愛にすべてを ◆EGv2prCtI.


「オイ……何か分からんが変な箱見つけたぞ」
 内木聡右(男子二十二番)はその箱を持ち上げて古びた机に上げると、周囲の二人に見えるように懐中電灯で照らした。
 聡右の声と電灯の光の先の箱に気付いた楠森昭哉(男子十一番)は眉を潜めながら机に辿り着く。
「箱?」
 昭哉は窺うように箱をまじまじと見詰め、それから聡右に言った。
「罠かも知れません」
 聡右が、うっと呻いた。

 ――その可能性は捨てきれなかったのだ。
 そもそも、昭哉はまだ先程の存意を捨てきれなかった。
 いや、捨てる方が無理なのだ。
 この考えが本当ならここまでやってきたことも、そしてここから行うことも全てが、相手の腹の内だったと言うことになる。
 仮にそうならば、自分は道化となり、そしてここに居る三人、否、今現在生き残っているクラスメート達の運命がどうなるか
分かったものではない。
 しかし、その不安に駆られて間違った判断をすればこの殺し合いの中では当然の帰結として死ぬことになる。
 うっかり書店で本を置く本棚を取り違えた程度なら笑い話で済むが、今は命が係っているのだ。
 ――とにかく、冷静に。
 本当に当座のこの状況、その理由だけで木箱の中身が危険だと割り切っていいものだろうか?

「開けよう」
 先に、誰かが口を切った。
 昭哉は振り向いた。
 少し前に地下室に入ってきたケトル(男子十三番)だ。
 ケトルは猫の瞳をはっきりとさせながら言っていた。
 本気、なのだろう。
 だが、それは考えがあってのものなのだろうか?
 ほんの数十秒前、昭哉に刃を向けたように、 彼もまた、平静さを失っていると言えるのではないだろうか?
「……安全だという確証は無い、それでも開けると?」
 昭哉はケトルに言葉を挟む。
 場に緊張が走るのが分かった。
「他に、手掛かりはあるのかい?」
「無いわけでは無いでしょう」
 そのやり取りを然無顔で見ていた聡右が、不意に言った。
「でもよ」
 昭哉にとって一触即発に近い状況とも言えたその場が、一旦静まった。
 聡右は、続けた。
「もう、隅から隅までここを探したはずだぜ?」

 確かにその通りだった。
 もう、ここには何も無い見込みが近い。
 それでも昭哉は、最後の一線を踏み切ることは出来なかった。
 どうしても、この木箱を開けてはならない。だが木箱以外に手掛かりがない。
 ――この、分岐点を。



「なら貸してよ!」
 ケトルが叫んだ。
 強引に、奪うように机の上の木箱を腕に収める。
 昭哉は目を見開いた。
 しまった、と思った時には遅かった。
 ケトルは、木箱の蓋をあっさりと開けてしまった。


 木箱の蓋が、からんと床に落ちた。
 爆発、なんてことこそ無かったが、しかしケトルは中身を見て、首を傾げた。
 昭哉と、聡右もケトルの脇に回って木箱の内を覗いた。

「ノートパソコン……?」
 聡右は呆気にとられていた。
 木箱にすっぽり覆われていたのは、黒い電子手帳のようなものだった。
 一体それが誰の物で、何を意味するかも分からず、ケトルも呆然としている。
 ただ――昭哉だけはそのポケットにも収まってしまいそうな小さなノートパソコンを違う反応で見ていた。

 昭哉は、それに見覚えがあったのだ。
用件があって入った職員室、若狭吉雄の乱雑な机の資料の上に置いてあった、その長方形型の薄い箱。
 それは、つまり――

 昭哉が箱からハンドベルトコンピュータを取り出すと、コンピュータと木箱の中に何かケーブルが繋がっているのに気付いた。
 ケーブルを手繰り寄せると、また黒い、今度は楕円型のケースのようなものが出てきた。
 楕円には太い溝が楕円を半分にするように引いてあって、溝にはカードを通すことが出来るようだった。
 所謂カードスキャナーだ。

 ハンドベルトコンピュータの電源を入れてみたが、操作にはユーザー認証が必要なようだった。
 デバイスから読み取るという旨が、ウィンドウに表示されている。
「これだ」
 昭哉は、あのカードキーを取り出した。
 光沢を持ったカードキーの読み取り面を、スキャナーの溝に合わせた。
 それからスキャナーにゆっくりとカードを通す。

 ぴ、と小さい電子音がコンピュータから出た。
 カードキーが認証されたようで、デスクトップメニューが液晶に表示される。
「これで動かせるのか?」
 聡右が、画面を見ながら呟いた。

 動かせることは間違いない。
 だがともかく、まだこのコンピュータの中身がまだ分からないのだ。
 それはこの中に入っている情報が、昭哉達にとってどういう影響を与えるか分からないということだ。
 昭哉達の内、誰か、或いは全員を暴走させる危険な情報もあるかも知れない。

 しかし逆に言えば、手掛かりが入っている可能性もある、ということだ。
 ――この中に、昭哉がこのカードキーを渡された意味、すなわち、手掛かりが入っているのだろうか?

 息を、少しだけ吸った。
 それから、昭哉は、軽くキーを指に触れた。

「調べてみましょう。これが、若狭先生からのメッセージだとするなら……」

【残り18人】



 ボロボロになった外壁の裏、暮員未幸(女子十四番)は焦燥していた。
 目の前に倒れ込んだ二人の見知ったクラスメート。
 サーシャ(女子十六番)も和音さん(女子二十七番)も大きな怪我をして、血を大量に噴き出させている。
 周りには大きい血の池が出来はじめていて、明らかにそれは二人にとって十分な量だった。
 その二人に未幸は視線を向けられている。
 これの何処が落ち着いていられると言うのだろうか?

 こんな光景、普通、見ることがないのだ。
これが映画館でスクリーンをじっと見ている光景であったなら、未幸も平静でいられただろう。
 だがそれは場違いな空想である。
 目の前に広がるのは、まるきり以前白崎篠一郎に見せてもらったような戦争、或いはスプラッタホラー映画の一コマのシーンだ。
 自分はその役者の中の一人。
 そして、この後、どういった展開になるかも未幸にかかってると言ってもいい。
 そんな状況で、どうかしないほうがどうにかしている。

 未幸も、その例に漏れていなかったのだけれど、しかし、未幸は通常の人間とはやや違った反応を見せていた。
 考える時間は非常に長く、未幸の中では大きく思考の渦が逆巻いていた。
 未幸の心の中、一欠片の部分に冷静さが生まれていたのだ。
 嵐の中、そこだけ円形に、まるで真っさらな鏡面の地面が広がっているように。
 そして、未幸の内に、ある考えが蠢き始めた。

 前から、小動物相手に、色々仕掛けたことはあった。
 小動物をいたぶって、その反応を楽しむのだ。
 例えばネズミを縛って、抵抗させて、だんだん衰えていく様。
 その死体をかかしのように立たせて、他のネズミにその姿を見せつける。
 そしてまたそのネズミを縛り付ける――
 未幸はそれを行って、快感を得ていた。
 未幸は、そういう特殊な人間だったのだ。

 加虐的な欲求。

 家族どころか篠一郎にも見せたことがない、未幸の本性。
 他人から見れば、明らかに残虐で狂っていると思われても仕方がないそれ。
 未幸自身も、そんな自分を呪ったことは無いという訳でもない。
 異常、というのは分かりきっていた。
 だからこそ、未幸は篠一郎に打ち明けることも出来ないのだ。
 そこまでにこの意識は他人に見せるべきものではなかったのだ。



 今、それがサーシャ達に向けられている。
 目の前の、人間と獣人に。
 サーシャを縛り付けて、その臓腑の痙攣を楽しんで、和音さんの腕の露出した筋肉の動きを――


 ――何を考えているの、私は!?
 未幸は首を振って、その考えを打ち消した。
 この殺し合いの中で、自分はおかしくなっているのだ。
 超えてはならないボーダーラインの判別が出来なくなっている。
 まだ、じわじわと頭の中でその浸食が始まっている。
 駄目。
 人として、これは絶対に駄目。
 それは――もう、先程のあの倉沢ほのかと全く変わらない存在になることになる。
 私は、こんなクソみたいな殺人ゲームに乗るつもりは無い。
 そう決めたのだ。

 しかしその決意を無視するかのように赤黒い気持ちは収まらない。
 この欲望を解放して、早く楽になりたいと思う気持ちすらある

 でも――


 その時だった。
 切り裂くような銃声。
 ……瞬間、和音さんの側頭部から、血が噴き出していた。
 倒れた。
 穴が空いた頭蓋から、赤い絵の具を溶かした水ような血が地面にぶちまけられた。
 先程までの和音さんの荒い息づかいが、もはや消失していた。

 ――!

「あ……?」
 サーシャが、その光景を呆然と見つめていた。
 けれど、また銃声が響くとサーシャもすぐに弾かれたようにその場に倒れ込んだ。
 同時に、首元と脇腹が弾けて、血が噴き出した。
 それきりぴくりとも動かなくなった。


 未幸は一瞬で状況を飲み込むと、植木に素早く身を隠して、すぐに周りを見渡した。
 ――何処だ?
 何処からか何者かが二人を狙撃したのだ。
 倉沢ほのかが?
 いや、ほのかは敷地の外に追い払った筈だ。
 校舎裏から忍び込むにしても、校舎の半分を通っている体育館通路に進む必要がある。
 そうしたら、壱里塚徳人や貝町ト子が捕らわれている体育館倉庫の前も通ることになる。
 そして四人の騒ぐ声を聞きつけ、どの道、銃は使われることになるのだ。
 だが、もしかしたらその銃声を聞き逃したのかも知れない。
 サーシャ達を見つけて、躊躇していた時間はかなり長かった。
 二人の声も聞かずに、ただ自分は自分の欲と戦っていただけだ。
 感覚は完全にそこに集中されていた。上の空だった。


 倉沢ほのかがあの後再びこの中に入って、すぐに処理を終えたとするなら――有り得た。
 だが、今の銃声はあのマシンガンとは発砲音が違った。
 ほのかが持っていた、二つの銃とは。

 そうなると――或いは、既に分校に忍び込んでいた、第三者が?
 それでは、相手がどんな銃を持っているか予測が付かない。
 誰が――誰が二人を殺した?

「お前の仲間はもう死んだぞ。暮員、何か言うことは無いのか?」
 叫び声が、校庭に響いた。
 その声は十分ほど前に聞いたばかりのものだった。
 未幸はAR-15ピストルを構え直して、一気に木陰から身体を出した。
 声の主は、予想通りだった。
 貝町ト子(女子五番)が、こちらから数メートル離れた、校庭のど真ん中からショットガンを持って仁王立ちしていた。
 いつの間にか接近されていたのだ。
 それに、ト子は倉庫で身動きがとれない筈だったのに。
 ――そんなことは、今は考えている余裕などなかった。
「この……人殺し! 黙りなさい!」
 未幸がAR-15の引き金を引くと、慣れた衝撃が腕に走った

 同時に校舎の窓ガラスが割れ、外したのだと分かった。
 すぐさまト子が撃ち返してきた。
 未幸は、寸前でそれをかわした。
 散弾の一部がポニーテールの先端を千切っていったが、気にしている場合じゃない。

「人殺し? 甘いな、この島の中では、そんな言葉はとっくの昔に全員に適応されるものだったはずだ。殺人、殺人幇助。私
もお前ももう犯罪者の仲間だよ」
「あなたはそうやって開き直って、逃げているだけだわ!」
 もう一度、AR-15を構えて撃った。
 ト子が僅かに身じろぎ、空いていた左手で右肩を押さえた。
 左手の指の間から、赤っぽいものが滲み出していた。
 そのまま未幸は追撃に出た。
 戸惑いなど無かった。
 一刻も速く、この女を殺さなければ! 出来るだけ速く!

 引き金を引いた。
 一発、ト子の脇腹をほんの少しを抉った。
 引き金を引いた。
 もう一発、ト子のうなじの髪を吹き飛ばした。
 更に――



 そこで、突然未幸は脇から急激な力に押され、倒れてしまった

 急切とした未幸はすぐに身を起こした。
 ――神崎健二(男子九番)が鬼のような形相で、こちらを見下げている。
 AR-15の銃口も、足で押さえつけられている。

 そう――恐らく自分がト子と戦っている間、健二が未幸の背後に回り込んでいたのだ。
 ――貝町ト子がここに居るということは、つまり健二らも脱出できたということなのだ。
 ああ、私は馬鹿だ!
 どうして健二の存在を忘れていたのだろう?
 もしかしたら他の二人も――
「お前の……負けだ」

 貝町が、肩を押さえながらこちらに向かってくる。
 こちらは銃を使えない。
 健二の下にAR-15は放り出され、今まさに健二が拾おうとしている――

 ――しかし、未幸が持っている武器はそれだけではない。

 まだ――まだだ。
 半ば無理矢理、未幸は自らのデイパックから日本刀を取り出して、鞘を抜いた。
 そのまま、健二に目掛けて日本刀を突き出した。

 ざくっと、スコップで一気に地面を掘り返した時のような心地よい音がした。
 くん、と上に向かって奇妙な手応えがきた。
 それは健二の、ぱっくりと真っ二つに割れた腹部の内臓の反応だった。
 健二の細い目が一瞬だけ見開かれると顔がほぼ無表情に近くなり、口からごばっと血が噴き出した。
 それからぐたりと身体が未幸の方へ傾き、そのまま崩れ落ちた。


 そして戦闘の最中だというのに、健二を刺して、未幸の精神は何処か遠いところへ向かっていた。
 日本刀はまだ握りしめられたままだった。
 しかしその拳は震えて、足が動かなくなっている。

 実際に、間近で人を傷付けた。
 健二の周り。広がる水溜まり。
 今の、刺した瞬間の、健二の反応。

 想像していたものとは違った。
 小動物を嬲っていた時のような感覚はそこには無かった。

 違う。
 こんなものじゃない。
 私が求めていたのは、こんなに大きいものじゃ――


 急に、胸に焼けた棒が差し込まれるような感覚が襲った。
 やがてそこから、広がっていくように鈍い痛みが大きくなっていく。

 その痛みが未幸を覚醒させた。
 ト子に狙撃されたのだ、と分かった時は手遅れだった。
 そして、視界が地面に落ちて、目の前が暗くなっていく。
 ――闇。篠一郎といつか見た、映画のワンシーンにあった。
 闇に捕らわれていく人物。
 その質感が、実際に未幸を囲んでいる。
 茫然とした空間に、落ち続けている。
 多分、頭に血が回らなくなってきているから。

 ――どうして?
 どうして私が死ななければならないの?
 私が、何か悪いことしたの?
 どうして、こんな――こんなことに、遭わなきゃいけないの?

 ――そうよ。

 みんな、あっちが悪い。
 みんな、なにもかも、ぜんぶ。
 すべて。
 私、何もしていないんだから。
 サーシャと和音さんには、少しおかしいこと考えたけど、結局、私は何もしてなかったんだから。
 何も、何も、何も。


 だから、つまり、――やはり、全て、ト子たちが悪いのだ。
 あんな、救いようがない思考回路の持ち主が。
 ……

「誰もあなたなんか救ってくれないのに……バカ……みんなバカ……」


――

「痛え……よ、……姉ちゃん……」

 神崎健二が呻いていたが、それは問題ではなかった。
 FP45を暮員未幸の死体に伸ばしたまま、貝町ト子は固まっていた。
 自分が直接、人間を殺したのはこれが初めてだった。
 先程、未幸に語ったように、自分達が既に罪で染まり切っているのは分かっていた。
 それでも、経験としてのそれはあまりに大きすぎるものだった

 目の前の死体、そうさせたのは自分だと。

 そうして吐き気に近い感覚を押し殺すように、ト子は周りに落ちている物の回収を始めた。
 肩口の傷は、出血量ほどひどい痛みはなかった。
 じくじくと痛みはあったが、それほどでも無い。

 AK-16、日本刀、ブッシュナイフ、発煙筒。
 日本刀はかつてト子が扱っていたものだった。
 後は、未幸たちの持っていたものだ。
サーシャと和音さんが、この校舎の外で未幸を待っていたと見ていい。
 とにかく、あの時はまず二人を撃ち殺すしかなかった。

 健二を使い物にならなくされたのは誤算だったが、しかし、それでも十分役には立った。
 あと一歩間違えればもうすぐでト子が殺されるところだったが、事前に行った、二十秒の作戦会議が功を制したようだ。
 とにかく、これで三人、――もうすぐ四人になるが――この殺し合いから脱落したことになる

―加賀智通、シルヴィア、麻倉美意子、壱里塚徳人、久世明日美、片桐和夫が死んだ分も合わせれば、自分の知る限り九人は死んだ。
 他に、鈴木正一郎とか殺し合いに乗った馬鹿は居る筈なので、もっと残り人数は減っていると思ってもいい。
 この椅子取りゲームが成立する前提としては、そういった殺人者が量産されなければならない。
 そうしなければ人数が減らないからだ。
 その点、そういった部分は反吐が出る程、上手く調整されている。
 何かしら、乗る理由が出来るようになっているのだ。
 鈴木のように、くだらない正義感を刺激したり、恐怖で狂わせたり、ほのかや片桐のようにプログラム、つまり思考回路を破壊したり、ケースはそれぞれだが、考えうる限り、全員をそうさせることも出来る。
 共通するのは「殺さなければ殺されてしまう」、「周りは敵だらけだ」と錯覚している点だ。
 そう言った心理に漬け込む。そしてゲームが始まる。


 つまり、自分の周りにも、まだ“やる気”の人物が居る可能性がある――と、そう考えた刹那だった。
 ぱららららら、という、古びたタイプライターのような音が、耳に届いた。

 直後、砂が助走するように断続的に煙を巻き上げてきたかと思うと、足下の暮員未幸の頭が破裂した。
 助走は外壁にまで及んで、丸い穴が、ぽつぽつと空けられていくのが分かった。



 しまった――
 ト子は、急いで走り出しながらレミントンM870を撃ち出しつつ、その姿を認めた。


 ――女子十三番の倉沢ほのか――!?


 まだ、ここから立ち去った訳ではなかったのだ!
 油断した。
 完全に暮員未幸に神経を取られていた。
 やはり見ろ――あの、大人しそうな女子生徒のほのかすら――
 自分を殺しにかかっている!

 理由など、もう考えている暇など無い。
 いや――むしろ、そちら側の人間にとってはそんなこと、もう関係のない次元の話なのかも知れない。
 こうしてこちらが逃げている最中にも、裕也君裕也君と、どう見ても死体にしか見えない物体に話しかけている時点で狂っているのが分かるからだ。
 振り返ると、三人の死体の中で、また新たな血飛沫が上がっていた。
 ――健二だ。
 きっと、ほのかに存在を感づかれたのだ。
 たったそれだけで、現実味などないように、しかし、確実に、健二は死んでいた。
 そしてそれは、次は確実にト子に弾丸が飛んでくることも意味していた。

 走り出して数十秒経った、ほのかはまだP-90の乱射を行っていたが、しかし、まだト子にも鉛はかすりもしなかった。
 なんとか校舎裏にまで飛び込む。
 ほのかは追ってきてはいないが、いずれはこちら側に回り込んでくるに違いない。
 ト子は息を落ち着かせる準備をしようと辺りを見渡して――

 ――見つけてしまった。
 それは北沢樹里(女子八番)だった。
 雑草が伸び放題になった土の上、服の着てない上半身だけ、ちょうど腰の辺りで切断されて断面から頸骨が見えている。
 更に窓からはまっすぐに極太の線が伸びている。
 それは赤いインキを強引に、窓にぶつけたような具合だ。
 中の保健室はその赤いインキに浸けた刷毛を持った誰かが暴れ回ったかのように凄惨なことになっていて、窓の内側の傍には、人間の下半身が――
「くそっ」

 これも――倉沢ほのかがやったに違いないのだ。
 海野裕也も、北沢樹里も。あのいかれた殺人狂に。
 そんな馬鹿な――
 そんな馬鹿な話があってたまるだろうか?
 壱里塚徳人と久世明日美を撃ち殺したあの時、ほのかが笑っていたのは瞭然としていた。
 倉沢ほのかには罪の意識などはなから無い、――明らかに、人を殺すことを楽しんでいる!



 危機を感じ、ト子は再び走り始めた。
 そして、だんだん、――身体の、熱がひどくなってきた。
 麻薬を求めているのだ。
 だいぶ、頭の回転に歯止めがかかってきた、気がする。

【男子九番:神崎健二 死亡】
【女子十四番:暮員未幸 死亡】
【女子十六番:サーシャ 死亡】
【女子二十七番:和音さん 死亡】
【残り14人】



 電子的に歪んだ声の響きが消え去り、静寂が戻った。
 その時、自分の中で何が失われて、何が壊れたのかはわからない。
 しかしそれは誰にもわからない筈だ。
理解できる者、それは他ならぬ先程名前を告げられた者。
 ――なのだろうか?
 平然と冷静を装うとしても全くそうすることが出来ない。
 周囲の明るさ、日差しなど関係無い様に、ただそこだけ、自分だけが取り残される感覚。

 ――守ることが出来なかった。
 主人、玉堤英人の命令を守ることが出来なかった。
 間由佳は――死んだ。

 英人はもう傍には居ない。
 何処へ行ってしまったのか?
 もしや帰ってしまったのだろうか?
 あの、夜中の場所に?
 あの家の前で、自分を待っていて?
 もう懺悔している余裕など無い。
 とにかく、速やかに英人の元へ戻るべきだった。

 放送を聞き終えた吉良邑子(女子九番)はまだ傷ついていない右目で地図と今自分が居る場所を照らし合わせた。
 方位磁石の真南の向きには漁村が見える。そして真東には診療所らしき建物がぽつんと見える。
 恐らくE-6。大分あの家があるH-5とは離れてしまっている。
 更にこの山の道の中、北は三時間後には禁止エリアになっていた。
 エヴィアンとの戦いで傷付いた身体だと、上り坂になる北の山を進むのは少し厳しい部分もあった。
 自分は戻れるのだろうか。
 戻ったとしても英人が居ないかも知れない。
 しかし他にあてはあるのだろうか。
 もしかしたら先程の失態で自分を嫌ってまだ見ない土地に向かったのかも――

 中心部――だろうか?
 人が集まりやすい施設があるとすれば。
 怯えている生徒は廃校とか、そんな場所に向かうかも知れない。
 今は亡き間由佳を探すにしろ、早くこんな残酷な殺し合いを終わらせる為にしろ、理由はともかく英人はその辺りを狙って行
った可能性はある。
 そうだとして、ならば自分もそれに従うべきなのだろう。
 全ては英人を捜し出してから、だが。

 冷たい風が頬を、そして顔の傷口を撫でてちりっとした痛みを感じる。
 それを合図に、邑子は動くことにした。
 邑子は先程の放送の禁止エリアのチェック終えてから地図をデイパックに押し込むと、立ち上がって、それから歩き出した。
 目標は――


【残り14人】


「おいおい、流石に反応も無しじゃ盛り上がらねえだろ?」
 太田太郎丸忠信(男子六番)は行為で汚れた手を、キッチンの水道水で濯いでいた。
 住宅街――地図上で言えばB-5エリア――の中の一棟の家の中。
 ソファに忠信の荷物が置かれ、片隅にはイサカM37が立て掛けられている。
 そのリビングでぐったりと鬼崎喜佳(女子七番)は膝を折り曲げている。
 制服はその周りに脱ぎ散らされていた。
 そんな常軌を逸した状況にも関わらず、顔はぼんやりとした表情。
 魂を失ったような虚ろな目。

 ――そんな目で喜佳は天井をただ見つめている。
 忠信は、一体喜佳に何が起こったのかは知らない。
 ただ、殺したはずの朽樹良子が家の中に居て、忠信はまた良子を撃ち殺した。
 放送でもきちんと名前が呼ばれていた、良子を(そう言えば壱里塚徳人と森屋英太、それから自分を襲った間由佳の名前も呼ばれていた。どうでもよかったが)。
 喜佳は良子を主催者――二階堂永遠なのだと言った。
 忠信には、その意味は分からなかった。
 どうして良子が二階堂永遠で、そしてそうだと言うのに喜佳と良子、ついでに玉堤英人や鈴木正一郎が診療所に一緒に居た理由。
 そしてその間に、二人に何があったのか。
 診療所で良子を間違って撃ってしまった時、喜佳は怒り狂ってこちらに銃を向けてきた。
 ――確かに、あの時はいつもの喜佳だったのだろう。
 だが今はどうだ?
 自我を捨てて、マネキンのようにじっとしている。
 ただ、曖昧模糊とした、空白の状態――

 いや――それを詳しく理解する必要など、無いのだろう。 
 忠信には。
 忠信にとって、今、どうやって、喜佳を自分の物に出来るかどうかと言う方が重要だったからだ。
 しかし、喜佳は何をしても無反応のままだった。
 まるで人形を扱っているような、欲情どころか一抹の恐怖すら見えない、喜佳の表情。

 次第に、忠信は腹立たしくなっていった。
 リビングに戻ると、まず忠信は喜佳を押し倒した。

「……聞いてんのかよおい」
 そう言って、次に忠信は喜佳の髪を掴んだ。
 強く掴んだつもりだった。
 しかし喜佳は呻き一つすら上げない。
 無気力に、引っ張り上げられている髪に全身を委ねている。


 忠信は、喜佳を床に叩き付けた。
 ようやく、喜佳の口から僅かに息が漏れたが、しかし到底忠信が満足するような量ではなかった。
 そのまま喜佳は倒れたきりである。
 今度は、壁の隅に向けて目を固定している。

 ただ、こうしている間にも痛む腹を堪えて、忠信は思った。
 腹が負傷中でなければ……

「……」
 ちら、と視界に白っぽいものが入り込んだ。
 光が一点、壁を照らしている。
 煙草のヤニで黄ばんだらしい汚れた壁にぽつんと光る一センチ程度の細い長方形の点。
 忠信は振り向いた。
 窓の外、何かがきらりと太陽の光を反射していた。
 隣の家から生えている木の枝の中からだ。
 鳥除けのガラスか? とも思ったが、それは忠信の場違いな妄想だった。

 次の瞬間、その光点が窓を割ってリビングの中へ飛び込んでいた。

「ぶっ」
 忠信の腹に更なる激痛が走った。
 そのまま、忠信はソファの脇に倒れ込んだ。
 腹に突き刺さってきたのは――矢、だった。
 鉄製の棒に矢尻が付いた、まさにそれだ。

「随分と余裕があるんだな。テトさんを襲ったのもお前か?」
 声が窓から聞こえた。
 忠信はソファの傍にあったイサカM37を引っ張り出しながら、窓から入り込もうとしている日向有人(男子二十五番)の
姿を認めた。
 有人の手には、弓にライフルと取りつけた様な武器――ボウガンが構えられている。
「鬼崎を見かけてな。追い掛けてみたら……」
 有人が話している途中、有人が唐突に話すのを中断して目を見開いた。
 瞬時、有人は肉と骨の破片を吹き散らしながら、仰向けに地面に吹き飛んだ。
 ばたりと倒れた。
 倒れた時には、もう有人は事切れていた。
 散弾でぐちゃぐちゃになった胸元から、とろりとした水溜まりがゆっくりと、広がっていった。

「お前、馬鹿だろ? ぐだぐだ言っている暇があったらさっさと撃てや」
 忠信に掲げられたイサカM37が、硝煙を吐いていた。
 喜佳はその日向有人が出ていた窓の方向を見ていたが、その視線は相変わらず死んだような印象の暗いものだった。
 構わず、忠信は腹から矢を引き抜いた。
 変なところを傷付けていないらしく、血はかなり出たがまだ動ける感じだった。
 忠信は喜佳のブラウスを破ると、それで一応の応急処置はすることにした。


 有人が言った言葉――そう、愛餓夫らとテトを犯している場面――或いは、その後のテトの様子を見られていたのだ。
 恐らく。しかし、前者は無いものと考えていい。
 あの時間に旧校舎に近寄る人間などほとんど居ないからだ。
 つまり――それは愛餓夫と壱里塚徳人と吉良邑子、貝町ト子が事後処理を怠ったに他ならない。
 そうでもなければ、あの時間、あの場所、万全の体制で臨んだ筈なのに外部に感づかれる訳がないのだ。
 ――何処までも使えない連中。最も、今や吉良邑子、貝町ト子しか生きていないのだが。

 そこまで思考して、忠信は気付いた。
 ト子は何処に居るのだろうか?
 追原弾に教えてもらった二つのハンドルネーム、そして吉良邑子は意識していたのだが、すっかりト子のことを見逃していた。
 あいつぐらいでもまだ十分利用価値はある筈だ。
 特に今の状態で、一人で激しい戦闘は厳しい。
 邑子もそうだが、ト子を利用しない手は無いのだ。

 だが、その為には恐らく麻薬が必要になるに違いない。
 無ければト子は役立たずのまま、そのまま殺す必要が出てくるだろう。
 自分の荷物からは麻薬の入った注射器が消えていたので、二階堂永遠か誰かに没収された可能性が高かった。
 誰かに配られていたのだとしても、この島での入手はほとんど不可能かも知れない。
 島中の死体を探すか、或いはまだ動いている生徒から奪うか、どちらかしかない。
 戦闘は、先程も考えた通り、今度は勝てる見込みが薄いのだ。
 そうなると死んだ生徒のデイパックを漁るしか無いのだが、死んでいるということは基本的に殺されたことになるので生きている生徒にまず持って行かれるだろう
。 だが、見かけは赤い液体の入った不気味な注射器。
 ――そんなものを軽々しく、自分の荷物に入れようとはするのだろうか?
 もしかしたら、まだ――

 そうだとしても、この状態で動き回るのは、無理だった。
 打撲ならともかく、今度は出血を伴うような傷を負ってしまっている。
 下手に動けば突然傷が開くかも知れない。
 しかし動かなければ――

 喜佳がリビングから動かないままなのを確認すると、忠信は玄関から外に出て、カーガレージに入った。
 カーガレージと言っても、天井がトタンの貧相なものだった

 それでもそれなりに広く、先程のリビングの三倍くらいの奥
行きはあった。
 壁の小棚にはニスとかペンキが置いてあって、そして、車の
入口であろう扉に視線を向けると……
「おっ……」
 忠信は思わず声を上げた。
 思った通りだった。
 見つけたのは、一台のミニバンだった。

【男子二十五番:日向有人 死亡】
【残り13人】


 映画館への通り道、太陽が直接差し込んでくるような、映画館の向かいで海の見える、のどかな田舎の風景のようなその場所。
 それでも、空のやや雲行きは怪しくなってきていた。雨が降るかも知れない。

 落ち着いた状況だったらそう思っただろう。
 その場所で座りながら白崎篠一郎(男子十五番)は、ただ愕然とした表情で放送を聞き終えた。
 それはもはや演技ではない。
 冷えるような外気も気にはならなかった。
 それよりも、心にぽっかりと空いた大穴から吹き込む風の方がよっぽど辛かった。
 今までに無い苦しみ。
 毒が滲むような胸の痛み。
 緊張、或いは悲しみで高鳴る胸の鼓動。
 今までの冷静さは完全に何処かへ吹き飛んでしまった。

 暮員未幸が、死んだ――それは篠一郎にとってあまりに残酷な宣告だった。
 彼女が死んだ?
 彼女はあんなに優しかったのに?
 何故殺されなければならなかった?

 たまたま共通の趣味だっただけで、変わり者の自分と親友として付き合ってくれた。
 それだけでも篠一郎は嬉しかった。
 そんな彼女が死んだだと?
 こんなにあっさりと?

 どうして彼女が死ななければならない?
 彼女が?
 彼女が――


 暮員……さん。暮員さん。暮員さん。

 くれいんさん。

 優しかった未幸の笑顔が、脳裏に写りだした。
 映画を見ていた時の未幸の横顔。
 ペットショップでハムスターを見ていた時の笑顔。
 一緒に食事をしていた時の、あどけない表情。
 学校の帰り道、あの夕日をバックグラウンドに未幸が走り出した時の姿。

 どれもが、スクリーンの中の映画に匹敵するような、未幸の鮮明な魅力を表していて――

 ――それが、失われただと?
 もう見られないだと?
 そんなの――納得が出来るわけ無いじゃないか!
 そんな――そんな――


「……は、せがわさん」
「え?」
 長谷川沙羅(女子二十四番)は突然の呼びかけにきょとんとした顔を向けた。
 きっと、あちらから見たら今の自分は滑稽に違いない。
 しかし、大切なものを失った自分などもはや仮面の剥がれた醜い大根役者でしかない。

「ははは、違います、よ。そうに、決まって、ます、よね?」
 違う――こんなの――彼女が死んだなんて――
「何が? 何がなの? 白崎君? どうしたの?」
 沙羅は明らかに困惑していた。
 しかしもはや狂いかけていた篠一郎の心理、そんなことは関係無かった。

 もう、どうでもよくなったのだ。
 何もかも。
 ここまで自分が暮員未幸という存在にすがっていたなんて気付いていなかった。
 やっぱり、自分には暮員未幸が必要だった。
 大切な親友――
「あ……ああああああっ」
 ほとんど錯乱しながら、篠一郎はボウイナイフを振りかぶって向かい合わせに座っていた沙羅に飛び掛かった。
 こんなに――こんなに苦しいなら――

 それから数秒もしない内に篠一郎の思考は停止した。
 一発の銃声。
 それだけを残して、白崎篠一郎の舞台に幕が下ろされたのだ。


 長谷川沙羅は、ぷるぷる震える手でベレッタM92を握りしめたまま、その場から動けなかった。
 ――放送だ。
 暮員未幸――白崎篠一郎が親友だと言っていた女子生徒。
 その未幸の名前も放送で呼ばれていた。
 きっと、それで篠一郎が突然――

 それに咄嗟のこととは言え、篠一郎を殺してしまった。
 コインを撃つのとは訳が違う。
 今だって目の前に転がっている。
 自分が殺した現実が。

 だからといって、ここで立ち止まっている訳にもいかなかった。
 こうしている間にも、ラトの仇にみんなが脅かされているのだ。

 ――ラト。

 他に沙羅にしこりを残したのは、サーシャが死んでいたことだった。
 ラトが最後に、思いを告げたあのクラスメートも放送で呼ばれている。
 その時の、沙羅が最後に見たサーシャの表情が、ふっと浮かんで、すぐに消えていった。
 彼女もまた、命を落としてしまった。
 沙羅には、それは白崎篠一郎を殺した以上に何か重大なミスを犯したような気分にさせた。 
 ――しかし、まだ生きている生徒だっている。
 まともな人が、生きている筈なのだ。
 女子の生徒で、大人しそうな倉沢ほのかとか、苗村――えーと――とか――


 そんな女の子達や、他の生徒が、今もこの島の何処かで震えているのだ。
 ――助けなければならない。
 誰にだって、死んでいい理由など無いのだ。
 沙羅は、ベレッタを下ろしてデイパックを背負って気を取り直すと、篠一郎の死体を見ないようにそのデイパックの中身を
取ろうとして――



 ぱららららら、という、しばらく遠くで聞こえていた筈の音が間近で聞こえたのにそれから十秒もかからなかった。
 沙羅はそのまま身体中から力が消失して、がくりと元の体勢に座り込んだ。
 胸から腹にかけて、三つの穴が出現していて血がどくどくと溢れ出していた。
 唐突な襲撃による出血で沙羅は既に神経が鈍くなり始めていたが、しかし、残った力を総動員してなんとか顔を上げた。

 六メートルほどの距離の道の向こう、二つの姿が見えた。
 立って、銃を構えている女子制服を着た姿と、露出度が多いような格好をしている何か――
 恐らく、倉沢ほのか(女子十三番)――と海野裕也(男子四番)――の姿が。

「先生の放送とこれであと十二人ですね! もうすぐ、もうすぐですね、裕也君!」
 ほのかが、歓喜している。
 沙羅には、何故ほのかが歓喜しているのか理由が分からなかった。
 いや、考えられなくなっていたのだ。
 頭に血が回らずに、どんどん視界が薄くなっていく。
 これが、何を表しているかは理解できた。

 死ぬのだ。これから。
 沙羅は。
 ほのかに撃ち込まれたらしい弾は、深いところまで沙羅の内臓を抉っていた。
 体内の妙な違和感も徐々に小さくなっている。
 もうすぐ何も感じなくなり、五感、そして生命活動が停止するだろう。

「次は――うに見える――こっちに向か――ボー――」

 もう、ほのかが何を言っているのか分からない。
 ――そもそも、何故ここまで接近を許したのだろうか?
 篠一郎はともかく、沙羅には気付く機会があったはずだ。
 それとも――ほのかは、自分が篠一郎を殺した隙にこちらに向かってきたと言うのだろうか?
 だとすれば――これは――これは―― 
「白崎君を殺した……報い……なの……?」

 沙羅は、肺に僅かに残された息で、そう呟いた。
 その後、ただ、無情に同じ銃声が何度もリピートされていった。
 沙羅の全ては、そこで永遠に途切れた。


【男子十五番:白崎篠一郎 死亡】
【女子二十四番:長谷川沙羅 死亡】
【残り11人】

時系列順で読む


投下順で読む

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年09月10日 05:47