傾向:エロ本番有り、不愉快描写はたぶんないはず、多少暗いです


「気の利かないッ」
 部屋に激昂した叫び声が響き渡るやいなや、空気が凍りつく。
 ――白百合城と呼ばれる、美しい城の一室、姫百合の間。名前に相応しく、とりわけ美
しい部屋として知られるが、皇女の私室という性質上、入ることのできる者は限られてい
る。
 とはいえ、部屋は広く、取り扱いに注意が必要な家具やら、いつでも磨かれていなけれ
ばならない鏡や窓などがあるおかげで、昼間は侍女や従僕も多く出入りしていた。
「この――のろまめッ」
 慎重な手つきで花瓶に花を生けていたメイドの顔に、恐怖とも不安とも知れないものが
かすかによぎる。図書棟の本を回収しに来た従僕が、慌てて本を抱えると出て行った。
 部屋にいた数人の召使たちの顔には、動揺が浮かんでいた。だが、はじめてのことでは
なかったので、みな必要以上に騒ぎ立てはしない。
「……姫さま、また」
「しっ」
 若いメイドがつぶやくと、鋭く年上のメイドがさえぎる。それ以上は誰もなにも言わず、
気まずい表情を見合わせるのみだった。
 パシンッ!
 鋭い音が部屋の向こう、主の寝室から聞こえてくる。しんとしたこちらの室内のことに
気づいているのかいないのか、しばらくはそれきり叫び声も聞こえなかった。
「……ご機嫌が悪いのよ。今日は早めに仕事を切り上げましょう」
 小さな声でささやいたのは、一番長く働いているメイドだった。彼女は手に持っていた
花を、それまで以上にてきぱきと花瓶に飾り付けていく。
 彼女は背後でこそこそと交わされる会話にも気づかない振りをする――主の噂話など、
本来ならその場で割って入りやめさせるところだが、もうこのことを外で他言しないよう
に言い聞かせるのが精一杯だった。
 それほど、姫の仕打ちは理不尽だった。
「……ニーノ、かわいそうね」
「だめよ、そんなことを言ったら……」
「だって、ニーノはなにも――」
「き、きっと、姫さまだって理由があってニーノに怒っているのよ。決まってるわ……普
段はあんなにおやさしい姫さまなんだもの」
「……」
 その時、再び叫び声が聞こえた。
「なんとか言えッ。黙っていればわたしの怒りが通りすぎるとでも思っているのかっ」
 姫――主の声だった。
 ひときわ鋭い声の響きに、噂話をしていたメイドたちも打ち据えられたように口をつぐ
む。
「……さ、今日はもう終わりよ。片付けはすんでる?」
「は、はい」
 年かさのメイドがそっと促すと、それぞれ逃げるように、しかし静かに扉へと向かう。
 主の寝室の中でなにが起こっているのか、少しだけ好奇心をのぞかせた若いメイドがこ
っそりと振り返った。しかし、横にいたメイドににらまれ、慌てて前を向く。
 ぱたん、と扉が閉じ、部屋から誰もいなくなった。

「お前のようなクズに、わたしがっ……このわたしが口をきいてやっているだけでありが
たいのよ! そのわたしに逆らうの!? なんとか言えと言っているっ」
 皇女クレメンティナの右手は、さきほど目の前の男を勢いよく打ち据えたせいで、軽く
しびれていた。


 寝室は薄暗かった。
 白昼のまばゆい光もさえぎる、ダマスクのカーテンは締め切っている。ただ細く隙間か
ら漏れている陽光が、薄ぼんやりと室内を浮かび上がらせていた。
 異様というほかはなかっただろう。仮にも帝国の姫の寝室である。いわば、宮殿の奥深
くに隠された、聖域とも言うべき場所だった。
 帝国人民の倫理観は、結婚前の娘と男が締め切った部屋にふたりきり、などという状況
を許さない。無論高貴な身分の女性ほど、その倫理観に縛られる。
 だが、帝国一高貴な未婚の女性と言うべきクレメンティナの寝室で、今まさに倫理上許
されざる対峙が行われていた。
「それともクズはクズなりにわたしに遠慮でもしているというのか、小ざかしいッ」
 一方はクレメンティナ――帝国第一皇女である。
 流れ落ちる黄金の髪が、白い顔を縁取っていた。流行の髪型に結い上げることもせず、
ただ自然のまま背中に流しているだけだが、誰も彼女を野暮ったいなどとは看做さないだ
ろう。
 絶世の美女と名高かった皇后の美貌を受け継いだ彼女は、自然そのままで美しかったか
らだ。髪型をつくったり、飾り立てたりする必要はない。
 大きな緑色の瞳と、こづくりな唇。鼻の上によく見ると薄くそばかすが散っているが、
それすら彼女の美しさを損なう原因にはなっていない。
 激怒に眉を逆立て、頬を上気させている。帝国女性将校用の制服に皇女の紋章がなかっ
たら、彼女を凛々しい少女士官と勘違いする者も多いだろう。姫という名から感じる弱弱
しさはまったくなかった。
「……ふん。あくまで黙っているつもりなのか」
 クレメンティナが軽蔑を含んだ暗い目で見たのは、対峙の片割れ――姫の寝室に存在す
る異物とも言うべき男だった。
 まだ少年と言っていい年頃だった。女性にしてはやや背の高い姫より、少しだけ背が高
いだけである。南方出身者特有の浅黒い肌。黒髪はさきほど頬を殴られたせいで、やや乱
れていた。
 彼は反抗的なような、従順なような、相反する態度を取っていた。どちらとも取れるよ
うな目つきをして、黙っている。
 姫の呼吸が乱れる。
(こいつっ……)
 少年の名はニーノ――十年ほど前に帝国が植民地とした国で、かつて貴族だった少年で
ある。今でもその国は自治領として存在してはいるものの、彼の一族は帝国の侵攻の際、
激しく抵抗したというので貴族位を剥奪されていた。
 幼かった、というだけで、ニーノは命を救われた。いや、救ってやったのだ――クレメ
ンティナが。
「……もう一度殴られたいのかっ」
 いつからこんな関係になったのか、彼女はもう覚えていなかった。かつて、ずっと昔、
ふたりで秘密を持ち、隠れて遊んだころもあったのに。
(……今では、こうするしか……)
 ふと心に覚えた感傷、それは一瞬で消えた。なにが悪かったのかはもうわからない。だ
が、昔のことは昔のこと――もう取り戻せない、蜃気楼のようなものにすぎなかった。
 その時、不意にニーノが口を開いた。
「もうメイドはいなくなったのではありませんか」
「えっ……」
 クレメンティナは虚をつかれ、口ごもった。
(くそっ……)
 しかし、ニーノの言葉の意味を理解した瞬間、押し寄せてくる感情の波に眩暈を覚えそ
うになる。
 怒り、羞恥、期待――不安、焦燥。
「そ……それがなんだッ。話をそらすなっ」


 彼女は必死に叫んだ。そうすることしかできなかったからである。
 少年はまるで、目の前のクレメンティナがまったく話の通じない異国の人間であるかの
ような口ぶりだった。
「そらしてませんよ。だって、姫さまが私に怒鳴り散らすのは、メイドを追い払うためで
しょう」
「こっ……」
 怒りのあまり、言葉が出てこない。クレメンティナは再び右手を振り上げたが、それを
振り下ろせずにいた。
(わたしは第一皇女だ! こんな……こんな辱めを受けていいわけが……ッ)
「姫さまが難癖をつけて怒り出す、するとメイドが逃げて行ってしまう。私とふたりきり
になる。簡単なことでしょう」
「な、にを……この……恥知らずがっ。わ、わたしが……わたしが、お前などとふたりき
りになりたいなどと、思い上がったことをッ……」
 おかしいぐらいに息が乱れていた。ぐるぐると部屋がまわっている気さえする。
(ち、違う……わたしはそんなことのために、怒っているんじゃない……)
 少なくとも、自分ではそう思っていた。しかし、どうしてこんなに眩暈がするのだろう
か。考えてはいけない、とクレメンティナは少年から目をそらした。
「……お前のような下種の考えることね。わ、わたしは……お前のその性根が嫌いなん
だ。お前のような下等な人間、このわたし以外に誰が使ってやれると思うの? 感謝して
わたしの言う通りしていればいい……」
「もちろん、そうしています。でも、それで用が終わりなら、私は自分の部屋へ帰ります
よ」
「……」
 クレメンティナは唇をかんだ。ニーノの言葉に、混乱を覚えたからだった。
(……そうだ、なにを言われたって、構わないわ。クズの考えること……。わたしは、こ
の男に、罰を与えなければ……)
 彼女は自分がなにを考えているのか、よくわからなかった。下々の世界でなら幼馴染と
言われるだろう彼の前にいると、大抵そうなる。
(そう、部屋に返すわけにはいかない。……まだお仕置きがすんでいないのだから。わた
しに無礼な態度を取ったむくいを、思い知らせてやらなければならない……それだけだ)
「……誰が部屋へ帰っていいと言った」
 クレメンティナはようやく口を開いた。
「仮にも主に向かって、よくもそんな口をきけるものね。……そ、そこに立ちなさい」
 ベッドにことさらふわりと腰かけたのは余裕を見せるためだったが、彼女の声はかすか
に震えていた。
 ニーノは口数が多い方ではない。今回も黙って命令に従った。
 ちょうど、腰掛けた皇女の前に少年の腹が来るような、至近距離である。
「いいこと――わたしがなにをしても、我慢するのよ」
 ごくり、と喉を鳴らしたのが自分だとわかっていたが、そんなことはなかったかのよう
に彼女は居丈高に続ける。
「我慢できたら、か、返してあげるわ。もっとも、恥知らずのお前のこと、と、途中で
みっともなく、わたしに、懇願することになるでしょうけどね……っ」
 クレメンティナは我知らず声を上ずらせる。
「みじめな、恥知らずっ。わたしの許可なく、お前はなにもできないんだっ!」
「……」
 皇女はののしりながら、夢の中を歩いているような頼りない感覚をおぼえた。自分が自
分でなくなるような、目の前に薄いもやがかかって現実味が失われていくような気分だっ
た。
 彼女の両手がズボンにかかっても、ニーノは動かなかった。それから、紐とボタンをは
ずしても、その手が震えていても、なにも言わない。


 皇女にあるまじき行為だった。その上、手は震えているものの、複雑な構造の異性の服
を手早く暴いている。
 ――はじめてではなかった。
「……あさましいっ」
 最小限、ズボンの前をあけてしまうと、皇女はそう吐き捨てた。緑の瞳には興奮がある。
 下着を押しのけて、あろうことか彼女がつかみ出したのは、ペニスだった。
 完全に勃起はしていないものの、半分ほど立ち上がっている。オスの匂いが眩暈を加速
させる。
「わ、わたしに罵倒されながら、なにを期待していたの。こんな、汚らわしいモノを……
よくも恥ずかしくないな」
 彼女は魅入られたようにそれを眺めた。見ているあいだにも、手をそえているせいか、
硬さが増したようだ。熱をもって、脈打っている。
(なんてグロテスクなの……こんなものを持っているなんて、男って汚らわしいわ……。
……いえ、もしかしたら、こんなモノがあるのはニーノだけかもしれない)
 そう考えながら、目が離せない。
「ど、どうなの、期待していたんでしょう?」
「……ええ」
 ニーノの顔はよく見えなかったが、うなずいた気配があった。
 クレメンティナは勝ち誇った。
「ふ、ふん、そんなことだろうと思った。ケダモノね、お前は……浅ましいわ」
(なにが帰ります、だ! ほ、本当に、こんないやらしい男、使ってやるのはわたしだけ
よ……)
 手の中で暴れだしそうな、片手ではあまるサイズのモノをゆるやかにさすってやる。
「こ、こうされたかったんでしょう」
 言いながら、彼女はソレに顔を近づける。ますます強くなるケダモノの匂い。もう片方
の手をそえてやり、てかてかと下品なつやのある頭に息を吹きかける。
 ぴくりと反応したところを見ると、いつものアレを待ちかねているらしい。ここは素直
だ。
 赤黒い肉棒の頂点に、丸くしずくがあった。何度か息を吹きかけてやり、手でゆらゆら
と幹をこすりあげる。どんんどんと熱を増していく。
「い、いつもみたいに、してあげる……我慢しなさい」
 クレメンティナは唇のあいだから舌を出すと、そっとしずくを舐め取った。口の中に独
特の苦さと、むっとするような匂いが広がる。
(汚い、汚い、汚いっ! 汚らわしいっ!)
 荒くなる呼吸。何度も何度も、皇女は従僕のモノに舌を走らせる。舐めとっても舐めと
っても、しずくは消えてなくならず、それどころか量を増やして滴り落ちてくる。
 最早それが自らの唾液なのか、オスの出す分泌物なのかもわからなかった。控えめにつ
き出していた舌は、いつしか口をうつろに開いて、べったりと肉棒をなぞっている。
 手できつめにしごきあげながら、膨れきったペニスに舌をこすりつける。朦朧とした頭
では、もうまともなことなどなにひとつ考えられなかった。
(下品よ、こんな音たてて……! こんなモノをガチガチにして……!)
 じゅるっ、じゅるっ。
 唾液と粘膜と、それをこすり合わせるような手の動き。そこから発せられる水音は、あ
きれるほど下品だった。
「き……気持ち、いいんでしょう。クズね……本当にっ。でも、これは罰なのよ……っ、
勝手に達しないで、我慢しなさいっ」
 見上げると、わずかに顔をしかめたニーノと目が合った。きっと快感に耐えているのだ
ろう。


 舌先に感じる汚らしくて下品でたくましいモノの感触に、クレメンティナは大きく口を
開いた。く、と飲み込むと、くらくらするような気分になる。すでに口のまわりははした
なく唾液まみれになっていたものが、押し出されたようにさらに溢れてくる。
 じゅ……ぶぶぶっ。
「ふ、ぐぅ」
 精一杯飲み込もうと、喉奥までそれを押し込んだ。ビクリと反応するペニスに吸い付き、
ちろちろと舌を這わせる。
 根元の陰毛に顔をうずめるようにすると、ほとんど息をするのも困難なほどだった。剛
直がますます膨れ上がり、容赦なく奥を突いている。
「ふぅっ……ふぅっ……ふぅっ……ふぅっ……」
 荒い呼吸を必死に鼻から行いながら、皇女はゆっくりと肉棒を吐き出す。舌で肉を味わ
いながら、口内全体でしめあげながら。
 上品な仕立ての将校服に唾液やらなにやらわからない液体が垂れて落ちる。
 先端まで来たところで、くりくりと舌先で小さな穴をいじり、ぎりぎりまで出してから
また飲み込む。ぶじゅうぅぅっ、と、唾液が押し出され音を立てた。
 わずかに速さをあげながら、それを続ける。ぎりぎりまでくわえこみ、ぎりぎりまで吐
き出す。赤黒い肉棒を口で犯しながら――いや、その逆だろうか。
 じゅぶぅぅぅっ、ぐじゅうぅっ、じゅぶぶぶぶっ。
 音がどんどん大きく、下品になる。ペニスはいまにもはちきれんばかりで、皇女の高貴
な口に汁を垂れ流している。
「んぶっ、ぐぶぅっ、おぶ、うぅぅっ」
 いつしか、夢中になってそれをむさぼっていた。自分が今どんな姿をして、どんな声を
出しているかにも気づかない。両手でニーノの腰にしがみついて、顔を上下させている。
 だから、不意に彼が口を開いた時、意味を理解できなかった。
「……そろそろ」
「んぶぅっ、んっ……んぐぅぅぅっ!!」
 頭をつかまれて、思い切り腹を押し付けられた。
 喉奥の奥までペニスが突き刺さる。同時に、ソレが膨張したのがわかった。舌を押しの
け、暴れる彼女の頭を押さえつけながら――。
 ぶびゅうぅぅぅっ! びゅぅっ!
 濁流がはじける。ねっとりとしたものが喉にぶつかり、張り付きながら胃に流れ込んで
行く。
「ふぐぅぅぅっ! うぅぅっ!」
 必死にニーノの身体を押しのけようとしながら、なぜかクレメンティナの舌は血管の浮
き出た肉棒につよく押し付けられ、きゅうきゅうと吸い付くことをやめられなかった。苦
しいのに、むせかえりそうなのに。
 びゅくぅっ! びゅるびゅるっ! びゅるぅぅ……!
 ずいぶんながいこと、そうしていたような錯覚に陥り、酸素不足でか朦朧としてきたこ
ろ、クレメンティナの頭を押さえつけていた手が離される。
「……っ! げほっ……うぇっ……! はぁっ、はぁっ、はぁっ、えぐぅっ……」
 口の端から白いものを垂らしながら、彼女はきっとニーノをにらんだ。
「だ……誰が出していいと……っ」
「でも、いつものことだし、他の場所に出して汚すよりはいいでしょう」
 平然とした答えが返ってくる。クレメンティナは涙と唾液にまみれた顔をそむけ、吐き
捨てた。
「……いつになったら、お前はそ、そういう生意気な真似をやめるの? ……こ、このわ
たしに、そんな汚いモノを吐き出すなんて……」
「……でも」
(言わないで!)
 心のどこかで、自分がそう答えた気がした。だが、かすんだ思考の中ではあまりに弱々
しすぎる声だった。


「でも、そうすれば、続けられますよ……姫さま」
「あ……」
「『お仕置き』をね」
 クレメンティナの前には、いまだ硬くそそり立つモノがあった。

 いつからこんなことになったのか、忘れてしまった。
 忘れたかった、という方が正しい。皇女はどう思っているのか知らないが、彼の方では
思い出すことができた。とはいえ、それがあまり意味のあることとも思えない。
 クレメンティナは彼に命じながら、彼を罵りながら、折檻と称しながら、異常な行為を
要求するようになっていた。
 そう、『犯してくれ』と。
 心の底ではきっとわかっているだろう。汚らしいと言いつつ、熱心にペニスにしゃぶり
つき、我慢しろ勝手に出すなと言いつつ、身体を許す。こんなことをしていて、本当にな
にもわかっていないとは思えなかった。
「ほら、い、入れたいんでしょうっ」
 途切れ途切れの声音で、口調ばかりは強気に言い放つ。『入れてください』と言うこと
だ。将校服のスカートの下にはなにもつけておらず、そこを薄明かりの元にさらしていた。
 顔が上気しているのは、期待のためだろうか。恥ずかしさのためだろうか。どちらにせ
よ、緑の瞳はニーノの股間にあるものをじっと見つめていた。
「許してあげるわ、でもっ、勝手に出さないで、そ、そんなことをしたら……」
「したら?」
 尋ねると、それが意外だったのか、皇女は一瞬黙った。だが、震える声で続ける。
「そ、そんなことしたら……許さない。お前のその薄汚いモノに教育してやらなきゃ、い
けなくなるわ」
『好き勝手してください』だ。そこまで考えて、ニーノは皇女の本心を読むことに突然う
んざりした。
「ああぁぁぁぁっ!!」
 熱く濡れている中心に強引に押し入ると、嬌声が上がった。もう何度もこうして関係を
持っている。だがほぐれたそこは未だにきつく彼を締め付けた。なにもしなくても、こう
なるころには溢れて下着にしみを作っている潤滑油があるおかげで、ぴったりとしたそこ
をかきわけるようにして入っても、皇女が苦痛を覚えている素振りはない。
 いや、それどころか、肉の楔を味わうかのようになかの壁がうごめく。見ると、クレメ
ンティナは光のない目で空を見つめ、口を半開きにしてビクビクと痙攣している。
 最初のころは、痛みに身体をひきつらせていたのが嘘のようだ。と言っても、一年もた
てば、すっかり慣れて当然かもしれない。
「はぁっ、ふぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、あはぁっ……」
(やさしくしてやった方がいいのか……)
 彼はふと考えた。ニーノとて、こんなことになっているのを後悔しないわけではなかっ
たからだ。だが、最初のころに一度、やさしくした時のことを思い出せば、きっとそれは
彼女の望むところではないのだろうとも思う。
 ――恋人気取りか、この下種がッ!
 なぜああまで彼女が激昂したのか、そればかりは彼にはわからなかった。ただし、それ
が今のニーノとクレメンティナには相応しくないもののような気がするのはわかる。
 結局、一瞬去来した感情も、火のついたように熱くうねる肉壁の感触の向こうへ消えて
行った。幸い皇女はぼうっと宙を見上げているばかりで、彼がなにかを考えたのにも気づ
かなかったようだ。
「はぁっ、はぁっ、あっ、ああああっ」
 押し込んだペニスをさらに奥に押し付けると、ぷりぷりした感触の子宮口に触れるのが
わかる。クレメンティナはそこを探られると、決まって大した時をおかずに達してしまう。
「あーっ、ああっ、あーっ! あうあぁっ! おし、つけるなァッ……! ひっ!」


 先端でやや乱暴に子宮口をこねる。まるでその中にまで押し入りたいとばかりに。ただ
でさえ狭くびったりと肉棒を締め上げていた膣が、ぎゅうっぎゅうっとうごめいた。
「……っ! ああっ……、ああっ……あーっ!! あーっ!!」
 背中を硬直させ、ベッドのシーツを握り締め、皇女は涙と唾液にまみれた顔をのけぞら
せる。ぷしゃぁ、となにかをもらしたような気配からすると、早速絶頂を迎えたらしい。
おそらくもらしたのは潮だろう――小便だろうとどうだろうと、構いはしない。
 皇女はなにかを訴えるように口を開いたり閉じたりさせるものの、出てくるのは意味の
取れない叫び声だけだった。
「あっああぁっ、ぉお……っ、はあー、はぁー……」
「気持ちよさそうですね」
「は、あぁ、あぁあ……ふあぁっ……」
「動きますよ」
 開いた腿は白い。その根元の白い丘と、ぴったりとくっついた浅黒い腹が交わる場所を、
クレメンティナはぼんやりと眺めていた。きっと、なにを言われたのかよくわからなかっ
たのだろう。
「ふっぐぅっ!」
 ずるぅっ、と彼が楔を引き出すと、めくれるようにして肉がついてくる。離したくない、
という風にぴったりと吸い付き、ひくひくと震えていた。
「ひっ、あ、あぁぁっ」
 壁をこそげ取るように抜かれるモノに、悲しそうな、悲鳴のような嬌声が上がった。
 しかし。
「おああっ!」
 ずどん、と再び奥に打ち込まれた衝撃に、およそ姫らしくない絶叫がほとばしる。
「あーっ! あーっ! あーっ! お、おくぅっ! ひっ、かはぁっ」
 ずぶっ、ずぶっ、と続けて出し入れし、そのたびに奥を突き上げる。皇女は髪を振り乱
し、とろけきった顔で反応した。
「いぃぃっ、い、あーっ! おく、すご、い、すごいぃっ! ひぃぃっ! あぅぅっ、お、
おおぉっ、や、やめ、おおぉっ、おかしくぅっ!」
 ぐねぐねと精液を搾り取るための蠕動を繰り返すざらざらした肉壁は、彼女が達し続け
ていることを意味している。一度射精していなかったら、とっくにニーノも精を放ってい
ただろう。最近、ことに敏感になってきているらしい皇女の肉体――。
 ニーノは動きながら、のしかかるようにして手を伸ばし、将校服の上着のボタンを外し
て行った。ひとつ、ひとつ……ゆさぶられ、跳ねるような痙攣を繰り返す身体のおかげで、
ひどく手間取る。ボタンを外すたび、締め付けられていた丸い胸があらわれた。
 宮廷の男なら、この美しい皇女の服の下を想像したことが必ずあるはずだ。下劣な想像
をはねつける凛々しさは、かえって劣情の的になっているフシがある。
 普段は窮屈に押し込まれている豊かな丸み。うっすらと汗をかいている。突かれるたび
にゆれ、頂点はとっくにとがりきっていた。
「あ、ああっ、ひっ、あああ、なにす、ひぃっ、いあぁぁぁっ!」
 桃色の乳首に口をつけ、軽く歯をたてる。クレメンティナの嬌声は『痛み』ではなく
『快楽』の印だった。
「だめ、え、ああぁぁぁっ! いっ、しょ、に、おぉぉっ! いっしょにっ! したらぁ
っ」
「なにがです?」
 かすれた声で尋ねると、かろうじて耳に届いたのか、必死に皇女はうなずいた。
「し、した、と、あぁっ、うえ、と、だ、めだからぁっ!」
「下と上?」
「あいぃぃっ!」
 出し入れしていたモノを強く奥におしつけ、かき混ぜる。同時に乳首をひねりあげると、
目を見開いて姫は硬直する。
「はひっ、あぁっ、あっ」


「どことどこです」
「ひっ、やめっ、やめてぇっ! 言うからっ、うえっ……おぉっ……おっ……おっぱいとっ」
「と?」
「あ、あそこ、をっ……どうじは、おね、がい……ひぃっ!」
「よく言えました」
「……!」
 両方の頂点をひねってやる。突然増えた刺激に、ぱくぱくと口をあけ、皇女は声もでな
い。
(本当にやめてほしかったのかな)
 ふと考えたものの、ニーノの方もいい加減、快楽に頭がぼうっとしている。暴発しない
のが不思議なほどで、容赦なくしぼろうとする肉の動きに、そろそろ限界が近づいていた。
 なにも言わず、律動を再開する。激しくぶつかり合う肌と肌が音を立て、飛び散ったし
ぶきがそこらにしみをつくった。
「はっ、かはっ、あーっ! あーっ! あーっ! あーっ! ま、またイクぅっ。ひぃっ、
おぉっ」
「俺も、そろそろ……」
「イッ、くぅっ、い、いくぅっっ! あーっ! あああっ! ああああーーーっ!!」
 びくんっ。
 先に限界を迎えたクレメンティナがのけぞると同時に、ぎゅうっと膣が収縮する。ニー
ノは思わず腰を引いた。ぎりぎり間に合ったらしく、ぶるんと飛び出したペニスが白濁を
噴出する。
 びゅぅぅぅっ!
 二回目とは思えない濃いものがクレメンティナの腿を汚した。将校服やシーツにもかか
ってしまったが、もう細かいことを考えている余裕はなかった。
「はぁ、はぁ……」
「あ、あああっ……」
 秘所を隠すこともせず、いまだ余韻に身体を震わせている。ニーノは息を整えながら、
再びどうしてこうなったのか、また考えずにはいられなかった。
(かわいそうなお方だ)
 帝国第一皇女。病に臥せっている兄皇帝が斃れれば、帝国はこの少女のものになる――
いや、この少女にのしかかる。すでに押しつぶされかけている。皇位継承権第一位の重み
は、少女を蝕み、やがて食い尽くしてしまうかもしれない。
(俺が言うことではないか……)
 少年は目を閉じると、もう一度快楽で我を忘れるため、ぼんやりしている少女の上へ覆
いかぶさった。

 ――あの女をあげるわよ。ふふっ、ほしかったんでしょう。
 紅茶を片手に、明日のピクニックの話をしている、そんな風情の声音で、少女が言った。
 ――いいのよ。だって、わたしにはいらないから。ね?
 ――あら、遠慮しないで。ふふふ……考えたことない? あのいけ好かないいい子ちゃ
んを、めちゃくちゃにするところ。
 ――わかるわよ、だって、わたしたちは双子だもの。だから、ね。あの子だって本性は
チ○ポ大好きの、メスよ。ほぉら、ね。あは。
 そう言いながら、身動きできない彼の上で身をくねらせていた。
 ――いい子だから言うこと聞いて……ね。ああっ。そうじゃないと……。
 ――どうしてわたしが魔女って呼ばれてるのか、教えちゃう……。

 第一皇女、クレメンティナ。そして、第二皇女――コンスタンツァ。
 双子の皇女、光と影。塔に閉じ込められた魔女に会ってしまったのが、運の尽きだった
のだろうか。

続く

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最終更新:2010年04月24日 19:31