私立アイリス女子学院は終戦後創立された女子高等学校である。
旧帝都には古い歴史をもち、伝統と格式を重んじる名門女子校なるお嬢様学校がある。
そこに通うのは大貴族、大財閥のご令嬢に大国のお姫様。
本来なら皇女であるリューティルもそこに通うべきなのだが、
宮廷晩餐会や諸々の行事などで見知り合いが多い。
よって旧帝国の皇女様が通う事になれば、
やれ貢ぎ物だ、やれおべっかだと毎日のようにつきまとわれるだろう。
そういった者達から『皇女様』『皇女様』とちやほやされるのが苦手なリューティルは
『帝都内にあるお嬢様学校だけは絶対イヤ!』と父王に言った。
困り果てた父王は王妃並びに宰相とあれこれと相談した。
その結果、マイステン家からほど近いこの女子学院に通うことになったのだ。
とはいえアイリス女子学院は平民が通う学校ではない。
私立校であるだけに学費、給食費などはかなりの額がかかる。
そこに通う生徒は小貴族や商人の娘、それに裕福な部族の娘等々、
帝都内のお嬢様学校に比べれば、やや見劣りするもののアイリス女子学院も
またお嬢様学校なのである。

「あ、リッシにレンシェ、おはよう」
リューティルは教室に入ると友人である二人に挨拶した。
「おっはよ、リュティ」
ボーイッシュな少女が言った。本名はアイリッシュ=ヴェルマン
金髪をショートにし、褐色の肌とエメラルドグリーンの瞳をもつ
彼女は西海岸に本社を置く貿易商の社長令嬢だ。
令嬢といっても気さくな性格でリューティルとはすぐに仲良くなった。
「おはようございます。リューティルさん」
微笑んで挨拶を返す少女はファルレンシェ=フォンドリア。
絹糸のような銀髪を肩まで伸ばし、切りそろえている。
いかにもお嬢様な彼女はこの辺りの名士であるフォンドリア家の令嬢。
祖先にハイエルフの血をもち、かなりの美貌をもつ。
この二人は学校の寄宿舎に入っており、部屋も隣室だという。
「あれ、ナージェはまだ来てないの?」
「そうですわね、まだ見えられていないようですが…」
「ナージェはいつも時間ギリギリに来るしね」
ナジェンタ=レッシーナ、もう一人の友人であり紡績会社の社長令嬢だ。
ワーウルフのハーフであり運動神経、能力は抜群だが朝にものすごく弱く、
いつも遅刻ギリギリに来る。アイリッシュやファルレンシェと
違って実家から通っているということも一つの要因なのだろう。
それでも走って何とか間に合うのだから、
ワーウルフの血は伊達ではないということを物語っている。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
始業のチャイムが鳴った。チャイムが鳴り終わるまでに教室に
入らなければ遅刻となる。
「ああああっ、間に合ったー!!」
教室のドアが開き、ナジェンタが駆け込んできた。

「お、おは…よリュティ、リッシ、レンシェはあはあはあ」
だらだら汗をかき、息も絶え絶えに挨拶するナージェはかなり危ない。
「朝から発情、乙。ナージェ」
アイリッシュがけらけら笑い言った。
「はいはい、朝からそーゆーこと言わないの、リッシ。
おはよ、ナージェ」
「おはようございます、ナジェンタさん」
チャイムが鳴り終わって、担任の教師が入ってきた。
ピシッとした背筋、キリッとしたメガネにさっぱりしたショートカット。
服装の下からでもわかる豊満な乳。名をアクス=アノンと言った。
高い学歴をかわれてこの学園に招かれたのだ。
また武道にも精通しており、特に槍術に長けている。
一度、学園に侵入した盗人をモップの一突きで倒してしまったらしい。
それ以来、かつての勇者軍に所属していた戦士だ!とか、覇王軍の
血騎士団兵だ!などそういった噂が絶えない。
「起立、礼。先生おはようございます」
クラスの委員が号令をかけた。
「おはようございます」
続くクラスの生徒達。
「皆さん、おはようございます。では出席を取る前に……
それはレッシーナさんでいいのかしら、フォンドリアさん?」
アクス教諭は机に突っ伏し、肩で息をしているナージェを指して言った。
「ただ屍のようですわ」
ニッコリとファルレンシェ。
「そう……残念ですね。御親族には最後まで立派だったと伝えましょう」
あちこちでクスクスと笑い声が聞こえる。
「先生、屍じゃないわ……ナジェンタ、生きてます」
息も絶え絶えにナージェが答え、朝のホームルームが始まった。

ホームルームを終えて、ナージェはようやく復活した。
「くっそ、あのメガネおっぱいめ!」
「あははは、いつも遅刻するナージェが悪いんだよ」
アイリッシュが笑って言った。
「レンシェもレンシェだよ。何よ、屍って!あたしはゾンビか!?」
「申し訳ありません。アニマルゾンビですわね」
「そういう意味じゃねぇ!わああっ、リュティ…レンシェがいじめるよォ」
がばっとリューティルに抱きつくナージェ。
「はいはい、よしよし。それからブラはフロントホックだからね
外せないからね、そこんトコよろしくね」
背中に回した手をつねり、リューティルはため息をついた。
「ちぇ、つまんねーの…空気読んでよ、もう」
「いや、だから拗ねても全然可愛いないから」
いつもの4人でのやりとりと共に始業のチャイムがなった。

午前中の授業を終えて、昼休み。大食堂での昼食だ。
この学園では日替わりでランチが用意される。
生徒たちにとっては普通のランチだが、1食にかかる食費は
平民が通う学校の1年分の学費に相当する。
「今日はコンソメスープにシーフードピラフ、それにマカロニサラダに
紅茶とヨーグルトね」
リューティルが食事がのったトレーを置き、言った。
「シーフードがメインか…私は肉の方がよかったなぁ」
とこれはナージェ。あまりシーフードは好きではないらしい。
「好き嫌いはよくないぜ、ナージェ。好き嫌いしていると
アクス先生みたいにおっぱい大きくならないよ?はぐはぐ……ん、これは
西海岸のアサリとビッククラブの子供ね、ダシが効いていて美味い!」
リッシがピラフをスプーンですくいながら言った。
さすが地元の貿易商家。海産物は好物なようだ。
「そうですわね。好き嫌いなさると栄養が胸部と臀部にいきませんし
お肉ばかりですとふくよかになって大変ですもの。
その点でいえば、リューティルさんは心配ありませんね」
紅茶を手に持ち、微笑むレンシェ。
「そうかなぁ?……平均的だと思うケド」
本人を除く、三人の視線がリューティルの身体に集まる。
「な、何?みんな…そ、そんなに見ないでよ」
「このお嬢様はそんな贅沢なコトをおっしゃるのか……」
とリッシ。
「色白でいらして…」
微笑みながらレンシェ。
「おっぱいもお尻も大きすぎず小さすぎず…」
最後にナージェ。
「い、いやぁ…でもさ…そんなの自分で思って育つものじゃないし…
他のクラスメイトだって理想的な体つきの人いるじゃない」
リューティルは苦笑いしながら言った。その言葉にナージェが噛みついた。
「そうかなぁ…リュティは下級生に『リューティル様、いつもお綺麗です』とか
『お姉様、お慕い申し上げております』『私とお付き合いしてくださいませ』
とか大人気じゃん。私なんて陰で『ワンワン様』とか『雌犬姫』とか呼ばれてるんだよ?」
「それはナージェの言動が原因だろ?まぁそれは置いといて……
私もリュティ…なんていうか…こう、色っぽいというか…
とにかく綺麗なんだよ。うん」
「うん、リュティの乳は私が揉んで育てたのだ、感謝するがよい!」
ナージェが自分の胸に両手をあてて言った。
「ワンワン様はいつもお元気そうで…私もアイリッシュさんの言う通りだと
思います。リューティルさんは本当にお姿が麗しい、少し妬けてしまいます」
「おい、レンシェ、今さらりとワンワン様って言ったよね?」
「さあ、むずかしいことで。わかりかねますわ」
おっとりとした口調でレンシェが返す。
「ははは、まぁまぁナーひゃっ!」
突然、リューティルが声を上げた。
「ん、どうかしたのリュティ?」
アイリッシュが声をかけてきた。
「んん、な、何でもない…ごめん、ごめん」
リューティルはそう言いつつ、密かに
手を動かしスカートの上から股間をなぞった。
(き、昨日の……キルシェのがちょっと出てきた……
や、やばい…後でお手洗いにいかないと……)


午後のマイステン家

「あーくっそ~…あのダークエルフめ、皿ぐらいいいじゃん。何十枚もあるんだから!」
屋敷に勤めるメイドのティニアがココアが入ったカップをドンと机の上に置いた。
ここは屋敷に勤める者達の休憩室。
屋敷に勤めるメイドはワーウルフのティニア、アリアエルそれにマムの3人である。
それに専属のコックが2人と庭師の老人が1人。計6名の者が住み込みで働いている。
「お皿は料理を乗せる大事な食器ッスからねぇ…はい、クッキー焼いたッス」
専属コックの1人、ルチアナが言った。こちらは人間の女性である。
白いコック姿で赤い頭髪と首に巻いた赤いスカーフがトレードマークだ。
「あ~ありがと。ん~クッキーのいい匂い。ルッチはお菓子作りの天才だな」
「えへへ、それほどでも」
バリバリとチョコチップ入りのクッキーを食べるティニー。
「そういう問題ではありませんよ…はむはむ。ティニー今日で何枚目ですか?」
もう一人のメイドのアリアエルがたしなめるように言った。
「ん~…今週はまだ5枚目かな?」
指を折って計算するワーウルフ。
「うわ…そんなにッスか?料理乗った皿だったら師匠にぶっ飛ばされるッス」
師匠とはコック長のヴァルカレッジという人間の男性である。
ひょろっとした背の高い青年でいつもニコニコしている。
「あのコック長が怒るのか?迫力なさそうだけど…」
「料理のことに関しては厳格なんッス。マジで怖いです」
ルチアナが腕を組んでうんうんと頷いた。
「全く…1枚、いくらすると思っているのですか、私達の1ヶ月のお給料の
半分はしますよ?」
はぁ…とため息をついてアリアエルはクッキーを摘まんだ。
「あちゃ~そりゃキルシェ様も怒っても仕方ないッスね」
「それでもさぁ…あーもう!むしゃくしゃするぜ!」
頭を抱えてティニアは呻いた。
「さぁお嬢様がお帰りになる時間ですよ。行きましょう」
「あたしも調理場に戻るッス。お嬢様の食事すんだら今夜の賄食もってまた来るッス」
「期待してるぜルッチ。あ、ティニーごめん。ちょっと先に行ってて」
「ティニー、どこに行くのですか?」
「あら、いやだわ。お花摘みに行くのよ、アリアさん♪」
「お手洗いですか……先に行きますよ」
と、アリアエルが先に行った事を確認するとティニアはとある物を持ち
あろうことか当主であるキルシェの私室に入った。
「ククク……今日はマムの掃除当番だし…マムはキルシェ様にゾッコンだからね…
エロ本見つけた日には…『キルシェ様の変態!幻滅しました』って言って…
ざまァみろって感じだわ」
とブツブツ呟いて購入した数々のアダルテトな本を取り出した。
しかもかなり重度な趣向の本ばかりだ。
「場所は……そうね、妥当なトコで枕の下かな…見つけやすいだろうし」
そう言ってティニアは枕の下に本を重ねるとそそくさと部屋を出て行った。
「……っーかマム、お使い長いな…そろそろ帰って来てもいいのに…
帰り道に迷ったとかじゃねぇだろうな、あはははは」
実際、マムは迷っていた。さして遠くない町での買い物だったハズが
帰り道を間違い、森の中で1夜を明かすことなど、ティニアは知ろう由もなかった。

『お嬢様、お帰りなさいませ』
学園からの送迎の馬車が屋敷の前に止まり、リューティルが降りてくると
ティニアとアリアエルが頭を垂れ、迎えた。
「ただいま、ティニー、アリア。出迎えてくれてありがとう」
リューティルはにこっと笑って、メイドを労った。
馬車を見送り、屋敷へ向かう3人。
「鞄をお持ちます、姫様」
「今日の夕食はリューティル様のお好きなパスタでーす」
ワイワイと会話を交わす一行。
「ホント?楽しみ♪鞄はいいよ、自分で持って行くから」
メイドたちに手を振り、リューティルは屋敷の中へと入っていった。
2階へ上がり、自分の部屋に向かう。が、何を思ったかキルシェの部屋の前で
立ち止まり、中へと入った。
「あれ…まだ帰ってきてないのか…」
帰宅した後、いつもキルシェの部屋に立ち寄り、『ただいま』というのだが
私用で出かけているらしい。
「まぁ…いいか、入って待ってるか…」
ちなみにティニアとアリアエルだけは2人の仲を知っている。
机の上においてあった従者の読書用眼鏡をかけベッドへダイブ。
「ひ、姫様!いけません!私のような者と……なんちゃって
ふふ…キルシェのニオイだ……」
俯せになり枕に顔を押しつけ、愛しいニオイを胸一杯に吸い込む。
「ん……何か固いモノがある…何だろ?」
リューティルは枕の下に違和感を感じ、がばっと枕をあげた。
そこにあったのは明らかにソレとわかる表紙の本だった。
それも7冊もあった。タイトルは
『ドMなプレイで楽しむ夜』
『制服ニーソで足コキ罵り』
『デカ・パイ・ズリ!!』
『ねこみみすとニャン』
『アナル』
『野外セックス』
『あなたの雄犬・雌犬首輪でワンワン』
「キ、キルシェ…こんなのが好きだったんだ」
ペラペラと捲っていくといかにも見せつけるような感じで
見事なおっぱいや尻を晒している女性達。
どうやったらこんなアングルで撮れるのか疑わしい写真。
場所は夜の町や森、果ては昼間の公園や野外での写真。
衣装は格好は様々だ。従者の趣向がこんな領域までに及んでいたのかと
リューティルは呆気にとられた。

「す、すごい……キルシェも何だかんだ言ってノリノリだったんだ。
しかもコレ……」
男が踏まれて嬉々としているシーンが何ページか折られている。
「いつもキルシェは受けだけど…あれだけじゃ満足してないのか……
悪いコトしちゃったなぁ……ん、で、でも…」
リューティルはキョロョキョロと周囲を見回し、カーテンを閉めた。
「……こ、こんなの見てたら……鍵を閉めて…は、早めに終わらせよう…」
顔を赤くしてリューティルは
スカートの裾をめくり上げパンティをむき出しにした。
学校のトイレで何とかふき取ったが、未だに湿り気が取れない。
「ん…でも…いいか…どうせ濡れるだろうし…キルシェの枕…」
くんくんとニオイを嗅ぎながら下着をむき出しにしているのだと思うと
いつもとは違う羞恥が胸を高ぶらせる
指先で濡れた秘部部の筋つーとなぞった、ヒダが熱い体液で濡れ
筋の終着にある小さな泉から懇々と岩清水のように湧き出だしている。
「ん……く…はぁ」
妄想の中ではキルシェの趣向とは異なるプレイで興じていた。
普段ではありえない、そうキルシェの責めだ。
獣のように激しく犯される自身。
いつも女性上位で交わる体位ではなく、正常位で責められる。
場所は部屋ではなく、野外。
草むらでキルシェに組み敷かれ、半裸のままで強引に挿入される。
『い、痛い、痛い!やめて』と泣いても止まらない責め。
その背徳感がさらに自慰の熱を高めた。
下着が水を吸ったように秘部からはくちゅくちゅと粘着音が響く。
指の腹で陰核を押し潰し、摘むようにしてクリクリと転がす。
「くっ……んんん」
声が漏れそうになると枕に顔を埋める。
誰に聞かれるわけでもないのだが、自身の喘ぎ声は恥ずかしいものだ。
が、枕に押しつけた鼻孔からキルシェのニオイに触れた。
くちゅくちゅと陰核の弄りではもどかしくなり、リューティルは直接
秘部へと指を進めた。
「はぁ…はぁ……んっ」
………つぷっという感触と共に熱い膣壁が指を圧迫する。
「はぅン!んっくうう」
たまらず首をのけ反らせてしまい、甲高い甘い声がもれた。
唇を真一文字に引き締め、声を我慢する。
熱い吐息を吐く唇は濡れ、唾液に触れた髪の毛が
何本かべっとりと頬に張り付いていた。

「はぁ…はぁ…キルシェ…んっキルシェの…」
激しく指を抜き差しすると昂ぶりが上昇気流のようにゾクゾクゾクと
高みへと連れて行く。
妄想の中でキルシェに激しく突かれている。
思うがままに激しく突かれている。いつもの口調ではなく
荒々しく『リュティ!リュティ!出すぞ!私の種を付けしてやる!』と
腰を突き上げ、膣内に大量の体液をぶちまけられる妄想。
「はッ…くぅ、んんんッ!あ、ダ、ダメッ!も、もう!」
リューティルの身体を閃光のような快感が突き抜けていった。
何もない空間にふわりと投げ出されたような浮遊感に、
圧倒的な解放感にとらわれる。
「ん……んッ…」
ピクンピクンと震える身体。荒い息が治まり、大きく息を吐き出す。
けだるい恍惚と秘部を濡らした体液の熱い滑りが自慰の余韻を残していた。
「ん……ふぅ…イッちゃった…」
その時、ガチャリとドアが開いた。
この部屋の主の帰宅だ。

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最終更新:2012年02月25日 19:31