制服を着た小悪魔 ◆hhzYiwxC1.



早朝。
海野裕也は、激しく後悔していた。どうしてこんなことになったのか。

ほのかに対し、激しく申し訳ないと思っている。



話は、黎明にまで遡る。
学校の保健室のベッドに、重傷の北沢樹理を運んだことから始まった。
彼女の息は荒く、すぐに彼女の傷口を治す必要があることは、裕也にもすぐに分かった。
昔小説か何かで読んだ方法を思い出しながら、包帯を巻いてゆく。

しばらく彼女はその痛みの中でもだえ苦しんだが、しばらくするとその影も薄れ、少しだけ落ち着きを取り戻した途端、樹理はゆっくりと眠りに就いた。

それに安堵した裕也は、しばらく樹理の寝顔を眺め、一息ついたところで席を離れようとした。

だが、突然彼女が、樹理が裕也の服を掴んできたのだ。北沢の息は、再び荒くなってきていた。
「ねえ…海野君さぁ」
「…何?」

「苦しいからさぁ…………上着脱がしてよ」

喘ぎにも似たその言葉に、裕也は顔を真っ赤にして、蒸せたような低い叫びを上げ、樹理から目をそむけた。

「彼女持ちのくせに初心ねぇ…………」

「ところで海野君さ…」
「倉沢さんとはどこまで行ったの?」


「どこまで行ったの?」

その言葉を、海野裕也は一瞬理解できなかった。
何故どこまで行ったのか?聞いて来るのか分からない。もう告白を成功させた時点で全ては完成させられたのに。
呆気に取られたような顔をしていると、北沢樹理は、呆れ顔で溜め息をついた。

「海野君さ。恋人同士は付き合い始めたらそれで終わりと思ったりしてるんじゃない?」

海野裕也は、かなり遅いながらも漸く樹理が何を言いたいのか理解した。
「………は……初めてのデートの時に……そ…その」


「こ……これって言わなきゃダメ!?」


「ふふ…………ダメーっ」
樹理の微笑みに、悪魔染みた何かを感じた裕也は、適当な理由を付けてその場を離れたかったが、樹理は放してくれない。

顔を再び真っ赤に染めながら、裕也はボソボソと、呟く。

「い………………いい雰囲気になったから…………その…」

「……」
樹理は裕也の態度にイライラしていた。
そして、ある程度予測もできていた。どうせいいトコ行っててキスぐらいまでだろう。

だが、何で苛立ちが募るのかは、よく分からなかった。

「どうせキスがやっとでしょ?! ヘタレ野郎」

思わず大きな声が出てしまった。

ふと我に返って裕也の方を見てみると、彼は驚くべきことに涙目になっていた。


「もしかして泣いてんの? うわあ…リアルで幻滅だわ…」


「ど…どうじで………どうじでそんな……非道いこと……」
「非道いですって? じゃあアンタは倉沢さんと体目当てで付き合ってないって言い切れる!?」

裕也は反論できない。

「…………幻滅2回目~………………」

「まあ倉沢さん。仲販さんテトさんほどじゃないけど胸大きいしね。触りたいでしょうよ。思春期の男子としては」

「でも……ほのかが嫌だって言ったから…………」



「………………アンタらさ。ホントにお互い付き合ってるって自覚ある?」


「エッチは愚か胸も触らせてくれない…それどころかキスもほぼ無し。アンタらさ……実際には恋人同士じゃ……」

「そんなことないよ……」


「僕はほのかが…好きだ」

「……幻滅3回目~…朝っぱらからのろけんじゃねえよ…………」
裕也の躊躇いのない瞳に、睨むような目付きで樹理が言った。

「ねえ…さっきからどうしたの?北沢さん。ずっと変だよ?」
裕也は恐る恐る樹理に問いかける。
だが、樹理は何も言わない。

「もしかして……脚のこと…」

「言わないで!!!!」

ついに、保健室の中に怒号が木霊した。

「殺すわよ……ヘタレ野郎」

樹理の怒りと憎悪の込められた瞳に、裕也はたじろいだ。
そこから彼女に言葉を掛ける勇気は湧かなかった。
だが、すぐに樹理は泣き崩れる。すぐに涙を制服の袖で拭った。


「私さ…………何か悪いことしたかな? 今までずっと…」

「…北沢さんは悪くないよ…」
「悪いのはこのゲームさ。誰も悪くない」


裕也は、樹理に優しい言葉を掛ける。
だが、樹理はそんな慰め求めてはいなかった。

「じゃあさ…………しちゃう?」
「? ………何…」

裕也がそう問い掛ける前に、彼は樹理の手によってベッドの上に引き摺りこまれた。


「…幻滅4回目。どこまで鈍いのよアンタは」

「鈍いって何……ちょっと北沢さん…………!?」
樹理は、戸惑う裕也の意思をよそに、彼のズボンのチャックを下し始めていた。
「樹理でいいよ。“裕也”」

樹理の言葉が甘い口調に変わった瞬間、樹理もまた、制服を脱ぎ始めていた。
黒を基調とし、紫色の装飾がところどころに目立つブラに包まれた、ほのかほどではないにしろ形のいい胸が姿を現した。

「触りたいなら触っていいよ。倉沢さんは触らせてくれないんでしょ?」

裕也は、このとき口では抗っていた。
だが、何もせずに流された。
結局、海野裕也は、流されたのだ。






北沢樹理は、自分の身に降りかかった不幸が、未だに信じられない。
どうして自分が、と問い掛けても、もう元には戻れない。
だったらいっそ、みんな不幸になってしまえばいい。
失うものは何もない。そのためなら何だって…………





早朝。
海野裕也は、激しく後悔していた。どうしてこんなことになったのか。

ほのかに対し、激しく申し訳ないと思っている。



【D-4 学校・保健室/一日目・早朝】
【男子 四番:海野裕也(うんの-ゆうや)】
【1:僕(達) 2:君(達) 3:君(ら)、○○(呼び捨て)】
[状態]:ほのかに対する罪悪感
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、P-90(150/200)、P-90の予備弾薬(200発×5本)
12ゲージショットシェル(12/12) 、不明支給品×1(北沢樹里の支給品)、ウィンチェスターM1873(0/4)
[思考・状況]
基本思考:優柔不断故に流されています
0:北沢の行動に困惑
1:誰かに襲われたら自分がなんとかする。
2:倉沢ほのかを捜す。
[備考欄]
※“今からすること”について躊躇していますが反論できずに流されています

【女子 八番:北沢樹里(きたざわ-じゅり)】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:あの人(ら)、○○(呼び捨て)】
[状態]:右足損傷(踵から先損失・治療済み)、制服が肌蹴ている、自暴自棄
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:倉沢さんには悪いけど……海野君を奪っちゃおっかな~?
0:愛餓夫を許さない
1:海野裕也を奪って倉沢ほのかを不幸にする
2:もっともっとクラスメイトに不幸になってほしい(失うものがないので、何でもする気です)
[備考欄]
※“今からすること”についてあまり躊躇していません

※“今からすること”は、どんなに遅くても放送終了までには終わっていますので、誰かが彼らを発見するとしたら事に及んだ後になります



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最終更新:2009年04月06日 20:09