「……怖いんです」
冷静になった今だからこそ、伝えなければならなかった。

「私、なんかもう『今まで通り』の自分でいられる自信ないです」
自分の中の張り詰めていた何かが、折れ崩れてしまったのを感じていた。
「意地張ってました。自分に嘘ついてました。…でも、だから頑張って来れたんです」
追い立てられていたからこそ、苦痛から逃げるためにも走って来れた。
怠ければ、立ち止まれば、尻に鞭がくれられたからこそ泣きながら走って来れたのだ。
なのに痛みがなくなったら。
「ロア、私どうしたらいいと思いますか? ……どうしよう」
緩んでしまった心、緊張を保てない心に、今更貴上の仮面を被り通せる自信がなくて、
それでもきゅうっとしがみつく姿には、男への揺ぎない信頼がある。
――ロアならきっと答えをくれる。自分に道を示してくれる。

「うん、そんなリュカに、実はお願いがあんだけどさ」
果たして、彼女の信望は正しかった。

「城の皆、特に女連中にさ、リュカから説明して説得してくんない?
俺ら悪い奴らじゃないですよ、悪魔じゃないです、酷いことする気ありませんって」
「え、ええ?」
「……ていうかこれ、どう見ても俺がムリヤリ犯したようにしか見えないから、
強姦じゃなくって和姦だったよって、リュカからも言って欲しいんだよ」
「それは……確かに、必要ですけど」
汗に愛液に精液に、おまけに『世界地図』との惨憺たる有り様のシーツを見て、
ちょっぴり冷や汗を掻くロアに、リュカも表情を強張らせる。
「…信じて、もらえるんでしょうか?」
というかこれ、冗談抜きで真剣な問題である。

二人の立場、この体格差、それでいて証拠隠滅のしようがないほどのこの大惨事。
自分が弁護したところで果たしてどれほど効果があるか、女としては大いに疑問なのだが。

「だいじょぶだって! 男が『強姦じゃなくて和姦だ』って言い張っても通じないけど、
女が『和姦だ』って主張したら実は逆レイプでもそれで通るって兄貴が言ってた!」
「そ……そういうものですか??」
よく分からないけれどものロアの自信満々な主張に、よく分からないなりに頷いてしまった。
どうも『逆レイプ』って単語がピンと来ないが、
しかしロアがそこまで力説するなら、きっとそうなのだろうと安心できた。

しかし理論では保証はされようも、問題はそれを実践する当人の実力。
「…で、でも無理ですよ、私が皆を説得だなんて」
「? でもリュカ、この家の女連中のトップだろ? 一応発言力は一番でかいんだろ?」
「だ、だから一応なんですよ、あくまで」
卑屈なリュカ、でも聡明なリュカ。ただでさえ後妻、それも四番目の妻であり若年の己が、
初妻時代から仕える年嵩の侍女の面々に、真に認められてるとは思ってない。

同じ女として同情はされ、憐憫は抱かれているかもしれないが、しかしそれとこれとは話は別。
二番目三番目の妻と同様、夫の独裁を抑止できずに一方的に嬲られた。
同情はできるも統治者の妻に程遠い姿は、
しかし見てきた周囲に『無力』であると、『小娘』だと思わせるには十分だ。
「私なんかが偉そうなこと言ったって、皆聴いてくれるはずないです」
世が乱れるほどに民衆は、解決できない、現状維持しかできない、無能な君主を許さない。
為政者は、統治者は、そういう意味では甘い仕事じゃないはずなのだ。
「……だって」

――だって彼女に、何が出来ただろう。
悲惨を極めた篭城戦の、例によっての徹底抗戦、玉砕とかが叫ばれる中、
次第に色濃くなる敗勢、来ない援軍、折られたプライドから来る自棄、狂気、疑心暗鬼。
…味方同士での粛清に次ぐ粛清、味方なはずの兵に犯された女を他所に、
しかし押し込められ監禁されるだけで済んでいた自分に、一体何が言えるだろう?

――そうとも、何が言えるというのだ。
まだ彼女の境遇は、じわじわと陰湿かつゆっくりな分、命だけは助かるものだった。
買われて来た幼子、逆鱗に触れてしまった下女、密告を受けた槍玉の臣、
…地下の拷問部屋に連れて行かれ、帰って来なかった彼らを思うに、まだ恵まれてる。
許されるはずがない。許してもらえるわけがない。…許されちゃ駄目だ。

「だって私……わんこだもん……」

自分が一番知っていた。
一番幸せになっちゃいけないのに、一人だけ幸せになってるその浅ましさ。
奪われ、犯され、悪魔な相手の精をたっぷり注がれてしまい、
でも幸せにしか思えない、罰なはずのそれが幸福で仕方ないのが許せなかった。
こんな厚顔無恥な女が、これからも侯爵夫人面して良い訳がない。
こんな淫乱で浅ましい売女が、貴族の女として余人の上に立つべきだろうか?

「……わんこだよう」

だから『罰』して欲しかった。畜生のように浅ましいから、家畜の地位が相応しい。
実際今なら、リュカは性玩具にされ、肉便器にされても喜んだだろう。
公衆の面前での排泄や、公開出産プレイもたぶん喜んだ。
そうすることで、いかに自分が『ダメでいやらしい女』か、皆に周知してもらえるから。
軽蔑の目、呆れの目、汚物を見るような目をもって、でも正統な評価と換え、
虐げられる己に『罰』を感じ、それをもって『罪』と相殺、贖罪の快楽に酔えただろう。
そうしてそんな罰せられてるのに、快楽を感じてしまう自分に更なる呵責、
もっと激しい、もっと惨めな、もっと犬っぽくしてくれる罰を求めて――
――心も体もボロボロにしてしまう、へらへら笑いながら座り込むまで堕ちたはずだ。
典型的なドMの心理。
無力なくせに、責任感が強いせいでのドMの末路。

でも、やっぱりそれでは罰にならない。
彼女が真性のドMな以上、『償えている』という勘違いを与えて歓ばすだけ。

「そんなことないって!」
死ぬことで逃げ、辱めを受けることで楽になりたいと、思う奴ほど罰してはいけない。
楽な方へと逃げるのを許す、そういう意味では全然罰になってない。
「リュカは凄い優秀だよ、俺ヤッてて分かったもん、すっごい賢くて気配りもできるよ」
「……そっ、そそ、そんなことッ?」
ドMをこそ過酷な奴隷労働、人一倍の激務とかに置いて、社会に還元させるべき。
「わんこはわんこだけど、やれば出来るわんこだよ、ちょっと臆病なだけ」
「そんな……こと……」
『やれば出来る子だから』と甘やかされることで、ダメになってしまう弱い者がいて、
『やれば出来る子だから』と支えて貰えなければ、いつまでも踏ん切れない弱い者がいる。

リュカは。

「ていうかさ、俺のお願い。なっ? リュカがそうしてくれると、俺も助かる」
「う……」
自分のためには頑張れないタイプだ。
自分に自信を持てないタイプ。
「大体お飾りっていうけどさ、だからって他に天辺で音頭取る奴がいるでもなし、
侍従に、下女に、料理女洗濯女、個別に話つけてくのも面倒だろ?」
「そ、それは……でも」
なまじ賢いからこそ、やる前から結果が見えてしまう。
心根が優しいからこそ、他人に強く出られない。
「それに号令かける奴って、必要だよ? お飾りかもしんなくても、必要なお飾り。
俺も内政に関しちゃ判子押すだけの飾りだけど、でも要らないとは思ってないぞ?」
「う……。……う?」
周りに流されやすく、枠に嵌められやすい。
お前が悪い悪いと凄い剣幕で怒鳴られると、そうかもしれないと思い込んでしまう。
「皆割と命令して欲しいもんなんだよ、特に思い切ったことする時はさ。
命令してもらえれば安心できるんだって、今のリュカがそうなみたく」
典型的なイエスマン、典型的なトップに立てないタイプ、
誰か強い人に決めてもらえないと決断できない、典型的な主体性なしで。

「それに皆、そこまでお前のこと嫌ってなかったよ?」
「…え?」

でもだからこそ、主人によってどこまでも化ける、使い手次第の人材だ。
小物に使われれば小物並、大物に使われれば大物並に、白くも黒くも如何様にも染まる。
利発で、義理堅くて、責任感も強いから、補佐官としては非常に優秀だ。

「あちこちで言われてたってか、直訴に来た女連中まで居たみたいだもん。
『もうやめてあげてください』、『どうかそっとしておいて上げてください』って」
「…う、うそ…………ほん、とう、に?」

常に他人の顔色を伺う卑屈な女だが、だからこそ空気を読めて、地雷も避けれる。
八方美人で自己顕示に乏しく、だからこそ和の才、相手の顔を立てられる。
およそ欲しがり望みねだるをしないが、譲歩や気配りたるや一級品、
己に自信がないからこそ、相手の長所を見つけられ、心の底から褒められる。
優れていれば良いわけではない。強気で果断なら良いわけではない。
むしろ劣って弱々しくこそ、優越感からの同情や信望、強者の保護欲とて勝ち取れる。

「だから頑張ろう、頑張ろうリュカ! 生まれ変わって新しい自分になるんだっ!」
「わっ、わうううっ、わううううう!?」
かわいー、とばかりにロアがくしゃくしゃ撫でるので、
彼女の頭はガクガクと揺れ、まるでどこかの新興宗教の洗脳儀式みたいで。
「頑張れる、頑張れるよ! …っていうか――」
でも実際、
「――頑張れねーなら追放だろ? 協力してくれないなら軟禁か処刑だよ」
「!!」
洗脳なのだ。

戦場に、人の生き死にの場に立つ以上、おちゃらけてはいけない時がある。
むしろ普段からおちゃらけて、フレンドリーにしていればこそ、
そういう時に自分が真剣になることが、どれだけ兵の心を引き締めるか知っている。
将の動揺は兵の動揺、戦場での迷いは命取り。
男は『英雄』なんかではないけれど、それでも『英雄のフリ』なら誰よりも上手だ。

――この目で見られるのが好きだった。可愛いロアも好きだがそれ以上に。
「ご主人様命令、聞けないのか?」
――この声で囁かれるのが好きだった。昨夜の激しい、暴力的な交合を思い出す。
本能的にひれ伏したくなる、圧倒的なまでの威圧と覇気に、リュカの花弁がじわりと湿り、
「…なんだ、やっぱりダメわんこだな」
そうして人を小馬鹿にしたような、鼻で笑ったやっすい挑発。

『やって来い』と示された先には、およそ越えれそうにない大山脈。
言われたのは『風船爆弾でイージス艦沈めて来い』とか、
『背丈ほどもあるマウンテンカキ氷を完食しろ』とか、それくらい無茶な命令だ。
それに名犬リュカが持ち前の聡明さと思慮深さでもって、
冷静に計算、勝率を予測、対費用効果や時間効率に、可不可の判定を下す前に――

「でっ、できるもん! ダメわんこじゃないッ!!」

――実に犬っぽい脊髄反射、やっすい挑発なのに乗ってしまった。

だってここまで挑発されては夢は家畜、雌犬を自負する女として黙ってられない。
ドMのプライドに火だってつく。
ナメんなご主人様、ナメんなよご主人様、見てやがれご主人様、ドMナメんな!
私はやるぜ、私はやるぜ、私はやる――
「んうッ!?」
にいーっと笑ったご主人様に唇を塞がれ、しかし憤慨のわんこは意を挫かれた。

思わず身を捩って逃げようとするが、今回は唇だけではない。
(あっ)
きゅむ、と乳房に手が置かれ、そのままたぷたぷと水風船のように弄ばれる。
頭なでなで、お尻もみもみと似た気持ちよさに、思わず『はふ…』となりかけた所で、
(ひう!?)
ピーンと先端についた輪っかを弾かれ、広がる甘い痺れに硬直した。
更にはそんな、痺れの発生源を揉み潰すかのごとく、
太くゴワゴワした指の腹で摘んで、きゅきゅきゅと擦ったり引っ張ったりするのだ。
(や、や…)
そうして痺れが苦痛に変わる寸前で、ぱっと指を離すと、またたぷたぷする。
緩く甘い快楽に安堵すると同時に、ジンジンする乳首をまた意地悪して欲しくなり、
そうしている間にもちゅくちゅくちゅくちゅく、熱い口付けは止む気配がない。

「は、くぅ…」
唇を離される頃には、沸騰した激昂はすっかり緩い熱へと変わっていた。
「リュカは偉いな、いいわんこ」
熱を帯びた言葉で囁かれて、またすぐ熱い口付けをされる。
萎えていた股間のぶら下がりが、気がつけばぐいぐいと鎌首を押し付け、
彼女のぬめった腹の上をずるんと滑ると、
雄々しく垂直に天を指し、同時にぴたぴたと女の腹に、熱く重たく寄り添った。

(あ……)
自分の鳩尾近くまであるその大きさにぞくっとして、そうして不意に理解する。
(……私、もう駄目だ……)
離れた唇から熱い息を吐き、けどまた塞がれながらそう思う。
(……もう駄目だ絶対……)
乳首をつねられ、輪を弾かれ、むにむに揉みしだかれながらそう思う。

「……上手く出来なくても、怒らない?」
何度目かの口付けの果て、対面というよりは横抱きにされながらそう尋ねる。
「当たり前だろ? 俺が責任取る」
そう言いながら唇を押し付けられ、でもリュカの目の色が明らかに変わる。
ご主人様には迷惑かけられない。
ご主人様の不利益になることは、絶対にできない、させられない。
「…私、悪女ですね」
そんな泣きながらの言い聞かせが、けれどロアへの答えになった。

――戦犯だけど、でも責任ある死も、今の地位の破棄も選ばないことに決めた。
皆から同情されているのを良いことに、同じく被害者なのを良いことに、
どうすれば己の発言を通せるか、人の良心に訴えかけられるかを考えだした。
今まで培ってきた『毒にも薬にもならない』との信用を使えば、どこまで人を欺けそうか。
『無力』『無害』との印象を使えば、誰の同情なら取り付けられそうか。

何一つ変わっていないリュカの内部で、それでも何かがガラリと変わる。
能力、知識、経験は不変、でもその矢印の向きだけが、カタリと今までと真逆を向く。

「でも、リュカ、俺が好きだからそうしてくれんだろ? 大好きだからそうしてくれんだろ?」
無抵抗を選んでいた瞳に意思が宿り、専守防衛だった瞳に攻撃的な光が宿る、
それを見て満足そうに頷くと、ロアはリュカの鼻先に人差し指を置く。
「ありがとな」
「ん…」
くすぐったそうに笑う少女を見て、少年も思わずつられて笑った。

 それでも男は分かっていない。
 自分がどれだけの怪物を生み、どれほどの強駒を手に入れたのか。

「ほら、来いよ」
ふいにリュカから身を離したロアが、どっかりと壁面に寄りかかり、大きくこっちへと手を伸ばす。
「頑張るって決めたご褒美、前払いでやるからさ」
「あ……」
そのご褒美という言葉に惹かれるがままに、リュカはそっちに向かおうとして、

――かくかくかくかく。

「…た、立てない、立てないですよやっぱりぃ」
笑って力が入らない足腰に、やっぱり泣きそうな声で見上げてしまった。
だらしなく愛液を内股に垂らし、四つん這いでぷるぷるするその姿に、
「しょーがねーなー」
といいつつも非常に嬉しそうに、男が後ろからその腰を掴む。
「あ、んあ……」
二本の腕に簡単に空中に浮かばされる感触に、やっぱりドキッとするらしい。
そのまま胡坐の上に抱き寄せられて、背後から先端をあてがわれ、
「はう、はう……」
位置を確かめ角度を合わせるように、ぬぷぬぷと浅く往復する太い感触、
待ちきれないとばかりにハッハッと淫らな息を吐いて。
「あっ」
ちょっとロアの力が抜けて、ずぶっと腰が沈む。
「ふあっ、はっ」
更に腕の力が抜かれて、一番太い部分が入り口部分を越えてしまう。
「ああああああん!!」
そこで一気に手を離された。

なにぶん太さが太さなので、一気に奥までは貫かれなかったものの、
でもぬぶぶぶぶぶぶと重く沈む感触は、
これはこれで凄い挿入感と陵辱感、開ける新世界に歓喜が洩れる。

「ん……はぁん」
凶悪な肉槍に貫かれてるのに、虚空を見上げる瞳に宿るは、もう陶然と安堵だけ。
そんな彼女を満足げに撫で回しつつ、改めての素敵な一体感に、ロアが素直な感想を洩らした。
「っあー、この体位もいいなー…」
対面ではなく背面の座位、後ろから抱きかかえる格好での結合なのだが、
「なんかあんまり深過ぎないってか、これも優しく入る感じで悪くないよな?」
「うっ、うん、これ好き、好きぃ……」
リュカの大きなお尻に邪魔されるせいか、危惧していたほど深くは抉らない。
むしろいい具合に柔らかく奥まで挿入された、そのフィット感に二人とも軽く息を吐く。

「そもそもお前、挿れられただけでまだ動いてもないのに感じすぎ」
「だ、だって」
ちっこくて白くて可愛いらしい女が、でかくてゴツくて褐色な自分の上に、
ちょこんと座ってひゅんひゅんしてしまってるのは、なかなかに素敵な絶景で。
「凄いんだもん、あそこぐぼって、ぐばって。入って来る時広がって、みちみちって……はふ」
要約すると『おっきいおちんちん大好き』と言ってくれる彼女を、
ロアはまた幸せな気持ちになって、ぎゅーっと覆い被さるみたく抱きしめた。

「しっかし最初は『うえー』って思ったけど、慣れれば結構悪くないな」
「ひゃっ?」
背後から双丘を鷲づかみにしてたぷたぷすると、ちりちり指の間から輪が揺れる。
「本当に家畜みたいってか、乳の出良さそうだよなー、なんか」
「ろ、ロアあぁ!? くうっ!」
その言い草に上がった抗議するような声も、両方の突起を同時に摘まれては止まる。
「だって、ほら」
「はっ? あっ、ああっ」
ギシギシと寝台のクッションを弾ませてやると、ふるんふるんとその乳房が揺れ、
「こうやって揺すられっと、パタパタぱたぱた、ピンピンしちゃってさ」
「やあっ、やあぁんッ」
ずぷッ、ずぷッという膣壁への抽送に、リュカはいやいやするように首を振る。
パタパタ揺れてしまう三つの輪は、確かに彼女の目にもいやらしかった。

「花芽もギンギンに勃起しちゃって、うんいい眺めだよ、感じてんのすぐ分かるもんな」
「やだ、イク、イッちゃう!」
ズンズンと脳に響くように突かれながらの、片方には愛情たっぷりの乳首コリコリ、
他方では意地悪く陰核をきゅむきゅむ、三点への同時攻撃に、リュカがあっさり悲鳴を上げる。
無論その声を聞いたロアが、効果的なこの攻め手を止めるはずもなく。

「ほら、可愛いよ。火傷の痕だって可愛いよ。擦られるとくすぐったいんだろ? な?」
「ぅ、はぅん…」
見られるのが嫌だった左脇腹と右肩下の火傷痕も、でも触られると気持ちいい。
乾いたかさぶたをカリカリされるみたく、淡い刺激がくすぐったい。
「ゼンシンセーカンタイだな、ほんっとゼンシンセーカンタイだね」
「イク…イクの……気持ちいい……きもちいいよぉ…」
全ての自信が打ち崩された跡に、そうやって新しい自信が建っていく。

「あうっ、あッ、……んんんんん゙ん゙ッ!」
だから脳内麻薬の過剰分泌、
ジンジンとした刺激を乳首と陰核に、体内の男を締め付けつつ、実に気持ちよく達してしまった。
久々の軽めな絶頂だが、そうして見てみればこれも悪くない、
軽めで余裕が残ってるからこそ、隅々まで十二分に愉しむことが出来た。
「はぁっ……はあん……はあぁん……っ」
ご主人様から貰えた幸せを、一片だって洩らし逃したくなくて、
実に意地汚くも食いしん坊に、駆け巡る絶頂を心身を駆使して受け止める。
まるで床に零れたスープまで舐めちゃうようなはしたなさだが、
でも横でご主人様が笑って撫でて、『偉いね』と褒めてくれるのなら何も問題はない。

「リュカ、だからイキ過ぎだって、ホントすぐイクなお前」
「……だ、だって、だって」
肩横から顔を覗かせての、からかうような少年の言葉に、少女は必死に言い訳する。
「ま、前はこんなじゃなかった……ロアが相手だから、…ですよ」
そうして彼女自身、本当にどうしてなのかと思う。
亡夫とロアと、されたこと自体は同じく意地悪で陵辱なのに、どうしてここまでと考えかけて、
でも即座に首を振った。
――ううん、違う。全然違う。あんなのと同じに扱うのは、ロアに対して失礼だ。

「ロアに抱っこされるだけで頭じーんってなって、コンコンされるとあそこきゅんってなって…」
「…えっろいなぁお前」
酷薄で冷たくて理不尽な意地悪と、優しくて暖かくて愛情たっぷりの意地悪。
同じだけど違う、身に味わってみれば全然違う。

喪も明けぬ前から敵国の若い将軍に身体を開いてる自分は、きっと淫売なんだと思う。
死んだ人間を、それでも夫だった人間を嘲笑う自分は、きっと毒婦なんだと思う。
……でも、それでもやっぱり憎悪してたのだ。
憎んでいた、恨んでいた、好きなんかじゃなかった本心と向き合う。
それが新しき主への彼女なりの忠誠の示し方であり、『犬』な自分の受け入れだった。


確かに英雄だった。無能どころか極めて有能、暴君ではあったが暗君ではなかった。
盲従や狂信者を生むのも無理はない、奇跡的な戦績と采配の数々は、
確かに修羅の化身であり、小娘であるリュカの目から見ても生ける軍神だったと思う。
……でもそれだけだ。
ただ強いだけ、ただ優秀なだけ、ただ万の農兵を手足のように操れただけ。

散々殴る蹴るされ、罵られて来た身だから分かる。
あの人はたぶん人間が、人類という愚かな生き物のことが心の底から大嫌いだった。
だからこそ美しいものに嘲笑い、綺麗なものを穢したがった。
終始一貫はしていたし、信条は覆さず決然としていた、その点はある意味潔かった。
よって同じように『人が憎くて仕方がない者達』に心酔され、
悪のカリスマ、絶対的な独裁者として、辺境領という半閉鎖社会に君臨できた。

でもその結果が、いざ見てみればどうだ。

「ロア、ろあ……」
自分に逆らう可能性、下克上の芽を全部潰して来れたからこそ、
ここまで付け入る余地なき完璧な覇権を作り上げ――でも後進は全く育たなかった。
「だいすき、だいすき……」
愛国心や皇帝への忠誠、宗教や血縁なんてものに惑わされなかったせいで、
でもだからこそ一代の梟雄止まり、圧倒の栄華もただの一代で止まってしまった。
「ひゃ…わぅ、わううぅ……」
可哀想なお爺ちゃん、可哀想な軍神様と、だから悪女はせせら笑う。
どこまでもたった一人で生き、たった一人で死んだ猛将を、心の底から蔑視する。
「んうっ、んっ、ふ…」
そうしてロアにはスリスリと擦り寄り、犬のように媚びては身を預ける。

教養でも政才でも軍才でも劣ろうと、リュカは、女は、彼が好き。
粗野でチンピラで野獣でも、優しい優しい、泰然と王道を往く虎さんが好き。
だからもっと使って欲しくて、全部を貰って喜んで欲しくて――

「んっ、あっ…?」
「? どした?」
練った唾液を零しながら、満ち足りた金眼と見開かれた碧眼が見つめ合う。
「……ぁ、……ぅ」
喉まで出掛かった言葉を持て余すように、一瞬尻込みし逡巡する様子を見せたものの、
息を吐くように出掛かっていた言葉を、結局リュカはするりと吐いた。

「…お、おしっこ」


「………」「………」
暖かな陽射しの差し込む室内を、束の間の沈黙が支配した。

「……おしっこ?」
「……う」
毒気を抜かれたかのような確かめの問いに、ぴくんと少女が畏れに震える。
乞うとも期待するとも目に映る、怖がり甘えた雌犬の姿。
「へー…」
それを腕の中に抱いてしまっては、虎も正気ではいられない。

「…また漏らしそうなんだ、よーするに?」
「やうッ!?」
ずん、と強く大きく突かれて、びくんと少女の身体が震える。
「一晩に二回お漏らしとかさ」
「あ、あああぁっ?」
囁かれながら両腿を掴まれ、ずるずると入り口近くまで引き上げられ、
「子供でもしねえよな? …19歳のすることじゃねえよなー?」
「うぁああああんッ!」
ぐちんと奥まで押し込まれる、根元まで深々と埋め込まれた。
「は……あ……」
「しないよな? リュカはそんなはしたないことしないよな?」
意地悪く肩越しに囁かれ、つんつんと指先で膨張した陰核を突っつかれる。
尿意はぞわぞわと背筋を這い上がり、ぴくぴくと尿道口が痙攣する。

……これが並のドMなら、認めた上で素直におもらしプレイに入っていただろう。
だが流石に一級ドMたるリュカは格が違った。

「……も、漏らさないもん……」
「お?」
反抗。
「…漏らしません、漏らしませんから」
ご主人様を怒らせる反抗。意にそぐわない生意気な態度。
「昨日はお漏らししちゃいましたけど、今日は絶対漏らさないんですからね!」
ただその目と声の震えを見れば、意図はすぐに読めただろう。

「へぇ」
くっ、と大きく、金色の獣眼が見開かれる。
「言うなぁお前」
――ああ、目の前になんだか面白い獲物がいるぞ。
――なんだか生意気な奴がいるぞ。
ちょろちょろ動くオモチャを前に、前足でのパシパシを止められないがごとく、
嗜虐心全開の双眸が、残酷にも喜悦満面で見開かれ、
「……ぁぅ」
それだけで達してしまえるくらい、リュカも興奮してしまった。

リュカは賢いわんこである。
おとなしく恭順を選ぶよりも、あっさりと無抵抗を選ぶよりも、
逆らって逆らって、抵抗して抵抗して、力の限りの反抗の果て、でもその上から叩き潰される、
――その方がずっと快感なのを、身に染みて感じ分かってしまった。
情けなくて悔しくて、惨めな敗北感と屈服感に、
――でもおかしくなるくらい気持ちいい、ぐちゃぐちゃになれるのを分かっていた。
それをもう学習して、もう味を占めた。
そうして優れたドMであり、一を聞いて十を知れ、百を思えるドMである。
その方がロアに愉しんでもらえ、喜んでもらえるのを察している。
生きが良いのがご主人様的には大好物と、それを弁えていたから媚びなかった。
歯ごたえのない己の非力を、せめて揉み応えのある歓楽に変えようと、
怖いけど一生懸命尻を突き出し、威嚇して誘って、猫さんの興奮を更に煽る。

「そうだな、リュカは賢いわんこだもんな!」
「あっ、やっ、はッ」
おかげでギシギシ、寝台が軋む。
「厠所でおしっこできるよな、床や部屋ん中でちーちーしちゃったりしねーよな」
「うあっ、うああっ!」
ギッシ、ギッシと激しい軋みに、身体が揺さぶられて上下する。
「ちょーっとイッちまったぐらいで、別に漏らしたりしないよな!」
「ゃっ、やああっ、やああん!」
ギシギシギシギシ、木枠の悲鳴にガクンガクンと少女が揺れる。

がっちりと腰を固定され、まるで剛直を扱く肉筒みたく、道具みたいに使われる。
ぐぽぐぽ膣肉を引き摺り回される快楽に、ぱんぱんと肉がぶつかる音、
ずるるると入り口近くまで掻き出されたかと思いきや、ぐぼっと奥まで強く押し広げられ、
どすんと先端が最奥に当たる、…でもその乱暴さがいい。ちょっぴり辛いくらいの強さがいい。
「はひ、はひ、ひあっ、ひはっ」
奥を叩かれる都度圧迫される横隔膜に、必死で口を開けて空気を逃がす。

上下にガクガク揺すられるせいで、上気した肌からはぽたぽた小さく汗が飛び、
揺れる双丘の頂点と股間では、ぱたぱた小さなリングが揺れて、
「あっ、くるっ、いくっ、イクッ!」
膀胱の痙攣、股間に集まったお漏らしの予感に天を仰いで待ち構――

――えていたのにピタリと動きが静止した。

「………う」
最高のタイミングを伺っていたわんこには、一瞬何が起こったか理解できず、
「…あうっ!」
しかし事態の把握に及び、哀しみさえ滲ませた抗議と共に背中を主へと擦り付けた。
百の言葉を尽くしても伝え切れない、切羽詰った想いと欲望。
ここに来てこの『おあずけ』は酷すぎる、早く最後の一押しをして欲しい。。
おかしくして欲しい。ダメにして欲しい。突き飛ばして、狂わせて、犯して汚してバラバラにして。

そう願いながら顧みた瞳に、けれど硬直したロアの瞳が映り込んだ。
「…やっべ」

 こぷこぷ、こぷこぷ銀杯を両手に、リュカはたくさん水分を補給してしまった。
 がぶがぶ、がぶがぶ水差しをラッパ飲みに、ロアもたくさん水分を補給してしまった。

「…俺も出そう」
静まり返った二人の世界に、一言は妙に鮮明に響き渡った。
抗議の哀しみも止まってしまう。
相手の何が出そうなのか、それだけで分かってしまうリュカの賢さが悲劇であり、
というか合わせてしまった相手の瞳に、すっかり捕われて動けない。
「はくっ」
ぐいっと押し込まれた先端部、反り返った先っぽが彼女の奥を押すのに及び、
ようやく自分が追い詰められていたのを、瀬戸際だったのを思い出す。
「ふぁああッ?!」
その状態からの続けてのぶるっという男の身震いに、危うく達しそうになりかける、
…それだけで甘い痺れがじくじくと、大量の脳汁を分泌させた。
虎さんの身体は、子犬のそれと比べてとても大きい。
同じ尿意に身を震わせるのでも、子犬のぷるぷるとでは到底スケールが比較にならない。
「……出していい?」

 どこまで一緒に行けるんだろう。
 どこまで一つになれるのか、どこまで二人で近づけるのか。

ブレーキをかけられそうな常識が、どこにもないのが不幸だった。
「……出していい?」
「……ッ」
『出したい』という大きな弟、年下なご主人様の甘えた声が問題であり、
相手の女の子が嫌がりもせず、怒り出しもしないのも問題だった。
そもそも第一に抜きたくないし、抜かれたくない。離れたくないし、離れたくない。
あったかいし、ピッタリだし、幸せだし、大好きだし。
「……出す」

 ちっちゃな彼女とは比べ物にならない、おっきな身体、おっきな性器。

「やあああああぁ!!」
背筋をピンと反り返らせ、それを引き金に達してしまった。
膣奥を叩く熱い迸りは、薄くて粘りはないとはいえ、それでも射精に酷似している。
ジュッ、ジュッと、おぼろげに奥に当たるあの感覚に、広がる熱。
「ひゃっ、あああっ!?」
呼応するようにぷしゃっと、彼女の股間からも薄黄色の液体が弾け出た。
痙攣と浮遊感に包まれた下半身から、背後から抱きかかえられるままにぴうっ、ぴうっと、
イヤイヤする彼女とは裏腹に、綺麗な放物線を描いて虚空に飛沫く。
それを見て、そうして間違いなく背後から見られて。
背後に感じるロアの安堵、吐息とぶるぶるっという震えがまた、悦楽の電撃で脳を撃つ。
「ふああっ、ふああああっ!」

身体の中でおしっこをされてるのに気持ちいい。
二人で一緒に漏らしてしまって、ぐしょぐしょのびちゃびちゃなのにあったかい。
変なのだ。明らかにおかしい。
でも止まれない。
ぐちょぐちょのずるずるになっていくのに止まれない。
後戻りできないのに止まれない。
……後戻りできない『のが』気持ちいい。
男なしじゃ生きられない、ロアなしじゃ生きられなくされてるのを分かってて、
でも心を許し、弱さを出し、混ぜてはいけないものを混ぜる倒錯に、少女は歓喜の悲鳴を上げる。

そうして放尿も止む気配がない。
「ふ、ふあ」
リュカの方は例によっての、剛直に尿道が圧迫されるが故の刻み刻みだったが、
ロアの方はロアの方で、剛直が屹立してしまうが故の断続だ。
…朝勃ちが収まらぬままの放尿が、しかし意外と大変だという、男にだけは分かる苦労。
「うあっ、うああっ」
朝一番というにはやや時間帯が遅いものの、
しかし今までひたすら精優先だったが故に、一度通路を確保したが最後止まらない。
リュカと違って昨夜は出せてなかったことも、地味に量を増やしてる。

「ふいっ、ふいいっ」
……おかげで、また来てしまう。
終わらない放尿を擬似的な射精と錯覚した子宮が、きゅうっと切なげに収縮する。
好きな男の子に、強い雄に、激しく射精されるのにも似た錯覚が、
敏感になった少女の本能を刺激して、生理的な反応で女の肉体を昂ぶらせてしまい、
「んあああ゙あ゙ッ?!」
そんな中だってのに更にぐりっと、カチコチの両乳首を背後から痛いくらいに摘み潰された。

「あ゙……あ……」
痛い、でも、その何倍もの快感がビリビリっと、電流を流されたみたく全身に走る。
「……肉便器」
「ッ!!」
囁かれた声に、怖いくらいのぞわぞわが、背筋を、脳内を駆け巡った。
「リュカ、気持ちいいよ。リュカの犬まんこ気持ちいいよ」
「あ……や……」
ぐりぐりと容赦なく、太く荒れた指の腹で乳首を挟まれすり潰される。
それなのに下からはジュッ、ジュッ、熱い液体に穿たれる。

「リュカの肉マンコにションベンとか、世界で最高の便器だよ」
「やぁ……やああぁぁぁ……」
そして摘み潰しから解放されたかと思ったら、
乳首につけられた家畜の輪っかに、指を通されて引っ張られた。
「愛してるよ」
軽く微かな痛痒と共に、でも確かなGが掛かり、乳房の先端がやや斜め上を向く。
「愛してるよ」
その引力に、乳首が堪らなく切なくなる。
「愛してる」
「くゥっ…」
愛されておっぱいをオモチャにされてる、その事実自体に興奮する。

「……ぁ」
そう、初めて興奮した。
汚猥で普通じゃなくなってしまった、かつては嘆き悲しんだ蓄獣の肉体を、
でも『ロアに弄ばれてオモチャにされる』、
それを通して初めて心から興奮できた、なんていやらしいんだろうと感動できた。
こんなに淫靡になれる自らの身体を誇りに思う。
強すぎるロアの獣欲を、こんなにも受け止められるのを誇らしく思う。
「かわいいよリュカ。お漏らししちゃって、ションベン出されて、
なのに気持ちよくなっちゃってる淫乱わんこかわいいよ」
「………ひぐ」
だからなんて言えばいいのかは分かってる。
どうすればご主人様に喜んでもらえ、どうすれば気持ちよくなれるか分かってる。
「家畜な変態リュカかわいいよ」

「ひぐッ!」
「おしっこでイグッ! おしっこざれてるのに二回もイッぢゃう!!」
「イグッ、乳首イグッ、ひグッ、ひぐうううウウッッ!!!」

…飲み込めぬ唾にごろごろと呂律を濁らせつつ、力の限りに絶頂した。
より淫らに、より卑しく、ご主人様に喜んでもらおうと自ら願ってのその痴態は、
彼女の熱意と努力もあって、実に見事な結実を得た。
「ひぐ……いぐのおぉぉ……」
もう誰も今の彼女を帝国貴族、貴上の女性だなんて思わない。
「…あ……ちくび……ちくびぃ…」
激震に脳裏をチカチカさせながら、でもふるんと引力から解放された乳房、
切なかった乳首を再度ぎゅうっと摘んでもらえば、悦楽にだらしない笑みも浮かべた。
達してる最中だというのに、乳首をいじめてもらって歓んでしまう。
幼めで可愛らしい素の仕草が、またそんな淫靡さを何倍にも高め増幅する。

「ひあっ?」
そうしてじゅぱんと、尿まみれで池めいてしまった膣内を剛直が大きく行き来した。
「あっ、や、だめ!」
肉棒というよりは肉柱と呼ぶべき、凶悪な太さの剛直だ。
「ふあっ、ゔああっ!」
張り出した雁に液体は見る見る排水され、すぐに膣壁が絡みだす。
数往復もしない内に、引っかかり掻き出されるのは尿水でなく膣肉になり始めた。
「やだ、来ちゃう! また気持ちよぐなっぢゃう!」
ごりごりと膣壁を擦られるその激しさに、だからリュカは目を見開いて叫ぶ。
「また昨日の来ちゃう! わんこになっぢゃううぅ!!」

また来る、あれが来る、絶対来る。
イッて、イカされて、イッたのにまたイカされて、イッてるのにまだイカされて。

「いやだッ、やだ……やだよぉ……」
本心からの拒絶ではない。
「奥、どちゅどちゅしないで……、いじめないで……」
恐怖はある。未知への恐れであり苦痛スレスレな快感への怯え。
けれど愛しい。どすん、どすんという全身への振動、痺れる頭にのその存在感。
「苦しい……苦しいのに気持ちいいよ……あたま、へんに、なるよぉ……」
嫌がる上から潰して欲しい。
怖がる上から塗り潰し、全部塗り替えて抱きとめて欲しい。
「ごりごり……気持ちい……こすれてる……広がっちゃう……」
はぁはぁハァハァ、必死で肺の空気を逃がしながら、でも白じみの歓楽に咽び泣く。
太い、太い、密度がすごい、気持ちいい所を何回も何回も、ごりごりごりごり往復される。
「乳首…止まんない……きもちいいの…止まんない……」
乳頭から走るビリビリという強すぎな刺激を、でも止めて欲しくない。
息苦しさに血が昇って顔は赤く熱を持ち、鼻水で鼻がグスグス、涙も零れて。
「ドーブツん……なっちゃうぅ……」
翻弄され滅茶苦茶にされるのを、歓ぶと同時に怖がりながら、
「ドーブツっ、んっ、いい゙ッ?! やああああ゙ッ!!」
唐突に変わった刺激の質に、耐え切れずにビクンとイッてしまった。

男が喜ばぬはずがない。

爛々と目を輝かせて、虎は鼻息荒くも興奮する。
乳首を苛められてイッてしまう子犬が、可愛くて可愛くてたまらなかった。
ロアも男だ、自分の愛情たっぷりな精一杯の愛撫も、感情を抑えきれずしての暴走も、
でも全部嫌がらずに受け止めて、快楽の善がりとして返してくれる、
打てば響くように最高の反応を返してくれるリュカが、愛しくて愛しくて仕方ない。
今だってそうだ。
抽送を繰り返す内に巨根にも微妙な取っ掛かり、弱点っぽい反応に気がついたので、
左右に小刻みに捻ってみたら、返って来たのは劇的な反応、腕の中で女がイッてしまった。
『弱点が分かった』その手応え、男冥利に尽きるもなし。
実に素敵な達成感であり、満たされる自信に俄然意気とて昂揚する。

――『小人、大器に出会って大人となり、大器、能臣を得て飛躍を果たす』

(リュカかわいいよ、可愛いよ可愛いよ可愛いよ)
着実に経験値と熟練度を蓄積しているのは、何もリュカだけとは限らない。
どんどん開花しているのは、ロアの方とて同じである。
素人女からは散々怖がられてきた身の丈を、今は負い目に感じなかった。
行き過ぎた巨根もここに来て、持ってて良かったと心から思う。

「…なれよドーブツに」
「うあっ!?」
だから胡坐の上に抱いていた彼女を、前に突き飛ばすようにして押し倒した。
「飼われたいんだろ? 家畜にして欲しいんだろ!?」
「んっ、ひあっ!」
ぽたぽたと尻や腿から尿の残滓を撒き散らしながら、
獣の体勢で柔尻を引き寄せ、パンパンと二度三度打ち込んだ。
「……ッ」
思っていた通り苦痛の反応、長すぎなせいで根元まで全部入らない。
どうしても強めにぶつかってしまい、それ故苦い経験から封印を決意していた体位なのだが、
「あっ?」
考えあって腰を掴んだ手を離すと、そのまま身体を前に倒して両腕を突いた。

尻を突き出しつつ四つん這いでへたるリュカの上に、更に覆い被さり四つ足をつく。
同じ獣でも犬や猿でなく、馬の交尾に近い格好。
白くて小柄なリュカの上に、褐色で大柄なロアが被さるせいで余計にそう見える中を、
「んっ、あっ?」
パンパンではなくパコパコと。
脚だけでなく腕も自分の身体を支えるのに使ってしまった分、全身の密着から腰だけを使う、
深い部分での短い往復を繰り返す。
「あっ、やっ、やうっ!」
外観の見栄えこそ良くないものの、しかし実際の交接具合たるや見ての通り。
「やあっ、あっ、あんッ!」
覆い被さった彼女がひくひくし、声に困惑と喜悦が混じる、
膣肉がきゅうっと剛直を締め付けるに及んで、少年は仮説に自信を持った。

密着しているから気持ちいいのだ。
不安定だと、密着している部分が少ないと、支点が少ないと相手が痛い。
狭域への鋭い衝突だから、衝撃が集約して膣奥にぶつかる。
本来の形とは主導権が逆、
リュカがロアの上に跨るのでなく、ロアの上に覆い被さって抱きつく変則型騎乗位が、
それでもあんなに気持ちいい、二人とも楽な理由がこれで分かった。
「卜」の字で斜め下から、腰だけを接点にぶつかるのではない、
覆い被さり間にたっぷりの尻肉を挟む、それをクッションに抽送の衝撃を全身に散らし、
その状態からグイグイへこへこ、ひっついたままで腰を振る。

「はひっ、はっ、はあッ!?」
足首絡めて、と耳元で命令すれば、ガクガクなりに必死で足を動かし、
ロアの脛にフックをかけるように足首を絡めて固定した。
広い肩幅の利点を生かし、腕ごと彼女の肩を押し包むことでこれもガッチリ固定する。
固定すれば固定するほど、ガンガンゴツゴツ、痛い突き方をしなくて済む。
密着すれば密着するほど、どむどむずむずむ、柔らかく押せる。

――大発見だ。どうして今までこのやり方を思いつかなかったのだろう?
のしかかった下で、ビン、と絶頂に全身を突っ張らせる少女に、夢見心地でそう思う。
エロい、いやらしい、大興奮。それでいて二人共気持ちいい。
多少、非常に馴れ馴れしくて、女側が感じる被征服感と屈辱感が過大だという欠点はあるが、
「はおっ、おっ……おっ、お…」
……まぁ彼女に限って言うならば、そこら辺はむしろ好材料。
成功体験だから気持ちいい。
組み敷いた下の女の子が、でも完全に自分に所有物、咽び泣いてるから最高だ。

「はっ、はああっ、はああぁ、あああ」
泣いちゃって唸っちゃって涎ダラダラの彼女が、なので可愛い、愛しい、溺れていく。
腹筋全体に当たってくる、乳色な尻肉は柔らかい。
添わせ重ねて密着した四肢も、みんな柔らかくって気持ちいい。
包んでくる膣壁はみちみちぬめぬめ、決して締まりがいいとは言えないけど、
その代わり柔肉の量がとても豊富だ、ぷりぷりの優しさが実にリュカらしい。
「や…やらひい……ぱこぱこ……やらひいよぉ……」
熱を帯びた泥濘の中を泳ぐように、居心地よくって、あったかくって、
――だからこそますます抜けなくなる、腰が自然と深くに誘われて行くその矛盾。
「やっ、ひぐっ!? またひぐ、ひぐっ、ひぐううううっ!!」
そうしてぎゅうっと目を瞑った彼女が、かぷかぷ涎を零しながらイッてしまう時だけは、
そんなみちみちの熱い淫肉がずりゅんと奥へ、引き込むようにロアの剛直をぎゅうぎゅうする。
瀕死でビクビクイッってしまっているリュカを、腕に、胸に、全身に感じながら、
だから恍惚の中に眼だけはギラギラ、虎は我を忘れて腰を振った。
じわじわ、じわじわ込み上げてくる、二度目なせいでの遅い射精感さえ愉しかった。

「…おっ、…おあ、……あ」
転じてリュカも限界だ。
「うあ……やらひ……どーぶつ……やだぁ」
理性の衣を剥ぎ取られ、本能が露出してしまった今のリュカに、この攻め方はあまりも辛い。
「……わんこ、くるぅ……」

奥手で臆病、良いトコ育ちのお嬢様なリュカだ。
万事控えめで強く言えない、お澄まし屋さんのリュカなのだ。
本当は恥ずかしい。
自分の醜いところ、卑しいところ、『ご主人様』には全部偽りなく曝け出したい反面、
涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃの顔を、『好きな男の子』には見られたくない。
出てしまう「わぉぉ」とか「がぅぅ」みたいな獣の雄叫び、恥ずかしくって聞かれたくない。
『一人の女の子』としての願望と、『一匹の雌犬』としての願望。
両方本当だからこそ、矛盾しつつも並存していた。
一匹の雌犬としてもご主人様が好きで、一人の女の子としても男の子が好きで、
苛められたいけど愛して欲しい、子種も欲しいけどキスして欲しい。

だからそこには意味がある。
「…さっさと鳴けよ、昨日みたく」
「……!!」
暴力で強引に無理を通すのは。強烈な衝撃で一時的な混沌を作り出すのは。
「言っただろ!? 犬が人間の言葉喋るなって!!」
「うあッ」
相反する水と油を、一時的にとはいえ混ぜて一つにするために。
「鳴けよさっさと! 『わおぉぉ』って鳴け!」

 秩序は混沌の奥底から。再生は破壊のその先に。

「わっ、わおおっ!」
一度自分の意思で言ってしまえば、後はもう坂を転げるようだった。
「わんんっ、わおおおッ!!」
「…よぉし」
二度三度弾みをつけるように、男の動きに合わせて吼える。
みるみる彼女の表情から、蕩けるように幾つかの硬さが抜け落ち出した。
――怯え、恐れ、不安、躊躇。

「わおおっ、あおおおおおんっ!」
「よぉしリュカ、偉いぞぉ」
瞳に浮かび上がる狂気じみた喜悦、痴女めいてにへらと緩んだ口元に、
これまた暴走してしまってるロアが、心の底からよしよしと褒める。
ご主人様に褒められた嬉しさに、わんこは笑って、はしたなくも力一杯天へと吼える。
……仕方ないじゃないか。気持ち良すぎるのだから。
(あはっ、あは、あは、あは)
命令してもらえた。強引に無理矢理雌犬にしてもらえた。
その圧倒的な力強さと牽引力に、リュカは幸せ一杯でわんわん吼えた。
(ロア、上手、上手ぅっ…)
ぬぷんぬぷん腰を押し付ける。男の動きに合わせて動かす。犬みたく尻を高々と掲げふりふりし、

ああほら。
「わッ!?」
来た。
「わうッ!!」
来た来た。
「わおおおおオオオオッ!!!」
ついに来た。

ビグンッ!となったのに、そのビグンッ!が終わらない内にまた次のビグンッ!が来る。
弾けている内からまた内側から弾け、どんどん押し広げられて広がっていく感覚。
どんどん真っ白になっていく。見えないし聞こえないし分からない。
ロアの身体しか分からない。
発汗が凄くて、涙も、涎も、鼻水も、きっと物凄くみっともないんだろう。
絶対に支離滅裂なことを叫んでしまっている自分の口が、
でも何て言ってるのか分からない、耳には届いてはいても脳がそれを認知できない。

そうやって獣声を上げて哭き狂うリュカを、ロアも多幸感と共に肌で感じる。
また壊せたというその事実が、確かな自信となって心に根付き、
自分が壊したんだというその事実が、所有欲と独占欲を心地よく満たす。
イキっぱなしの膣壁に、それまでの優しさとは別人みたくギチギチと締め上げられる、
おかげであっという間に達しそうになってるのだが、もう良かった。
もうゴールはした。
男として最高の仕事はした。
だから馬のように覆い被さりながらも、猫のようにリュカの背中にすりすりして、
…そうして優しさと残酷さの同居した、常軌を逸した目を見開く。

――汚す。犯す。孕ませる。
一番奥で射精して、胎の中に子種をぶちまけて、褐色の肌の子を仕込んでやる。
ミルクの出ちゃう身体にして、ぽっこり膨らんだお腹にして、
こんな乳色の綺麗な股から、金色の獣眼の子を獣の雄叫びと共にひり出させ、
…でもそれさえ幸せにしか思えない、それくらい幸せにしてやるのだ。

「りゅか、りゅかっ、りゅかッ!」
「ぎゅうううううううっ!!」
理性なき瞳、押し潰されるような獣の悲鳴、ぷちぷちと歯の隙間から零れる泡。
てらてらと濡れ光る乳色の柔肌に、擦り込まれるように添う褐色。
「出る! 出る! 出すぞっ、だすぞっ!」
「うううう、ううウウウウウウッ!」
女の上半身をグッと寝台に押し付けての男の叫びに、
思考が飛んでるなりにわんこもぐいぐい、尻を男の腰に押し付けながら唸る。
びちゃっと中に出して欲しい。どぷっと奥に出して欲しい。
どろどろの濃密な子供の種を、胎内にたっぷり擦り込んで欲しい。

「がああアアアアアッ!!」
叫んでバコバコバコバコ、女の腰が壊れそうなくらいにガンガン揺すり、押し込んで、
「ツゥっ」「ぎゃうんッ」
びくんっ、と震えた男の褐色の尻に、女の乳色の下半身全体が巻き込まれた。
びゅるるんという生々しい音を、それでも二人とも確かに聴いた。


<続>

 

 

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最終更新:2009年01月26日 07:14