美しい姫君が己の居城から外を眺め、小さくため息をついた。
「もう、スレ数が800を越えてしまいましたのね」
「……ええ。ですから、もうやらなくてはいけません」
傍らに控えていた、姫君の騎士が抜き身の剣をたずさえながら固い表情で言った。
それはとても低い、乾いた声だった。
「本当に必要なことなのでしょうか。スレを削除するだなんて……。
どのスレにも住人はいるでしょうに」
その悲痛さに姫君は秀麗な顔をゆがめる。
だが、騎士は首をふって姫君にこう言い聞かせた。
「おやさしいあなたには、さぞご心痛でしょうが
この板には801以上のスレを存在させることはできないのです。
それが、容量という世界の理です」
「ああっ、ではもう避けられぬことなのですね」
姫君は残酷なその決まりを思い、さめざめと泣いた。
だがひとしきり涙を流してしまうと、その強い魂が光を取り戻し、瞳を輝かせた。
そして唇から出た言葉には力があった。
「なればこそ命じます、わたくしの騎士よ。
板を守るため、いくつかのスレを消しなさい。
ですが、せめて住人の足跡もまばらなスレを選ぶのです」
「……御意のままに」
騎士は愛しい主の前に膝をつき、剣をたてると礼をとった。
すぐに旅立たねばならない。
だがその前に、この美しい姿を脳裏にしっかりと焼き付けておきたかった。

終)

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最終更新:2009年05月06日 15:09