Shake! ◆zmHe3wMKNg



修学旅行の初日。就寝時間が過ぎた後、エルフィは宿泊先のホテルを抜け出し、
港の公園に涼みに来ていた。もちろん規則違反だが、そもそもそのような規則を守っている生徒など
ほとんど居ないだろう。柵に手を掛け海の方を見ると、遠くに二日目に私達が行く予定の小さな島が見えた。
あの島が、旅行前に急遽カリキュラムに加えられた野外授業の舞台になるらしい。

「ふぃ~。」

吹き抜ける風が気持ちいい。
事故に遭ってから、時々自分が本当に生きているのか分からなくなる時がある。
しかしこの感覚と感情は紛れもなく自分が生きている証だと言えよう。

「…おや?」

目を凝らして横手の方を見ると、先客が居ることに気付いた。確か、彼女は―。


「ねぇ、あなたも抜け出してきたの?二階堂さん。」
「……!……まぁ、そんなところでしょうかね。」

近づいて声を掛ける。この機会に少し喋ってみようとエルフィは思った。

「ねぇ、二階堂さんは明日は誰と行動するか決まった?」
「……明日?あぁ、野外授業ですか。グループは島に渡ってから決める予定…だったと思いますが?」
「まーそうだけど、やっぱある程度なかいい友達と組む事になるじゃない?
 二階堂さん、一人で居ること多いからちょっと気になって。良かったら私の班と行動しない?」
「…心配は必要ない。向こうに着いてからの予定は既に決まっている。」
「あ、そうなんだ。余計なおせっかいだったかな?」

二階堂さんの少し軟らかくなり、手を差し出してきた。

「何?」
「……握手を……貴女の健闘を、祈りますよ。」
「??」

よく分からないが友達になりましょう、ということなのだろうか?
別に拒む理由も無いのでその手を握り返した。

その瞬間。


「…………え…………?」


二階堂さんが、キョトンとした表情になり、目を見開いてこちらを見つめた。
まるで、信じられないものでも見るかのような驚きの表情で。

「………エルフィ………あなた………?」
「な、なによ?」

驚きたいのはこっちだ。いつも無表情な彼女のこのような顔を初めて見る。
そして、少し悲しそうな顔に変わった。

「……本当、珍しいわね。もっと早く気付けばよかった。ごめんなさい。」
「え?何が?」
「エルフィ、もし良かったら島に行ったとき―――へ。」

「おーい!エルフィー!」

朽樹良子が遠くから呼んでいる。そう言えば彼女の部屋でトランプで遊ぶ予定をしていたのだった。

「そろそろ行かなきゃ。またね、二階堂さん。」
「……えぇ、また、逢いましょう。」

そう言って二階堂さんはとても親しげな表情を浮かべた。

◆ ◆ ◆

夜の海辺一人に佇む二階堂は溜息をついた。

「……まさか彼女が……少し残念。でも、まぁ、問題はない、か。このイベントが成功すれば、どうせ……。」

「やっほー!何やってんの?永遠?」

誰かが近づき、二階堂に声を掛けた。

「……別に。ほんの少し、気持ちが揺れた気がしただけですよ。」
「へぇー。…て!うぉい!?永遠ぁ!?」

近づいてきた女子、卜部悠は二階堂の肩を掴んで揺らした。

「まさか今更怖気づいたんじゃないでしょうね?
 しっかりしてよ?あなたが頼りなんだからね?」

それを見た二階堂は不敵な表情を浮かべて告げる。

「心配しなくていい。明日の実験の楽しみがちょっと増えた。それだけ。」
「あっそう。ま、そりゃそうよね。…それにしてもねぇ、ひひひっ。」

肩を離した卜部は二階堂の冷たい頬を両手でつねって伸ばした。

「一丁前に感傷に浸ってんじゃないわよっ、死体人形の分際でさっ。」
「とても適確な表現ね。」
「…うぅ~!やっぱアンタ嫌いだっ!」
「私はあなたが好きですよ。卜部悠。」
「うがー!キモイからやめいっ!あぁ~!やっぱアンタと居るとムシャクシャするなっ!」

卜部は二階堂に背を向け、首だけ振り向いた。

「ねぇ!テトの準備が終わるまで倉庫に吊るしてる魚面のおっさん虐めて遊んでていいかなぁ!?」
「あぁ、お好きにどうぞ。」
「……ふん。あ、遣り過ぎてうっかり殺しちゃったらフォローちゃんとしてね、永遠。」
「出来ればこれ以上作業が増えないことを祈るが、まぁ問題ないでしょう。」


――――――――――――――――――――――――


「…まさか間さんが殺し合いに乗るなんて…。」
「こんな状況だぞ。何が起こっても不思議じゃねぇよ。」

間由佳の襲撃から逃れたエルフィとノーチラスは、辺りを警戒しながら山の道をゆっくりと歩いていた。
彼女らに支給されているのは軟式ボールと金属バット。
野球をするのじゃあるまいし、今銃を持った相手に襲われたらひとたまりも無いだろう。

「それにしても、なんで俺達がこんなことしなきゃならねーんだよ!若狭の野郎!よくもラトを!絶対許さねぇぞ!」
「…そうね、なんとかして、みんなが馬鹿なことを始める前に止めないと。」
「最初から居なかった三人は…どうなったんだ?まさかあいつらももうラトみたいに…。」
「…三人…あ!ねぇ、ノーチラス!」
「え?何だ?」
「あのね、実は昨日。」

『エルフィ、もし良かったら島に行ったとき―――へ。』

(二階堂さん、何か、知ってたの?ひょっとして、私たちを助けようと?)

「昨日?あいつらと何か?」

エルフィが口を開こうとしたその時、茂みから突然何かが飛び出してきて、二人の横を駆け抜けた。

「うぉ!?」
「え?」

そしてそのまま道の反対の林の中へ消える。二人が確認できた彼女の名は女子三番の蝶族のエヴィアン。

「…な、なんだよ…?」
「…逃げてたわね。ノーチラス、ここで待ってて。」
「え?ちょ!?」

「放っといたら危ないじゃない!待って!エヴィアン!」

エルフィは、彼女の姿を追いかけ林の中へ消えていった。

道の真ん中に一人残されたノーチラスは呆然と立ち尽くすしかなかった。

(て、おいおい!どうすんだよ。待っとけって、ちゃんと戻ってこれるのか?)

彼女が消えたのはどことも知れない島の樹海である。
地図は支給されてても目印も無しに現在位置など分かる筈がない。
再び遭うには少し時間がかかりそうな予感がした。
そして、ふとエヴィアンが走ってきた林の方を見る。

(向こうに、何があったんだ?)

好奇心に負け、ノーチラスは木々の奥にある物を確認する為足を踏み入れる。
こんな処で一人でじっとしているのは耐えられなかった。

(それにしても。)

ノーチラスは右手を見つめる。

(えらい冷たかったな、エルフィの尻。触ってんのに全然気づきゃしねぇし。)


◆ ◆ ◆

「なんだあの小屋?」

視界は案外すぐ開け、木材を組み合わせて作った綺麗なログハウスが姿を現した。
部屋には明かりが灯っており、扉が開けっ放しになっている。

「…あそこに居る誰かから逃げたのか?」

恐る恐る小屋に近づいていき、扉から少し顔を出して中を覗いてみた。
とても静かで、パッと見た感じ、誰も居ないようだ。
部屋の真ん中に木でできた机があり、食べかけの菓子パンと、

「!!」

銃器「スミスアンドウエスンM56オート」とそのマガジンが無造作に転がっていた。
今のノーチラスにとっては喉から手が出るほど欲しい護身用の武器だった。
辺りを見回し、だれも居ないことを確認したノーチラスは忍び足でログハウスに入っていく。

(誰かの支給品か?悪いな、ちょっと借りるぞ。)

銃を手に取ろうとした時、部屋の奥で何かが動く音がして、慌ててその方向を振り向く。
誰も居ないと思っていたが、どうやらベッドで寝ていた者がいたようだ。
ノーチラスはその者を知っている。女子二十番、苗村都月だ。
緊張が解けたのか、彼女の元へ近づいていった。
熟睡する彼女が目を覚ます気配はない。

(危ねぇな。誰かに襲われてもしらねぇぞ。)

胸を上下させる肢体が妙に柔らかそうに見えた。苗村はクラスであまり目立っていない。
女子数名に虐められているという噂を聞いたことがあるくらいだ。
ひょっとしたらその事を根に持って、助けなかった俺達を恨んで居るのかもしれないとふと思い、
少し後悔した。このような状況になった以上、彼女にも協力して欲しいのだが。

(苗村が起きたら、とりあえず謝っとこうかな?それにしても結構可愛かったんだなー。)

思わず、彼女に手を伸ばす。徐々に心臓の鼓動が速くなっていき。

「あ!」

しまったと思った時は既に遅く。
苗村に触れた瞬間、ノーチラスの鼓動に反応したのか無意識で能力が発動し、
彼女の上半身の衣類がすべて分解され影も形も無く消し飛んだ。


◆ ◆ ◆

「…なんでいきなり逃げる?エヴィアン?」

ついさっき、突然ログハウスの扉を開いて姿を現したエヴィアンは、
鞄の中に入っていた菓子パンを頬張っていたウィリアム・ナカヤマ・スペンサーの姿を見るや否や、
顔を恐怖で引きつらせ、一目散で逃亡した。
彼女の極度の男性嫌いを知らないウィリアムは何事かと思い条件反射で部屋を飛び出したが、
エヴィアンの姿は既になく、大体の辺りを付けて追走しようとしたもののまったく見当違いの方角へ
向かってしまったことに気づき、しぶしぶ引き返して来たのだった。

「…まぁ、別にいいか。それより、苗村を護るのが先決だったな。」

引き返す途中で迷った為戻るのに少し時間がかかってしまった。
失策だったかと反省し、扉に手を掛ける。

「…?そういえば、出ていく時に扉は閉めたか?」

妙な違和感を感じた後、ウィリアムはゆっくり扉を開いた。

◆ ◆ ◆


「・・・・・・。」

ノーチラスの目に苗村の形のいい双丘がはっきりと映っている。
能力を使って女性のそれは何度も目撃してきたが、
かつてないほど心臓の鼓動が止まらないのはなぜだろう。
殺し合いという異常なシチュエーションが普段より一層感情を高ぶらせているのだろうか?
ごくりと喉を鳴らす。

(……本当にすまん……苗村……我慢……できそうにない……。)

少しだけなら、そう思い、手を双丘に伸ばした。
生の肌の温もりが手の平に心地よい感触を与え、




「おい、な に を や っ て い る 貴 様 。」




背後から怒りと憎悪に満ちた声が聞こえ、ノーチラスは思いっきり後悔した。



【G-5 ログハウス/一日目・黎明】
【男子二十三番:ノーチラス】
【1:俺(達) 2:あなた(達) 3:あの人(達)、○○サン(達)、(敵対している人物には)あいつ(ら)か呼び捨て、】
[状態]:能力を行使したことによる疲労(小)
[装備]:金属バット
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:殺し合いを止めさせる
 0:由佳を警戒
 1:仲間を探したい
 2:痴漢したいが今それどころじゃない

【男子三番:ウィリアム・ナカヤマ・スペンサー】
【1:僕(達) (本来(激怒時)は俺(ら)) 2:きみ(たち) (本来はお前(ら)) 3:彼、彼女(ら)、○○(名字さん付け) (本来は○○(呼び捨て))】
[状態]:右足に裂傷(応急処置済み)、怒りを必死で抑えている、能力を行使したことによる疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、シアン化カリウム
[思考・状況]
基本思考:苗村都月を保護する、しばらくはログハウスに篭城する
0:苗村を襲っている変態を殺す
1:怒り爆発寸前
2:都月を説得し、殺し合いから手を引かせる
3:都月が説得に応じた場合、彼女を護りながら島から出る方法を画策する
[備考欄]
※銀鏖院水晶同様、超能力の行使は心臓に負担を掛け、体力を消耗させます
※シアン化カリウムについて、彼は薬のパッケージをよく見ていないためよく理解していません
※バトルロワイアルと言う環境下は、ウィリアムにとって通常よりもストレスとなっています

【女子二十番:苗村都月】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:あの人(達)】
[状態]:極度の怯え、被害妄想による狂気、ウィリアムに対し恐怖、気絶
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:気絶中につき、なし
[備考欄]
※ログハウスの中にあったベッドで、静かに眠っています
※ノーチラスの能力の影響で上半身裸の状態になっています



※S&W M56オート(6/15)、M56オートのマガジン(3) がログハウスの机の真ん中に置きっ放しになっています。






「はぁ…はぁ…。」

ノーチラスがとんでもないことになっていたその頃。

エルフィは道に迷っていた。

深い森の中で自分の現在位置が把握できず、おまけにエヴィアンも見つからないという体落。

「あぁーやっちゃったなー…なんて間抜け!」

頭を抱え、疲労した体を休めるべくその場に座り込んだ。

それからしばらく時間がたち、誰かが茂みを掻き分け彼女の元へやってきた。

「お前は…エルフィだったかな?」
「…ええ、そうよ。で、何の用事?私を殺すの?」
「まさか、君が襲ってこない限りは何もしないよ。」
「あぁ、そう。」

つい先ほど吉良邑子を退けた内木聡右である。

◆ ◆ ◆


「とりあえず、吉良と間が殺し合いに乗ってるって訳か。」
「そうみたいね。吉良さんは気絶させただけ?」
「あぁ、それで充分だろ。それに、自分の意志で行動してるのかも怪しかったしな。」
「どういうこと?」
「…エルフィ、君の話だと間さんも彼の名前を呼んでいたそうじゃないか。」
「彼って…英人君のこと?」
「…気をつけた方が、いいかもしれないぞ。」

腕を組んで、エルフィにその事を告げた。

「玉堤英人。あいつ、実は相当ヤバイ奴かもしれん。」


【G-6 山道/一日目・黎明】
【女子四番:エルフィ】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:○○さん(達)】
[状態]:良好
[装備]:硬式ボール(5)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:生き残る
 0:エヴィアンを追いかける
 1:とりあえず聡右と行動する
 2:ノーチラスと再会できればいいのだけれど…
 3:由佳、英人、吉良を警戒

【男子二十二番:内木聡右】
【1:俺(たち) 2:アンタ(たち) 3:あの人、奴(ら)、○○(名前呼び捨て)】
[状態]:健康
[装備]:コルト・パイソン(6/6)
[道具]:支給品一式、予備弾(18/18)
[思考・状況]
基本思考:喜佳と合流したい。仲間を集めてゲームを潰す
0:ゲームに乗る気はない。
1:戦いを極力避ける
2:助けを求める生徒は見捨てない(だからと言って油断もしない)
3:襲ってくる者は退ける(殺しはしない)
4:内心では吉良が改心してくれて、生き残ることを望んでいる
5;由佳、英人、吉良を警戒
[備考欄]
※喜佳がもしもゲームに乗っていたら、どうするかまだ決めていません(死ぬことはないだろうとは思っていますが、それでも心配です)
※喜佳が銃を扱える事実は聡右以外は知りません
※玉堤英人は吉良邑子、間由佳を利用し、人を殺させていると思い込んでいます

※時間帯は「修羅」の直後です。





【???/一日目・黎明】
【女子三番:エヴィアン】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:○○(男限定でフルネーム呼び捨て)(女限定で名前さん付け)】
[状態]:健康、全身に軽い打撲
[装備]:催涙スプレー、カッターナイフ(民家から拝借。袖に隠している)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:ゲームを潰す
0:男子生徒に遭遇したらとりあえず思想は関係なく逃げる
1:神崎健二にもし会ったらどうするか決めてない
[備考欄]
※エヴィアンがどこに居るのかは次の人に任せます。


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虚ろな魂 ノーチラス ノーチラス…
Heat W・N・スペンサー ノーチラス…
Heat 苗村都月 ノーチラス…
虚ろな魂 エルフィ traffic
修羅 内木聡右 traffic
Two Face エヴィアン traffic

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最終更新:2009年04月01日 08:40