1980年代のバラエティヒーロー史です。

2.1 タケちゃんマンの誕生

1981年、『オレたちひょうきん族』(1981~89、フジテレビ)で、国民的キャラクターとなった超有名バラエティヒーロー《タケちゃんマン》が誕生し、フジテレビのバラエティヒーローワールドが本格的に発動しました。
漫才ブームの影響で誕生したヒーローで、ビートたけし氏のキャラクターの最高傑作ともいうべきキャラクターです。
内輪ネタを取り入れたギャグやかぶりもの姿に変身しての対決などで大人気を呼び、巨大ロボット《タケちゃんマンロボ》が登場したり、のちに《タケちゃんマン7》にパワーアップしたりとヒーローもののパロディ要素も多く取り入れ
ました。
他に、明石家さんま氏扮する《ブラックデビル》や《アミダばばあ》などの敵役、《アダモステ》や 《ホタテマン》、《牛の吉田君とそのお父さん》などの強烈な脇役のギャグも人気を呼びました。
ヒーローコントの基本的要素は“タケちゃんマン”で完成したといっても良いでしょう。

2.2 ’80年代バラエティヒーローいろいろ

『ひょうきん族』のタケちゃんマンが大ヒットした影響で、バラエティヒーローものに活気が戻りました。
アイドル系ヒロインコントバラエティ番組『ピンキーパンチ大逆転』(1982、TBS)に登場したスーパーヒロインコンビ《ピンキーパンチ》や、超マイナーな番組『笑ってポン!』(1983、TBS)のコントに登場するアトラクション用のウルトラ怪獣を送り込む悪のヒーロー《紅白仮面》などが誕生しました。

1982年には《宇宙三銃士スターボー》がコスプレ系アイドルかつアーティストの先駆けとして、『ハートブレイク太陽族』でデビューしたのもバラエティヒーローの歴史にとって重要です。

月曜ドラマランド』(1981~87、フジ)では有名な漫画のコメディドラマ化を活発的に行い、『意地悪ばあさん』(1981~87)や『あんみつ姫』(1983~84)がヒットし、『おニャン子捕物帖 謎の村雨城』(86)などTVゲームの実写版という変わり種も登場しました。
また『ひょうきん族』スタッフによる『心はロンリー気持ちは「…」』(1984~)は、不定期ながらも続編が多数製作されるほどの人気を集め、ひょうきんキャラやハートロンというヒーローも登場しました。『ゲゲゲの鬼太郎』(1985)の初の実写版は特に評価が高く、DVD化もされたほどです。

80年代中頃からオリジナルビデオ作品が作られるようになり、『地球防衛少女イコちゃん』シリーズ(1986~90、バンダイ他)が特撮ファンの間でヒットし、他にもお色気ヒロインものの『スターヴァージン』(1988、ポニーキャニオン)やビデオマガジンから誕生したヒーロー『電エース』(1989、バンダイ)も登場しました。

2.3 二人のお殿様

1986年4月、『月曜ドラマランド』枠で、『志村けんのバカ殿様』(1986~)の第1回が放映されました。
マンネリズムの美学を追求し、スラップスティック要素の強さをアピールすることに成功。結果、20年以上も期首特番で放映されるロングランとなり、バカ殿様は『全員集合』や『ドリフ大爆笑』時代から連綿と活動を続ける長寿バラエティヒーローとなりました。

一方、1986年5月に視聴者参加のゲーム番組『風雲!たけし城』(1986~89、TBS)が登場し、視聴者がバラエティ番組
でヒーローになれる要素で大人気を博しました。
たけし城の城主役・ビートたけし氏と家老のやりとりや“人喰い穴”のコントコーナーなど、ゲーム以外でも楽しめる要素を取り入れるなどエンターテイメント性も充実し、後年、海外でも大ヒットしました。
その影響で『ガムシャラ十勇士』(1987~88、NTV)などの類似コンセプト番組が登場しました。

いまひとつドリフターズ関連では『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』 (1986~92、TBS)が長年続いた『全員集合』の後を継いで放送開始し、大規模なロケーションや派手な演出による連続コント『THE DETECTIVE STORY』が人気を博し、『ひょうきん族』の独壇場を崩し、さらにはTVゲーム化されるほどになりました。
このころ『ドリフ大爆笑』では、大ヒットキャラ《雷様》が登場しました。
志村けんのだいじょうぶだぁ』(1987~93、フジ)ではメインキャラのひとつ《変なおじさん》のコントが黄金パターンに徹して、現在も『バカ殿様』でコントコーナーが設けられているほどです。

2.4 昭和から平成へ―バラエティヒーロー転換期―

昭和末期の1987~88年ごろから『火曜ワイドスペシャル』(1971~97、フジ)枠で、2つのコントバラエティーが単発特番シリーズとして誕生しました。
とんねるずのみなさんのおかげです』と『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』です。
両方に共通しているのは、ものまね主体のコントです。

前者では1988年3月、《仮面ノリダー》のコントが初登場して人気を集め、レギュラー化(1988~90)してからは番組のキラーコンテンツとして高視聴率に貢献しました。
ノリダーは子供たちの間では本家シリーズの『仮面ライダーBLACK RX』(1988~89、MBS)以上の人気を獲得しました。
替え歌ぽい主題歌やナレーションに中江真司氏の起用、そして小林昭二氏が本家同様立花藤兵衛役を担当するなど、パロディのこだわりを見せ、ノリダーはパロディヒーローの金字塔となりました。
石橋貴明氏扮する着ぐるみの《恐怖○○男》は、TV業界に着ぐるみを定着させたほどです。
パロディコントでは連続ものの《サンバーダード》や単発の《HOMOMAN》もありました。
他にも《モジモジくん》などのヒットキャラも登場し、全身タイツ人気に拍車を掛けました。

後者では“アニメ実写版劇場”というパロディコントコーナーで、山田邦子さんが一人数役をこなしました。
レギュラー化(1989~92)では様々なものまねキャラがムーブメントを集めました。

仮面ノリダー人気に便乗して、『ひょうきん族』では《かまへんライダー》というロケ企画主体のバラエティヒーローを登場させました。
パオパオチャンネル』(1987~89、テレ朝)では、パロディヒーローの《セキネ大使》がノリダーに続くように登場しました。
1989年秋の『全員出席!笑うんだってば』(1989、NTV)の《地球戦士フリルマン》では、同局で1972年に放映された『突撃!ヒューマン!!』のパロディらしく、公開録画で観客参加要素も含まれている異色作でした。

タグ:

歴史 80年代
最終更新:2008年01月26日 22:41