナタの運命。目覚めて…』
「お母さん…」
自然に言葉が出た。まるで母のようなあの声。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/04(金) 22:18:44.47 ID:I0354kAO
突然、私の体が赤い空間に引き寄せられる。どうする?
分岐点B3
「流れに身を任せる」
「流れに逆らう」
分岐点B3
「流れに身を任せる」
赤に私が吸い込まれる。視界が全て赤に染まる。
アイツ…私がいた。アイツがイレギュラーなのか。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/07(月) 21:42:00.94 ID:/dYfdIAO
続き
母は私に目覚めろといった。どういう意味かは分からない。
しかし私を消せるのは私だけ。それは分かる。
「アナタはいちゃいけないの…私達みんなに迷惑をかけるの!」
『憎い!憎いぞ!貴様は甘い汁ばかり吸って!私以外の私達だってそうだ…』
悲しみを感じる。憎しみに隠れた悲しみ。
「何があったのか私は分からない…でも、でもだからって迷惑をかけていい理由にはならない!!」
私は私の肩を掴んだ。
周囲に稲妻が走り、アイツの体が内部から光る。
『う、うわあああ!私は…私は…ただ、幸せが…っ!!』
アイツの体が粒子となって空間に散る。私の意識が遠のく。
目が覚めた。天井が見える。自然と手でほっぺをつねる。
痛い。確かな現実の痛みを感じる。
あれは一体なんなのだろうか。夢だったのだろうか。
私の横に、母から貰った大切な御守りが落ちていた。それを拾い、ぎゅっと握り締める。
END
『エンディングB』
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/10(木) 22:49:31.97 ID:5SHPpEAO
分岐点B3
「流れに逆らう」
ダメだ。嫌な予感がする。
私は体をばたつかせながら赤い空間が離れていく。
もがいている内に、段々と青の世界から抜け出していた。
目の前にあるのは私の部屋。戻って…きたのだろうか。
特に体に異常はないみたいだ。夢…何度も何度も思ってきた。今度こそ現実であってほしい。
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/18(金) 21:55:22.98 ID:aKe7EAAO
……
あれ?
体が…動かない…?
何度も力を入れてみるが、どこも動いてくれる様子はない。金縛り?
足の所に何かがいる。そしてその何かは私の頭の方に這い上がってきている。
ヌルヌルして不快な感覚…まさか、またアイツ?いや…気持ち悪い…!
分岐点B4
「その何かに目を向ける」
「ギュッと目をつぶる」
名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/04/28(月) 10:58:05.79 ID:ZxPlKcAO
分岐点B4
「その何かに目を向ける」
こういう時、どうして人間は好奇心が湧くのだろう。
私は好奇心に購いきれず、その何かに目を向けた。
手。
手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手。
無数の黒い手が私を闇に引きずり込もうとしている。
抵抗しようにも体が動かない。
やだ、飲まれる。
無数の手が、私の体全てを包み込んだ。その隙間から見えたのは私、いやアイツ。
人の手とは思えない感触。アイツはいつものように笑っている。
私の夢はいつまで続くのだろう。
最初の文章に戻る
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名前:F5 ◆xx.R7rYPp2 投稿日:2008/02/10(日) 21:59:56.55 ID:f8K19N7QO
もしかしたらこの話、他のシナリオに微妙に影響与えてしまう恐れがあるので一応話のネタバレを…
実は謎の少女Aはパラレルワールドと思われる世界でただ一人同一人物な存在。
この話の主人公の謎の少女Aが全ての少女Aにアクセス出来る権限がある(本来なら一生気づかないシステム)。
ただ、他の世界の少女Aがそのシステムに気づき、逆恨みとして(←の世界の少女Aは不幸な生い立ち)逆介入により主人公の少女Aを精神的に(それしか出来ない)追い詰める。
その影響で様々な世界の少女Aの世界を幻覚(厳密には現実)に触れ、自分も少女Aシステムに気づく。というお話。
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2008-05-05T22:46:32+09:00
1209995192
-
コメントページ
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/25.html
要望、連絡、雑談など、自由に使ってください
- いつのまにか出来てる便利そうだな -- 厨房 (2008-02-12 00:16:21)
- Web担当としてやらせてもらえないでしょうか? leiny_maple「あっと」hotmail.co.jpにお返事をいただけるとありがたいです。 -- 猫の飯 (2008-05-04 21:00:35)
#comment
2008-05-04T21:00:35+09:00
1209902435
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テンプレ
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/21.html
タイトル「【シナリオ】全年齢対象のADVゲーム作りたいんだけど【募集】」
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1
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シナリオさん大募集なのです!!!!!!!!!
表裏からの分裂企画かっぱADV
「息抜き程度でいい、自分のペースで進めていこう」
しかし、発起人のシナリオさんが離脱
新たな企画として、出発することにしました
シナリオがなければ、ゲームは出来ない 残っているのはスクと絵
シナリオさん大募集するしかない!!!!!!!!!!
【wiki】 http://www14.atwiki.jp/stupid_episode/
【ウェブページ】http://episode.gepper.net/
【避難所】 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1202558558/
【専用うpロダ】http://www5.uploader.jp/home/episode/
更新済みの動作サンプルはここからダウンロードできます
http://episode.gepper.net/archive/index.html
-------------
2
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【Q.どんなゲームなのよ?】
・短編の詰め合わせのようなもの
(同じ絵なのに性格などが違うという面白さを出せたら思っています)
【Q.どう書けばいいのよ?】
・絵を見て好きなキャラを使って、好きな設定で書いて欲しい(登場人物一人でもおk)
・キャラの名前や設定は、シナリオさんに託す(名前だけは統一する)
・演出指定なしの丸投げもおk シナリオさえ完成させれば、生存報告などのうるさい決まりはなし
・ゲームだから選択肢はちょっと欲しい
・全年齢対象であれば、ジャンルは問わない
【Q.立候補はどうすればいいのよ?】
・書き上げることが出来るならば、長さなどの制約はいっさいありません
・簡単なあらすじと、使用予定のキャラを書いて、スレに投下してください
(あらすじ投下時に、仮のコテをつけてください 完成時までに、正式な名前を教えてください)
※あらすじに関しては
プロットから書くタイプの方は、起承転結をがわかるもの
手の進むままに書くタイプの方は、導入部分程度でお願いします
【Q.ちょっとわからないことがあるんだけど】
・キャラクタの追加は、イベント絵製作に入るまでなら優先して作業できます
(基本のキャラクターを完成後、追加サブキャラ作成に入ります)
・個人作業のほうが多いため、連絡などはGEP(避難所)進行になる予定です
・ウィンドウに表示される文字数についてはこちらを参考にしてください
名前表示時 ttp://www5.uploader.jp/user/episode/images/episode_uljp00001.png
地の文の時 ttp://www5.uploader.jp/user/episode/images/episode_uljp00005.png
正直、ほとんどシナリオさんまかせです
-------------
3 考え中
-------------
★絵とスクで準備中のもの
【立ち絵キャラ】
謎の少女A、B
着物の男
年上の女性
同じ学校の女
同じ学校の男A、B
※謎の少女二人は制服バージョンも作成予定です
他に、主人公っぽい男子、つるぴか神主じじい追加予定
【スクリプト】
セーブ、ロードなどやノベルゲームに必要な最小限の設定画面
ちょっとした便利であってほしいマクロなど
現在出ている案
【主人公名前案】
光一
【巫女服の少女の名前案】
浮月
【ゲームタイトル案】
『ぱられるすくうぇあ』
2008-04-08T10:43:08+09:00
1207618988
-
シナリオ関係
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/16.html
参加中のシナリオ
-miki ◆y5UvD8MGzo
[[大きな杉の木の下で。]]
-厨房 ◆K4AmyubbLo
[[死解(仮)]]
-F5 ◆xx.R7rYPp2
[[パラレルワールド]]
[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]
摩天楼
-ジュリエット ◆uS0wTV.wKI
[[秋の世界]]完成
-カフェオーレ ◆igAbCY3D3w
[[オンリバティー(仮)]]
-[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]
-いちご ◆qTdZoiFI1A
[[SHM-世界の平和を守ります-]]完成
2008-04-08T10:39:45+09:00
1207618785
-
木十豆寸 ◆itsukiyD4I
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/29.html
|参加中のシナリオ|miki ◆y5UvD8MGzo[[大きな杉の木の下で。]]|厨房 ◆K4AmyubbLo[[死解(仮)]]|
|F5 ◆xx.R7rYPp2[[パラレルワールド]]|F5 ◆xx.R7rYPp2[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]|F5 ◆xx.R7rYPp2摩天楼|
|ジュリエット ◆uS0wTV.wKI[[秋の世界]]|カフェオーレ ◆igAbCY3D3w[[オンリバティー(仮)]]|[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]|
|いちご ◆qTdZoiFI1A[[SHM-世界の平和を守ります-]]| | |
立ち絵
・主人公=同じ学校の男子A
・ヒロイン=根暗系少女の立ち絵plz
・降霊術の祖霊=謎の少女A
・依頼者=同じ学校の女子
・黒幕=同じ学校の男子B
>ネタバレ注意です。あらすじが最後まであります。
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名前:oshi ◆X0/NEiO/9M 投稿日:2008/02/14(木) 22:55:21.63 ID:HtXEkes0
あらすじ
とある高校の旧校舎、その内一つの教室でオカルト研究部(扉には心霊処理委員会の張り紙)はひっそりと活動している。
部員は二人、主人公(名前未定)はヒロイン(名前未定)のみ。
主人公は読書、ヒロインは杖の手入れをいつも通りしていると、約3ヶ月ぶりの依頼者が扉を叩く。
依頼の内容は最近の欠席者の増加について、風邪の流行とは考えにくいので何とかして欲しいとの事。
(オカ研は学校では爪弾きに遭っているので、依頼者はあらゆる手段を尽くした上での最後の手段であった)
ヒロインは無反応、それをいつもの事のように主人公は依頼者と共に捜査へ。
校舎を一通り周る、途中で黒幕と出会うが、その時は軽い会話のみ。
翌日、休んでいる生徒の家へ。話を聞くと風邪というよりも衰弱、過労に似た症状。
オカ研に戻りヒロインと合流、再度捜査開始。
旧校舎のチャイム(鐘の音)にヒロインが反応。(オカ研部は防音改造+放送スピーカ破損中)
ヒロインの合図で主人公離脱、ヒロインと依頼者は旧校舎の鐘楼へ向かう。
鐘楼へ登ると黒幕と対面、自分の脆弱な身体を補う為に鐘を使って精気を他人から奪っていた。
主人公到着、金属バット所持。鐘を破壊しようとするが、物理結界の影響で破壊不能。
ヒロイン「ああ、やっぱり」主人公「分かってたならやらせるな!」
結界を破る為、ヒロインが杖を地面に突き立て、降霊魔術を使い、古代の魔術師(巫女)を降ろす。
鐘の術式ごと結界を解呪。逆凪(結界を破られた反動)により黒幕気絶。
数週間後、リハビリに励む黒幕とオカ研の手伝い(といっても主人公に本の解説を聞くだけ)をする依頼者。
ヒロインが空を見上げた所でED
備考等
・始点変更複数回
・台詞以外の部分が多くなる可能性が高いので字数制限に注意
・鐘楼の背景は取れるのか微妙、背景描くか夕空背景でごまかすかは未定
・デフォネームがあればそれで使う
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;chapter.0「捕食」
――吸血鬼。
ブラム・ストーカーの小説、『吸血鬼ドラキュラ』により人ならざる物の代名詞となっているモンスター。
東欧・バルカン地域ではヴァンパイア、ヴコドラク、ストリゴイ、モロイなどの名前で呼ばれている。
弱点は既知の通り、太陽、銀、ニンニク、そのほかにも流水、茨の上は通れない等の制約が存在する。
ブラム・ストーカー以前の吸血鬼は吸血鬼というよりも不死者という色合いが強く、血以外にも人肉、精液等、食料は多岐に渡っている。
極端な例には教会の鐘の音で精気を摂取をしたり、淫魔や夢魔へも派生していると考えられている。
;chapter.1「依頼」
;視点:寺田光一(主人公)
「ふう……」
ぱたん、と俺は幻想生物辞典を閉じる。
旧校舎の一階隅の教室、そこが俺たちオカルト研究部の部室だ。
静かな環境を作るため、スピーカーが壊れているのと、こっそり防音改造できる教室がこの教室のみだったのだ。
「ん、んっ……」
肩と首を回し、音を鳴らす、暫く読みふけっていた所為か景気のいい音が二、三回連続する。
「光一、ウルサイ」
教卓の上に座り、杖の手入れをしている少女が口を開く。肩を回した時、椅子がガタガタ鳴ったのが気に食わないらしく、非難の眼をこちらに向けている。
「外に比べたら十分静かじゃないか? 部長」
彼女がオカルト研究部の部長であり、俺以外唯一の部員、氷室皐月だ。
「委員長、訂正して」
ちなみにこのチビ部長が勝手にオカルト研究部を心霊処理委員会と無理矢理に名称変更した上、自らを委員長と呼んで欲しいらしい。
「ごめん、委員長」
委員長は暫く不満そうな顔をこちらへ向けていたものの、暫くすると溜息を吐いて、手元の杖を磨き始めた。
まあ、部長もとい委員長が電波な上、部員も二人、学校から半ば村八分を食らっている俺たち、やはり仲良くしなければならないだろう。
「光一」
俺もまた別のオカルト資料に目を通そうとロッカーを改造した本棚へ向かおうとした時、委員長が声を掛けて来た。
適当な返事をしつつ、振り向くと、教室のドアを指差して静止していた。よく見れば擦りガラスの向こうに人影が見える。
俺は一つ溜息を吐くと、本を持ったままドアを開けた。
;視点:西村華蓮
「ねえ華蓮、本当に行くの? 関わらない方がいいよ……」
「しょうがないでしょ、もう頼れるのあの人たちしかいないんだし」
女友達が止めるのも分かる。私自身、彼らの危険性、というよりも異常性だが、それについては十分把握していると自負している。
そう、四月の部活動オリエンテーションでの異臭騒ぎ、事後処理と気分の悪くなった生徒の誘導を行ったのは他でもない、生徒会委員の私達だ。
しかし、あの変な人間達ならもしかすると、淡い、本当に淡い期待を持っていた。
「でも華蓮……」
「ああ、もういいわよ! 私一人で行くから!」
歯切れの悪い彼女を一括して私は渡り廊下を進む。十メートルほど進んで振り返ると、既に彼女は何処かへ行ってしまっていた。
私は女の友情に絶望しつつ、オカルト研究部への廊下を歩き始める。
ぎい、ぎい、と歩くごとに古い木造の廊下は悲鳴を上げる、その音を意識すると余計に大きく聞こえ、怪物の鳴き声にも聞こえてくる。
こんな事ではいけない。そう思って頬を叩いて気合を入れた。そして無心のまま廊下の突き当たり、つまりオカルト研究部の前まで歩ききる。
部室のドアには心霊処理委員会、と書いてある。確かにここだ、私はノックをしようとして異変に気付く、部屋の中から音がしないのだ。
誰も居ないの? そんなはずは無いと思っても、一度ためらった所為か、ノックする力は萎えてしまう。
やっぱり止めましょう、一週間もすれば問題は解決するかもしれない。そう自分に言い聞かせて一歩、ドアから離れたその時。
「いらっしゃい、入部希望? それとも相談事?」
私よりも頭一つほど大きい男子生徒が、オカルト研究部のドアを内側から開けた。
「……」
「大丈夫かー?」
いきなりの事で面食らっている私の目の前でひらひらと揺れる手、危うく腰を抜かすところだった。
「……」
私は混乱して、彼は恐らく話すことが特に無いためか、私達は数瞬見つめあう。
「光一、とりあえずドア閉めて」
「っと、悪いな……どうする? 冷やかしなら閉じるぞ?」
彼は自分の背後から聞こえた小さな声に応えた後、私に質問を投げかけた。
部屋に入った時、最初に眼に入ったのは、木で出来た杖を布で磨く小柄な女の子だった。
彼女は私に気付いたのか気付いていないのか分からないが小さく身体を揺らした。
確か、彼女の名前は氷室皐月。一学年上の先輩だが、あまり授業に出ていない、という事を生徒会の先輩から聞いている。
「さて、まずは一応、自己紹介をしようか」
「知ってるからいいわ寺田光一君、」
私が名前を言い当てると、彼は一瞬驚いた表情を見せるが
「ああ、有名人だもんな」
と言って近くに置いてあるポットから急須にお湯を注いでお茶の仕度を始めた。
「で、君の名前は?」
「西村華蓮、生徒会の書記よ」
ほうほう、と相づちを打ちつつ、彼は湯飲みに若草色の液体を注ぐ。
コポコポという音だけが聞こえ、私はこの部屋が防音加工してある事に気付いた。
「で、詳しい話を聞こうか」
自分の分だけお茶を注いで、彼は私に向き直った。
;視点:寺田光一
「まずは、これを見て」
目の前の彼女は鞄から数枚の書類を取り出し、机の上に乗せる。
書類は生徒名簿だった、そのうち約三割に蛍光ペンで印がつけられている。
「これは?」
手にとって眼を通してみても、ラインが引かれている名前は完全にランダムのように見えた。
「体調不良で休んでいる生徒にラインが引いてあるの」
「風邪でも流行ってるのか?」
率直な感想を口にする、それ以外でこんな人数が休む理由が今のところ見当たらない。
「他校の出席率はいつも通りよ。」
「じゃあ食中毒か?」
「うちの高校、学食無いってば」
そういえばそうだな、近くのコンビニ使ってたから別段気にしていなかった。
「じゃあ、何で休んでるんだ?」
「それの原因を調べて欲しいの、教師も私以外の生徒会委員も気にも留めていないし……でも、おかしいと思わない?」
まためんどくさい依頼も来たもんだ。俺は頭をかきむしる。
「……」
部長に視線を送ってみる、しかし彼女は杖の手入れに没頭してこちらを見ていない。
先に見つけやすい所は探しておいて、私は暇じゃないの。
日本語訳するとこんな空気だろう。
仕方ない、と頭で割り切り、緑茶を飲み干して俺は立ち上がる。
さて……やりますか。
「つーことで部長、校内散歩してきます」
「委員長、訂正して」
「……委員長、行ってきます」
;chapter.2「探索」
;視点:寺田光一
既に授業時間は終了しているので、体育会系の部員たちがグラウンドで声を上げているのが聞こえてくる以外は、校舎はとても静かだった。
俺は新校舎の一階、昇降口で下駄箱を一つ一つ見て周っている。
全校生徒がむら無く感染している事から、教室自体に何か仕掛けがあるとは考えにくい。
全校生徒が校内で使う場所と言えば校門から昇降口までの道のり、下駄箱、そして体育館とグラウンド位だろう。
グラウンドは魔術的仕掛けを取り付けるには何かと不向きだ、恐らくここか、落書きの多い体育館の壁くらいだろう。
念のため最寄のコンビニもチェックした方がいいかもしれない。
下駄箱を一つ一つ開けるのは本当に骨が折れる。
「……そういや書記さん」
「ひゃい?」
さっきからずっと俺に好奇の視線を送っていた生徒会書記の……誰だっけ? 彼女は声を掛けられるとは思って居なかったのか、変な声で反応した。
「最近何かに印を刻むまじないか何かが流行ってないか?」
変な反応を馬鹿にしようとも思ったが、へそを曲げられても困るので、ノータッチの方向で話を進める。
どっかの馬鹿が『両思いになれるおまじないなのー』とか言って適当な印を意味も知らず刻むと今回のような事態が起きないとも限らない。
「……特に無いわね」
「そうか」
んーこりゃ本気で黒魔術かウィルスか……明日は休んでる奴に様子見がてら見舞いに行かないとなぁ……
;視点:西村華蓮
相変わらず彼は下駄箱の中を一つ一つ覗いて何かを探している。
傍から見れば変な行動、私はそれを傍観していた。
『そんなに気にする事じゃないですよ、ただ単にここで風邪が流行っているだけでしょう』
担任教師の言葉が頭をよぎる。
友人も口では同意したような反応はしていたものの、さっき逃げられた事も含めて、内心は教師と同じ事を考えていたのだろう。
「そういや書記さん」
「ひゃい?」
突然の問いかけに驚き、私は素っ頓狂な声を上げた。
「最近何かに印を刻むまじないか何かが流行ってないか?」
少し考え、応える。
「特に無いわね」
「そうか……」
淡々とした会話が終わり、彼は顎に手を当てて思案するように擦った。
「ねえ、寺田君」
「ん?」
私は、ふと思った質問を彼にする。
「なんで私の相談に乗ってくれたの?」
教師も、友人さえも協力してくれなかったのに、初対面の人間がここまでしてくれていることが意外だった。
「書記さんにとって都合のいい回答と本音の回答、どっちが聞きたい?」
「本音でお願い」
嘘だと分かっている回答なんて聞いても仕方ない、私は即答する。
「頼まれたから協力してる、それだけだ」
そう言って肩をすくめる彼の顔はとても気だるそうで、
頼まれなければ今頃は帰って寝ている。
とでも言いたそうだった。
「さて、次は体育館だな……ん?」
視線が廊下の方向で止まる。
それにつられて私もそちらを向くと、見知った人影があった。
;視点:寺田光一
「やあ、オカルト研究部員と生徒会書記の二人組みなんて珍しいね」
夕暮れの校舎に立つ男子生徒が馴れ馴れしく話しかけてきた。
「書記さん、コイツ誰だかグホッ!?」
普通の質問をしたはずなのに書記さんから目立たない範囲のツッコミが入った。
「夕晩は、結城先輩」
礼儀正しく挨拶すると、結城先輩と呼ばれた男子学生は顔をほころばせた。
「ちょっと本気? うちの学校の生徒会長くらい知っておきなさいよ」
「そう言われても知らんもんは知らんし」
「いつもあんな部室に籠っているからよ、少しは外に出たら?」
「まあまあ、僕は暫く休んでいたしね、知らないのも仕方ないよ」
始まりかけた口論を結城先輩が止める。
「暫くって言うと……」
二年位か?
「学期の初めからよ、一週間くらい前に復帰したの」
「ふーん」
あんまり興味ない事柄なので聞き流す事にする。
「どうしたんですか先輩、こんな遅くまで」
しかしこのまま何もしないというのも癪だ。
「僕かい? ちょっと調べ物をね、君は?」
という事で、俺は今日の夕飯についての有意義な物思いに耽ることにした。
今日の夕飯は何にしようか。
「あはは、こっちも似たような事です」
いい加減カップ麺も飽きてきたし、外食は金がかかる、自炊できないって言うのは辛いなぁ……
「そうか、じゃあ、僕はお先に」
たまには肉じゃがとは言わないけど手製の味噌汁が欲しいなぁ……
「ええ、さよなら、先輩」
誰か作ってくれないだろうか。
「ねえ」
やっぱり料理教本でも買うかなぁ……
しかし、その金を使うくらいなら店屋物……いやいや。
「ねえってば!」
「うおう!?」
突然耳元で叫ばれて、俺は身体をビクつかせる。
「叫ぶなよ書記さん、肩を叩くとかいろいろあったろうに……」
あー、耳鳴りが酷い……
「やったわよ、あなたが気付かなかっただけじゃない」
「へぇ、やってた? 全然気付かなかったわ」
「……」
溜息混じりに軽蔑したような視線を向けられて俺は視線をそらした。
そこでふと気付く、さっきまでもう一人居たような……
「そういえば、あの人は? 生徒会長の」
「さっき別れたところよ、ほんとに話聞いてないのね」
もう一つ、深い溜息を吐かれ、俺はほんの少し申し訳ない気分になった。
「あれ? 首に何をつけてるの?」
どうにもばつが悪いので、暑くも無いのにシャツのボタンを外してパタパタと揺らすと、書記さんは俺の胸元を覗き込んできた。
「ん? これか?」
胸元のネックレスを持ち上げてやる。
「宝石?」
「いや、護符だ」
アスマンダスの埋め込まれた護符は呪術系魔術を無効化する効果があるのだ。
ちなみに部長は術中の集中力を強化するエメラルドのタリスマンを持っている。
「護符?」
「俗っぽく言えばパワーストーンだ」
パワーストーン、という単語で途端に胡散臭そうな顔をする。
だから普通の人は嫌いだ。
;視点:西村華蓮
「刻印したような跡は無かった、ということで明日、休んでる生徒に直接話を聞く事にした」
私は体育館へ行き、落書きを一つ一つ見て何かブツブツ言う彼の側で刺さる視線に耐えた後、またこの部室へ戻ってきた。
「そう」
机の上で木の杖の手入れをしていた氷室さんは、何処からか持ってきた書類に目を落としていた。
「こっちも少し調べたけど、血液型、予防接種の回数、病歴……共通点は一切無いわね」
個人情報保護法に抵触しないのかな。
そう思ったけど、二人の真面目な会話に突っ込む度胸は、私には無かった。
「強いて言えばこの高校の生徒、か」
二人は頷きあい、寺田君だけがこちらへ向き直った。
「聞いたとおりだ、調査は明日に持ち越し、今日は家帰って寝よう」
気だるげな表情で言う。
「ささ、帰ろうね」
「え、ちょっと……」
私の背中をぐいぐい押して、寺田君は部室から追い出した。
「どうしてよ、まだ六時にもなって無いじゃない」
「文化系部の活動時間は文化祭準備前を除いて六時まで、生徒会の人間なのに知らないのか?」
「あ……」
たしかに、六時以降は運動部以外の生徒は残る事を禁止されている。
「思い出した? こっちは帰る仕度があるからもうちょっと残るけど、書記さんはさっさと帰ったほうがいいぞ?」
そう言って、彼はドアを閉めた。
;視点:西村華蓮
閉じられたドアを見ても開く気配は一向に無い。
「ハァー、やっぱりね……」
溜息と独り言を洩らしても事態が変化するわけでもない。
私は見切りをつけて、ドアから離れて歩き始めた。
初めから期待していたわけではない。
むしろ誰にも相手にされなかった為の最後の手段だった。
途中までは相談に乗ってくれたが、やはり部活動の一環なのだろうか。
やっぱり、一人で解決するしかないのかもしれない……
「西村さん」
振り返るとそこには結城先輩が立っていた。
「あ、探し物は終わりましたか? 先輩」
「ああ、それなんだけどね……?」
何かに気付いたかのように辺りを見回す。
私が不審に思っていると先輩は口を開いた。
「あのオカルト研究部員は? 彼だけ先に帰ったのかな」
「ああ、いまは部室で帰りの仕度していると思いますよ」
「そうか……なら丁度いい、僕と少し話さないか?」
先輩は真面目な顔で話し始めた。
;chapter.3「」
;視点:寺田光一
午前の授業が終わると、早々に早退届を出し、欠席者の診断を兼ねたお見舞いに行き、俺たち二人は部室へと戻ってきていた。
「悪いな、手配やら何やらであの糞爺どもの小言に付き合う羽目になってさ」
「気にしないで、光一と一緒の時にしてって言っておいたから」
うげ、結局俺もかよ……
爺どもは無視しておくとして、俺は一つ気がかりな事があった。
「書記さん来ないな、パッと見の性格からして終業のチャイムが鳴ったらすぐに来ると思ってたんだが」
「昨日ので失望したんじゃない?」
ああ、そういや半分追い出したようなもんだもんな、昨日のアレは。
「まあ、いいか、始めようか」
委員長がコクリと頷き、欠席者の症状を二人で分析し始める。
倒れた時点の症状はめまい、倦怠感、動悸。そして現在殆どの人間が食欲不振や胸の痛み……
病原体の仕業、というよりも過労などの肉体的疲労が原因の症状だと思われる。
「やっぱり呪いね」
委員長が口を開く。
「悪いな、俺じゃ見つけられなかった」
めぼしい位置には呪いの痕跡は見つけられなかったが、委員長が言うのならそうなのだろう。
「特殊な感染魔術かもしれない……」
「厄介だな…俺たちだけで処理できるか?」
「負けたら本隊が動くから」
大丈夫ってわけか……そうすると小言がまた増えるな……
「まあ、仕方ないな、取り敢えず昨日周らなかった……?」
ドアを開けた途端、鐘の音が鳴った。
この音は……この校舎のチャイムか。
……でも、随分前に故障して止まったはずなんだが……
「……っ」
「部長?」
気が付くと、部長が何時になく蒼い顔で杖にすがっている。
「……鐘の音に呪いを仕込んだのね」
部長は荒い息遣いのまま懐から未使用のチョークを取り出し、床に正円を描く。
「鳴り終ったら……処理」
呼吸を整えつつ部長は言う、簡易結界に入っている限りは霊障の影響は皆無だ。
円の中は閉鎖された世界の為、召喚魔術以外で防御に使うときはきちんとした模様を刻む必要は無い。
「黒魔術ね、人の精気を奪って自分の力に変換しているよう……光一はアスマンダスがあるから動けるでしょ、準備しておいて」
「了解」
俺は教室の端まで進み、掃除用具入れに手を掛けた。
;場面変更:鐘楼(旧校舎最上階)
2008-04-08T10:39:03+09:00
1207618743
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オンリバティー(仮)
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/23.html
|参加中のシナリオ|miki ◆y5UvD8MGzo[[大きな杉の木の下で。]]|厨房 ◆K4AmyubbLo[[死解(仮)]]|
|F5 ◆xx.R7rYPp2[[パラレルワールド]]|F5 ◆xx.R7rYPp2[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]|F5 ◆xx.R7rYPp2摩天楼|
|ジュリエット ◆uS0wTV.wKI[[秋の世界]]|カフェオーレ ◆igAbCY3D3w[[オンリバティー(仮)]]|[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]|
*オンリバティー(仮)
名前:カフェオーレ ◆igAbCY3D3w 投稿日:2008/02/10(日) 23:21:33.94 ID:ps6RX0jdP
同じ学校の女子と同じ学校の男子A
立ち絵が必要な分はこの2人
あらすじ
喫茶店でそれとなしに会話を聞く内に近くの席の女が美人局的なことをしていることを知る
友人に話して聞かせるとそれはどうやら自分のことらしく落ち込んでしまう
義憤に燃えた主人公は友人を連れ彼女と会い苦言を呈し結果別れてしまうことになる
何の因縁か外出時に再び合間見える主人公と友人の元彼女
ここで非難したなら態度を貫けたのだが主人公はその美貌の虜になってしまう
求愛行為をしてようやく告白し晴れて彼氏彼女の間柄になる
翌日友人から、彼女が今度は俺をターゲットにした、酷いことになる前に別れろと言われる
つまり主人公は第二の被害者になってしまったのである
怒りに燃えた主人公は彼女が本心から自分(=主人公)を好きになるよう策を弄す
万事上手くいき、締めとして彼女に計画をバラし罵倒を浴びせようとする
しかし情けない主人公は何も言えずに彼女の恋心を受け止める
そして友人は殺意を抱く
>下から本編、ネタバレ注意
----
;約束事-------------------------------------------
;台詞は【】で括り文末に\を置いて、一行二十三ないし二十四字の三行以内で書く。
;(例)@prepare_speak actor="表示する名前"の場合「【」→「@prepare_speak actor="」,「表示する名前】」→「表示する名前"」
;00000000010000000002000000000300000000040000000005000000000600000000|7000|0
;漢字/平仮名使用
;○こと×事
;○もの×物
;○とき×時
;○あと×後
;○ほとんど×殆ど
;○なに×何
;○気付く×気づく
;○出来る×できる
;○見上げる×見あげる
;○始め/初め×はじめ
;シナリオ-----------------------------------------
;小題『オンリバティー』
;第一章「盗み聞き」
;bg-road1
【健太郎】「なんでこうも梅雨ってのは人を嫌な気持ちにさせるんだろうな!」\
恨めしさのあまり空を見上げると、朝はほとんどなかったはずの雲が辺り一面を覆って頭上に低く垂れ込めていた。\
;bg-cloudy
;BG(背景)-----------------------------------------
;学校(正面/教室1/教室2/廊下)
;http://www.aquamary.com/:school/class1/class2/hall
;道路
;http://www.ne.jp/asahi/mercury/waka/:road1
;空(快晴/晴れ/夕方)
;http://www.aquamary.com/:sunshine/sunny/even
;空(曇り/雨/夜)
;(写真):cloudy/rain/night
;喫茶店(正面/内部)
;(写真):cafe1/cafe2
;-------------------------------------------------
雲は今にも降り出しそうな、使い古された雑巾のような色をしている。\
【健太郎】「寒いな……」
汗と湿気でべとべとになったシャツを着た俺はいつの間にか寒気すら覚えるようになっていた。\
数時間前まで暑さに参っていたと思ったらこういうような具合だからまったくもうたまらない。\
これで雨に打たれたら風邪を引いてしまう。
小説を入れた鞄の中に手を突っ込んで折りたたみの傘があることを確認すると再び歩き始めた。\
;bg-road1
クーラーの調子が悪くなってきていたのは俺だけじゃなくお袋も気付いていたらしい。\
というのもつい数時間前、壊れたことを報告する俺に『やっぱり』と口走ったのだ。\
俺が今、寒さを耐え忍んでいるのはずぼらな性格を持つお袋が元凶ってことになるのだろう。\
そういえばこうして歩いているのも奴が自転車も壊してしまったからだ。\
朝っぱらから叩き起こされ貸すようせがまれやむなく鍵を渡した六時間後。\
友達の家から帰宅した俺に待ち構えていたのはところどころ擦れ車輪の形さえも変わってしまった愛車だった。\
原因を説明してくれたのならまだ良い。長年のブランクと鈍った体が原因だとしてもだ。\
だが一向に話そうとしないのである。あれでいて自尊心が高いから自分の失敗を恥としているのかもしれない。\
お袋さえしっかりしていれば俺の心労は半分くらい減るのになあ。
……。\
【健太郎】「ああ、やめだやめだ」\
どうにもこう天気の悪い日はつい嫌な考えに向かってしまう。悪い癖だな!\
さっさと目的地に向かってしまおう。どうせすることは引き返すか進むかしかないんだから。\
数分も歩けば着くところだ。ぐずぐずしていると本当に雨が降り出しかねないぞ。少し足を速めよう。\
;bg-cafe1
今まで歩いてきた道の終わり、市と市を結ぶバイパス道路とT字に合流する点の手前にその店はあった。\
Tの横の棒がバイパス道路で縦の棒が今まで歩いてきた道だと考えてもらえば分かりやすいと思う。\
合流点の手前にあるので従ってバイパス道路からその店に入るにはわざわざこちらの道に曲がらねばならなく実に面倒である。\
駅から遠く、近接道路は車の通りが少なくまた入りにくく、住宅街というには田園がありすぎる。\
そのような悪い立地条件の上に存在するこの店は喫茶店であった。\
なるほど理解できたと思われるかもしれない。常として喫茶店とは立地条件の悪い所にあるものだからだ。\
しかしこの店が名の知れたチェーン店で更に直営店という情報を付け加えたらどうだろう。\
チェーンで直営だと企業側にリスクが高いのになぜこんな場所に店を構えるのか。\
つまりそんな訳の分からなさがあるのだ。そしてそれがこの店を気に入っている一つの理由でもある。\
;bg-cafe2
;se-cafe1
;-----SE(効果音)----------------------------------
;一度きり
;喫茶店
;cafe1:ドアが開くと共に鳴った鈴の音
;繰り返す
;自然
;rain1:室外で聞く雨音
;rain2:室内で聞く雨音
;-------------------------------------------------
【店員】「いらっしゃいませー」\
ドアが開くと共に鳴った鈴の音によってこちらに気付いた店員が反応した。\
カウンターまで行きクッキーと紅茶を頼み茶葉の種類などに関して尋ねられたことに適当に答えてトレイを受け取った。\
エアコンの風が直接当たらない所で、さっきからお喋りに夢中になっているご婦人方から離れたところを選び腰を落ち着ける。\
欲を言えば斜め前の四人掛けの席が一番過ごしやすいのだが、一人で来たんだし気が引けるので遠慮しておこう。\
客はご婦人方の他に数人おり、毎度ながらの空きようだ。\
角砂糖を投入した熱い紅茶を口に含んで頭に糖分を行き渡らせてから鞄の中の小説を取り出し読書に没頭した。\
;se-rain2
雨音が聞こえてきたので窓に視線を向けると今しがた降りだしたばかりのようだった。\
灰色に近かったコンクリートが暗色を強めていく。勢いも見る見るうちに増していき、ついには風も伴って猛烈な雨となった。
外は暗かったが携帯の時計表示によるとまだこの店に到着してから二時間と経っていないらしい。\
まだ夕方といっても良い時間帯である。しかしこの調子だと家に帰るのは一苦労だろうな。\
風の音と横殴りの雨を見ると折りたたみでは頼りない。\
普通に歩いて一時間弱の道のりは果てしなく遠く、今帰るのは危険があるように思われた。\
昨日の夕方見たニュースでは眉毛の濃い気象予報士が夕方から夜にかけて雨の勢いが段々増し夜半過ぎまで続くと言っていた。\
今朝の晴れようを見て予報の不正確さを滑稽だと笑ったが、まさか当たるなんて夢にも思わなかった。\
つまり閉店時間を過ぎてもなお降り続ける可能性があるということだな……。\
しかしこう順調に予報が当たってよいものか。\
【健太郎】「(いいや、外れるべきである。外れてこそのなんとやらだ)」\
時間経過と予報が外れることに望みを託そう。\
;se-cafe1
;se-rain2
俺がそうして窓を見つめていたとき、入口のドアについている鈴が新しい客の到来を知らせた。\
;se-rain1
こんな天気の中で来るのはどんな人かと顔を見たくなり振り向きかけた。
しかし入口を背にして座っているのでわざわざ180度向き変えるのはどうにも不恰好だ。そして怪しい。\
諦めて本に集中しようとすると後ろから若い女性の声が聞こえてきた。二人組の女性客のようで、注文したあと近くの席にやってきたのだろう。\
続きから読もうとするが話し声が気になって先に進めず、店内で音らしい音といえばBGMくらいのものでこれをかき消すには到底足りない。\
静かすぎる店員がなんだか恨めしく思えてきた。\
会話がちょっと耳に入ったくらいでこんなに集中を削がれるなんて俺の精神はひ弱だな。\
【健太郎】「(だがこんな人間のそばで会話をおっ始めるとはなんたる奴らだ。怒ったぞ、こうなったら徹底的に聞いてやる)」\
ふと気が付くといつの間にかページを捲る手が止まっていた。聞き耳を立てているのがバレちゃ不味いなと思い次のページを開いた。\
【???】「私って、なんでこんなに運がないのかしら」\
神経を研ぎ澄ましていると、やがて嘆いているような内容にしてはやけに溌溂とした声が聞こえてきた。\
【健太郎】「(しっかり聞こえるものだな! 控えめなBGMと帰宅なされたご婦人たちに感謝を捧げておこう)」\
【嘆き女】「ねぇ、本当にそう思わない? だっていつもこうなのよ」\
【嘆き女】「出かける度にどこかで転んだり、なにかを忘れたり、落としたりしてばっかり」\
【嘆き女】「バスを降りるときに傘をしっかり持ってきていればそのまま帰られたのになぁ」\
【嘆き女】「って、さっきから飲みながら頷くばっかりじゃない! ちゃんと相手してよ」\
一人きりで愚痴を吐くのが嫌になったらしく一緒に座っている相手へ言葉を投げかけた。\
少し間があって、カップを置く音がした。\
【???】「もう、おっちょこちょいなんだから」\
その声には保護者的な優しさが幾分含まれているだけだったが、なぜだか俺の心は激しく揺さぶられてしまった。\
【健太郎】「(こんな可愛らしい声を一体今まで何度聞いたことがあるだろうか!)」\
立ち上がりそうになるのをどうにか押さえ込んで今しがた聞こえた声を反芻(はんすう)した。\
ただ声を聞いただけなのにこんなに動揺するなんて俺はどうしてしまったんだろう。\
----
----
○1
【健太郎】
「ふふっ」
【健太郎】
「ふははっ!」
【健太郎】
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
【健太郎】
「では、さらばだクソ田舎!」
見慣れた景色に手を振って俺は車に飛び乗った。
【父親】
「友だちとの別れは済ませたのか?」
【健太郎】
「愚問ですなお父上。別れなんぞ必要でない。向こうもそれを望まないでしょう」
【父親】
「ほうかほうか」
【健太郎】
「そうとも。さぁ、行こうじゃありませんか。新天地へと!」
【父親】
「……」
【健太郎】
「……」
【父親】
「……」
【健太郎】
「親父」
【父親】
「待て。動かんのは長年のブランクのせいじゃない。そもそも考えてみなさい」
【健太郎】
「何をだよ」
【父親】
「ここまで車を運んできたのは誰だ? そう、私だ。運転するだけの能力はまだある」
【健太郎】
「じゃあ何で動かないんだ?」
【父親】
「このポンコツの調子が悪いだけだろ。ほら、適当に叩いてみなさい」
命令の通り、適当に叩いてやった。
ブルン、ブルルンとエンジンがかかる。そりゃそうだ、今親父は俺に気付かれないようこっそりキーを回したからである。
どうやらキーを差し込んだまま回すのを忘れていたらしい。
運転技術云々の前に病院へ行くことをいつか勧めてやろう。
ともかくやっとのことで出発した。
十数年間過ごした町を積載量オーバー気味の白い軽トラが走り抜ける。
やがて赤信号に引っかかった。懐かしい町並みが広がっている。
ふと通りを歩く人の中に目をやると見知った人物がいた。
「おーい!」
「こっち向かんかー!」
やっとのことで振り返り、間の抜けた顔がこっちを向いた。
「バーカバーカバーカ」
べろべろばぁ、と舌を出す。
そいつは顔を真っ赤にして何か喚いた。
しかしすでに時遅し。車は動き出し、声はここまで届かない。
「残念無念またいつの日か!」
高らかにそう叫び、窓を閉めた。
ここを去ればもういじめは起こりえないのだ。引っ越してしまえば縁は切れてしまう。
多少寂しい気もしたが、それはマゾの素となる感情だ。
可愛らしい幼なじみでもいれば別れも面白くなったはずだが都合よくはいかんものだな。
あちらでは良き出会いがあるだろうか。パシリなどをやる下積み時代は終わったんだし楽しいことがなくっちゃ困る。
適当に舗装された道路を車は東へひた走る。
揺れる揺れる。ぐぁ、眠い。
川の向こうで母さんが呼んでいる。
よし、川を埋め立てて通行できるようにしよう。ショベルカーを持ってきて工事をし、死者がこちらへ渡ってくる。
町に死者が溢れかえり、人々はショッピングセンターを目指す。
○2
【父親】
「起きろ、運び出すぞ」
【健太郎】
「眠いんじゃぼけ」
【父親】
「寝ぼけてないで目を覚ませ。今日の寝床も作れんぞ」
【健太郎】
「ボクちゃん眠いんでちゅー」
べし、と頭部を叩かれ現世に連れ戻された。ああ、なんてことだ。ゾンビハーレムが。
【健太郎】
「……で、何を運べばいい?」
目を擦りながら荷台の物を眺めやった。ダンボールと家具類がこんもり載っている。全部運ぶのに何時間かかるんだ?
【父親】
「そうだな、これをまず運ぶか」
どどん(効果音)、冷蔵庫。
【健太郎】
「拒否します」
【父親】
「いいからとっとと運べ。終わったら寿司屋連れてってやるから」
【健太郎】
「回るな、回るな」
【父親】
「回る、回る」
【健太郎】
「ふへぇい」
冷蔵庫を持ち上げちゃっちゃと移動する。
【健太郎】
「そういえば何階の何号室だよ。というか鍵開いてんのか」
数階建てのアパートというのかマンションというのか定義は知らんがとにかく集合住宅がでんとそびえている。
【父親】
「……あ、そうだな。じゃあついてこい。鍵開けるから」
【健太郎】
「ねえねえ、持ってないんじゃね、何もさ」
【健太郎】
「手ぶら? いやいや、手ブラは好きですよ? でもこっちが冷蔵庫持ってんのにそっち鍵て」
【父親】
「どんだけ~」
【健太郎】
「流行だから許されると思ってたら大間違いですよ?」
【父親】
「ついてこい」
有無を言わせぬ口調で言った。
【健太郎】
「うむ」
ぶひゃひゃひゃ。
それから数時間、二人で運び続け、やっと全ての荷物をトラックから降ろした。
八割方を運んだ俺には何のねぎらいの言葉もなく、
親父は「車を返却してくる。夜中になるだろうから自分で飯を食え。それと帰ってくるまでに荷物をダンボールから出せ」と言いつけ出て行った。
【健太郎】
「多いっつうに」
男二人で物は少ないがおふくろの遺物が半分を占めていた。
でも仕方ない、やるか。
埃が出そうだったから窓を開ける。ベランダに出て町を眺めた。緑色が多い。
【健太郎】
「しかも山がありやがる」
都庁から左のほうにあるここは、試験日にちょろっと見ただけだが思っていたより田舎みたいだ。
首都なのによ。電脳的なロボット街は、性器丸出しで歩く美女は、どこだよ。
【健太郎】
「ふん、でもいい町だな」
少し遠くに山がある。川も見える。畑もあり、近くに目を移すと中層、高層の似たような住宅がある。繁華街のようなものもある。
ごちゃごちゃしていて、面白そうな町だ。
夕日が町を染める。
○3
きたぜきたぜー! 入学式!
うっしゃー今日も空気が美味い。それに体調もすこぶる良い。
ほうら、エレクトリーーーック!
カーテンを開けると強烈な光が入ってきた。
稀に見る快晴だ。いい日になる予感がびんびんするぜ。
こう天気がいいのは神が門出を祝ってくれているのかもしれない。ありがとう、諸君らの声援に感謝する。
家を出ると春らしい暖かな空気に包まれる。
不意に、くしゃみが出た。花粉だけは困りもんだ。
しかし自然と歩きが軽快になってくる。
些細なことなど無視できるくらいには気分上々なのだ。
数分後、同じ制服の後ろ姿がちらほら見えてきた。
「おはよう!」
そのうちの一人にそう声をかける。
うががッ、何をしとるのだ俺は。
逡巡してると前の彼女は振り向きもせずに歩いていく。
恥ずかしいが……それよりも。俺が挨拶をしてやったというのになんたる態度だ。
【父親】
「おはよう! あるいはグッドモーニン! どうだ、これでもまだ理解できんか」
【健太郎】
「……」
英語で問いかけたのが功を奏したのかやっとこちらを向いた。
露骨に嫌そうな表情をしている。ぞわわわっ、女こえぇー。
しかしここで引くわけにもいかん。新たな第一歩をここに刻むため、俺は前へ進むぞ。
【健太郎】
「なぁきみ、きみがどのような人生を送ってきたかは知らんがおはようと言われたらなんと返すべきか分かるだろう」
【ヘロイン】
「うるさいなっ」
ふふっ。殴りてえ。
【健太郎】
「あー、コホン。きみはこれから入学式に参加する。ゆえに多少の緊張もあろう。しかし緊張しているからといって」
タタタタッ
駆けていこうとする女の襟を掴んで少々強引に引き留める。
【ヘロイン】
「ななっ、なにすんのよ! このっ、ストーカー!」
【健太郎】
「ストーカーとは何たる物言いだよ。俺はストーカーじゃないしそもそもお前をストーキングする理由がない」
【ヘロイン】
「だって目がやらしーもん」
【健太郎】
「勝手な思い込みをするな。俺の目がやらしく見えるのはお前の汚れきった心というフィルターがあるからだろう」
【ヘロイン】
「そんなこと言いつつさっきから胸ばっか見てるじゃんか」
【健太郎】
「無論見てるずぉぉォ」
しかしやらしさい目つきはしとらんのだ。
そしてたとえ妄想中でも俺は生理現象を起こさない程度にはリビドーの制御を可能としている。
【ヘロイン】
「あぁぁぁー! やっぱり見てたんだー!」
いつも思うのだが、この手のタイプは返答が決まりきったようなもんでつまらん。
女は顔を真っ赤にして涙を浮かべてこちらを睨む。
【ヘロイン】
「あんたみたいな変態男、死んじゃえばいいんだー!」
死んじゃえバインダー(てけてけってけー)
捨て台詞を吐き、遁走する女。
朝っぱらからテンション高い奴にはついていけませんな。ほんと。
2008-04-08T10:38:04+09:00
1207618684
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秋の世界
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/22.html
|参加中のシナリオ|miki ◆y5UvD8MGzo[[大きな杉の木の下で。]]|厨房 ◆K4AmyubbLo[[死解(仮)]]|
|F5 ◆xx.R7rYPp2[[パラレルワールド]]|F5 ◆xx.R7rYPp2[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]|F5 ◆xx.R7rYPp2摩天楼|
|ジュリエット ◆uS0wTV.wKI[[秋の世界]]|カフェオーレ ◆igAbCY3D3w[[オンリバティー(仮)]]|[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]|
|いちご ◆qTdZoiFI1A[[SHM-世界の平和を守ります-]]| | |
*秋の世界
&bold(){シナリオ完成!}
名前:ジュリエット ◆uS0wTV.wKI 投稿日:2008/02/10(日) 23:10:29.50 ID:SiF7j8YeO
――それは夢と現の間にある、不思議なお話。
光一は気がついたら見知らぬ場所にいた。
気を失っていたかどうかすら定かではないが、以前の記憶は全くない。
見渡すとあざやかな色合いの木々が光一を取り囲んでいる。
さながら、紅葉の山にいるような……。
異常なほど秀麗な景色に目を奪われていると、遠くに巫女と思われる服装の少女を見つける。
彼女も迷い込んでしまったのかも知れない……。
光一は様々な疑問を抱えながら、少女と接触することを決めた。
----
これは、夢と現の狭間にある不思議なお話……。
背景:紅葉中の森か山。
【光一】「……ここは?」
目を覚ました光一は、自分の置かれている状況に呆然としていた。
色鮮やかな葉をつけた木々が見渡す限り広がっている。
建物や電線などの人間が造った物は一つも見当たらず、手付かずの自然が光一を取り囲んでいた。
どうやら紅葉を迎えた山の中らしいが……。
あまりにも秀麗なその色合いを纏う情景は、桃源郷を想起させる。
そして全く見覚えのない景色だった。
光一はそこに一人、立ち尽くしていたのである。
そう、厳密に言えば目を覚ましたわけでもない。
気がついたらそこにいた、という表現の方が近い。
光一は始まりを認識していなかった。
ならば原因は?
【光一】「…………」
わからない。
頭の中に霞がかかっているような、第三者が思い出す行為を止めているかのような、とにかくこの山の中にいる一切の理由は判らなかった。
記憶喪失。
瞬く間に不安と焦燥が全身に広がる。
いけない……恐怖に呑まれてはならない。
自分の心を落ち着かせるために、深呼吸をしてみる。
風景から察するに秋の涼しい風と思いきや、どことなく生温く、そして懐かしい空気が肺の中に入り込んだ。
【光一】(夢なのか?)
本来ならば最初に考えるべき推論だが。
ここが夢……。
そうかもしれない。
理由を説明するのは容易い。
なにもかもが現実離れしているから。
鳥のさえずりも、虫の鳴き声も聞こえない。
天を仰いでも、ぼんやりとしていて実態がつかめない。
だが現実を忘れてしまった光一に、目の前にある光景が現実でないと規定することができるか。
少なくとも、自分だけでは答えることのできない問いかけだった。
※場面転換:(一瞬暗くしてまた同じ背景を出す)
しばらく辺りを眺めていると、光一は遠くに人の影を見つけた。
心臓の鼓動がわずかに速まる。
遭難者が救助隊を見つけた時の気持ちに近い。
安心と懸念が混じった視線の先には、巫女姿の女の子が一人。
こちらの存在には気づいていないのか、ただ座っているだけだ。
【光一】(あの子も迷ったのかな?)
それともこの周辺に住んでいる子なのだろうか。
見るからに幼そうな女の子であるが。
もし光一と同じ境遇にあるのなら、恐怖は自分より遥かに大きいはずだ。
倫理的に考えて、ここは助けるべきだ。
自分だってこの場所のことを何も知らないけれど、二人でいるほうがなにかと心強いものだ。
とにかく、歩き出さなければ話は進まない。
光一は少女への接触を決心した。
※場面転換:(上記と同じ)
少女に近づいていくうちに、光一は奇妙な感覚に囚われた。
【光一】(なんだろう、あの子……)
少女は大樹によりかかるように座っていた。
前方を眺めているようだが、何かを探しているという気配はない。
その姿は自然と少女が見事に調和していて、さながら一枚の絵画を見せ付けられているような。
光一は少女の側面から接近していることになる。
同じ迷い人ならばもう少し挙動不審な態度を見せてもいいはずだが。
慌てている様子は全く感じられなかった。
その点から、おそらくこの土地の者だろうと思った。
巫女装束から考えると、この近くに神社の類があるのだろうか。
そもそもここはどこだ?
俺は……誰だ?
あれこれ思索にふけっている間に、少女との距離はあと数メートルというところになる。
立ち止まる。
少女はこちらに気づいているのかいないのか、何の反応も示さない。
近くで見ると、少女は生物特有の温かみがないような、それこそ幻想が生み出したような、おぼろげな姿であった。
【光一】「君……」
黙っていても埒があかないので、一先ず声を掛けてみることにする。
少女はカラクリ人形のように、ゆっくりとこちらに顔を向ける。
生気が乏しい印象を受ける。
【???】「…………」
無視されているわけでもないが、意思疎通ができているとも思えない。
【光一】「僕の名前は光一っていうんだ。君の名前は?」
言葉にしてみて、初めて自分の名が『光一』だということを認識した。
全てを忘れてしまったわけではないようだ。
【???】「……あたしの名前は浮月だよ」
少女の名を聞いて、まず光一は安堵した。
見知らぬ人物とでも会話さえできれば、これから親しくなることもできる。
希望の道が開けたと言っても過言ではない。
一歩前進といったところだ。
【光一】「浮月ちゃんか……。ここってどこだか判るかな?」
年齢差を考慮した上での口調。
【浮月】「お・や・ま」
にっこりと笑って答えてくれた。
先程の表情からは想像し難い変化だ。
【光一】「いや、それは判るんだけどさ……えーと、何て言えばいいのかな……」
言いたいことが上手く纏まっていないまま話しかけたことを後悔する。
【浮月】「どうしたの?」
【光一】「浮月ちゃんは、今何してるんだい?」
【浮月】「あたしは遊ぼうと思ってたの。……そうだっ! お兄ちゃん、あたしと一緒に遊ぼうよ!」
名案が浮かんだとばかりに大きな声を出す。
遊びか……。
(シナリオ分岐はない選択肢)A
1:承諾する
2:もう少し質問をする
----
2の選択肢。
----
【光一】「その前にちょっといいかな? 浮月ちゃんはどこから来たの?」
【浮月】「あっちの方からだよ」
そう言って『あっちの方』を指した先に見えるのは……色づいた木々であった。
木に住んでいるのか?
もっと向こう側に家ないし神社があるのなら納得できる。
というか、そう言っているはずだ。
光一は自分の勘違いを心の中で笑い飛ばした。
それならば、大して心配するようなことでもないのかも知れない。
光一はこの時点で楽観的だった。
大方散歩に出て、転んで頭でも打って一時的な記憶喪失に見舞われているだけだろう……きっと。
【浮月】「ねえ、そんなことよりあたしと遊んでよ?」
体を動かしている間に記憶が回復することも充分あり得る。
※これ以降は1の選択肢に繋げる。
----
1の選択肢。
----
……なぜだろう、少女の笑みはどろどろとした不安を一気に取り除いてくれる。
人の心を安らげる能力を持っていたり……なんて。
深刻に考えても答えはでないだろう。
【光一】「いいよ。一緒に遊ぼうか」
【浮月】「やった! 鬼ごっこしようよ鬼ごっこ!」
今にもぴょんぴょん跳ねそうなほど喜んでいる。
反対する理由もないので、光一は浮月と鬼ごっこをすることにした。
…………。
じゃんけんの結果、鬼は光一になった。
【浮月】「ちゃんと百秒数えてね?」
【光一】「あぁ、わかったよ」
背景:真っ暗。
光一は言われたとおり、なるべく丁寧に数え始めた。
当然両目を両手で覆い隠して。
浮月が一目散に駆け出したことは、落ち葉を踏む音で判った。
あまり遠くに行っても困るんだが。
【光一】「にじゅう、にじゅいち、にじゅに、…………」
数を唱えている時も光一の頭は、どこかでこの世界について熟考していた。
鬼ごっことは二人以上の遊びだ。
つまり浮月は以前に誰かと鬼ごっこをしたことがある……。
誰と?
当然ながらその解を光一が導き出すことは不可能だ。
仮に誰かと遊んだとしても、別段不思議なことでもない。
問題はその相手が光一のような迷い人だった時……。
浮月はここの住人で、光一は違う世界の住人。
光一という人間はここにいるべきではない。
帰らなければ……帰りたいから。
【光一】「ごじゅう、ごじゅいち、ごじゅうに」
【光一】(一体何をしているんだ僕は……)
不意に自分の行動がどうしようもなく愚かなことだと悟り、光一は百までの数えをすぐに中断した。
【光一】(あの子と一緒にいなくちゃいけないだろ!)
自分自身に叱咤をかましたところで、時間が戻ってくるはずもない。
一刻も早く少女との再会を果たさなければ、自分の身が危ない。
光一は本能的に察した。
だが眼前に広がる光景は……。
背景:冬の森か山
【光一】「なっ!?」
――冬景色。
…………。
…………唖然。
ありえない。
この世界はおかしい……いや、それは最初から判りきっていたことだ。
判りきっていた筈。
判りきっていたはずなのにッ。
光一は何に対して怒りの矛先を向けていいかさえ、判断できなくなり始めていた。
ついさっきまで、風流心のない光一でも感動するほどの彩色を兼ね備えていた葉は……全て枯れてしまっていた。
目の前にある大樹とて例外ではない。
裸身の状態である。
つまり光一が目をつむっている間に秋から冬に変わってしまったらしい。
【光一】「とにかく、落ち着こう」
そうだ、それでいい。
まるで自分の心と対話をするかのように。
頭の中で今までの事象を整理する……。
論理的考察がどこまで通用するか、でも光一はそれにすがる他なかった。
まず、目が覚めたら紅葉中と思われる山に一人立っていた。
それから大樹によりかかる少女を発見、名前は浮月。
浮月は鬼ごっこをしたいと提案。
そして浮月とじゃんけんをして……。
【光一】「じゃんけん……」
うっかり見落とすところだったが、光一はじゃんけんに不審な点を感じた。
覚えているのは自分が負けたということのみ。
だが自分の出した手がグー、チョキ、パーのどれだかは記憶にない。
どんなに頭を集中させても、全く思い出せず。
【光一】(僕が本当に忘れているだけなのか?)
そこに謎を解く鍵が眠っているのか。
実は何も関係がない可能性の方が高いことなど知らず。
しかし光一は頭の片隅に置いておくことにした。
そんなことよりも考えなければないらないことがあるからだ。
ここからが本題。
目を閉じている間に……より正確に言えば五十数秒の間に、季節が移った。
今もそうだが気温の変化は感じ取れない。
だからこそ目を開けるまで気がつかなかった。
秋から冬へ移り変わることはむしろ自然の成り行きなのに。
速度が光一の常識ではあまりにも異常だ。
原因を考えてもそれはあまり意味を伴わないだろう。
それでも考えずにはいられない、人間の性。
実に様々な原因候補が浮かび上がる。
実現性を無視すると、大まかに二つのグループに分けることができる。
一、自分に原因がある。
夢、なんらかの精神疾患、あまりにも遅く数えていたため、本当に秋から冬になってしまった等。
二、周りに原因がある。
ここは極短時間で季節が変わる世界、知らぬ間にタイムスリップ、背景は精巧に作り上げられた騙し絵のようなもの、最初から冬だった等。
【光一】「わけがわからん……」
本音がそのまま言葉として出た。
摂理を構築している歯車がずれているような気持ち悪さが、一層光一の心を蝕んでいく。
いっそのこと狂ってしまえたら。
狂ってしまえたら晴れてこの山の住人になれる。
楽になれる。
危険な考えが光一を支配し始める……だが止めてくれる者はいない。
その悲しき事実が、光一に逆に冷静さを取り戻させる。
【光一】「浮月ちゃんを捜さなくちゃ」
半ば自分に課せられた使命と感じていた。
見回してみるけれど浮月はおろか人っ子一人見当たらない。
場合によっては浮月はまだ鬼ごっこの最中だと思っているかも知れないのだ。
【光一】(鬼ごっこというよりはかくれんぼだな)
光一は苦笑した。
さて、どこから捜せばいいのやら。
光一はいきなり悩み始める。
先が思いやられるとはまさにこのこと。
立ち止まっていても、何も変わらないのは承知の上で、光一はしばし黙考する。
……時間がたつにつれて、光一の脳内には一人で下山する選択も生まれ始めていた。
あてはない。
とにかく下へ向かうルートを独断で選び、ひたすら歩くという素人考えも甚だしい案だ。
けれど光一には成功する確信めいたものを予感していた。
理由などない。
なんとなくだ。
……光一はすでに相当の疲労を背負っていた。
主に精神面においてだが。
それでも帰りたいという思いは強い。
どこに? と言われれば黙るしかないのだが。
語弊があると言うと救いがなくなってしまうような不安に見舞われるが、ここから抜け出したいと表した方がいいのだろう。
【光一】(どうする?)
(シナリオ分岐がある選択肢)B
1:下山を試みる
2:浮月を捜す
----
1の選択肢。
----
【光一】(帰ろう。こんなところはもうたくさんだ)
本来の性格ならば探究心が勝る場面であっても、流石に疲弊や命の危険の前では足が竦む。
臆病だと笑われてもかまわない。
身の安全は譲れるわけがないからだ。
そうと決まれば話は早い。
光一は帰路への道筋をこれだと信じ込み、全力で走り出した。
大事なのは、強く、強く、願うことなのだ。
【???】『もう帰ってしまうのね……』
突如透き通るような声が辺り一帯に響き渡るが、足を止めるわけにはいかない。
【光一】(そうさ、悪いけど帰らせてもらう!)
――それから随分と永く走り続けて――
体力の限界などとうに超え、もう諦めてその場に倒れこもうとしたその時。
唐突に視界が暗転した。
背景:真っ暗
そして目が覚めた。
今度は見覚えのある、自分の部屋。
光一はベッドに寝ていながらも、ぜえぜえと息を切らせていた。
山の中を無我夢中で走り続けていた実感はまだ消えない。
次に訪れたのは……強烈な安心感。
【光一】(良かった……)
助かったと思った。
多少心残りがあることは事実だが、所詮は夢だったんだ。
光一は今回の一件に終止符を打った。
記憶もきちんと甦っていたので、もう心配することは何もない。
これからまた日常が始まる……。
それもループしているようなものだ。
そう思うと、光一は夢も現実も大して変わらないと気づく。
でもそれでいいんだ。
無駄なことを繰り返して生きていくのが人間だから。
【浮月】『夢じゃないよ』
【光一】「えっ?」
End
----
2の選択肢。
----
【光一】(いや……僕は彼女を捜さなくちゃいけない)
まただ……、得体のしれない使命感が光一をこの世界へと留まらせる。
なにか不可思議な力が働いているとしか思えない。
それを運命と呼ぼうが、神様の力と呼ぼうが、人の勝手であるけれど、光一はそれらとは方向性が若干異なるモノに正体の目星をつけていた。
そのモノは壊れたカセットテープの如く、無機質な声で光一に語りかけてくるのだ。
――モウ戻レナイ、と。
心の奥底に微弱だが確かに恐怖感を募らせていく。
恐怖の念が表層に現れるまでには、まだ幾らかの猶予があると感じていた。
そして許容量を超えるまでが、自分が光一でいられるタイムリミットなのだろうと解釈した。
そうとなっては善は急げ。
光一はここにある巨木を目印として、少しずつ動ける範囲を拡大することに決める。
【光一】「時空超越鬼ごっこ開始」
まだ冗談を言えるほどの余裕はあった。
場面転換。
…………。
【光一】「はあ……、はあ……」
……半日は経っただろうか。
……自分の怠惰な性格を最大限に考えて差し引いても、少なくともその位は歩き続けているはずだ。
なのに浮月の姿は未だに見つからない。
人を捜すという行為はこうまで辛いものなのか。
この山には元々誰もいないのではないか、そんな弱音を吐くのも無理はない。
殺風景の似たような場所を、目を凝らしながら歩くのは想像以上にきつい。
光一は嫌というほど体感していた。
意識せずとも……自然に足が止まる。
限界だ。
ついに意思が折れてしまい、光一はその場に座り込む。
偶然か必然か、光一の背中側にはあの大樹があった。
振り返って、じっと見つめる。
…………。
葉が全て枯れ落ちたと言っても、次の春に備える力は計り知れない。
圧倒的な大自然の象徴に見える。
光一は躍動感溢れる生命の力を感じた。
ただそこにいるだけで、見る者に感動を与える。
こころなしか、自分の気力も回復しているようだ。
五分ほど休まっていると、新たな活力が湧き出す。
でも、もう少しだけ……癒しの力に身を委ねていたい。
光一の体はいまにも船を漕ぎ始めそうだ。
【光一】(おっと、いけないいけない)
強く自制して、すっくと立ち上がる。
【光一】(寝たら危ない……)
寒さこそ感じないものの、冬に外で寝てしまうのは抵抗があった。
それは光一が人間様式の生活を手放したくないという気持ちの現われか。
しかし夜が訪れたら一体どうするか。
光一はそれについて何も考えていない。
……自分の体に鞭を打ってまで立ち上がる訳はもう一つある。
----
※この下の文はAの選択肢で『もう少し質問をする』を選んだ場合のみです。
【光一】(『あっちの方』に行けば、何かあるかもしれない)
光一はこの大樹を見失わないように、円を描くように散策していたが、今度は浮月の言っていた『あっちの方』に真っ直ぐ進むという案だ。
そこに住んでいるのならば、最終的にはそこに帰るしかない。
※ ここまで。
※ここからはAの選択肢で『承諾する』を選んだ場合です。
【光一】(浮月ちゃんの足音がした方向に行けば、何かあるかもしれない)
光一はこの大樹を見失わないように、円を描くように散策していたが、今度は浮月が鬼ごっこの際に進んだと思われる方向に行くという案だ。
※ここまで。後は共通。
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すぐにでも歩き出したいところだが、なかなか始めの一歩が踏み出せない。
それはこの選択が正真正銘、最後の希望だからだ。
これが徒労に終わろうものなら――
その時は、光一は覚悟を決めねばならない。
……もう大樹を視界に留めておく必要もなくなる。
【光一】「……怖いんだろうな」
わざわざ声に出したのは、寂しさを紛らわすためだ。
死ぬ瞬間よりも、死を待つ期間に絶望を感じるのと同じである。
生か死を確かめるための行動は、安々とできるわけがない。
自分は耐えられるだろうか……一人だけの世界を。
改めて他者の存在の大切さを知った。
一人だけなら法も体裁も思いやりも関係がなくなってしまう。
それは果たして理想の世界なのか?
他人に認められるために生きている人間は生きる意義をも消えてしまう。
生きる意味を見出せなくなれば……人は勝手に死ぬ。
恐ろしいことが淡々と進行してしまう。
しかし今のことはあくまで自我を保ち続けた人間の終末である。
もし心が壊れてしまったら、もっと想像もつかない恐ろしい事態に陥ってしまうかもしれない……。
永遠に。
恐怖の順位をつければそちらの方が圧倒的に嫌だった。
……人間は現在の自分が全てだと思い込む癖がある。
最期まで自分自身でいたいと思うのは自然なこと。
残された時間も決して多くない。
よって光一は歩き出す。
足取りは非常に重い。
いつの間にやら自分が正しいと思わなければ動くこと
もできなくなっていた。
短時間でこれほど光一の心を侵食している。
【光一】(僕の心の強さも試されているな……)
心の強度は経験、性格、環境によって培われていくものだ。
経験をなくしている光一は、あとの二つが文字通り命綱である。
環境の点は恵まれている。
山に一人で登山してきたと思えば、雀の涙程度だが心は落ち着く。
ここがもし、一色の世界だとしたらどうか。
黒でも白でもいい。
どれにせよ光一はとっくに人捜しなど諦め、胎児のよ
うに身を丸くして叫び続けているだろう。
これも永遠に。
光一は見慣れた景色であることに感謝の念を覚えた。
足取りは少し軽くなった。
一連の思考の流れは光一の防衛本能の命令かもしれない。
悪いことではないけれど、後々一時的なものでしかないことを光一は嘆くはめになる。
【光一】(僕は決めたんだ……浮月ちゃんを探し出す)
【光一】「捜す、捜す、捜す、絶対に捜しだす、僕は」
呪詛のように呟く姿は端から見たら不気味かもしれないが、光一にとって目的を確認することは命を繋げる行為と等しい。
己を見失っては元も子もないのだ。
【???】『とても滑稽ね』
【光一】「――ッ!! 誰だっ!?」
突然辺りに響き渡った精練された声は、光一の頭の中に躊躇いなく侵入してくる。
立ち止まったりはしない。
そして人に巡りあえたことに対する喜びの情も起きない、起こさせない。
なぜなら光一はこの声を幻聴だと思っていること、そしてこの声は敵意を持っているように感じるからだ。
思わす声を荒げてしまったことは矛盾しているようだが、仕方がない。
【???】『誰って? 私が誰だか知ることで貴方は救われるのかしら?』
若い女の声に聞こえる。
【光一】「なんなんだお前は……」
幻聴だと決めつけても、光一は喋ってしまう。
【???】『私は貴方に興味を持ったの。ここの居心地はどうかしら?』
そいつの言動は明らかに上から見た調子だ。
嘲笑されているような。
【光一】「最低だ。悪夢ならさっさと終わってほしいさ」
【???】『へえ。貴方は望んでここに来たというのにね』
【光一】「なんだって?」
【???】『貴方の安息の地はどこにあるのかしら……』
【光一】「僕が何をしたっていうんだよ……」
語気が次第に弱くなっていく。
【???】『手を取ったのは貴方なのに面白い人』
【光一】「答えろ」
脅迫まがいの口調だが……。
【???】『ふふふ……虚勢しか張れないのかしら? いつまでその調子でいられるのかしら? ふふっ……』
粘りつくような笑いをこちらに向ける……通用しない。
それどころか、的確に光一の弱味につけこんでくるではないか。
悪魔。
【???】『貴方は前に進んでいると錯覚しているようだけれど、本当は逃げているのよ』
悪魔の囁き。
【???】『現実から目を背け、束縛から自由になりたくて……ここにいる』
【???】『いやそんな綺麗なことじゃない。もっと澱んでいて怠ける心そのもの』
悪魔の囁きは止まらない。
【???】『ここの摂理は貴方が住んでいた世界とは全く異なる』
【???】『自分を客観的に見ている自分が、像を結び、形作ることもある』
【???】『貴方は弱いの。それが罪』
【???】『それだけじゃない。弱いのに立ち向かう気を起こさない』
容赦なく。
【???】『貴方は救われるべきじゃない』
こいつは。
【???】『そうよ、生きているだけで罪。そんなゴミみたいな人間なら――』
僕を。
【???】『死んじゃえば?』
殺す気なのか?
【光一】「うわあああああああああああああああっ!!」
光一は走る。
がむしゃらに。
悪魔の手から逃れるように。
しかし頭の中に聞こえる高笑いは消えない。
【光一】「ああっ……ああぁあぁぁあああぁあああぁああああああ!!!!」
言葉にならない叫びをひたすら、ただ、ひたすらと。
まるで獣の咆哮のように。
違う。
違うんだ。
何が違うのか光一に知る由もない。
木の根に足を引っ掛けた。
派手に転ぶ。
ごろごろと惨めに転がり、相当な衝撃が光一の身体を襲う。
意識はそこで途絶えた。
背景:曇り空
……。
…………。
……………………。
光一は仰向けに倒れていた。
空は光一の心と同じように、憂鬱さをうかがわせる曇り。
【光一】「…………」
憔悴しきっていた。
もう何も考えたくない。
じゃあ死にたいのか?
死体は何も語らない……。
悪魔の声は止んでいる、今のは自問だ。
【光一】「さぁ……知らないよ、そんなこと」
そう言って自嘲した。
そもそも自分が生きているのかも判らないのに。
もしやここは死後の世界で、俗にいう地獄ではないかと妄想に駆られる。
いや、妄想に過ぎないことでも馬鹿にできないところがこの世界の恐さであり、特色なのだ。
【光一】(なぜ……こんなことに?)
虚ろな瞳で空に問いかける。
そう都合よく空が口を開くわけない。
それを見て、光一はやっと受け入れた。
――あぁ、僕は独りで、これからも孤独なんだ。
初めて涙を流した。
※場面転換(上記と同じ)
【光一】「…………」
沈黙が周囲の静寂と無音の世界を奏でていた。
木々は光一を温かく見守るわけでも冷たく突き放すわけでもなく、そこに在り続けた。
どうやら自分は眠っていたようだ。
目覚めたという自覚がないくらい、ゆるやかに目を開けた。
やはり睡眠の効果は大きいらしく、光一は大分落ち着きを取り戻していた。
さっきまでの錯乱状態が嘘のようである。
身体はどこも痛まない……転倒による外傷はないらしい。
光一は意を決して身を起こす。
背景:冬の森、山
【光一】「ふぅ……」
ため息に似た空気を漏らす。
景色は相変わらずといったところ。
秋から冬、そこからの変化はまだない。
順調(?)に推移すれば次の季節は春になるが、二度と冬から抜け出せないような予感があった。
だとすると、自分は永遠にここにいるはめになってしまう。
そこしれない不安と恐怖が脳裏をよぎる。
今更だがどうしてここにいるんだろう。
【光一】「…………あっ」
……思うに、この世界は始まりと終わりが欠如しているのではないか。
光一がいたとされる現実を過去、現在、未来の三点を結ぶ時間軸を一本の線とするならば、ここは一つの円になるのではと思わせた。
もちろん一つの推論であるから、証明することはできない。
……その世界に不運にも投げ出された者は、現実世界の人間が一本の線を歩み進むように、一つの円をいつまでもぐるぐると廻ってしまう。
任意の点から進み始めた者は、未来を辿った気にさせるも気がつけば任意の点に自分がいる。
それはその世界の時間軸が円であるだからだ。
つまり未来だと思って進んだ方向が気がつかぬまま一周して、再びスタート地点に戻ってしまう。
本当はスタート地点など存在しないがここは便宜上こう表すことにする。
そうなれば、堂々巡りである。
言い換えればループ現象でもいい。
実際にそのようなことにまだ直面はしていない。
だがそう考えれば辻褄が合うこともある。
例えば、僕の記憶喪失だ。
人は常に未来の結果を見据えて行動している。
極端に言えば過去に目を向けていない。
要するにこの山に過去は存在しないのではないか。
バッサリと切り捨てられているので、いくら思い起こそうとしても何も浮上しない。
いささか強引な解釈だが、光一は充分に納得できた。
謎を解明することによって、安堵を得ていた。
所詮気休めかもしれないが、今の光一にとって重要な意味を持つ。
【光一】「待てよ……」
つまり元の世界に戻るためには……。
その瞬間、光一は突破口を見つけたような気がした。
【光一】「流れがきた」
思わずにやりと笑う。
……人生には波がある、と思う。
失意のどん底に堕ちた後も大抵は昇っていける道があるものだ。
光一は今、その道を見つけたと言ってもいい。
これ以上ないというくらい重大な発見をした。
背景:日本家屋みたいなの
【光一】「家だっ!!」
歓喜の声が挙がった。
今までの疲れや悩みなど一瞬にして吹き飛ぶ事態の好転を目の当たりにする。
無我夢中に走り続けている間に目的地へ着いたのだ。
人工物を見ることがこうも嬉しいとは。
そう、家とは人が建て人が住むもの。
考えなくとも光一以外に人間がいることを示唆している。
表札はないが、十中八九浮月の家だと光一は思った。
背景:玄関
導かれるように家に入り込む。
不法侵入だと糾弾されてもかまうものか。
光一の呼吸は乱れ、ある種の興奮状態に陥っていた。
【光一】「誰かっ、誰かいませんか!?」
切迫した声で呼びかけてみるも、返事はない。
嫌な予感がする……。
光一は靴を脱ぎ、家の中を探索し始めた。
※場面転換
一通り家の中を歩き回った。
……頭のどこかで予期していたことが現実となってしまった。
――誰もいない。
ただタイミングが悪いだけで、ここの住人はどこかに出かけているだけかもしれない。
しかし光一は奇妙な点に気づいていた。
なんというか、生活臭が感じられないのだ。
建物の外観からして、新築というわけではないだろう。
人が生活する上でどうしても出てしまう雰囲気、残り香などが全く無かった。
【光一】(気のせいだ……じきに誰か来るはず)
……それは普通に事が転じた場合だ。
この世界に普通などむしろ異常であることを痛感しているが、どうしても目を背けてしまう。
結果、自らを更に苦しめる……。
光一に成長はなかった。
【光一】(それにしても疲れたな……)
先程までとは質の異なる、長旅から解放された時のような疲れが押し寄せてくる。
身体は睡眠を渇望していた。
光一はある一室へと向かった。
背景:和室
ここには布団が敷いてあった……。
誰かが寝ていたという痕跡はない。
まるで光一のために用意された物であるかのようだ。
【光一】(家の人には悪いけど、少し寝かせてもらおう)
光一は床に伏した。
自分でも驚くほど疲労が溜まっていたのか、あっという間に眠りに落ちそうだ。
光一はなぜか目を開け続けようと努めていた。
【光一】(……馬鹿らしい)
さっさと抵抗はやめにして、寝ることにした。
背景:真っ暗闇
……あれ、もう目が覚めている?
僕はまぶたを閉じていながらも、そう思った。
視界は黒一色だが確かに覚醒している。
【光一】(胡蝶の夢……か)
そろそろ起きよう、この家の人が帰ってきているかもしれない。
目を開ける……。
背景:和室
夜はいつ訪れるのだろう。
障子に映る白い陽光は、何の変哲もない。
この世界には夜という概念が存在しないのではないか、僕は思った。
ああ、そんなことより家の人はいないのか。
気だるげに障子を開けた。
背景:春の景色
【光一】「あ……」
声こそ出てしまったものの、以前より驚愕の度合いは少ない。
【光一】「季節が変わっている……」
例によって肌には季節の移ろいを感じ取ることはできない。
僕の目に入る光景は、春。
幻影から生じた幻覚が柔らかな薫風を生み出している。
降り注ぐ陽光に暖かみは伴わないが、春を認識させるには充分である。
【光一】「進んだってことか?」
名前は判らないが、絢爛と咲く花が示してくれている。
自分を出迎えてくれたかのようだ。
そう、ルールはある、だから正気を保ち続けられた。
僕は折り返し地点へ来たのかもしれない。
なんのために?
俺は未だに覚えていない現実へ戻りたいのか。
それこそが現実逃避になってしまいそうだ。
……いや、とりあえず解決に向かっているような虚偽の実感を味わいたいからか。
それとも僕はもう、この世界の一部となっただけなのか。
判らない……自分が。
【光一】「自分のことなのに」
世界とは対照的に、僕は衰退している。
そう思うと、美しい景色も急におぞましくなる。
物事が見地に左右されて全く別物になっていしまう。
心構え一つで変わってしまうのだ。
楽しいと悲しいに境界線がないように。
人間であるから、どうしても世界は欺瞞に満ちているように思われてしまう。
結局、他人と判りあえることはないんだ。
それぞれが異なった視点を持ってしまうから。
【???】『どうしたんだい?』
【光一】「考え事をしていたんです」
【???】『そうかい。それはどんな事かな?』
【光一】「この世界について、とか」
【???】『随分と頑張っているようだね』
【光一】「僕は何を捜しているんでしょうか?」
【???】『あの少女だろう』
【光一】「いえ、きっと違う。あの娘は最初からいなかった。僕は今まで妄想を追いかけていた」
【???】『気持ちは判るよ……だが君は進める力を持っている』
【光一】「励まさなくていいです……」
うんざりしていた。
僕と会話をしている幻は、前に出た悪魔ではない。
しかし自分の狂言を認めているみたいで気分のいいものでもない。
【???】『僕も君と同じだ』
【光一】「えっ?」
【???】『同じように迷い、苦しみ、そして消えた』
【光一】「貴方は……」
【???】『名前なんてとうに忘れてしまったが、元は人間だったよ』
【光一】「…………」
【???】『僕は君のように強くない。だからすぐに少女を諦めてしまったんだ』
【???】『この世界と同化してしまったんだよ……』
その声には哀愁の念がこもっていた。
【光一】「あぁ……」
僕は理解した。
この人と同様に、冬の時に喋りかけてきた悪魔ではなく人間だったのだ。
かつてここで迷った……いや今も迷い続けている女性。
そして僕を見て、妬んで攻撃した。
【???】『と言っても僕は後悔なんかしていない。これは望んだことだからね』
【光一】「望んだ?」
【???】『その通りの意味さ。僕も現実世界への帰還を諦めた。よってこの世界への永住に至ったわけだ』
【光一】「帰りたいと思わないんですか?」
【???】『今となっては思わない。君からはどう見えているのか知らないが、この姿になってから少女の居場所も判ったんだ』
【光一】「どっ、どこに……」
それは訊いてはいけないような気がした。
だから僕は敢えて問わなかった。
【???】『君の気持ちは判るよ……』
【光一】「すいません……」
自分の都合だけを優先するのはよくない。
【???】『謝るようなことじゃないさ。僕もこうなって救われた部分もあると信じている』
【???】『君は、君ならどうする? あるかどうか判らない過去を捜し求めるか現状を受け入れる心を持つか……』
【光一】「僕は……」
【???】『少し私情がこもった問いかけだったね。自分が信じた道を進むべきだ』
【光一】(僕は……俺は……光一は……)
【???】『おそらく最後の選択だ。僕達が出会ったのも運命であり必然だったのかもしれないな』
【光一】「俺は」
(エンディング分岐がある選択)C
1:さがす
2:やめる
----
2の選択肢
----
これは逃げだろうか。
そうは思いたくない、別の道を選ぶだけだ。
あの少女は僕とは関係がない……そのことに気づくのが遅すぎた。
【光一】「僕は……止めます、あの少女の影を追うのは」
【???】『後悔するのは容易い。だがそれを断ち切るのは君自身だ。……頑張ってくれ』
【光一】「はい。いろいろありがとうございました」
正しい間違いではくくれない選択。
それが今なんだ……僕は思った。
※場面展開(一端暗闇でまた同じ景色)
僕は感じている……自然との一体感を。
なにもかもから解放されている、理想の世界を。
悪くない、悪くはないんだ……。
だけど時折もう一人の自分が問いかけてくる
「これで本当に良かったのか?」
僕はこの言葉に永遠と付き合わされるのだろうか。
後悔しても始まらないことは判っている。
焦ることなんてなのもない。
時間はたっぷりあるんだから……。
――ここに光一という人間は、終わりを告げた。
END
----
1の選択肢
----
穏やかな陽気とは裏腹に、俺の決意は固かった。
息を吸う――
【光一】「それでも僕は……捜し続けます」
【???】「―――――」
意識は……現世へと……
場面:和室
【光一】「夢……?」
光一はまだ布団の中にいた。
【光一】(いや、夢だとしても関係ない)
現実の境界線など知ることのできない光一にとって、些細な問題だ。
信じれば彼は存在するし、信じなければそれまでの話。
光一は前者を選ぶ……これも当然だ。
もはや家の者が帰ってくるなどとは考えなかった。
【光一】「行かなきゃ……」
光一はある意味で吹っ切れていた。
場面:冬の森
終着点はまだ先。
光一はもう迷わない。
少女を捜す大義はないが、意義ならある。
そして自分は捜すものを勘違いしていたようだ……。
【光一】(そうさ、僕は自分自身を探している)
こんな簡単なことにも気づけなかったとは。
自己嫌悪に陥ってしまいそうだ。
【光一】「でも、もう大丈夫」
光一はある場所に向かった。
※場面転換。
そう、あの大樹だ。
一際異彩を放っていて神々しいと言ってもいい。
光一自身が見つけたとっておきの場所。
もたれかかる。
【光一】「やっぱり、ここが一番落ちつくな」
自分探しに足は必要ない、心と時間があればいい。
その瞬間、今までの光一は死んだ。
そして……場に溶け始めた……。
新たな旅立ちには、過去など不要。
【光一】(俺もあの人と同じ、か)
これで終わりなのだろうか……?
それは自分の願い次第であろう。
だから、僕は願い続けようじゃないか。
この物語が終わりますように……。
場面:真っ暗
…………。
……ここは、どこだ?
――――秋。
場面:最初の秋の森。
秋じゃないか。
僕の探し続けていた季節がここにあるじゃないか。
あの娘は……どこに?
【浮月】『やぁっと見つけてくれたね』
――あぁ、遅くなってごめんね。
【浮月】『待ちくたびれたよー』
訊きたいことが沢山あるんだけど。
【浮月】『どうぞどうぞ』
君は、大樹そのものだったのかい?
【浮月】『そうだよ。あたしねー、このお山の神様なんだ。ずっとお兄ちゃんのこと見てたよ』
神様……か。ここは現実なのか?
【浮月】『ちがうよ』
ならば夢?
【浮月】『それもちがうんだなー。あえて言えば……夢と現実がごっちゃになったような感じかな』
なんじゃそりゃ……。
【浮月】『あははは! お兄ちゃんがそう思うのも無理はないか。でもそう言うしかないんだよ』
俺はどうしてここに来たのか判らない。
【浮月】『あたしもしーらない。理由なんて考えても無駄だよ? お兄ちゃんのいた世界とは別物ですから』
元の世界に帰る方法は?
【浮月】『ええっとねー、それも知らないんだ……ごめんね』
神様なのに知らないことだらけじゃないか。
【浮月】『お兄ちゃんは帰りたいの?』
…………。
【浮月】『もしかしたらすごく苦しい場所かもしれないんだよ?』
……どうだろうね。
【浮月】『でもね、ここは平気。自然と一体化した人を攻撃するモノが存在しないんだもの』
そうかもね。……ここで休んでいればいいわけだ。
【浮月】『そうだよ! 流れるままにいればいいだけなんだから』
永遠にか?
【浮月】『えっ……?』
何も始まらなければ何かを達成することもできない……ここはそんなところだ。
人間は目的を持たなきゃ動くことすらできない。
君を見つけた以上、僕は次を目指さなければならない。
僕は……こんなところに留まるわけにはいかないんだ。
【浮月】『そんな……どうして? どうしてそんなに寂しいことを言うの?』
寂しくなんかないさ。ただ、僕はそうしなくちゃいけない気がするだけで……それこそ理由はないね。
【浮月】『もし地獄のような現実だったら?』
後悔するんだろうね、僕は。だけどその時は自分を責めるようなことはしない。
あの人の言うとおり、僕は何かから逃げてきたんだと思っている。
だから帰る方法を見つけ出して……戦う。
【浮月】『あたしを捨てないでよ!』
……捨てる?
【浮月】『あっ…………いや…』
やっぱり君はまだ隠し事をしているようだ。
【浮月】『ないよ。そんなの、ない』
嘘はよくない。君にだってなんらかの願いはあるんだろう?
【浮月】『ない……よ』
言ってごらんよ。力になれるかもしれない。
【浮月】『…………』
僕だって無理に言わせるつもりはない。
【浮月】『…………』
……僕はそろそろ行くよ。
【浮月】『待って!!』
……なんだい?
【浮月】『あたしを……あたしを本当にしてほしい。確定された存在にしてほしいの』
ということは僕の世界に行きたいってこと?
【浮月】『……うん』
来るかい? 今度の旅はもっと長くなるだろうけど。
【浮月】『うん!』
最後に一つだけ訊かせてくれ……どうして?
【浮月】『ここでいろんな人を見ているうちに……ね』
そっか。じゃあ行こう。
【浮月】『次は鬼ごっこだね!』
ははっ。見つかるといいな、鬼。
【浮月】『大丈夫だよ! あたしがついてるからっ!』
頼りにしてるぜ、浮月ちゃん。
【浮月】『手をつなごっ!』
うん、いいよ。
【浮月】『……で、どこ行こうか?』
おいおい……。
【浮月】『うぅ……じゃあ、あっちの方!』
ちょ、走らなくていいからっ!
【浮月】『いいのいいの』
【光一】「もげる! 手がぁぁぁぁぁ!!」
これは、夢と現の狭間にある不思議なお話……。
GOODEND。
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2008-04-08T10:27:43+09:00
1207618063
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死解(仮)
https://w.atwiki.jp/stupid_episode/pages/18.html
|参加中のシナリオ|miki ◆y5UvD8MGzo[[大きな杉の木の下で。]]|厨房 ◆K4AmyubbLo[[死解(仮)]]|
|F5 ◆xx.R7rYPp2[[パラレルワールド]]|F5 ◆xx.R7rYPp2[[お蕎麦屋さん逆繁盛記]]|F5 ◆xx.R7rYPp2摩天楼|
|ジュリエット ◆uS0wTV.wKI[[秋の世界]]|カフェオーレ ◆igAbCY3D3w[[オンリバティー(仮)]]|[[木十豆寸 ◆itsukiyD4I]]|
|いちご ◆qTdZoiFI1A[[SHM-世界の平和を守ります-]]| | |
名前:厨房 ◆K4AmyubbLo 投稿日:2008/02/10(日) 00:45:04.72 ID:xWDM4LAh0
それは寒い寒い真冬の夜の事……
俺は自分が殺された事に気付いた。
体から流れていく血液が厭に幻想的で一瞬、夢じゃないかと疑ってしまうほどに綺麗だった。
このまま死んでしまうのもいいかと納得して、ゆっくりと瞼を閉じた。
「あの……大丈夫ですか…?」
そんな声が掛けられた。
この状況が大丈夫なはずないだろっと怒鳴ろうと瞼を開いた瞬間、
そこにいたのは巫女装束の女の子だった。
夢が醒めた。
だが胸についた傷跡が夢じゃない事を何より証明していた。
幼なじみの女子や男子などと生活をしていく中であれは本当に夢だったんじゃないかと
納得し始めていた。
そんなある日の通学途中、俺は彼女がスーパーから出てくるのを目撃した。
>ネタバレ注意です
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それは寒い寒い真冬の夜の事……俺は自分が殺された事に気がついた。
体から流れている血液が厭に幻想的で一瞬、夢じゃないかと疑ってしまうくらいに
幻想的だった。
不思議と痛みはなく寒さで痛覚が麻痺しているのだろう。
右胸から流れ出した血液の量から、もう助からないだろうと納得して眠ってしまう事にした。
瞼を閉じると、体だけが死んでしまい頭だけが生きているのかと錯覚してしまう程に体は動かない。
―
――――
――――――
もう二時間程経ったろうか?
それとも、まだ五分程度しか経っていないのか…いずれにしても俺が死ぬのも時間の問題だろう。
???「あのう……大丈夫ですか?」
そんな声が掛けられた。
この状況が大丈夫なわけないだろっと怒鳴ろうとしたが喉も口も動かない。
???「今、治しますね」
しかしそんな事もお構いなしに声の主はおかしな言動をする。
俺を助ける?この声の主は医者か何かだろうか?
だが声だけ聞くに少女それも俺と同世代か少し下程度だろう。
???「じっとしててくださいね……」
俺の開かない目にほのかな明かりが入った。
胸の傷口が暖かい……しかも今までかろうじて動いていたであろう心臓が少しずつではあるが
脈動を取り戻してきたのが分かる。
???「これでいいかな……眠くなると思いますけど目覚めたら元気になってるでしょうから安心してください」
その言葉通り、眠気がでてきた……最期に彼女の顔を見ようと必死で瞼を開いた。
俺の命の恩人であろう少女はあろうことか巫女装束を纏っていた。
――――――
俺は布団を跳ねとばして目覚めた。
光一 「あれ今何時だ?」
時計を見ると午前六時半……何かがおかしい。
そう言えば昨晩はいつ布団に入ったんだっけ?
しばらく思考を巡らせてみる…ない…昨夜は布団に入った記憶がない。
俺の昨日の最期の記憶を探ってみる。
俺は友Aと街に遊びに出かけて……帰る途中に……何が起きたんだっけ?
途端に能にちらつく昨晩の記憶、血……路地裏……巫女、
ミシリと頭に亀裂が入ったような痛みが走る。
頭が割れる痛みに能は何度も昨晩の光景が繰り返される。
無理やり思考を中断させる。
光一 「ハァ――――ハァ――」
呼吸を落ち着けて上着を捲り、右胸に触れてみる。
ミミズ腫れのような傷跡が残っている。
光一 「夢じゃ……ない…のか…?」
しばらく呆然としていた。
時計を再び確認してみると、もう7時だった。
学校に行くまでの登校時間は30分、学校は8時からなのでどんなに遅くても、
後、三十分以内で準備しなければならない。
昨晩の事は学校で友Aに聞けばいいと無理やり納得して登校準備をする事にした。
急いで準備を終わらせて、ジャムやマーガリンを塗っていない食パンを口に詰め込み、
無理やり牛乳で流し込む。
昨日の事であまり食欲はないが腹に何か詰め込んでおかなければ、
昨晩は何も食べてないのだから倒れてしまうかもしれない。
携帯を開き、時刻を確認する…七時二十五分
歩いていっても間に合うだろう。
扉を開けて外へ飛び出す。
どんなに気分が優れなくとも、朝の空気は、
すがすがしい。
今の憂鬱な気持ちさえ流してくれそうな気がする。
俺以外の生活の痕跡がない家の鍵を閉める。
そうして一人で学校へと歩き始めた。
2008-04-08T10:16:57+09:00
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