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与謝野論文について、国籍法の観点から

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shinkokuseki

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 自民党内で永住外国人への地方参政権付与が大きな政治テーマになったことがある。
10年ほど前、1999(平成11)年から2000年にかけてだ。

~中略~

 ■「与謝野論文」が転機
 「与謝野の論文を知っているか」
  2000年9月、自民党担当としてこの問題を取材していた記者に声をかけたのは、
 反対派の代表格で参院議員会長の村上正邦氏(77)だった。
  与謝野馨(かおる)氏(71)が自民党選挙制度会長として調査会で
 検討を重ねた結果をまとめていたことは知られていた。
  しかし、一部執行部だけの「極秘」扱いになり、
 与謝野氏が00年夏の衆院選で落選したこともあって、日の目を見ないままになっていた。

 「この論文を読めば、外国人参政権の問題点がよくわかるはずだ」

  しばらくして、論文を入手した。
 村上氏の言う「問題点」が何を指すかがクリアになった。
  そして、論文を産経新聞に掲載すると、自民党内での議論は沈静に向かった。




問題の「与謝野論文」
※2000年9月30日の産経新聞(東京版)朝刊から書き写し転載されたものらしい。




管理人=文案まとめ人より、編集人164氏へ依頼、以下。

上記「与謝野論文」を読み、国籍法の観点からの私見を提起してみてください。
よろしくお願い致します。


---以下『与謝野論文について、国籍法の観点から』-164◆aGzgb/DTYc作成-----

■本論一.について
 地方公共団体も国の統治機構の要素であるから憲法上の問題と捉えるとしている。
憲法は前文および1条で国民主権を定めていることから、「国民」たる要件(同10条)が問題となると考えられる。
国民たる要件は国籍法で定められている。

■本論二.について
 憲法15条1項に関して、「日本国籍」を有する人に限って参政権を「固有の権利」として規定していると解釈し、
従って、外国人参政権を予定するものではないとしている。
 国籍法では、2条で出生による国籍の取得、3条で認知による国籍の取得、
および4条ないし9条で帰化による国籍の取得を定めている。
 また、11条1項で自己の志望による国籍の喪失、同2項で外国籍を有する国民がその外国の法令により、
その国の国籍を選択した場合の国籍の喪失、12条で出生により外国籍を取得した国民で国外で生まれた者につき、
戸籍法に定める国籍留保の意思表示を欠く場合の国籍の喪失、13条で外国籍を有する国民の法務大臣に対する届け出による国籍離脱、
および15条3項で外国籍を有する二十歳未満の国民が14条に定める国籍選択を行わず、
15条1項に定める法務大臣の国籍選択の催告に従い日本国籍を選択しない者および、
催告から二週間以内に意思表示をしない者の国籍喪失を定めている。
 従って、主権を有する「国民」となるのは、2条から9条までのいずれかの要件を満たし、
なおかつ11条ないし13条および15条3項に該当しない者がその範囲となる。また国籍法上、
「国民」の中には、日本国籍と外国籍を同時に持つ者が含まれることとなる。これはいわゆる「重国籍者」と呼ばれている。
 なお、「国民」以外の者を「外国人」としているが、これには外国籍のみを有する者および無国籍者が含まれると考えられる。

※文案まとめ人からの注釈→我が国の国籍法は、国籍唯一の原則であり、
正規の国籍法においては「重国籍者」は存在し得ない。
我が国に、「重国籍者」の存在があるのは、ひとえに、
昭和60年1月1日以降の歴代法務大臣の職務権限の不履行及び法務大臣としての職務怠慢、使命感の喪失、
および、国家への無作為の背信であり、法務省民事局の国籍行政への機能麻痺が原因である。

■本論三.について
 地方公共団体も国家の統治体制の一側面にほかならないとし、
地方公共団体においても国と極めて類似の「公権力の行使」および公の意思形成の過程が存在するとし、
国・地方を通じての統治の原理は「国民主権」という考え方に基づいており、
ここでいう国民とは日本国籍を有する者を指している、とする。
 ということは、やはり地方公共団体における参政権(憲法93条2項)についても、
国籍法の定める上記の範囲の「国民」に限って保障されているということとなる。

■本論四.について
 平成7年2月28日の最高裁判決では、国民主権の原理から憲法15条1項の規定について、
わが国の国籍を有するものに選挙権を保障したものであるとした上、
地方選挙権を保障した憲法93条2項についても国民主権の原理と地方公共団体が、
わが国の統治機構の不可欠の要素であるとの理由で、同項にいう「住民」とは、わが国の国籍を有し、
区域内に住所を有する者であり、外国人は含まれないと述べていることは注目すべきである、としている。
 同判決傍論に関しては、外国人の地方参政権の付与は憲法上禁止されていないと述べているが、
これを許容する条文もなく、憲法15条1項の「国民固有の権利」とも相容れないのではないか、
また、同判決の言う「公共的事務」について「公権力の行使」が含まれると解されるので、
「国民主権の原理」と相容れないのではないか、との2点を指摘している。
 ということは、地方公共団体における参政権についても、国における参政権同様、
外国籍のみを有する者および無国籍者には保障されないこととなる。

■本論五.について
 国民の参政権は国・地方を通じての選挙権・被選挙権を指し、
憲法が一体として国民に保障しているのであって、分割できない、
上記判決も選挙権と被選挙権は表裏一体のものとしている、と述べている。
 ということは、国および地方公共団体における選挙権・被選挙権は、
外国籍のみを有する者および無国籍者には保障されないこととなる。

■本論六.について
 平成8年11月の自治大臣談話および昭和28年3月の内閣法制局の見解において、
公権力の行使又は意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには日本国籍を必要とするとされていることを挙げ、
地方議員あるいは首長の公権力の行使又は公の意思形成へ参画するものであることを勘案し、
さらに国民主権の原則に照らせば、以上のような者の選任権を持つ者は日本国籍を有する者に限られていると考えるべきである、としている。
 ここに、「公権力の行使又は公の意思形成へ参画する公務員」というのは、国においては国会議員、
地方公共団体においては地方議会議員、都道府県知事および市区町村長がこれにあたると考えられる。
 ということは、国会議員、地方議会議員、都道府県知事および市区町村長の選挙権および被選挙権は、
日本国籍を持つ者のみに保障され、外国籍のみを有する者および無国籍者には保障されないということとなり、
これが与謝野論文の本論の結論である。

■小括
 国民主権の原理から、国会議員、地方議会議員、都道府県知事および市区町村長の選挙権および被選挙権は、
日本国籍を持つ者のみに保障され、外国籍のみを有する者および無国籍者には保障されないとの結論は、
法の解釈、裁判例および行政庁の見解に鑑み、きわめて妥当であると考える。しかし、以下の問題点が指摘できる。

■本論の問題点
 国民主権の原理から、国会議員、地方議会議員、都道府県知事および市区町村長の選挙権および被選挙権は、
日本国籍を持つ者のみに保障され、外国籍のみを有する者および無国籍者には保障されないとの結論は、
法の解釈、裁判例および行政庁の見解に鑑み、きわめて妥当であると考える。
 しかし、日本国籍を持つ「国民」の中には、外国籍を同時に持つ重国籍者が存在する。国民主権の原理から言えば、
重国籍者も「国民」である以上、参政権を保障すべきであるとの結論を一応導きだすことができ、
現に重国籍者も居住する地方公共団体に外国人登録でなく住民登録されており、
住民登録台帳から作成される選挙人名簿に掲載され、選挙権を行使している。
 また、被選挙権についても、重国籍者にこれを与えないとの規定は存在しないため、
重国籍者も被選挙権を行使できる。
 一方、重国籍者は、その有している日本以外の国籍の国の法律次第では、
その他国においても選挙権および被選挙権が保障され、行使できる可能性を持つ。
複数の国で選挙権被選挙権を行使できるということは、国籍法14条および15条の規定があることから、
わが国憲法15条1項の予定しないところであると考えられるうえ、憲法14条1項の定める法の下の平等にも反する結果となる。
 また、国民主権の原理とは、憲法前文のいうように、
「国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、
その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである」
との考えに立脚する原則であり、ここにいう「国民」に重国籍者が含まれるとすると、
複数の国籍を持つ者であるが故に、国の「主権」の所在が不明瞭となる結果となり、
ひいては「国民」および「国」の概念がゆらぎ、憲法をはじめとする社会秩序の混乱が生じる懸念がある。
 世界に多数の国家が実体として存在する事実から考えて、これは我が国のみならず全世界の問題でもあるといえる。

■問題点の解決試案
 これらの問題について、若干の解決を試みた。
 要するに、複数の国で参政権を行使できるということが問題の骨子であるため、
合理的にそれらを制限すればよいのではないか。
(一)
 重国籍者が、他国において選挙権または被選挙権を行使している場合、
我が国においてはそれらを行使することができない旨の規定を設ける。
(二)
 選挙権に関し、重国籍者の投じる票を、1をその有する国籍数で割った数として計算する旨の規定を設けると同時に、
被選挙権に関し、他国において被選挙権を行使している場合には、我が国においては被選挙権は行使できない旨の規定を設ける。

■その他の問題一.について
 相互主義との関係については、事柄の性質上相互主義にはなじまないと述べている。
 確かに、現状においては、参政権については国の主権に関する事柄であるため、相互主義にはなじまない。
 しかし、上記問題点の解決試案(二)を採用した場合、各国間でこのような条項の条約を結ぶことにより、
選挙権に関しては重国籍者の有する票は合計1票のみとなり、また、被選挙権を行使できる国は1国のみとなり、
重国籍者に関する問題点が解決できる可能性があろう。

■その他の問題二.について
 諸外国の例との比較は直接の参考とはなりえないとしている。
 これは、国の歴史がそれぞれ異なるものであることに加え、選挙制度が国により異なるうえ、
人口、経済状態、居住する外国人の数およびその国籍、永住外国人の数およびその国籍等の社会状況が異なることから、
当然の結論であると考えられる。

■その他の問題三.について
 略

■その他の問題四.について
 長い間居住していることとの関係について、日本国籍の取得が容易になることはあっても、
参政権との直接の関連は見い出せないとしている。
 与謝野論文の述べるように、国籍法では、5条1項1号で引き続き5年以上日本に住所を有することを帰化の一要件としているほか、
簡易帰化の要件として、外国人のうち日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所か居所を有する(6条1号)、
引き続き10年以上日本に居所を有する(6条3号)等の居住期間の要件を定めているため、
長期間わが国に居住する者にとっては帰化が容易になることは事実である。
 しかし、国籍法の規定に基づき帰化すれば参政権が得られるのであるから、
居住している事実を以て参政権を保障するということにはならないと考えるこの結論は妥当であると考える。

■その他の問題五.について
 法の下の平等との関係、外国人の人権との関係について、
参政権について外国人にこれを認めないとしても法の下の平等に反するとは解されていないし、
 また、日本国民に限って保障されているものと解されていると述べている。
 これについても、いわゆるマクリーン事件(最高裁昭和53年10月4日判決;外国人の政治活動の自由が問題となったもの)において、
法の下の平等の原則は、特段の事情のない限り外国人にも類推されることとなっており、
憲法第三章の基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民を対象としていると解されるものを除き、
わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶとしている。
 法の下の平等を定める憲法14条1項は、全ての差別を禁止するものではなく、
不合理な差別を禁止するものであることから(最高裁平成7年7月5日判決等)、
外国人に参政権を認めないとしても、憲法自身が国民主権の原則を採用している以上、
それは不合理な差別とはいえない。また、参政権はやはり国民主権の原則から、
権利の性質上日本国民を対象としていると解されるものであるといえる。従って、この結論も妥当なものであると考える。

■結論についてー総括
 現段階では、「外国人の地方参政権問題」には憲法上問題があると考えざるを得ない、
従って、拙速な結論を出すことは適当でないと述べたうえ、憲法調査会で議論を尽くすのも一つの方法であろうと述べている。
 また、日本に居住する外国人に対する地方行政のあり方については、
必要な場合には、外国人住民の考え方、要望等を積極的に吸収する仕組みや方法を、
各々個別の地方公共団体が招来に向かって工夫することも考えられるべきであろうと述べている。
 これらの結論は、すでに述べたように妥当なものであると一応考えられるが、
憲法10条の問題が等閑視されているため、上記のような解決試案や、
国民たる要件を定める国籍法の規定について併せて議論を行うことも必要なのではないかと考える。

※以上『与謝野論文について、国籍法の観点から』・・・作成者、164◆aGzgb/DTYc氏
※赤字注釈・・・文案まとめ人
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