大いなる遺産 ◆hhzYiwxC1.


少し歩いた先に見えた民家で見つけたノートパソコンで、追原弾から受け取ったメモリーチップの中を覗く。『FRIENDS』、『PROGRUM』と言う名の2つのプログラムがその中には存在した。
デスクの椅子に腰かけながら、まずは『FRIENDS』の中身を見るべく、マウスでそのプログラムをダブルクリックする。


「このプログラムを開いているということは、恐らく君は研究者のうちの誰かだろう。」
プログラムにはそう書かれてあった。

「俺は研究者でも何でもねーよ」
太田は嘲笑うようにそう呟く。
呟きながら、ページを下の方へとスクロールして行く。

『この場では、自分に素直になれるので、日記のような形式で行かせてもらう。尚、研究者たちに読まれ、自分に不利益が生じる内容には、パスワードを設定しているため、読むことはできないことをあらかじめ了承してほしい。虫食いのようになっているはずだ。』

「パスワード?」

一度ページを一番下までスクロールさせたが、虫食いされている箇所など一箇所もない。

「壊れる前にパスワードを解除したのか? 追原の奴」

そう思い、納得したあと、太田は再びページをスクロールさせ、先の位置に戻す。

『結論から言うと、『シティー』の正体は割れている。クラスメイトという事は少し前に知ったし、彼女が時折こぼしていたやや荒っぽい愚痴から、彼女は『苗村都月』である確率が非常に高い。』

「苗村……?」

太田が、苗村都月の顔を思い出すのに、少しだけ時間がかかった。
影の薄い苛められっ子。と言うイメージしかなかったし、何より顔もあまり見たことがない。

「アイツがシティーか……まあアイツならちょっと脅せば容易にヤラせてくれるかな……?」
「で……次はキューブだ」


ページを再びスクロールさせる。

『次はキューブだ。彼女は日々自分の影が薄い事を嘆いていた。「あたしは所詮モブキャラか……」ってな』

『以上の条件を満たす女子は、クラスの中には二人いる。古賀葉子と、長谷川沙羅だ。』
『俺の計算では、古賀である確率は51%、長谷川である確率は49%となっている。』

『これで、『シティー』と『キューブ』に対する考察は終わりだ。虫食いだらけでさぞ読みにくかっただろう。済まない。』

「まあ俺には虫食いなんて関係ねーけどな」

太田は、瞬時に確率が2%だけ高い古賀葉子に目を付ける。
アイツも苗村同様あんまり知らないが、まあヤレりゃあいいだろう。
そう思いながらミネラルウォーターをデイパックから取り出し、喉に必要な量だけ流し込んだところで、放送が始まった。
不細工な若狭による、不細工な放送だ。

「若狭です。みんなー、元気にやってるかー? じゃあ六時になったから放送するぞ。まず死んだ友達の名前を呼ぶぞー」

「おーハイハイ。待ってました。待ってました」

「男子からです。多いなー。一番、愛餓夫君。五番、追原弾君。」

「ああ…餓夫死んだか……やっぱりな」

まあもともと奴が生存できるとは思っていなかった。
仮にも友人である餓夫の死を、太田は決して悼まず、寧ろ嘲笑していた。


「七番、加賀智通君。十番、如月兵馬君。十二番、グレッグ大澤君。十四番、鹿和太平君。十五番、宍戸亮太郎君。十七番……」

「しかしいっぱい死んだな…………まあいいんだけどよ」
男子の死には興味もわかないし、その逆の生存にも全く感慨は湧かない。
問題は女子だ。
苗村、古賀、長谷川がもう死んでたらせっかく得た情報が無駄になる。
どちらかと言うと無駄が嫌いな太田は、それを避けたかった。
せっかくの情報が水泡と化す…………

「次は女子だー。一番、麻倉美意子さん。六番、神崎志緒里さん。十五番、古賀葉子さん。」

一つ目の予想は、当たった。
やはり古賀は死んでいた。

「ま・いいか…」

「十七番、シルヴィアさん。二十一番、仲販遥さん。二十六番、松村友枝さん」

シルヴィアも、死んでいたのか。そう思っていたら、そのすぐあとで死者の名前を言う放送は終わった。

「おやおや…長谷川と苗村は生きてんのか」
ま……2%なんて誤差の範囲内かもしれん………一応長谷川の前でも『リン』を名乗って見るか。
多少博打染みているが…上手くいけばめっけものだ。

「いいペースだぞー。では禁止エリアを発表します。きちんとメモしておけよー。一時間後に 『C-4』 、三時間後に 『E-3』 、五時間後に 『D-6』 だー」


「『C-4』か……もうじきだな」
こちらもあまりゆっくりはしていられんだろう。
このパソコンはインターネットに繋ぐことはできないし、長居をするのも難だろう。

「この『PROGRAM』とか言うのも気になるが……」
それでも、大した時間のロスになりはしないだろう。
一度だけ、『PROGRAM』を開いてみる。だが、現れたのは追原弾の詳細設定ではなく、パスワード入力画面だ。

「何だよ……」
太田は、この画面にひどくがっかりしたようだったが、その少し後に、閃いたかのように、ある4文字の半角アルファベットを入力した。


「………………うん、ねえな…」

「追原自身が設定したわけじゃあないんだ。こんなパスワードなわけがない。何を期待しているんだ俺は…」

そのアルファベットをバックスペースで消した後で、太田はパソコンをシャットダウンし、メモリーチップをパソコンから抜き出すと、その民家を後にした。


「『CUBE』なわけねえよな…」



【B-4 市街地/一日目・朝方】
【男子六番:太田太郎丸忠信(おおた-たろうまる-ただのぶ)】
【1:俺(達) 2:あんた(達) 3:○○さん(達)】
[状態]:左肩に裂傷(応急処置済)、脇腹に打撲
[装備]:イサカM37(4/4)
[道具]:支給品一式×3、簡易レーダー、12ゲージショットシェル(7/12)
    S&W M500(5/5)、エクスキューショナーソード(刀身に刃毀れアリ)
    500S&Wマグナム弾 、追原弾のメモリーチップ
[思考・状況]
基本思考:ゲームを潰す。最悪自分だけでも生き延びる。テトを引っ張り出して調教し直す。
0:男は皆殺し。女は犯してから奴隷にする
1:「リン」を名乗って「キューブ」と「シティー」に接触し、自分の奴隷にする
2;グループの仲間(愛餓夫、壱里塚徳人、吉良邑子)を捜す。
3:女を引き連れてる“勘違い野郎”は苦しめて殺す(同行している女にトラウマを植え付ける意味合いも込めて)
4:間由佳、エルフィを警戒
5:シティーこと苗村都月を捜し奴隷にする。
6:念のため長谷川沙羅に会った場合はリンを名乗る(ほぼ博打行為のためTPOで判断する)
[備考欄]
※「シティー」=苗村都月、「キューブ」=古賀葉子です。
※太田のグループの仲間は三人の他にも居るかもしれませんし、いないかもしれません。
※「シティー」=苗村都月と認識しました。
※「キューブ」については半分諦めています(古賀葉子である確率の方が高かったから)



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EGO-IZUMU 大田太郎丸忠信 高校生デストロイヤー

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最終更新:2009年04月10日 08:28