今日は王城で舞踏会がある。
俺には舞踏会そのものには何のかかわりも無い。
俺は自分の仕事をするだけだな。
「さて、と」
俺は王城の周りに結界を張り終えた。
これで王城に招待状を持たない外部の者が侵入したらすぐ分かる。
万一侵入者がいたら、騎士たちに出動願えば良い訳だ。
俺は王城の一室で侵入者の反応が出るのを待っていれば良い。
何も出ないに越したことはないが。
後、結界が壊れてないか適当に見回れば良い。
その間は読書に勤しもう。


ある程度時間が経ったか。
「本なんて読んでいて良いの?」
セリアの声が聞こえた。
俺は本から顔を離す。
「ああ、セリア様ですか。それと、イルマ…様。」
目の前にセリアとイルマがいた。
セリアについては昔から”様”をつけていたが、イルマに対してはいささか不自然になったかもしれない。
「基本的に侵入者がいなければ俺は暇なんですよ」
俺は質問に答える。
もっとも、侵入者に気づいた後も俺は忙しくないが。
「…こんばんは、クリフさん」
イルマは青いドレスを着ている。
宝石が嵌め込まれた銀色の髪飾りをしている。
まあ、俺には良く分からんが似合っているのではないか。
「イルマ様、似合っていますね」
「…ありがとうございます」
俺のお世辞にぺこりと頭を下げるイルマ。
思わず良い子良い子と撫でたくなるな。
「ねえクリフ、私は?」
セリアが聞いてくる。
俺の首を締め上げながら。
苦しい…
「う、うぐ」
俺が喋れないと判断したのか、セリアの力が微かに緩む。
彼女を見る余裕が出る。
彼女のドレスは純白で宝石が散りばめれている。
何て贅沢な。
髪飾りも黄金の物が銀色の髪に似合っている。
だが、そんなことよりも俺には彼女がいつもより遠くに思えた。
いつも、俺を引きずりまわしたり、どついたりしているセリアとは別の人のようだった。
そのことが少しだけ、寂しかった。

「似合っていると、思いますよ」
思っていることをそのまま言えずに俺はそう言った。
なるべく、不自然にならないように言った。
だが、彼女はそこそこ嬉しそうだった。
「そう、ありがとうね。でも、これじゃ剣が振るえないのよね」
こんな所でも剣を振るうのか。
「剣を持ってた方が落ち着くのよ」
恐ろしいことを言う。
俺のことをそんなに剣で脅したいのか?
やっぱり彼女はセリアだ。
「ところで、お2人はなぜこんな所に?」
俺は質問する。
「私たちは舞踏会って窮屈なんで逃げてきたの。もちろん、クリフに服を見てもらうためもあるけど」
良いのかそれで?2人とも王女だろ。
「私たちは具合が悪くなったのよ、平気よ。必要な分は出たし」
仮病を使ったのか?
セリアは「着替えてくるわ」と言って部屋を出て行った。
イルマも頭を下げて出て行った。
部屋には俺1人。
イルマは何しにいったんだろう。
「ふむ」
そんなことより、そろそろ結界の調子を見て回るか。


とりあえず、城の周りを回って確認をしていく。
警備の兵には話が通っているので、すれ違う時に会釈している。
あまり目立たない所に結界を張っているので、夜は1人で行くのが怖かったりする。
俺も臆病者だが、まあ、それで良い。
変に勇気を持ちすぎて無謀と区別がつかなくなるよりは良いだろう。
とりあえず身を守る小道具はいくつかあるが、大して期待できない。
結界を回っている途中で、なんだか暗がりから物音が聞こえる。
侵入者…じゃないよな?
城の中で道に迷ったとか、か。
国内の貴族を集めた舞踏会だそうだが、あまり慣れていない者もいるだろう。
きっと、そうだ。
俺は恐る恐る物音に近づいていく。
「…あっ……ああ……」
何だ?
顔をこっそり覗かせる。
「ふふっ……坊や……上手になってきたわね……あん……可愛いわよ…」
「ああっ……いいっ、いいです」
どうやら、あまり見てはいけないものだったようだ。
男が女の上に跨り腰を振っている。
男というより、少年か?
まだ、声変わりの途中で俺よりも年下か。

俺の知った顔ではないな。
騎士団にいる若者か?
しかし、女の声はどこかで聞いたような。
そして、次に聞こえてくる喘ぎ声で驚愕する。
「殿下、殿下、ああっ」
「ドロシアって呼んで…はぁん」
ドロシア!?
セリアの姉…か?
そう言えば女は聞き覚えのある声で話しているし、赤い髪を淫らに振り乱している。
病室で会った時と印象が全然違うな。
少年は腰の動きを激しくし、殿下の胸をがむしゃらに揉んでいる。
2人ともこちらには気づかない。
俺の足は根が張ったように動かない。
夢中になって腰を振り続ける少年。
「ドロシア、ドロシア、ドロシア、うぁ!」
少年は達したようだ。
ドロシア殿下はあんな少年と恋人なのか?
一体どうなっている?
少年と違い、ドロシア殿下にはまだ余裕があった。
快楽の余韻に浸っているらしき少年に話しかける。
「坊や、初めてはどうだった?」
「はい…とっても…良かったです」
少年は心から満足したように言う。
殿下は引き抜かれたペニスを優しく愛撫する。
「どう?」
「あっ、うう」
少年がまた、欲望を主張しだす。
それを楽しそうに見つめる殿下。
少年も殿下の豊かな胸に顔を埋める。
「あん…元気になった、坊や?」
「はい…殿下…」
快楽に酔った2人の声。
周りなどは目に入らないのだろうか。
「もう、私はドロシアよ」
可笑しそうに笑っていうドロシア殿下。
殿下の方はまだ余裕があるようだが。
殿下は少年の欲望をうっとりと見つめ、舌を這わせる。
「うぁ…」
少年は敏感に反応する。

「可愛い…」
そう言って淫らに微笑む殿下。
愛おしそうに少年の欲望を見つめる。
敏感な部分に舌が這うごとに少年は「あっ」「うっ」と快楽に呻く。
「ふふっ」
やがて殿下が少年の欲望を口に咥える。
少年は期待と欲望で満ちた表情でそれを受け入れている。
殿下の口の中に少年の欲望が収まる。
「んん……んぐ……」
「ドロシア、もっと、もっとして」
小さな子供のように少年はおねだりする。
その言葉に殿下は笑みを深めさらに行為を続ける。
「んぐっ、んん、んぐっ…んんむ、んぅ……んん」
「ああっ」
少年は殿下の口の中で達したようだ。
殿下の咽喉が動き、少年の放った欲望を飲み干す。
少年はそれを畏れに満ちた顔で見つめる。
王女の口を己の欲望で汚したことに興奮と畏怖を抱いたのかもしれない。
やがて、殿下は口を離す。
「これで、あなたは私の2つの口の中に出したのね」
「はい…」
少年の萎えたものを舌で舐めながらドロシア殿下は言葉を続ける。
「もっと、したい?」
誘うように少年の萎えたものを触りながら言う。
「はい!」
嬉しそうに率直に頷く少年。
少年の欲望はすでに復活している。
殿下は少年をゆっくりと押し倒す。
彼女が少年の上に跨る。
「じゃあ…2回戦をしましょう」
「はい、ドロシア…」
少年の欲望がドロシア殿下の中に入っていく。
淫らな目つきで視線を交わす2人。
「あっ」
「あぁん」

少年とドロシア殿下が声を出す。
少年を見下ろすように笑みを浮かべる。
欲望に染まった女王の笑みを。
少年にキスをする。
そして、彼女はゆっくりと自分の中に少年の欲望をおさめる。
「あっ、ドロシア…僕のが入ってる」
少年が嬉しそうな口調で言う。
「そうよ、あなたのが私の中に入ったの…うふふ、今日は2人仲良くしましょうね…」
そう言いながら腰を動かす殿下。
少年は夢中で尻などを撫で回す。
「あっ、ドロシア、いいですっ」
「そう…私も…あん……気持ち…いいわ……ぁん…いいわぁ」
だんだんと腰の動きを早くする殿下。
2人の息遣いが荒くなる。
「うん、あぁん、あん、あぁぁん!」
「ドロシアッ、ドロシアッ」
殿下が首を振り赤い髪を乱す。
少年は彼女の肉体に夢中になっている。
「あっ、あん、あぁん、はぁん、あぁあああぁぁぁあああああああ!」
彼女がようやく達したようだ。
少年も再び達したようだ。
その後、2人はいやらしく互いの体をまさぐっている。
ポンと背中を叩かれた。
「!」
危うく声を出しそうになるのを堪えて振り返る。
(どうしたの?)
セリアだった。
小声で俺に話しかける。
着替えを終えたらしい彼女は黄色いワンピースだった。
(いえ、それが)
どう答えれば良い?
彼女が俺に構わず顔をだす。
(まあ)
微かに驚いた声を出す。
あの2人は未だに互いの体を撫で回していた。
あまり、彼女に見せたいものではない。
俺自身は魅入られた様に見ていたけど。
これは、エゴだな。
(とりあえず、行きましょう)
そう言ってセリアを連れこの場から離れる。

「あの2人は恋人なんですか?」
「う~ん、あの2人が、その、しているのは初めて見たわ」
2人の喘ぎ声などが聞こえないくらい離れた場所で俺は聞く。
あの2人は、初めて?
何だかやけに引っ掛かる物言いだな。
セリアはやや言いづらそうに話す。
「しかし、相手の男は少し、若すぎるような…」
俺がドロシア殿下の男関係に口出しするのはどうかな、と思いながらも言ってしまった。
セリアは驚くべきことを言った。
「ドロシア姉様はね、いろんな男の人と、ああいうことをしているの…」
いろんな男とああいうこと。
「はぁ?」
間抜けな声を俺は出した。
どういうことだ?
「つまりね、いつも別の人と、してるの」
いつも別の人としてる、だと。
それってつまりは…
「片っ端から、男の人を、えー、誘っているんですか?」
「そうね、恋人や奥さんのいる人には声をかけないわ。誘われたら、応じるみたいだけど…」
何だ、それ。
俺の両親も、そういうところがあった。
父はいつも家に居らず、母は知らない男を連れてきていた。
夜、母の部屋から変な声が聞こえてきて怖かった。
恐る恐る母の部屋に入ってみると、母が知らない男と素っ裸で何かしていた。
そんな時いつも母は俺をすごい顔で叱った。
その後、両親は別れ、俺は捨てられた。
師匠に拾われなければ俺はどうなっていたことか。
だから、そんな考えは俺には理解できない。
「だから最初ね、ドロシア姉様がクリフにも誘惑しないかなって、少し不安になって」
「俺はあんな奴ら認めない、大っ嫌いだ!」
思わず、声を高める俺。
声に出した後、不敬に当たるかなと思った。
しかしセリアは俺のことを驚いたように見つめた後、微笑んだ。
「私もドロシア姉様の考えは理解できないわ」
だって、私にはずっとクリフがいるんだもの。
そう言って彼女は俺を優しく抱きしめた。
俺はその言葉と彼女の温もりが無性に嬉しかった。
彼女は優しく俺を見つめて言う。
「愛してるわ…クリフ」
いつもと違う彼女。
この前、夢で聞いた台詞。
でも、今の俺は幻惑されていない。
俺は自らの意思で言葉を紡ぐ。
「俺もあなたを愛しています……セリア」
どちらからだったろうか。
俺たちは、口付けした。
とても、甘やかで素晴らしいものだった。

…ここは人がいないよな。
俺の中に邪まな思いが宿る。
だって俺たち、恋人同士だし、良いよな、良いんだよな、うん。
そして、俺は彼女がもっと欲しくなり、その身を衝動に任せ、
「ごめんなさいね、クリフ」
セリアが突然身を離して謝る。
何を?なぜ?どうして謝るんだ?
俺の中に疑問が渦巻く。
「お仕事中なのに、邪魔しちゃったわ…」
仕事中。
そう、仕事中なのだ、俺は。
だけど、ああ。
「…そうですね、セリア」
俺は彼女を呼び捨てにした。
彼女は、嬉しそうに笑う。
「やっと、セリアって言ってくれたじゃない、クリフ!」
いつも通りのセリアに戻って言う。
いつも通り…?
嫌な予感がしてくる。
「ところでね、クリフ」
セリアが笑顔で俺を優しく抱きしめ腰に腕を回す。
彼女の柔らかい体や細い腕の感触を感じる。
しかし、青い瞳は俺を射殺すのではないかと思うほど強い光を放つ。
これは逃げられないのではないか。
セリア、俺に何をするんだ。
やっぱりいつもの通り…ではないか?
「何…でしょう、セリア」
俺はなるべく落ち着いた口調で話そうとして、失敗する。
彼女は瞳以外で笑みを浮かべながら話す。
「あのね、ドロシア姉様たちのことずっと見てたのかしら?私が来た時も、あなた夢中だったわよね?」
徐々に彼女の腕に力が込められていく。
あー、はい。夢中だったような…そうでないような…
何て答えれば良いんだよ?
「それはまあ、あまりのことに呆然としてしまい…それに、今は仕事中ですし…」
何とか言い逃れようとする俺。
段々と増していく痛み。
笑みを深くしていくセリア。
「時間は、取らせないわ。大丈夫よ?」
もはや、締め付けると言って良いほどに彼女は力を加えている。
時間よりも俺の身の安全は保障して欲しい。
俺が見惚れてしまう笑顔をセリアは浮かべて言う。
「ねぇ、答えて?」


とりあえず、医師のアルフ先生の世話にはならなかった。
セリア曰く「今日はとっても機嫌が良かったの」だそうだ。
…勘弁してくれ。

 

 

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最終更新:2008年12月27日 05:42