夢を見た。とても素敵な、夢のような夢だ。
 悪い魔法使いに囚われていたお姫様を、本当に王子様が助けに来てくれたのだ。
 …ちょっとガラが悪くて品性にも劣る、図体でかい黒馬の王子様だが。


まどろみの中に朝陽を感じて、気だるさに瞼を持ち上げる。
とても素敵な夢を見た気がしたが、いつまでも惰眠を貪るわけにもいかない。
山城の朝は早いからと、やたら眠いながら起きようとして、
――目の前のチョコレート色の壁に気がついた。

「おはよ、リュカ」

…甘く耳をくすぐる声に、『ああこれは夢の続きなのか』と、極めて自然に得心する。
そうして再び瞼を閉じた。
何かやたらと温かい、目の前のあんかのような温もりもまた夢の証拠だろう。
全裸の肌寒さに熱を求め、当然の道理としてそれに抱きつく。
届く心音のような拍動も、眠りを誘うに心地よい。
…が、同時に酷く喉が渇く、ヒリヒリのあまり唾を飲むのさえ痛いのに気がついた。
全身がだるく、身体は睡眠を求めているのに、これではゆっくり眠れない。
「りゅか、りゅかー」
まるで動物にするかのように、人差し指での顎のこちょこちょもくすぐったい。
夢にしてはやけに生々しい感覚に、とうとう耐えかねて目を開いた。

「おはようリュカ、朝だぞー」
「………」

 来るはずがないだろう王子様など。絵本や童話の中じゃあるまいし。
 不幸から一夜にして幸福の絶頂だなんて、そんな上手い話が転がっているはずがない。

「どした? 眠い? それともだるい?」
「………」
覗き込まれながら尋ねられ、辛うじて頷くことだけは出来た。
「まぁ昨日はあんなに激しかったもんな。…起きれる?」
「………」
促されるがまま、のろのろと身体を動かしてみる。
腕と上半身だけは動いたが、でも腰から下は完全に言うことを聞かなかった。
結果ぱたむと重力に押し戻されて、もう一度シーツに埋まってしまう。
「…だ、だいじょうか? どっか具合悪かったり?」
流石にそれを見て不安になったのか、おっかなびっくりの相手の声。
「……のど、が」
普段からの侍女の使いがてら、それだけは何とか答えられた。
というか本当に喉がカラカラだ。痛い。痛い。水。水。

「待ってて」
ひょいと寝台から抜け出した巨体、緩慢な身体を動かしてその行く末を追う間もなく、
ばたばたと足音を立てて、たちどころに何か抱えて戻って来た。

「ほら、蜂蜜酒」
着付け薬としても使われる琥珀色の液体が、リュカの目の前で朝陽に揺れる。
そのままでは杯を取り落としてしまいそうな彼女のために、
男は背中を支えつつ、ゆっくりと杯を口元へと運ぶのを手伝ってやった。
信じられないくらいの、至り尽くせり。
度数は低くも糖度の高い液体が、熱く喉を潤わせながら空っぽの胃に染み渡る。
徐々に意識が浮上してくると共に、そんな背中を優しくさすり、時にぽむぽむと叩いてくれる、
相手の手の大きさ温かさにじんわりと心がまどろんだ。
同時に褐色、陽の中に尚分かる目前の赤銅色に、じくじくと背徳の歓喜が身を焦がす。
――ああ、そうだ、思い出した。

「大丈夫? 水も飲む?」
「…あ、はい」
より大きい銀の水差しから、より大きな銀杯になみなみと水を注がれて、
今度はしっかりと自分の手でがぶがぶ、喉に染み付いた蜜の甘さを洗い落とす。
…結局蜂蜜酒2杯と水3杯、胃がたぷたぷになるまで水分を補給して、
ようやく一息つくと、改めて目の前の男に向き直った。
「……ロア?」
「ん?」
確認するように相手の名前を出すと、男が『何?』とでも言う風に小首を傾げる。
その仕草。その赤色の髪。その褐色の肌。その金色の目。
夜の角灯の光の中でなく、朝の陽光の中でだからだこそより分かった。

――ああ、ロアだ。夢じゃない、夢じゃない、夢じゃない。

「…ロア、ロア、ろあ、ろあ!」
「って、おいおいおいおい、なんだよ急に」
抱きつかれて粗雑に、だけど明らかに楽しげな声で男が困ったように身じろぎする。
「あ、ご、ごめんなさい、急に」
「…え、いやうん、いいんだけどさ、別に」
それに『ぶしつけだったかな』と急に少女が気勢を弱めたのを見ると、
男はそれはそれでまた困ったような顔、持ったままだった銀の水差しを小机に置き、
…そうして改めてリュカを抱き締めると、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「よし、…リュカ、リュカ、りゅかー」
「……はう」
瞳の光を滲ませて、されるがままに抱きつく少女。
記憶以前に、身体が、魂が覚えていた。
その手の大きさ、胸板の厚さ、体温の高さ、撫で撫での優しさ。
――自分の新しいご主人様。


しばらくじゃれ合い、たっぷり抱擁した後身を離す。
「そうだ、なぁ、腹減らない?」
「……ん」
言われて、そういえばとリュカも空腹に気がついた。
昨夜あれだけ激しい運動をしたのだから、まぁ無理もないといえば無理もないのだが。
「…えっと……」
でも、とリュカは辺りを見回す。

普段は必ず控えた侍女達の姿はそこになく、ただ朝の静謐さが場を満たすだけ。
たとえ部屋の中にはいなくても、隣室には必ずお付きが控えている、
普段は卓上のベルを鳴らせばすぐにでも直参するだけに、この静けさは異例だった。

リュカは、それでも貴族の家の子女である。
かつてはペレウザ子爵家の、昨日まではヴェンチサ侯爵家の。
自分で料理など作らない。菓子さえ焼かず、果物の皮、酒瓶の蓋にさえ手をつけない。
そういうのは卑女や侍女の仕事たる領分で、
貴上の婦人は触れるべきでないと、厳しく教えられて来た。

「……あの、誰か呼んだ方がいいですか?」
となれば当然小首を傾げて、恐る恐る相手に伺いを立て、
「ん。大丈夫、それなら気にしなくていいよ、――俺がやるから」
「……え?」
男の何気ない言葉に、驚いてぽかんと口を開けた。
「よっと」
再度寝台から外に出ると、腰布さえ身に着けないでのしのしと部屋の隅に歩く。
「しっかし爺は準備がいいなー」などと呟きながら、おもむろに卓上の果物籠を持ち上げて。

「じゃーん!」
「………」

……そうやってじゃーん!と果物籠を掲げることに、
戦の姫――何の意味があるんだと、極めて冷静かつ白い目でツッコむわけでもなく。
貴の姫――馬鹿丸出しの行動に、眉を顰めて扇子で口元を隠しもせず。
艶の姫――隠そうともしない股間の立派に、劣情を覚えて目元を緩めるでもなしに、
『すごいなあ、楽しそうだなあ』と、単純にリュカはそう思った。

行動力がすごい、やたらと元気だ、何でも楽しそうだ、すごく主体性がある。
…何でも言われるがまま、世界の、社会の、他人の決めた律に従い、
耐えて、弁えて、命じられて生きてきたリュカにとって、
それは野蛮だとか粗暴だとかを通り越し、とても眩しく映るものだった。
その膨大な活力とエネルギーに、だからこそ魅せられ心酔もした。

…逆に言えば、ロアでもそこまでは壊せなかった。
生誕の事情も加わり、生まれた時からの『産む器械』『政略結婚の道具』としての教育。
受け身、従属する側であるということは、
完全にリュカという存在の根幹を占め、その人格の基底部分を成してしまっていた。
男子の生まれない家で男として育てられたとか、
ある程度まで育ててからの屈折、矜持を憎悪や力への渇望などに変えれていれば、
毅然とした女騎士や、魔性の妖婦になれてただろうが、あくまでそれは『if』の話。

…そうしてそんな彼女とは全く逆の、人格形成を辿った少年はというと、

「これ、使ってもいい?」
「え? …あ、はい」
絨毯の上に落ちていた、見覚えのある立派な短刀を拾い上げ、
寝台に腰掛けると実に手馴れた手つき、くるくると果物の皮を剥き始めた。
「ロア、凄いですね」
「こんなん大した事ないって」
素直な感嘆を漏らすリュカに対し、謙遜はするがまんざらではなさそう。
たちまち皮を剥き輪切りにスライスすると、柔らかい果肉をお行儀悪く指で摘み、
「ほら、あーん♪」
「あ、あーん…」
満面の笑顔で、腰が抜けてる少女に対して差し出した。
…鮮血どころか果汁塗れでべとべとの短刀が、なんだか非常に恨めしげだ。

そうしてもきゅもきゅと、果汁したたる果肉の甘さを噛み締めつつ、
「あの……」
「ん?」
差し出された手前――要求されたら反射的に応じてしまうのが良いわんこ――
食べてしまってから言うのもなんなのだが。
「…これって普通、逆…じゃないですか?」
更にもう一切れ差し出される果肉を前に、リュカは極めて真っ当な疑問を述べた。

耳掃除。膝枕。看病。あーん。
すべからくするのが女の役目で、してもらうのが男の望み、……だとばかり思ってたのだが。

「いいんだよ別に、気にすんな気にすんな!」
晴れやかな笑顔を浮かべて、実に幸せそうに『はい、あーん♪』してくる少年。
「で、でも、ロアも食べないと……」
「俺はいいんだよ、男だし、身体も大きいし、お前よりずっと体力もあるから!」
申し訳ない気がして遠慮をしてみるも、それも自信満々に断られる。
確かに向こうは凄い元気、へばってしまっているのは己の方で、
「それに、疲れた時は甘いものが一番なんだぞ!…って親父が言ってた!」
「…そ、そうですか」
――それに物凄い幸せそうな笑顔で『あーん』して来るロアを見ていると、
リュカの方もなんか、段々断るのが申し訳なく思えて来て……

……もぐもぐ、もぐもぐ。
「おいしい? うまい? 元気出てきた?」
「…は、はい、おかげさまで……」
ああー断れない。わんこは今ものすごく相手の勢いに流されてるよ、超押しに弱いねぇー。

そうして自分も最後の一片を口の中へと放り込み、
果汁で汚れた己の指をぺろりぺろりと舐めていた眼が、そこでピーンと見開かれた。
「そーだ、食べさせ合いっこしようぜ!」
「…た、たべさせあいっこ??」
期待と興奮に振り返られた顔に、何でだかドキドキしながら反復するリュカ。
「…それならもう、今やってるのがそれに当たるのでは……」
「バカ、そうじゃなくてさ、『口移し』だよ、口移し!」
バカにバカって言われつつ、ロアの力説に己の知識と『口移し』という単語を照会し……
「…あの、私、自力で食べられないほど衰弱はしてないし、気絶もしていませんよ?」
「いや、いいんだって! 別にそうじゃないけどやるんだって!」
生真面目に答えて、それに対するロアの返答にまた困惑する。

「あーもう、とにかく俺がチューするから、そしたらお前も食べる、いいな!?」
「え、えええ??」
とうとうロアが業を煮やし、また新しい果実の皮を剥くと裂いてもぐもぐ噛み砕き出す。
そうして近づけられた相手の唇を、――勿論わんこが拒めるはずもなかった。

(んっ……)
覚えている柔らかい感触、そしてそれを割って押し込まれるすり潰された果肉。
甘味に唾液のほろ苦さが混じり合い、そこに相手の舌の感触が加わる。
ぐいぐい押し込まれる感覚と、ぴちゃぴちゃちゅぷちゅぷした感覚。
飲み込むのを促すように喉をさすられては、もう飲み込まずにはいられない。
「はふ…」
唇を果汁で濡らしながら、離れる唇に恍惚とした視線を返す。
そんなリュカの半開きの唇に、つい、と新たな欠片が押し当てられた。
「ほら、今度はそっちの番な」
「………」

昨日までの彼女なら、『どうしてこのようなことをしなければならないのですか!』と、
顔を真っ赤にして立腹していたかもしれない、体面や立場の命じるままに。

…もきゅもきゅ噛んで、精一杯背伸びすると自分から男の唇に唇を合わせる。
親鳥から雛鳥への餌の施与というよりは、手本に習う子を親が微笑ましく眺める構図、
零れた果汁が大量に女の喉を伝い落ちたが、それでもロアは幸せそうだ。
ぱさりと、リュカの身体を申し分に覆っていた薄布が落ちる。
お互い生まれたままの姿だったが、女がそれに恐慌を来たす様子は微塵もない。
「あ、あの……これ……」
で、そうやって何とか口移しを終えたリュカが、喉元も拭わぬままに萎縮して言うには。
「ん?」
「な、なんだかこれ……愛人同士がやることみたいな気がするんですけど」

そうなのだ。

「だよな! やっぱりこういうのって燃えるよな!」
「……は、はあ」
なのにそうやって意気衝天とガッツポーズを決められると、
一瞬で背徳的なイメージがぶっ飛ぶのはなんでだろ。
「こういうのを一度やってみたかったんだよ! こーいうのに憧れてた! ラブイチャ!」
「…ら、らぶいちゃ??」
またリュカの語彙にない単語が出て来た。
『らぶいちゃ』。
…下々の者が使う言葉は奥が深いなぁと、混乱した頭に感心する。
「俺も戦、戦で割とセーシュン犠牲にして来た方だし、こーいう所で取り戻さないとな!
それこそ純愛ラブラブカップルがやるような、あんな事やこんなロッマーンスも……」
「そ、それは結構だと思うんですけど」
でも、だ。

「…あの、これ、陵辱とか戦利品とか、そういうの、です、…よね?」
そういうのじゃないのか? いわゆるよくある。
「? そうだよ?」
そういうのらしいよ? いわゆるよくある。

「…え? だって俺、割と無理難題とか無茶な要求してない?」
「……いや……」
そりゃ確かに、ハードル高いことは要求されまくってる。
そりゃ確かに、やたらと恥ずかしい、いわゆる『辱め』と呼んでいいことはされてる。
「拒否権無しで犯したよな? 優しくこそしたけど」
「……まあ、そうなんですけど……」
犬扱いも受けたし、腰掴んでまるで道具みたいにズコズコもされた。
でも、なんだ。

「てかいいじゃんそんなん、よくあることじゃねーの? こういうグダグダの乱世的には。
戦利品すなわち妻だとか、強奪愛のち純愛、ところにより愛人いこーる本妻とか」
「…や、そ、その理屈はおかしい! その理屈はおかしいですよ!」
おかしいおかしい。ないないないない。あるあるねーよ。
確かにすっごい悲惨な時代だし、すっごい暴力と権力で理不尽が公然と通ってるけど、
でも百歩譲って『戦利品=妻』は成り立っても、『愛人=本妻』は成り立たない。
その属性は同一時間上、同一存在内には同居し得ない、先生その公式間違ってます!

「でも、あるんだろ? なんか聞いたぞ? 帝国でも皇帝とか大公様とかが、
格下貴族とか部下の妻が気に入って召し上げちゃう、権力を傘に強奪するとか」
「…………それは……まぁ……ありますけど」
あるねぇ帝国的に。めっちゃ専横と横暴の極みなのに、ホント公然堂々とやられるよね。
「で、そうやって引き裂かれた奥さんが、元夫を思って泣いて暮らすかと思えば、
恥を忍んで身体差し出すどころか寵姫化でしょ? ガッツリ皇宮で権力獲得なんだろ?」
「…………いや……その……」
あるねぇ野心ある女的に。むしろ元旦那の方が泣いてしょんぼり隠居したりすんの。
「そーいうのは別に売女扱いされないよね? 尻軽女呼ばわりされない、…なんで?」
「………………えと……」
されないねぇ権威による公然合法の乗り換えな以上。経過自体は変わんないのに。

「言うじゃん、『男と女の関係は分からない』とか『秋の空』とか。
物凄い頭いい賢者とか学者まで言ってんだ、これもそーいうのなんだよきっと」
「え、…ええええ???」
そりゃ、確かにこの関係が複雑怪奇で訳分かんない状態なのはリュカも認める。
異常でおかしい、何か褒められたことじゃない、売女的な経過だとも思う。
…でも、本当にこれはそんな、ややこしくて複雑な問題なのか?
何か違うくないか? どっかで論点が摩り替わってないか?
「『えきぞちっく』で『あばんぎゃるど』な『らぶろまんす』なんだよ。乱世ではよくあること」
「う、あ、あぅ」
確かに彼女にもよく分からないが、でも、でも、でも、でも――

「…んうっ?」
――悩む彼女の唇が塞がれ、またちゅくちゅく果実が入ってく来た。
溢れる甘さと柔らかな舌が、渦巻く思案を更に乱す。
それから解放されたと思えば、今度はさも『俺にもしてして』と言いたげな顔だ、
抗えないから、要求に従わないわけにはいかないから応じて移す。
何度も何度も。ぴちゃぴちゃぺちゃぺちゃ。
…そうすると段々頭がぼうっとしてきて、なんだかどうでもよくなってくる。
こぷこぷ果汁を口端から零し、でもロアが正しく思えてくる。
動物がじゃれて来るようなその求めは、それくらい力強くもまっすぐで、熱い温もりに満ちており。

最後の一欠片になった時唇が重なり、同時にぐっと抱き寄せられた。
離れようにも背に回された腕はビクともせず、
歯茎を嬲り、口腔を吸われ、くちゅくちゅちゅうちゅう舌を絡め合て互いの唾液を混ぜ合わせる。
ふぅふぅと鼻息が荒くなって来ても止めず、女がピクピクして来てもまだ止めない。
女の乳頭が痛々しいくらいに尖り出した頃になって、
ようやく拘束する腕の力を緩め、糸を引かせながら唇を解放した。

「ふあぁ……」
果実とは別に甘さにまいってしまっているリュカの耳元に、ロアは唇を近づける。
「――やっぱりリュカが一番美味いな」
「…っ!!」
激昂して扇子を投げつける、あるいは冷蔑をもって睨みつけるべきな下世話な発言。
なのにリュカの背筋はびくんと反応して、頭はじん…と痺れてしまう。
(あ……)
抜けた腰にも、自身の花弁と蜜壷がひくひくと痙攣して震えるのが分かった。
それは相手の方も同じだったらしい。

「…な? していい? していい?」
「ふぇ」
しきりに彼女の脇腹から腰に掛けてを擦りながら、ねだるように聞いてくる。
「出来そう? だいじょぶ? 疲れてない? ヒリヒリしない?」
こちらだけを心配してくる言葉の中には、彼女が最も疑問に思う心配事項が含まれておらず、
「…そ、そっちこそ大丈――」
「いや、俺は全然だいじょぶだから!」
普通に異常だと彼女が思うことは、極めてあっさりと流された。

「てかホント、昨日があんなだし、ヒリヒリしないの? ズキズキしてない?」
「…ひ、ヒリヒリズキズキはしてないですけど……」
処女を奪われた日と、それからしばらくの日々を思い出す。
あの頃はまだそんな事もあった、擦り剥けたり炎症を起こして塗薬されることもあったが、
「…力が入らなくて、まだ何か挟まってる感じがするけど……痛くはない、です」
正直に答える。
腰は抜けてしまって感覚もないが、でも痛くはない、ちょっとぼうっとする程度だ。
「そっかあ! てか頑丈だな、こんなちっこいのに凄いタフだなお前!」
「う……」
皮肉や蔑視の欠片もなく、純粋に凄い凄いと尊敬され、少女の顔が羞恥に赤らむ。
綺麗な桃色でなくて赤黒い、使いこまれた自分の花びらが、
まさかこんな形で喜んでもらえる日が来るなど、想像してもいなかったのだ。

「てかさ、俺今思いっきり努力して五分勃ちぐらいに抑えてんだけど、
この状態で挿れるんなら割と簡単だと思うんだよ、完全に勃っちゃったら辛いけど」
「…う、あう」
促されて示されるのを見れば、確かに起き上がりかけの黒い大蛇が見える。
…そうしてる間にもリュカの視線を感じてなのか、少しずつ鎌首をもたげつつあるが、
「挿れていい? 何か濡れてるし、今の内に急いで挿れちゃっていい?」
とにかく緊急を要する事態だということだけは理解でき、
「いっ、いいですよ、だいじょぶですっ!」
本当は半分も分かってない、思いっきり勢いに流されつつ、リュカは承諾してしまった。

たちまち、そうしている間にも五分から六分勃ちになりそうな大蛇が掴まれると、
あれよあれよとリュカの脚がひっくり返されてまんぐり返され、
「はぐっ」
露になった潤む膣口に、あてがわれるも時が勿体無いとばかりに捻じ込まれた。
「ん、んんっ」
潤んではいたがほぐれてない、そんな所への体積が体積、流石にちょっと悲鳴も上げる。
…でも本当に悲鳴が上がったのはそこからだった。

「はー…」
「あっ? ああッ、あああっ!」
これでも必死に勃たないように、萎えるようなことを頭の中で考えてたロアが、
一晩の間に冷え縮んだ膣内に快感の息を洩らした瞬間、
むくむくと急激に奥まで入った陰茎が肥大、内側からリュカを押し上げ出した。
「お、おっきい、おっきいぃ!」
膣壁がみちみちと押し広げられる、昨夜が再現されるに及び、
でも少女の口からは歓喜を帯びた悲鳴が上がる。
まだこなれ温まっていない、引き締まった蜜壷ではロアの全てを飲み込むのは叶わず、
むりむりと一度は奥まで入った肉棒が膣圧に負け、根元部分から吐き出される。

「す…げ……」
「おっ、おっきい……おっきいよぅ……」
――熱く蕩けた底なし沼もいいけど、冷たく締まった肉万力もいい。
ガチガチに己を硬くしながら、みちみちと押し出される感触にそれを学習したロアは、
ちょっぴり苦しそうな息を吐く真下のリュカに、最善の施策を思いついた。
「し、しばらくこうしてような! 慣れるまでじっとしてよーぜ!」
「……ッ、……っ!」
ふるふると頷くリュカ。同時に二人で熱く震えた溜め息を吐く。
最終的に締め出された三分の一が、名残惜しそうに愛液にてらてらと黒光りした。

ただ、黙ってじっとしてるのも芸がないので、
おもむろに傍らの果物籠に手を伸ばすと、今度は胡桃と胡桃割りを取る。
この時代においては滋養の高い果物扱いのそれを、
ガキンと割って自らの口に含み、…そうしてすぐに彼女の唇めがけて屈みこんだ。
「あむっ…」
ペースト状になったほろ苦い脂肪分が、どろりとリュカの口内に押し込まれる。
上下の位置関係、そうして組み敷き敷かれた構図上、
今度は彼女の方からの口移しはできず、結果としてロアからの一方的な施与になる。
「んっ、あむっ、んむ…」
「……♪」
上手く嚥下できるよう、褐色の指の腹で彼女の白い喉をさすってやりながら、
猫科の肉食獣めいたその眼光が、次第に爛々と輝き出す。

 ――これが男の欠点だった。
 確かに親分肌で、面倒見がよく気前もいい、理想の上司そのものだったが、
 でも同時にそれが悪癖だった、あまりにも『能動』で『積極的』すぎた。
 乱暴なわけではない、むしろ優しい、甲斐甲斐しいと言えるくらいに愛撫も丁寧で、
 でも全部取り上げてしまうのだ、主導権を握らなきゃ気がすまない。

 『あれもしなくていいよ』 『これもしなくていいよ』 『俺が全部やってあげるからね』
 『お前はただ黙って俺の言うこと聞いて、座ってるだけでいいからね』

「んっ、んむっ、はむぅ…」
たくさんキスされ、滋養の高いものも食べさせてもらい、すっかり腹がくちたらしい。
満腹のお腹を撫で擦りつつ、幸せそうな表情でリュカが唸る。
そんな彼女を実にご満悦で眺めると、
また何か思いついたのだろうピーンときた猫目、ひょいと背伸びして何か掴む。

陶器の水差し、蜂蜜酒。

ぼんやりとリュカが見上げている前で、ロアは改めてためつすがめつした後……
……行儀の悪いことには杯を使わず、直接差し口から飲み始めた。
んぐんぐとがぶ飲みし始めたロアを、ぽーっとした表情でリュカが見つめる。
パワフルだなー、というのが感想だ。
意地汚いと思うどころか、むしろ褐色の喉がごくごく鳴る、その逞しさにうっとりとする。
……当然、そんな子分へのお零れも来た。
食後の一杯と言わんばかりに、今度は琥珀色の甘露が流し込まれる。
度数が低くてもそれは酒であり、流し込まれる度に喉が、肺腑が、臓腑が焼ける。
そうしてそんな彼女の唇に、直接差し口を突っ込むなんてこともなく、
何度も何度も、一度口に含んでは彼女の唇に、何度も何度も、何度も何度も。

「はおおぉぉ……ッ!?」
きゅううう…と切なげに股の剛直を締め付ける膣肉、
陶然のあまり洩れてしまったそんな声に、リュカは慌てて口を抑えた。
どう見ても良家の令嬢、高貴な淑女の洩らす声ではない。
もっとこう、『きゃん』とか『ひゃん』とか、せめてもう少し食いしばって押し殺すとか。
「あッ? ひゃっ!」
そんな彼女を見て取ったか、にぃーっと笑ったロアが水差しを傾け、
ぽたぽたとしこった乳首の上へ琥珀色の液体を滴らせた。
そのまま屈み込んで舐め――ようとして屈み切れない、身長差ありすぎて猫背でも無理。

「うっ、わうっ!」
しょうがないので座位。
「あっ、あッ」
そうして糖蜜をかけたスグリを食むよう、あるいは家畜の乳を啜るよう、先端の突起を舐りだした。
吸い、転がし、しゃぶり、舐め、時に軽く甘噛みする。

「ろ、ろあっ、ろあぁ」
女の快楽と母の悦楽の狭間で、たまらずリュカは赤子にするようロアの頭を掻き抱いた。
やはりこれが好きらしく、ちゅうちゅうと乳を吸うロアを陶然と眺め、
でもここぞとばかりに低いところに来た赤髪を撫で、その目鼻立ちや顔形を確かめる。
散々子供みたく頭を撫でられ、顎をくすぐられてきた仕返しと言わんばかりだ。
「やっ、ああんっ?」
でもそんな彼女の母性も虚しく、悪戯坊主は片手で水差しを掲げると、
とろとろと僅かにとろみを帯びた酒精を乳房に掛ける、吸い尽くす度に継ぎ足していく。
双丘に掛かるねばねばな感触に、いやいやするかのようにリュカが首を振り、
乳頭から遠心力で、まるで乳汁のように琥珀液が飛び散り、互いの身体に降りかかった。
…同時にじくじくと違う蜜も、坑に刺さった黒柱を伝って会陰や陰嚢へ滴り落ちる。

最後に壷底に残った澱のような濃い蜜を、壷を逆手にして彼女の谷間にぶっ掛けると、
べろべろと大型の獣がするように舐め、腹に散った蜜まで指で掬って食む。
「…ん」
菓子を食い終わった後の幼子のように、口の周りを蜜だらけにして笑った時には、
周囲にはすっかりむせ返るような酒香が満ちてしまっていた。

乳首を口に含ませたまま、何故か頭を解放しようとしないリュカを尻目に、
ロアは腕を伸ばして小机に水差しを戻そうとし――たが今度は座位だと手が届かない。
「ウうっ?」
ありすぎる身長差の不便を改めて感じつつ、彼女を押し倒して正常位に戻すと、
ロアは寝台の背もたれを支えに目一杯背筋を伸ばして手を差し伸べ、
「うあっ!?」
ちゅうっと乳首に走った変な感触に、思わず瓶を取り落としそうになった。

「んふー…」
「りゅ、リュカ!? 何やってんだよお前!?」
見れば意外や意外、下から鳶色の髪が男の左乳首へと吸い付いている。
「お、男の乳首なんて吸うなよ!」
この予想外の反撃に、さしものロアも動揺を隠せず上擦った声を上げるのだが。
「ん……だって……ろあばっか……」
「俺ばっか?」
「…ろあばっかり……おっぱいちゅーちゅーして……ずるいもん……」
「………」
流石に『なんか様子がおかしいな』と気がついたロアの鼻腔を、ツン…と突き上げる酒精の香気。

「…お前、まさか酔ってる?」
「酔ってませんよ!!」
むーと唇を尖らせ、心外な指摘にリュカは憤然と抗議の声を上げた。
こんな朝っぱらから、大体呂律だってしっかりしているし、平衡感覚も失っていない、
「ちょっとポカポカしてふわふわ気持ちいーだけです! 酔ってません!」
「………」
――酔ってる奴は皆そう言うんだよ。
そんな小さな呟きは、しかし再び吸い始めたリュカの耳には届かなかった。
「ちょ、こら。…や、やめろよ」
その暴挙に改めてロアの声が震え、青天の霹靂、声色から余裕が失われる。

姿勢がまずい。よりによってこの体勢。
伸ばしきった背、左手はギリギリ背もたれを掴み、右手には水差しを持ったまま。
なんてことはない、力を抜いて寝台に身体を預ければいいのだが、
そうすると真下のリュカが『むきゅ』っとなる、ぶっちゃけ鼻とかが潰れてしまうだろう。
ただでさえの体格差だ、本気で全体重を預けるのはロアの沽券が許せない。
なにより。
「…う、あっ」
忘れてた。腐っても元人妻、舌技が玄人。
昨日のフェラで分かってたじゃんと自分を叱ってみても、相手の妖艶な責苦はやまない。
左乳首への責めなせいで、突っ張った左腕がやばい、やばいやばい、超やっべぇ。

結局、起死回生の乾坤一擲。
「ッ、だあぁッ!」
『落ちるなー』という願いを込めて、瓶底の端を乗っけた状態からの『とうっ』、
――見事巧い具合に台上を滑り、小机の中央付近でカタカタしながら止まった水差しに
心の中でガッツポーズすると、空いた右腕で支点を確保!
「こらっ!」
しがみ付いて離れない、躾のなってない悪いわんこを叱ることにした。
…もちろん、本気で怒ってるわけではない。
あれだ、子犬や子猫が粗相をした時に、躾に熱心な飼い主がよくやる、
『めっ! ご主人様は怒ってるんだぞ!』っていうポーズ。ふり。

「…~♪」
「…こ、こら!」
なのだが生憎と相手は人間だ。本気では怒ってないのは一瞬でバレ、おかげでちっとも怯まない。
むしろますます甘えたように、男の胸にしがみつく有りさま。
「…あーもー」
嬉しいんだか困るんだか、自分でもよく分かんないモヤモヤを持て余した後、
「…ほら、左乳首だけでいいのか?」
「…んう?」
促してやったら、本当に右乳首に移って吸い出す女に、また溜め息をついた。

開戦前戦略間違ったかなー、とも思う。
やっぱり昨日みたく合体前、自由に身動き取れる時点で一方的に攻めといて、
圧倒的戦力差に抵抗戦力と余裕を剥奪、士気を枯渇させとくべきだった。
余力を残したまま激突するから、こんな泥沼の合戦にもなるんだと思って――
「…だから男の乳首なんか吸ったって乳なんて出ねーぞ」
「んふっ、んちゅ」
「……聞こえてねーし」
――まぁでも、こういう泥仕合もちょっといいかな、とも思ってしまう。
わしわしと後ろ頭を撫でやりながら、孕ませてーなーこいつ、とかも考える。

…けど、引っ付いて背中を浮き上がらせた彼女の上半身が結構辛そう、
なんかプルプルしてるのに何度目かの溜め息を吐き、
「ほら」
「ふぁんッ?」
親分であるロアは寛大にも上下を入れ替えて、自分が下になってやった。

「んっ、はふ、はう…」
楽になったらしく、くたっと全身を男に預けながらちゅうちゅうを続行する少女を眺め、
撫で撫でしてやりつつ漫然と思う。
明るい朝の陽射しに輝く彼女の肢体は、宵闇の燈光に見たよりも一層白く眩しくて、
そんなミルク色の肢体の背や太腿に点々と痣痕や傷痕が散り、
己の褐色の巨体の上で幸せになってしまっているのが、何ともエロい情景だ。
そんなエロい情景にぼーっとするあまり、
ついついその白さの中でも一番の眩しさを誇る、豊かな臀部へと手を伸ばしてしまい、
――ああでもそうか、引っ付かれて胸も陰核も唇もダメでも此処があった!
ぐにゅりと両手で鷲掴み、パン生地を捏ねるように揉みしだき出した。

「んうっ?」
揉む。揉む。揉む。揉む。たっぷりの白肉を掌全体を使って、集め、握って、弄び、
「あ、あ、あ、は……ひんッ?!」
パァン、と平手で叩く。
「ぁああんッ!?」
弱かったのでもう一度、パァン!と高らかに音が鳴るよう、ふるふるの肉をひっぱたく。
「あ、あ……」
ひっぱたかれてピリピリしてるだろう尻を、また強く優しく揉みほぐしだす。
『マゾ女には尻叩きだ』とは兄貴の一人の力説であるが、
なるほど本当だなとロアは思い、すごい効き目だなとロアは思った。
緩と急、飴と鞭、優しくマッサージしてやって気持ち良さげになって来たところを、
高らかに叩いて羞恥を煽る、気の緩みを突くのは兵法でも常理。

バシッというよりはむしろピシャン、痛みよりかは音と衝撃を重視した殴打を、
「はふ、はふ…」
数回繰り返した頃にはもう、リュカは鼻を鳴らして乳首をロアの胸板に擦りだしていた。
「あう、はうぅ……ひゅんッ!」
いやらしく腰をカクカクさせては乳房とお腹をロアに擦りつけ、
尻をはたかれる度に膣肉を締まらせる、その都度肉柱に熱い蜜を浴びせかける。
「い……ひぅ……」
尻でさえ感じてしまうだなんて、なんてハイスペックな女だろう。
『確かに女は外見でなくて中身だな』と、間違った認識に少年は深々と頷いた。

だから。
「……淫乱わんこ」
「…ッ!」
「ダメわんこ、いやらしわんこ、雌犬わんこ」
「…っ、…ぁ」

「お尻で感じてんの? お前男に尻揉まれて感じちゃってるの?」
「かっ、感じて…ないもん……」
酔っているのは、リュカだけではないのだろう。
「でもビクビクしてるよ? イキそうだよね? またイキそうになっちゃってるよね?」
「…イッ、イカないもん! お尻なんかじゃイカないです!」
酒精、女体、場の雰囲気、どれにかは分からずも酔ってるのには違いなかった。
「…嘘つけバカわんこッ! この嘘つきわんこ、正直に言えよ、分かんだぞ!」
「あッ、やああっ、はくっ、あぅんッ、……だ、だって、だって!」
だから目を爛々と輝かせながら、意地悪く、興奮を隠し切れずに尻を叩く。

――というか、どういう若気の至りだこいつら。
自分らが相当マニアックなプレイしてるって自覚、あるんだろうか?

「だってロアの手おっきい、おっきくて、熱くて!」
リュカもロアのせいとは言え、すっかり男の良さに目覚めてしまったらしく、
酒の助けを借りてはいても、露呈しているのはあくまで本心。
「おっきい手でお尻むにむにされると気持ちいいんだもん、…ふあっ、そこっ」
「ここ? ここがいいの?」
大きな身体に押し潰され、太く逞しい腕に抱きしめられて、大きい手に乳や尻を弄ばれる。
そういうのを快感に感じれてしまう辺り、割と本気で淫乱化中。
「はっ、ああぁ…っ、…き、きもちい…それ気持ちいい、気持ちいいの、ぐにーって」
快楽に溺れ、抑え切れず鳴いてしまい、貞淑と見せかけて貪欲で、
…でもそういう弱さがどれだけ男を狂わせるか、分かってない辺りがまた傾国。

「イッちゃうな。花芽でも乳首でもなく、よりによって尻なんかでイッちゃうな」
「……い、イカないもん」
わざと羞恥心を煽るように言われれば、必死に頑張って耐えようとする。
尻肉はぐにぐにと弄ばれ、もうとっくに手遅れなのにだ。
「てかもう諦めようよ。お前素質あったんだよ。淫乱わんこになっちゃったんだよ」
「…いかない…いかない…イカない……」
本当は尻だけではなく、実はくいくい、腰からの抱擁を子壷の口にも受けている。
それに甘い痺れを感じ、腰も無意識に動かしてしまって、
でも『素質』とか『淫乱わんこ』という単語に涙目で抵抗しようとする。
「好きだよリュカ。可愛いよ。これから毎日、こういういやらしいことして遊ぼうな」
「! いっ、いかない……いかにゃいぃ……」
でもここで、そういう風に言葉でも優しく囁かれるのは反則だった。
ぎいっと歯を食いしばりながら、優しくさすさすされるお尻にぽろりと一滴涙を零す。
…実際には言葉で、挿入で、全身でイってしまいそうになっているのに、
彼女の頭の中にはロアに思考誘導された結果、以下のような危機感しかない。
――『イッちゃう。お尻でイッちゃう、お尻なんかでイッちゃうよ』。

「いっ、いか……にゃあああああ゙あ゙!!」

歯を食いしばり、暴れ、でも犬なのに猫みたく達してしまう。
嫌がるように身を捩り、そうしてエビのように反り返ったリュカの身体を、
ロアが持ち前の大きな身体でぎゅうっと下から包み込んだ。
「あ、あオおおォ…」
尻なんかで相当キちゃったらしい、涙まで流してガクガクのリュカを、それでも優しく拘束する。
――そういう行為が、男に見取られながら逝く歓びを、女の本能に刷り込ませる。
「ほらイッちゃった。ほら淫乱わんこだ」
「……ご…ごめんなさい……ごめんなひゃいぃ……」
「ん。怒ってない、怒ってないよ」
――そういう許容、どんなに見苦しく激しい痴態とて許してしまう優しさこそが、
女に解放の快感を味占めさせる、次からはもっと保てなくなる。
「ん……はふ……」
「ほら、仲直り」
ぽむぽむと呼気整える背中を叩いてくれる手が、けれど甘美な麻痺毒だ。
また少し心が壊れ、また少し自分一人では立てなくなった。

やがてころりと転がっての正常位、口付けに合わせてゆっくりと腰の律動を開始する。
「そろそろ動くけど、いいよな?」
「はっ、は、あ…」
ちゅぷりと唇を離して、もう動いてるくせに言うロアに、リュカは歓喜の息を洩らす。
たむたむと会陰に当たる陰嚢の感触に、背に回した腕への力を込める。
「奥まで挿れるけど、いいよな?」
「う、うん、おく、奥…」
温まってほぐれだした膣壁を押し広げ、ずぶずぶと真っ黒な杭が沈み出すが、
もうリュカは気持ち良くしか思えず、苦しくても早く根元まで埋めて欲しくて、
「また思いっきり一番奥で出すけど、いいよな?」
「ッ、ふあっ、ああッ」
徐々に体重を加えられて寝台へ沈められる、重たく息苦しくなっていく中で、
でもそんなロアの重量さえ心地よく、リュカはぎゅうっと背に回した腕に力を込めると、

(省略されました。続きを読むにはわんわんわわーんと書き込んで下さい)

<続>

 

 

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最終更新:2008年12月27日 06:18