「そろそろかしら…………」
 教育係に読んでおくように言いつけられた小難しい退屈な本を閉じ、ナトダール王国の第一
王女、ネフェティアは立ち上がった。城の最上階の奥にあるネフェティアの私室には、商人か
らの貢物であるきらびやかな調度品や絵画、ドレスが、差し込む陽光をよりまばゆいものと変
えて室内を明るく照らしていた。
 もっとも、当の本人は、暑さからか分厚いドレスを嫌い、この時期は装飾も控えめな、袖の
ない薄手のワンピースを身につけることが多かった。
「…………」
 窓の外から裏庭を眺めると、退屈そうな顔をした兵士があくび混じりに城内の警備を行って
いるのが見えた。太陽が一番高くなったところであの兵士は食事に出かける……そして交代の
兵士がやってくるまでのわずかな間、裏庭に人はいなくなる。
 このときが、ネフェティアが城を抜け出す唯一の機会だった。
 城の近くにある森の奥には小さな湖があり、今日みたいな暑い日には、水浴びをするために
よくそこに足を運んでいた。一糸纏わぬ姿で、程よく冷たい水に浸かり汗を流す……想像した
だけで気持ちがさわやかになり、少しも待てなくなってしまっていた。
「……この格好なら、大丈夫よね」
 窓の外から顔を出すと、吹き付ける生暖かい風が額を撫で、長い金髪をなびかせる。遅れて
やってくる地面や草の湿った匂い……嗅いでいるだけで蒸し暑さを思い出し、額に汗が浮かん
でしまった。不快感を覚えつつも兵士の動向を窺い続ける。
「あっ、早くしないと」
 兵士が詰め所のほうに向かってのろのろと歩き出す、引き出しから銀でできた鍵を取り出し、
くるぶし辺りまであるワンピースの裾を翻させながら、ネフェティアは足早に裏口へと急いだ。

 ネフェティアが裏庭にたどり着いたころには、すでに兵士の姿は消えていた。周囲にも人気
はないようで、人も、花も、木も、城も……何もかもがが昼寝をしているみたいだった。
「………………」
 裏庭の一番奥まったところにある大きな茂みの向こう、ここにネフェティアとこれを作らせ
た大工しか知らない秘密の出口があった。一見すると外壁と同じ素材のレンガだが、レンガを
貼り付けただけの木の扉であり、その中は外と内を繋ぐトンネルになっている。
 人目を気にしながら、扉の鍵を外す。中に入り同様に扉を閉めて、四つんばいになってトン
ネルを進む。窓がないこの通路はじめじめとしていてどこか黴臭い。絹のハンカチで鼻を押さ
えながら出口へと這い進み、もう一つの扉を開いた。
 「んっ、今日もいい天気ね……」
 いい意味で言ったのではない。ぎらつく太陽の光は毒々しく、ネフェティアの真っ白な肌を
遠くから火で炙っているようだった。それでも城の中に閉じこもっているよりはずっとましだ
と、膝や肘を軽く払い、足取り軽く森のほうへと進む。

――――――――――――――――――――――――
 まばらに立ち並ぶ雑木林の陰でネフェティアの様子を窺う男が一人、足早に森の奥へと進む
彼女を一定の間隔を保ちつつ、足音を殺し後ろから付け回していた。
「……あいつの言ってた話は、本当だったのか」
 数日前、男はかつて城壁の補修を行ったという大工と一緒に酒を飲んだ。そのとき、酔った
大工はネフェティアから特別に金をもらい、隠し扉を作ったという話を男にぽろりと漏らして
しまっていた。
「それにしても、さすがは姫様だな」
 一人でいるゆえの警戒心なのか、ネフェティアは少し歩くと後ろを向いたり落ち着かない様
子できょろきょろと左右に視線を移す。男はその瞬間に、目ざとく彼女の顔を盗み見た。
 腰まである髪は純金を思わせる明るいブロンドで、降り注ぐ木漏れ日を反射しきらきらと光
り輝いていた。エメラルドグリーンの大きな目、小さく、筋が通っている鼻、朝露に濡れた花
びらと見間違えそうな薄桃色の瑞々しい唇、貝殻のように小さな耳……顔立ちはまるで精巧な
美術品のようだったが、湛えた笑みと薔薇色の頬が、彼女が血の通った人間であるとはっきり
と教えてくれた。
「…………」
 次に、男はネフェティアの首から下に目をやった。細くなだらかな肩幅、無骨さとは無縁な
小さな手と真っ白な指は、薄絹のヴェールをかぶせたようだった。
「たまんねぇな……」
 そして何よりも男の目をひきつけたのは、可憐な外見からは信じられないほどに大きく張り
出している乳房だった。左右の膨らみは大きな水晶玉でも詰まっているのかと思うほどに前に
張り出している。しかしそれは水晶玉とは異なり、呼吸するときでさえ上下にゆさゆさと揺れ
ており、触れなくても柔らかさが見て取れる。
 その一方で、ウエストは引っ込んでおり、強く抱きしめてしまえば折れてしまいそうだった。
お尻は、くびれた腰から急激なカーブを描いており、乳山同様、若さに溢れんばかりに前に飛
び出している。ボリュームゾーンにフィットしたスカート部分からは、かがみ込むと下着のラ
インが見えてしまうほどにむっちりと肉がついていた。
 男はさらに目線を下に移す。丈の長いドレスのせいで太ももの脚線美を見ることはできな
かったが、ネフェティアが歩を進めるたびに裾が風に煽られてめくれ、引き締まったふくらは
ぎや足首はその目におさめることができた。
 
「いい身体してやがるな、へへっ」
 彼女のお尻は、ドレスを破らんばかりに実りきった乳房より大きさではわずかに劣る。しか
し丸みを帯びてきゅっと上を向いた二つの山は、彼女が勢いよく地面を踏み込んだところでぷ
るんっと大きく上下に揺れて、そのたびに男の目が吸い寄せられてしまう
「……早くおっぱいも見せてもらいたいところだぜ」
 薄皮を纏った水蜜桃を思わせる尻も悪くなかったが、最も魅力的なのは乳房だろう。隠され
て見えない生乳はいったいどうなっているのか。蕩けんばかりの肉弾は純白のドレスにも負け
ないほどの抜けるような白さで、血管が青く、うっすらと透けているだろう。その頂点には色
づきかけた小さな木苺があるに違いない。
 そして実際に触ってみれば、激しい自己主張とは裏腹に指はあっさりと飲み込まれ、吸い付
くような汗ばむ肌は、同時に指を優しく押し返してくれるはずだ……ここまで想像したところ
で、男のペニスは今までにないくらいに勃起していた。
「早く触らせてもらわないと、身が持たないな」
 妄想だけで、ここまで股間を熱くしてしまうなんて、オナニーを覚えたての少年じゃないか
と、男は苦笑する。だが、ここまで興奮させられたことで、男はネフェティアに襲い掛かり青
さの残る美しい身体を自分のものにしたくなってしまった。
 幸いにもこの森に入り込む人間は、狩りを生業としている男以外はほとんどおらず、また、
ネフェティアに護衛がついている様子もない。お忍びで森の奥に向かっていると考えれば、万
に一つも隠し扉の存在が明るみになり彼女が城を抜け出せなくなる可能性もある。
 このチャンスを逃す手はない……男は少しずつ距離を詰めながら、ネフェティアを犯す機会
を窺った。

――――――――――――――――――――――――
 うっそうと並ぶ木々に囲まれた湖、木漏れ日が水面を照らし、一点の曇りもない澄み切った
水はそれを反射し、光を当てた鏡のようにまぶしく輝いていた。ほとりまで近づいて、水を手
ですくうと心地よい冷たさが手から腕へと伝わり、汗が引いていく。
「……誰も、いないでしょうね」
 普段から人がいたためしはないのだが、一応左右に視線をずらし誰かいないか確認する。聞
こえるのは風が葉を揺らす音と虫の鳴き声のみ……安心したネフェティアは、待ちきれないと
いわんばかりに袖と背中にあるドレスのボタンに一つ一つ手をかけていく。
 すべてのボタンを外し終えると、くるぶしまでのロングドレスがふわりと地面に落ちた。そ
れを拾い上げて折り目正しくきれいに畳む。
「…………」
 ブラとショーツも脱いでしまおうとしたとき、透明な水面に自分の身体が映し出されて、ふ
とそれに目が行った。赤ん坊の頭ほどある自分の乳房、細い腰からぱんっと蜂のように膨らん
でいるお尻、ネフェティアは自分の身体があまり好きではなかった。
 幼いころから、一国の王女として常に潔癖であることを求められてきた彼女にとって、兵や
従者、貴族から注がれる、異性の卑猥な視線は苦痛でしかない。
「こんなもの、なくなってしまえばいいのに」
 この前も、たまたま胸の開いたドレスを着ていたら、胸の谷間ばかりに目を向けられてすっ
かり参ってしまっていた。また、侍女も着替えや入浴を手伝うときに、彼女の乳房に不躾な視
線を送ることがあり、恥ずかしいやら不愉快やらで、いつの間にか風呂には一人で入るように
なっていた。
それに、侍女の中には肉欲から城内で堂々と男と性交にふける者もいるということを小耳に
挟んだ、自らを律し、民の手本とならなければならない立場であるネフェティアにとっては頭
がくらくらするような話であった。
 そもそも、性欲とは無縁な自分ばかりがじっとりと這い回るような視線を一身に浴びなけれ
ばいけないのか、不条理な現実を呪ってしまう。だいたい…………
 ……やめよう、これ以上考えていたら気が滅入ってしまうと、ネフェティアは軽く頭を振っ
て、精緻なレースを設えたシルクのブラを外す。外気に晒された豊かな乳房が、ふるりと揺れ
る、それとおそろいのショーツも脱げば、毛の生えていない、閉じたスリットが湖面に映った。
 成熟した身体とはあまりにかけ離れた子供同然の秘所、毛が生えていないのはネフェティア
だけで、それもまた他人を遠ざける遠因となっていた。

 足の指先をそっと水に浸らせる、前に進むとくるぶしから膝、太ももと身体が冷水の中に沈
んでいった。
「んふっ……」
 さっきまでの暑さが嘘のように、ネフェティアの身体を涼しさが包み込んだ。むっと鼻をつ
く草木の臭いも、緩やかにまとわりつく湿っぽい風も、立ち上る地熱を吸い込み、何倍にも返
して吐き出す陽の光も、何も気にならなくなっていた。
 このときだけは、ナトダールの王女であるということを忘れられる、しゃがんで一気に肩ま
で潜ると、湖水と自分が一つになって溶けあうような気がして、爽快な気持ちよさが全身を包
み込んでくれた。
――――――――――――――――――――――――
 男は、近くの木陰から、ネフェティアの水浴びをする様子を絵に描けるくらいに綿密に観察
していた。生まれたままの姿になった彼女は、男の想像を上回る美しさだった。薄桃色の乳暈
はコインくらいの大きさで、ゆさゆさとたわむ乳房に比べると、不自然なほどに控えめだった。
 その頂点にある先端は、周囲よりも濃い桃色で、木苺というよりは色の薄い小粒なさくらん
ぼに近かった。これもまた、小娘のように控えめなたたずまいだった。
「あんなにいい身体してるのに、ガキみたいなマンコだな……」
 男の予想を大きく裏切ったのは、桃色の中身をわずかに覗かせた無毛の淫裂だった。おそら
く処女なのだろう、女性器とは思えないほどに楚々としており、犯しがたい雰囲気すら匂わせ
ていた。

 太ももに目をやろうとしたところで、ネフェティアが背を向けて水中に沈んでしまう。
「ちっ…………」
 再び立ち上がるのを待っていると、男の近くに彼女のドレスが畳まれているのに気がついた。
運のいいことに、それらは死角に置かれている。
「これだけでも、高く売れそうだな……」
 指触りのいい上品な絹のドレス、施されたレースは目を凝らすとひどく複雑な模様をしてい
た、他にも、大きな宝石のついた指輪やネックレスなど、装飾品はどれも王女としての格にふ
さわしいものばかりだった。
 しかし、小さく重ねられたブラとショーツがそれ以上に男の目を射抜く。小さな布にはふん
わりと彼女のぬくもりがまだ残っていた。男は生唾を飲みながら下着を広げる。
 ドレスと同じく色は白で、まさぐっていると細やかなレースが指に引っかかった。ブラの
カップは大きく、手で包み込めるかといったところだった。一方、同じデザインのショーツは
彼女の巨尻ではこぼれてしまうのではないかと思うほどにカットはきわどく、ヒップ部分の布
地は三角形に近かった。
 下着に顔を近づけた瞬間、水音が湖畔に響き渡る。ネフェティアが立ち上がったみたいだが、
まだこっちへ向かってくる様子はない。安心した男は、雫を滴らせる胸山、秘裂を舐め見つつ、
ショーツを鼻に押し当てた。
「ううっ……!」
 ほんのりとした温もりのすぐ後に、もぎたての果実と花蜜を混ぜ合わせたような甘い匂いが
男の鼻を強烈にくすぐった。ネフェティアの身体の匂いなのだろう、美しい彼女にふさわしい
芳香だが、それと同時に女体から発せられる生々しい汗の匂いも感じられた。
 きれい好きなのか、布地には汚れ一つないが、ここに来るまでに汗をかいており、ショーツ
はわずかに湿っていた。
「はあ、はあ…………っ」
急ぎ足のネフェティア……尻からは汗がにじみ、割れ目から潤いがこぼれ、その全てが下着
に染み込み、一つの芳しさを作り上げる。想像しただけで男のペニスは鈴口から先走りを垂れ
流してしまう。
 興奮冷めやらぬまま、今度はブラに持ち替えて、カップの、おそらく乳首が当たっているで
あろう部分に鼻をこすりつけて深く呼吸をした。こちらは、濃厚なミルクを思わせる甘ったる
い香りが目立っていた。
 
 ちょうどカップのに鼻を押し付けて勢いよく呼吸をしながら、男は物陰から彼女の裸を舐め
回すような、疑り深い湿った目で観察する。
 ふっくらした濃い桃色の唇と、初々しさを残した清純な顔をみているだけで、徹底的に汚し
てやりたいという無償に倒錯した感情が男の心中にこみ上げてきた。特に、濡れた唇は、上唇
が薄いが下唇はやや厚くて、砂糖菓子のように甘くおいしそうに見える、思わずふるいつきた
くなるものだった。
 考えうるだけの清らかさを具現化したような顔とは違い、身体は純真無垢な妖精を感じさせ
る透明感の中にも、豊満な乳房やお尻は、生々しい肉を感じさせてくれる。
 身体を動かすたびに、何一つ欠点のない彫像のように優雅な曲線を描く身体を水滴が流れ、
張り詰めた皮膚に弾かれ、その滴が湖面に波紋を作った。ネフェティアが水に濡れたおかげで、
神々しさすら覚えてしまう丸みの頂点にあるチェリーは、シロップを浴びたように照り光り、
甘やかに息づいていた。
 あの巨乳からはこんなにいい匂いがするのか……と、そして、どんな触り心地なんだろうか
……与えられた快楽が、さらに別の妄想を生み、男を支配する。そして自分を慰めるために乳
臭さが残るカップにむしゃぶりつき、染み付いた匂いをすべて吸い取らんばかりに深く、短い
間隔で呼吸を繰り返した。
 視覚と触覚と嗅覚、この3つの刺激が否応なく男を高ぶらせ、ペニスは触れていないにもか
かわらず今にも射精してしまいそうだった。
「今すぐ襲うか……いや、待てよ……」
 物陰から這い出そうとしたところで男は足を止める。裸の彼女を襲うよりも、純白のドレス
を、ショーツを引き裂いて、強引に組み敷いた上で荒々しく処女穴を引き裂きたかった。微塵
の濁りも見えない、きらめく双眸を恐怖に彩らせたかった。咲きほころぶ艶やかな笑顔を悲し
みで塗りつぶしてやりたかった……ネフェティアを見ているだけで男の嗜虐欲はどんどん高
まっていく。
「……服を着るまで、待つか」
限界すれすれの性欲は、もっと近くで彼女の裸を見たいという衝動に変わった。身を隠せると
ころはないだろうかと探すと、ネフェティアの近くに小さな茂みを見つける。こちらを向いて
いないときを見計らって、男はしゃがんだまま茂みへと移動した。
「……これはこれは……」
 男は自分の幸運に心の底から感謝した。ネフェティアの艶かしい、たっぷりと肉のついた身
体が手を伸ばせば届く位置にあるからだった。ここまで近づいたにもかかわらず、油断してい
るのか気づくそぶりすら見せない。
 遠くからではわからなかった肌のきめの細かさ、臍近くにある小さなホクロ、さらにお尻を
突き出した瞬間に深い切れ込みからわずかに見えた桃色の窄まりなど、穴が開いてしまうほど
に鋭く、ねちっこい視線を男はぶつけ続けた。
「早く、ぶちこみてえな……」
 荒くなる息を押し殺そうと、ショーツとブラジャーに顔を埋めるが、匂い立つ花香がさらに
男の興奮を煽り、我慢汁は下着どころかズボンにまで染み出している。

――――――――――――――――――――――――
 水浴びをしている間、すぐ近くから視線を感じていた。さらに、きれいに折りたたんだはず
のドレスや下着が少し散らかっており、それがネフェティアの心配を煽った。
「そろそろ帰らないと、見つかっちゃうかも……」
 食事を済ませた兵士が戻ってくる前に城に帰らなければならない、不安を振り払いつつ下着
を身につけて、ドレスに袖を通した。
 その瞬間、不意に強い力で誰かに抱きすくめられた。振り向けば血走った目をした男が……
身体を動かそうとしてもびくともしない、それどころかどんどん奥まったところに連れて行か
れてしまう。

「きゃあっ…………!」
「静かにしろ!」
 男が食い締めていた口を大きく開けて、ネフェティアを睨みつけたまま荒々しく怒鳴った。
これに怯んでしまいもがくのを諦めてしまった。男は満足そうに歯を見せて笑い、ネフェティ
アの身体を大木の幹に押し付ける。
 「いいか、大人しくしてないとひどい目にあうぞ」
 怒気が込められた男の声、だがここでひるんではいけないとネフェティアは深呼吸をして何
とか落ち着こうとした。
 
「いったい何が目的なの?」
 声が震えそうになるのを抑え、なんとか凛としたふるまいを保つ。口調こそ取り繕うことが
できたが、必死に逃げ場を求める小動物のような目をしていることには気がついていない。
「お金なら、持っていませんわ。今ならあなたの非礼も許します……ですから、そ、そこをど
きなさい」
「そうは行かないな、俺の目当ては金じゃないんでね」
 男が見せる舌なめずり……捕まえた獲物の哀れな抵抗を馬鹿にするような下卑た態度にネ
フェティアの背筋に寒いものが走った。見下した笑みの男が一歩近づく、後ろは木なので後ず
さりはできない、左右に逃げようとしても足がもつれてうまく動けない。
 そして男の腕がにじり寄り、右手はネフェティアの乳房を、左手は尻を、それぞれ大きな膨
らみを正面から捉える。山の頂点に人差し指が宛がわれたかと思うと、一本、二本と指が増え
て、気がつけば触れた手のひらが円を描くように動き始めていた。
「想像以上だな……エロい身体しやがって」
 伝わる熱はすぐにおぞましさへと変わり、ネフェティアの内心で拒否感と嫌悪感が膨れ上が
る。だが、男に触れられたことなど一度もない彼女にとって、あまりに衝撃的な出来事だから
か、身体は痺れてしまったように動かず、声も出るのはかすれた吐息だけだった。
「このでっかい胸といい、プリプリの尻といい……やるために産まれてきたんじゃないの
か?」
 男の声は低く小さいが、ネフェティアの心と身体を縛り付ける鎖となっていた。抵抗の意思
を示せないのをいいことに、男は口元を歪ませながら、左右の手指を乳房に押し付ける。太く
短い指はだんだんと深く沈み乳肉の中に埋め込まれた。単に触れるだけではない、指と指の隙
間から肉がはみ出すほどの荒々しい接触に痛みすら感じてしまう。
「…………何をするの、やめなさいっ!」
 ようやく、それだけを口に出すことができた。仇相手の憎憎しい目で男を見上げ、身体をず
らそうとするが、男の手は執拗で、乳房から手が離れたのはほんのわずかな瞬間で、再び手に
余る左右の胸山を揉みこまれていく。もう男の目的はネフェティアにもわかっていた。この男
は自分に卑猥なことをしようとしている……侍女たちの生々しい会話が頭の中でぐるぐると響
き始めた。
「いいから大人しくしてろよ……あんまり騒ぐと……」
 男が笑う、風が吹き葉がかさかさと鳴り始めた。周りの木も一部始終を眺めていて、男を囃
し立てているようだった。普段は美しささえ感じる深い森も、今は、異常な状況からか得体の
知れない魔物の口に見える。
 
 それでも、ネフェティアは自分を鼓舞し続けた。自分は王女なのだから、こんなことに負け
てはいけない、立場のない民に好き放題されるなんてあってはならないことだ……こう思うこ
とで、男の手に翻弄され続けていた気持ちが、すっと落ち着いてくる。
「大人しくなんて……できるはずないわ、私を誰だと思ってるの!?」
 いつもと同じ声が出た、これなら相手も引き下がるだろう……そう確信した。
「ナトダールの第一王女、ネフェティア様だろ、それがどうした?」
「どうしたって、わかっているなら早くこの汚らわしい手をどけなさい!」
 男の様子がおかしい、てっきり諦めて逃げ出すかと考えていたが、顔色一つ変えることなく、
胸を揉み続けている。身を捩ったところで手のひらという檻から逃げられるわけでもなく、か
えって手に乳房を強く押し付けてしまい、それが男の興奮を高めているようで、手つきは激し
くなる一方だった。
「姫様だからなんだ? 許してもらえるとでも思ったのか?」
 酷薄な顔で、男は言葉を吐き捨てる。興奮で彩られた瞳は血走ったものへと変わり、ネフェ
ティアは眉根を寄せて目を閉じた。歪みきった男の顔など見たくなかったからだ。

だが、視界を封じ込めたことで、逆に男の指の動きが手に取るようにわかってしまった。指
は軽く乳房の頂点をつついて、スプーンを押し付けられたプリンのように乳房を弾ませたかと
思うと、今度は手のひらをいっぱいに広げて山の裾野のほうからわしづかみにする。さらに手
を下に滑らせて半球を持ち上げてたぷたぷと弾ませる。そして今度は……いやになって目を開
けてしまった。
「くっ……いい加減になさい、これ以上の無礼は許しません!」
「助けでも呼ぶのか? いくら叫んでも無駄だぞ、この辺には誰もいないからな」
 確かに男の言う通りだった、この森で誰かに会ったことは一度もない。さらに、自分は内緒
でここに来ているのだから兵が助けに来る可能性もほとんどないだろう。
 だから自分で何とかするしかない、男の目は大きな果実ほどもある肉弾に一身に注がれてい
た。それに、そこに夢中になるあまりネフェティアを押さえつける力は弱くなっていた。逃げ
るなら今しかない……動き回る手が乳房から離れ、お尻へと向かったところで男を突き飛ばし、
背中に隠していた短剣を突き付けた。
――――――――――――――――――――――――
 ネフェティアの思わぬ抵抗に、最初こそ驚いた男だったが、よく見ればナイフを向ける手は
震えていた。使いこなせないのは目に見えて明らかだった。
「そんなおもちゃで何ができる? さっさとそれを捨てろ」
 白い手が差し出したナイフは、木漏れ日を反射して鋭い輝きを放っていた。豪華な装飾が施
されたそれには一瞥しただけで、男の目は襟元の白い肌、華奢な肩、玉のように磨かれた爪、
指先の細さに惹き付けられていた。
「こ、これ以上近づいたら本気で……」
 言いかけたところでナイフを叩き落とし、ネフェティアの頬を軽く平手打ちした。白磁を思
わせるすべすべした、水を含んだ豊かな頬の感触が手に残る。
「ひっ…………!」
「少し悪さが過ぎるんじゃないか? 次はないぞ……」
 ナイフを拾い上げるとそれをネフェティアの口元に寄せ、男は今まで以上に威圧的にささや
く。彼女の肩から力が抜ける、もう抵抗はないだろうと後ろに回した両手でお尻をむぎゅっと
揉み潰した。胸よりは若干小ぶりだが両手に満遍なくのしかかるむっちりとした重みと指を押
し返す弾力、さらには汗で湿ったシルクの生地……男は夢中になって薄皮に包まれた極上の生
尻をこね回す。
「こんな恥ずかしいパンツ履いてて……誘ってたんだろ?」
「うっ、ち、違う……」
 男の言葉を否定するが、ずいぶんと弱弱しくなった。糸のようにか細く、鈴のように心地の
いい声を聞きながら、スカート越しに三角形の布を引っ張って食い込ませ、お尻の中心に指を
向かわせる。布を隔てた先にある、息づく巨尻の温かさ、動くだけでふるふると揺れる肉の柔
らかさを存分に堪能した。
「っ、う……ぅ……」
 ドレスの上からでは我慢できるはずもなく、生地を摘んだ手を開いて、閉じて、を繰り返し
長い裾を捲り上げる。背中越しに見える、露になった尻は絶景だった。下着はよじれて大きな
お尻のほとんどを見せており、サイズ自体も小さいのか生尻に縁の跡がついていた。そこをな
ぞりつつ右手を盛り上がった尻肉に乗せた。
 男と密着しているせいか、お尻から伝わる汗の熱いぬめりを感じる。しかしそれが、肌と指
をいっそう強く吸い付かせ、自然と指の動きも激しくなっていく。
「でかい尻だな……パンツがきつそうだぞ」
 左手でネフェティアをきつく抱き寄せ背中を撫で回しながら、尻肌に押し付けた右手の匂い
をかげば、柔らかな甘い匂いが鼻先をくすぐった。伏目は、睫の濃さからか艶かしく見える。
 
 指すべてを飲み込まんとする蕩けんばかりのお尻、胸板に当たる豊穣な双球、全身から発散
される、気品がたっぷり乗った香り……大輪の花が開くだけ開ききっているような、匂やかな
色気の中にみえるあどけなさ……臍近くに押し付けたペニスはズボンの中でぐちゅぐちゅと溢
れた先走りが音をさせていた。
「お願い……許して…………」
「駄目に決まってるだろ」
 ネフェティアの見開いた目には、不安、恐れ、悲しみ、怒り……ありとあらゆる負の感情が
こもっていた、悪意のない懸命な哀訴を見れば、手心を加えたくなる者がいたとしても不思議
ではない。しかし男は違う、斜めにそそり立つ肉の槍で締まった腹を突きながら、互いの胸部
にできた隙間に手を滑らせ、再び乳房を揉みたくり始める。
「あっ、うう……こんなこと、絶対に……」
 指に引っかかることのないシルクの肌触りと、わずかなこわばりを指に伝えるブラジャーの
カップ、その次にたっぷりと重たそうに揺れる乳房があった。
 ネフェティアの整った顔を見ながら、乳房を握り、そして離す。手を緩めると圧力から解放
された果肉がふるんっと小さく弾んだ。幼い顔には、違和感すら覚えてしまうほどの巨大な肉
山。まさに母性の象徴であった。
「はあっ、う……気持ち悪い、やめて……」
 さらに、ただ柔らかいだけではなく、強めの弾力で乳房が指を跳ね返す。果物が熟さないま
ま大きく実ったような不自然さを感じるが、それゆえにもっと蹂躙してやりたいという征服感
が胸のうちにこみ上げてくる。
「やれやれ……姫様は文句ばかりだな、じゃあどこを触ってほしいんだ?」
「触らないで、こんなのふざけてるわ…………!」
 歯を鳴らしながら出したのは、消え入りそうな小さな声。男の反撃を恐れているのがあから
さまだった。手をネフェティアの頬にかざせば、びくっと彼女の肩が大きく跳ね、さっきまで
吊るし上がっていた大きな目元から、涙がぽろぽろと落ちてきた。
「……今度口答えをしたら、本気で叩くからな」
「………………」
 黙り込んだネフェティアを尻目に、男は二つの熱い肉の球体を、ドアノブを回す要領で揉み
上げていく。飲み込み、押し返す乳肉の息づきはより大きなものへと変わり、二枚の布から伝
わる熱はさらに温かさを増した。ネフェティアがどれだけ頭で拒否しようと、身体は男の愛撫
によって少しずつ花開こうとしていた。
「っふ、く……ぅ、ん……」
 さらさらとした、光の輪を作るほどに手入れが施された髪も、男が身体をもみくちゃにした
せいで、ほつれ、乱れ始めていた。男は長い髪を手櫛で整えてやりながら、ネフェティアの細
い顎を持ち上げる。
「そろそろだな……」
「……え、きゃあああっ!!」
 怪訝そうな顔はすぐに恐怖と狼狽に彩られた。男が強引に襟元からドレスを引き裂いたから
だった。陽に当たっているとは思えない雪白の柔肌、それが香油を塗りたくったように汗でぬ
らぬらと照り光っていた。カップに押し込められた胸はその大きさが強調されており、思わず
目を奪われてしまう。
「すごいな……」
 そして間髪入れずに二つのカップを繋ぐホックもちぎってしまう。二つに割った大きなメロ
ンのように見事な乳房が、ぷるんと揺れながらまろび出てきた。
 たっぷりと凝脂を乗せた、白い蒸し菓子……指で軽く押せば、ふかふかとした肌の柔らかさ
が心地よかった。その頂点にある乳首は、幼女のそれのようにほとんど成長していない。爪で
引っかいてみるとネフェティアが形のよい眉をしかめた。

「見ない、で…………」
 彼女の言葉など意に介さないといった様子で、男は顔を寄せると控えめな桜色の先端を口に
含んだ。唇で果肉を挟むと、乳肉とは違う固めの反発を感じる。尖らせた舌先を肉苺の形に
そって進ませると、ほんのりとした塩味と甘味が口の中に広がった。
――――――――――――――――――――――――
「ひゃうっ、く、ん……やめ……て、ぅ」
 突然の男の行動、その意味を理解できないで入るうちに乳首にむず痒さを覚える。胸やお尻
を荒々しく揉まれたときとは違い、じわじわと身体の内から何かを引き上げられるような……
心の中を無理矢理覗き込まれるような、変な気分になっていった。
 苦痛は薄い。だが、それが余計にネフェティアの嫌悪感と羞恥心を高めることとなった。鼻
の辺りがツーンとしてきたかと思うと、瞼を焼くほどの熱い涙が頬を、顎を伝い、無残に引き
裂かれたドレスに円いしみを作った。風景が涙の中で、歪みながら分裂し、男の野卑た顔もよ
く見えない。
「やだ、ぁ……離しなさい、んう」
 むき出しの乳房を隠そうとしても、男の手に邪魔をされてしまう。全身が燃え盛るような恥
ずかしさに、今度は頭がふらふらとして、後ろにある木にもたれかかった。男は構わずに、コ
インくらいの大きさの乳輪と、男の小指ほどの乳首に舌をなぞらせてくる。蛇や蛞蝓のように
くねる舌が当たった部分は、一瞬感覚が無くなって、その後すぐに甘い疼きとともに痺れが広
がった。
「何だ? もしかして……気持ちよくなったのか?」


   続く


 

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最終更新:2011年12月24日 09:55