Visit O,s Grave ◆zmHe3wMKNg




「…はうっ…な、なにやってるの樹里…!」

「…何よ~こうしないと出来ないじゃん。」

「…えと…これ戻せるのかな…?」

「幻滅5回目~。ほんっとチェリーなのね裕也~。」

「…うぅ…酷いよ…。」

「…幻滅6回目。泣かないの~。…えいっ!」

「うぁ!…だ、駄目だよ樹里…汚いよ…。」

「…うりゅふぁいにゃ…じっふぉして…はむっ。」

「…あぁ…。」

「…ふふ…まだ駄目よ…これからが本番なんだからね――。」


海野裕也は、激しく後悔していた。どうしてこんなことになったのか。

ほのかに対し、激しく申し訳ないと思っている。




小鳥のさえずりとともに、朝陽がカーテンの隙間から差し込んでくる。
この島に来てからあまり時間は立っていないが芽生える奇妙な安心感は
学校の保健室という割と見慣れた空間が醸し出しているものなのか。

(……ふぁ……ん、明るい……もう朝?やだ、少し寝過ごしちゃったかな。)

北沢樹里は欠伸をしながら体を起こし、肌寒さに違和感を感じて自分の状態を見てみる。

(って、えええええ──っ!?
 な、なんでわたしこんなカッコ……や、やだ、嘘……っ。)


「あ、起きたんだ。おはよう、樹里。」

少し離れた場所で、制服に着替え終わった海野裕也が少し顔を赤らめてこちらを見ていた。

「って!海野裕也ぁ!?
 なんであんたが?まさか、これ──裕也が脱がせたの?
 うー、ばか、信じられない、この変態っ!」 
「…いや…何言ってるのさ…朝のこと覚えてないの?…その…。」

裕也は顔を真っ赤にしてうつ向いている。

(あ……そう言えば、今朝は、裕也と──)

「……何てこと思い出させるのよ、このすけべっ。」
「……え…でもすごく積極的だったのは樹里の方で僕は……。」
「……う、うぅ……そりゃそうだけど、でも起きたらいきなり裸なんて、びっくりするじゃん!」
「ご、ごめん。」
「……ひょっとして、その……寝顔とか、見てた?」
「……ごめん、すごく綺麗だったからつい見とれて……。」

うぁ……なに言ってんのよこいつ。
ううっ……急に恥ずかしくなってきた。

「……て、あれ?どこ行くの?裕也?」
「うん、ちょっと校舎に誰か入ってきてないか見てくるよ。
 すぐ戻ってくるから待ってて。あ、樹里の鞄の中に入ってたヤツ
 良かったら着けておきなよ。少しは安全だと思うし――。」

そう言い残して裕也は保健室から出ていった。

「…………あーあ。」

染みの付いたシーツを抱きしめて、樹里は再び横になる。

「……幻滅24回目~。もう、ここは、おはようのキスをするとこじゃん。ばーか。」

顔は少し笑っていた。



◆ ◆ ◆

海野裕也は半ば放心状態で誰も居ない校舎の中をふらついていた。
頭を冷やすためしばらく一人で放浪したい気分だったが
今朝の事がどうしても頭から離れない。

「…ぁぁ…なにやってんだろ…ごめん、ほのか。」

申し訳ない気持ちとは裏腹に、頭に浮かぶのは北沢樹里の事ばかり。
教室で知っている彼女は活発で、悩みなんかないとでもいうかのようにいつも笑っていた。
でもこの島にきて、あんなことがあってから急にしおらしくなったり、
誘惑するように見つめてきたりたり、赤くなって怒ったり、
とても想像出来なかった一面を次々と見せてくれた。
あれが北沢樹里という女の子なのか。
思えば僕は倉沢ほのかの何を知っていたというのだろう?
僕のほのかに対する興味なんて結局その程度……

「…だめだ…僕はほのかの彼氏、彼氏なんだ…よね?」

そうしている内に見覚えのある教室の前にたどり着いた。
緩んだ顔が、やや緊張した面構えになる。

「ここって、僕達が最初に連れてこられた教室?」

今は閉まっているこの扉の向こうにはまだラトの死体が転がっているのだろうか?
意を決してドアの取っ手に手をかけようとしたその時、

「……え……?」

教室の中から、とても澄んだ綺麗な歌声が聞こえてきた。
歌自体は裕也もカラオケで何度か歌ったことがある流行歌。
だがとても同じ次元の存在だとは思えない。

そして、文化祭の時に聞いたその歌声の主を自分は覚えている。

歌が終わり、裕也はゆっくりと扉を開けた。



「うわ!!誰?ノックくらいしなさいよ!」
「……ごめん……やっぱり君達も連れて来られてたんだね。
 ―――――テトさん。」

ラトの亡骸を大事そうに抱きかかえた猫族の少女がそこに居た。

「なーんだ、海野君か。ま、あんた位なら別にいいや。
 それにしても意外ね。君みたいな子は真っ先に死ぬと思ってたわ。」
「失礼な。でも…何をしてるの?」
テトは深く溜息をつく。
「別に。彼のお墓参りみたいなものかしら。あの時ちゃんとできなかったし。」
「……そう。悲しいよね。僕達がこんな事に巻き込まれるなんて。
 テトさんは最近ラトといつも一緒に居たのに。」
「ねえ?私があの教室に居なかったことを不思議に思わないの?」
「そりゃ思ったけど?今は目の前に居るじゃん。
 酷いよね若狭先生。僕達にこんな殺し合いをさせるなんてさ。」
「……まぁいいわ。運が良かったんでしょうけど、油断してると痛い目をみるわよ。
 さっき放送あったでしょ?正直いきなりあんなに死ぬとは思わなかったわ。」
「え?放送!?」
「……ひょっとして聞いてなかったの?」
「えと…あはは…。」
「やれやれ、所詮男なんてみんなケダモノね。」
「……面目ない。え、なんで知ってるの?」
「……冗談だったのに……まさか本当だったなんて。呆れた。
 今の現状をわかってるの?…でも、まぁ。これが最後かもしれないから
 好きなことをするのも一つの道ではあるわね。」
「……反省します。」
「ふぅ、しょうがないわね。死んだ人を教えてあげるわよ。次も生きてたら
 ちゃんと聞くようにしなさいね。」

そうしてテトは裕也に死亡した17人のことを教えた。
その中の一人の名前を聞いてピクリと反応する。

「愛餓夫…死んだんだ。やっぱりあの怪我じゃ…。」
「ええ、血が足りなくて全身が青白く変色しながらも必死に生きようと足掻いて
 何時間も苦しんで苦しみ抜いた末に衰弱死したわ。すばらしい滑り出しだわ。
 この調子で残りの三人も…えほっ。ごめんなさい。不謹慎だったわね。」
「樹里が…違う!僕達が…殺したことになるのかな…?
「なんで今ので怪しまないのかないのかしら…鈍感とかよく言われる、彼?
 あー、まぁいいわ。樹里って、北沢樹里のこと?いつの間に名前で呼び合うような
 仲になってたのかしら?」
「…ついさっき…。」
「早いわね。早過ぎる。吊り橋効果ってすごいわ。しまった。私もやればよかった!」
「うう…ごめん、ほのか。」


その様子をみて、テトは意地悪そうな眼を向ける。

「…ねぇ、海野君。
 このルールだと一人だけ助けられるんだけど、どっちを生き残らせたい?」
「え!?」
「深く考えなくていいわよ。どっちか『好きな方』を選べばいいじゃない。」
「…好きな…?」



「ここに…かな?」

「…ん…そうよ…早くしなさいよ…。恥ずかしいじゃない。」

「でも…なんか圧迫感が…。」

「幻滅7回目!いちいち声に出さない!」

「ごめん……じゃあ……。」

「……く、う、はぁ……っ。」

「だい…じょうぶ?樹里?」

「平……気っ、気にしなくていい……から……、い、ああああぁあああぁああ!!」



「うわぁぁぁぁ!!違うんだほのかぁぁぁぁ!!」
「……あーごめん。野暮だったわね。」
「い、いまは考えられないよ。みんなで脱出できればいいと思うし。」
「修羅場が好みとはドMね。それともハーレム願望がおあり?」
「違うよ!」
「はははっ。……じゃ、私はもう行くわ。」

そう言ってテトは立ち上がった。腕に動かないラトの死体を抱えて。

「え?どうするの?それ?」
「うーん?二階堂に頼んで…あ、なんでもないわ。
 また会えるといいわね。海野君。多分もう無理でしょうけど。」

次の瞬間、なんの予備動作もなくテトは裕也の前から影も形も消えて居なくなっていた。

一体なんだったのか?幻覚でも見たのだろうか?
でも確かに彼女は目の前に……。

「疲れてるんだよ、多分。……戻ろう。」


◆ ◆ ◆

「ふふふ……あははは!死んだんだアイツ!
 わーい!ザマーミロバー―――カ!」
「……樹里。」

愛餓夫の死を知って歓喜する彼女を僕は責められなかった。
放送は樹里が寝ていた時に起きてた僕が聞いていたことにして、
良く分からないテトのことは言わなかった。

「で、校舎には誰も居なかったんだよね?
 よかった。もう少しここで休めそうじゃん。」
「うん、ところで樹里?」

裕也が北沢樹里に渡したのは彼女の支給品である防弾チョッキだ。
確かに言った通り身に付けてくれているのだが……。

「……なんでチョッキの下に何も着てないのさ?」
「だって暑いんだもん。あ、もう脱ぐから裕也が着なよ。
 いざとなったら矢となり盾となり護ってくれるんでしょ?」
「脱ぐって?うわ!?」

気を抜いた隙にベッドに引きずりこまれる。

「……ねぇ樹里。僕達こんなことしてていいのかな?」
「幻滅25回目ー。別にいいじゃん、減るもんじゃないし。」

そうして二人は口付を交わした。


海野裕也は、激しく後悔していた。どうしてこんなことになっているのか。

ほのかに対し、激しく申し訳ないと思っている。



【D-4 学校・保健室/一日目・朝方】
【男子 四番:海野裕也(うんの-ゆうや)】
【1:僕(達) 2:君(達) 3:君(ら)、○○(呼び捨て)】
[状態]:ほのかに対する罪悪感
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、P-90(150/200)、P-90の予備弾薬(200発×5本)
12ゲージショットシェル(8/12) 、ウィンチェスターM1873(4/4)、防弾チョッキ
[思考・状況]
基本思考:優柔不断故に流されています
0:北沢の行動に困惑
1:誰かに襲われたら自分がなんとかする
2:倉沢ほのかを……
[備考欄]
※“今からすること”について躊躇していませんが反論できずに流されています
※テト達三人もゲームに参加させられてると思っています


【女子 八番:北沢樹里(きたざわ-じゅり)】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:あの人(ら)、○○(呼び捨て)】
[状態]:右足損傷(踵から先損失・治療済み)、服を着てない、自暴自棄
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:倉沢さんには悪いけど……海野君を奪っちゃおっかな~?
0:海野裕也を奪う
1:ついでに元カノの倉沢ほのかを不幸にする
2:もっともっとクラスメイトに不幸になってほしい(失うものがないので、何でもする気です)
[備考欄]
※“今からすること”についてまったく躊躇していません



※“今からすること”は、どんなに遅くても次の時間帯までには終わっていますので、
誰かが彼らを発見するとしたら事に及んだ後になります
※ラトの死体はテトが持って行き、【D-4 学校】から消えました


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制服を着た小悪魔 海野裕也 Life was like a box of chocolates
制服を着た小悪魔 北沢樹里 Life was like a box of chocolates

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最終更新:2009年04月27日 19:55