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*誓いの剣 ◆NZAAAAAAAA 空から日差しが照り射し始めてからどの位経ったか。 そこまで時間が進むまで待っていると言うのにフラウが起きない事にケトルは焦りを感じ始めていた。 英人の言った通りだ。 もう17人もクラスメイトが死んでしまっている。 英人や間由佳は無事だったが、やはりケトルの心には重い物があった。 更にここの隣のエリアは既に禁止エリアになっている。 合わせて、他の場所に居た誰かが動いているのは確実だ。 もう無理矢理にでも起こさないとまずい。 そう感じ、少しひどいかもとは思ったがそれを実行することにした。 ポケットからハンカチを取り出すと、ペットボトルの水をたっぷりかけて、それをフラウの額にかけた。 更に、その上から少しずつ慎重に水を垂らしていった。 いつか見たアニメだと池に気絶したキャラを投げ込んでいた気がしたが、そんな池も無ければやる気も力もケトルには無い。 瞬間、ひゃあと間抜けな声をあげてフラウが跳び起きる。 「フラウ!」 フラウの肩を掴み、しっかりとケトルはその顔を見た。 「ケトル…」 「英人は?」 第一声はやっぱりこれだった。 気持ちがまた沈みかけたが、今はそれどころではない。 ケトルはただ事実を述べる。 「…行ったよ。やることがあったみたいだ」 言った途端に、フラウが血相を変えてケトルに聞き始めた。 「二階堂さんを探すことなの? ねえ、あなたどうして止めなかったの?」 「英人が…英人が、フラウを巻き込む訳にはいかないって」 フラウが突然叫んだ。 「嘘よ!」 顔を振り乱し、目を見開きながら怒りの表情をあらわにする。 「どうして止めなかったの!」 そう言われた所で、ケトルは答えようが無かった。 フラウが納得出来る説明など出来やしない。 ケトルは戸惑いながらもう一度口にした。 「だから、英人が…」 「ケトル! 嘘なんて聞きたくない! 本当のことを教えて!」 それを言い終えたか終わらないかの内、突然フラウが脇に放り出されていたグレネードランチャーを掴んだ。 そのままケトルに構えた。 ケトルは、身を強張らせた。 「フラウ!?」 激昂したフラウの目は極限まで見開かれていて痛々しい程に充血していた。 興奮は、どうしてももはや収まりそうにない。 「私は英人の為に危険な奴らを排除しなきゃいけないのよ!」 苗村の時の様な嫌な悪寒がまた、ケトルを襲った。 ケトルは自分でも何が何だかわからないにも関わらず、素早く身を転がせた。 それから数秒もしない内に大きい爆発が起きる。 爆風がケトルに吹き当たり、そして着弾した部分の玉石を木っ端微塵に砕いた。 苗村の時と同じだ。 フラウは完全にやる気になっている。 自分には止める事なんて出来ない― 早く、離れなければ。 親友から逃げ出す罪悪感もあったが、フラウが今自分を殺そうとしている現実から逃れたい気持ちもあったかもしれない。 ケトルは駆け出して神社の森の方へ入り込んだ。 「待ってよ! ケトル! 待ってよ!」 ケトルを追ってフラウも走り出す。 肘から下げたバックパックに入ったチャフグレネードを慣れない手つきで装填し直しながら再びケトルを睨みつける。 何度も後ろを向いてその様子を確かめていたが、どこまでもフラウは追いかけてきた。 やがて崖が見えた。 勢いを止めてその崖下を見る。 傾斜がゆるい約8メートル。 そこからは森が延々と広がっている。 しかしとてもじゃないがケトルには降りられそうになかったし、そこは― 後ろからフラウが迫ってきた。 崖に沿って道が整地されていたのでそっちに逃げようとしたが、もう間に合わなかった。 少し走りだしたところで崖の手前にたどり着いて、ケトルにグレネードランチャーをまた構えた。 「教えてよケトル。ねえ、ケトル…」 そしてじりじりと距離を詰めてくる。 4メートル、 3メートル、 2メートル― ―フラウだ。 相手はフラウだ。 フラウなんだ。 大切な親友を殺せる訳なんかない。 でも、殺さなければ殺されてしまう― そう思った時、何かが意識の奥からケトルを突き動かした気がした。 「うわあああああ!」 ケトルは鞘からサーベルを引き出して、両手で一気に振りかぶった。 そして飛び出すようにフラウに切りかかった。 毛を逆立てながらフラウが驚いてグレネードランチャーを撃ったが、そのグレネード弾はケトルの脇を通り過ぎるようにあらぬ場所へ飛んでいった。 「ああああ」 狂乱したみたいに叫びながらケトルはフラウの右腕を切りつけた。 フラウがうめきながら、グレネードランチャーを手放してバックパックもその場に落とした。 構わず、続けざまにケトルはサーベルを振り上げてフラウの側頭部を全力で殴った。 自分でも制御できなかった。 そのままフラウはふらつくように全身を傾けた。 ―崖の方角に。 ケトルは我に返り、フラウの状態に気付いて急いで手を伸ばす。 伸ばしたが、その指が何かに触れる事は無かった。 重力によってフラウは宙に投げ出される。 その虚ろなフラウの目はどこか空の遠く、少なくともケトルを決して見ていなかった。 そして崖の岩に何度も体を転がせた後に、3メートルは吹っ飛ばされてぐったりと動かなくなった。 ケトルは焦躁した。 フラウ―!! 「フラウ! 何してるんだよ! 起きてよ!」 まだ気絶しているだけだ。 自力で降りることが難しいような崖で助けに行くのは無理だった。 だから必死にケトルは叫んだ。 ここが―禁止エリアの近くであることもさらに焦りを掻き立てた。 なにより、この事態を招いたのは自分なのだ。 大事な友達―親友を、自分で殺してしまう事になる。 とにかく叫んだ。 フラウはケトルを殺そうとしてきたが、自分はフラウに死んでほしくない! フラウが目覚めてくれるように、ただ願って叫び続けた。 そうしていると、突然フラウの顔の辺りから赤い噴水が、ばしゅっと上がった。 「フラ…ウ…?」 何が―? 何があった? なんとかの拳みたいに秘孔なんて物を突いた訳でもない。 あれは―首輪が爆発したのだ。 フラウは禁止エリアに入ってしまっていた。 「あ…あ…」 気付いて、ケトルの全身が震え始めた。 傷つけた訳でもないのに胸が痛みを訴え始める。 誰が禁止エリアに入れた? 誰がフラウを殺した? 紛れも無くケトルだ。 僕が―フラウを殺した。 「わあああああああっ」 ケトルはひざまずいて泣いた。 ただ泣く事しかできなかった。 殺してしまった。 親友を殺してしまった。 殺したくなどなかったのに。 生きててほしかったのに。 フラウを説得できなかった自分が悪いのか? 苗村の時の様に逃げ切れなかった自分が悪いのか? しかしフラウを殺さなければ死んでいたのは間違いなくケトルだ。 自分の命を喜んで渡せる程僕は強くはない。 情けない自分の瞳からぼろぼろ涙がこぼれだして手の毛皮に吸い込まれていく。 「僕は…僕は…」 フラウを守りたかっただけなのに。 フラウ。 大好きだったフラウ。 笑顔が素敵だったフラウ。 パソコンをやっている姿も料理を作っている姿も、ケトルは好きだった。 それは当たり前のことだった。 ずっと昔から。 そんなフラウを僕はたった今殺した。 でも― 「…」 こんな時だというのになぜかまたあの夢の少女、テトの事が気になり始めた。 フラウを失った悲しみの中に沈んでいっている一方でどうしてもテトに会いたい、会わなければならない気が大きく渦巻いてきている。 テトが全てを握っているのだと無意識にケトルは感じ取りつつあった。 根拠は無い。 ただ自分の奥の奥でなにか―第六感っていうのかな? ―がケトルにそう指示している気がしたのだ。 悲しんでいる暇などない。 今すぐ動かなければならないと。 だから。 「僕は…」 【F-3 神社/一日目・午前】 【男子十三番:ケトル】 【1:僕(達) 2:君(達) 3:あの人(達)、○○さん】  [状態]:やや疲労、悲しみ  [装備]:サーベル  [道具]:支給品一式、M79グレネードランチャー (0/1)、チャフグレネード予備擲弾×4  [思考・状況]   基本思考:どうにかして殺し合いを止めさせる   0:テトのことを知りたい   1:仲間を探す   2:やる気になっている相手の説得が無理だと思ったら逃げる  [備考] ※夢など様々な要素からテトがなにかを知っていると悟りました &color(RED){【E-3 崖下/一日目・午前】} &color(RED){【女子二十五番:フラウ 死亡】} &color(RED){【残り31人】} *時系列順で読む Back:[[ ]] Next:[[高校生デストロイヤー]] *投下順で読む Back:[[大いなる遺産]] Next:[[Panic Theater]] |[[記憶の監獄]]|ケトル|[[楠森昭哉は苦悩する/内木聡右は疑心する/そしてケトルは盲進する]]| |[[記憶の監獄]]|&color(RED){フラウ}|&color(RED){死亡}|
*誓いの剣 ◆NZAAAAAAAA 空から日差しが照り射し始めてからどの位経ったか。 そこまで時間が進むまで待っていると言うのにフラウが起きない事にケトルは焦りを感じ始めていた。 英人の言った通りだ。 もう17人もクラスメイトが死んでしまっている。 英人や間由佳は無事だったが、やはりケトルの心には重い物があった。 更にここの隣のエリアは既に禁止エリアになっている。 合わせて、他の場所に居た誰かが動いているのは確実だ。 もう無理矢理にでも起こさないとまずい。 そう感じ、少しひどいかもとは思ったがそれを実行することにした。 ポケットからハンカチを取り出すと、ペットボトルの水をたっぷりかけて、それをフラウの額にかけた。 更に、その上から少しずつ慎重に水を垂らしていった。 いつか見たアニメだと池に気絶したキャラを投げ込んでいた気がしたが、そんな池も無ければやる気も力もケトルには無い。 瞬間、ひゃあと間抜けな声をあげてフラウが跳び起きる。 「フラウ!」 フラウの肩を掴み、しっかりとケトルはその顔を見た。 「ケトル…」 「英人は?」 第一声はやっぱりこれだった。 気持ちがまた沈みかけたが、今はそれどころではない。 ケトルはただ事実を述べる。 「…行ったよ。やることがあったみたいだ」 言った途端に、フラウが血相を変えてケトルに聞き始めた。 「二階堂さんを探すことなの? ねえ、あなたどうして止めなかったの?」 「英人が…英人が、フラウを巻き込む訳にはいかないって」 フラウが突然叫んだ。 「嘘よ!」 顔を振り乱し、目を見開きながら怒りの表情をあらわにする。 「どうして止めなかったの!」 そう言われた所で、ケトルは答えようが無かった。 フラウが納得出来る説明など出来やしない。 ケトルは戸惑いながらもう一度口にした。 「だから、英人が…」 「ケトル! 嘘なんて聞きたくない! 本当のことを教えて!」 それを言い終えたか終わらないかの内、突然フラウが脇に放り出されていたグレネードランチャーを掴んだ。 そのままケトルに構えた。 ケトルは、身を強張らせた。 「フラウ!?」 激昂したフラウの目は極限まで見開かれていて痛々しい程に充血していた。 興奮は、どうしてももはや収まりそうにない。 「私は英人の為に危険な奴らを排除しなきゃいけないのよ!」 苗村の時の様な嫌な悪寒がまた、ケトルを襲った。 ケトルは自分でも何が何だかわからないにも関わらず、素早く身を転がせた。 それから数秒もしない内に大きい爆発が起きる。 爆風がケトルに吹き当たり、そして着弾した部分の玉石を木っ端微塵に砕いた。 苗村の時と同じだ。 フラウは完全にやる気になっている。 自分には止める事なんて出来ない― 早く、離れなければ。 親友から逃げ出す罪悪感もあったが、フラウが今自分を殺そうとしている現実から逃れたい気持ちもあったかもしれない。 ケトルは駆け出して神社の森の方へ入り込んだ。 「待ってよ! ケトル! 待ってよ!」 ケトルを追ってフラウも走り出す。 肘から下げたバックパックに入ったチャフグレネードを慣れない手つきで装填し直しながら再びケトルを睨みつける。 何度も後ろを向いてその様子を確かめていたが、どこまでもフラウは追いかけてきた。 やがて崖が見えた。 勢いを止めてその崖下を見る。 傾斜がゆるい約8メートル。 そこからは森が延々と広がっている。 しかしとてもじゃないがケトルには降りられそうになかったし、そこは― 後ろからフラウが迫ってきた。 崖に沿って道が整地されていたのでそっちに逃げようとしたが、もう間に合わなかった。 少し走りだしたところで崖の手前にたどり着いて、ケトルにグレネードランチャーをまた構えた。 「教えてよケトル。ねえ、ケトル…」 そしてじりじりと距離を詰めてくる。 4メートル、 3メートル、 2メートル― ―フラウだ。 相手はフラウだ。 フラウなんだ。 大切な親友を殺せる訳なんかない。 でも、殺さなければ殺されてしまう― そう思った時、何かが意識の奥からケトルを突き動かした気がした。 「うわあああああ!」 ケトルは鞘からサーベルを引き出して、両手で一気に振りかぶった。 そして飛び出すようにフラウに切りかかった。 毛を逆立てながらフラウが驚いてグレネードランチャーを撃ったが、そのグレネード弾はケトルの脇を通り過ぎるようにあらぬ場所へ飛んでいった。 「ああああ」 狂乱したみたいに叫びながらケトルはフラウの右腕を切りつけた。 フラウがうめきながら、グレネードランチャーを手放してバックパックもその場に落とした。 構わず、続けざまにケトルはサーベルを振り上げてフラウの側頭部を全力で殴った。 自分でも制御できなかった。 そのままフラウはふらつくように全身を傾けた。 ―崖の方角に。 ケトルは我に返り、フラウの状態に気付いて急いで手を伸ばす。 伸ばしたが、その指が何かに触れる事は無かった。 重力によってフラウは宙に投げ出される。 その虚ろなフラウの目はどこか空の遠く、少なくともケトルを決して見ていなかった。 そして崖の岩に何度も体を転がせた後に、3メートルは吹っ飛ばされてぐったりと動かなくなった。 ケトルは焦躁した。 フラウ―!! 「フラウ! 何してるんだよ! 起きてよ!」 まだ気絶しているだけだ。 自力で降りることが難しいような崖で助けに行くのは無理だった。 だから必死にケトルは叫んだ。 ここが―禁止エリアの近くであることもさらに焦りを掻き立てた。 なにより、この事態を招いたのは自分なのだ。 大事な友達―親友を、自分で殺してしまう事になる。 とにかく叫んだ。 フラウはケトルを殺そうとしてきたが、自分はフラウに死んでほしくない! フラウが目覚めてくれるように、ただ願って叫び続けた。 そうしていると、突然フラウの顔の辺りから赤い噴水が、ばしゅっと上がった。 「フラ…ウ…?」 何が―? 何があった? なんとかの拳みたいに秘孔なんて物を突いた訳でもない。 あれは―首輪が爆発したのだ。 フラウは禁止エリアに入ってしまっていた。 「あ…あ…」 気付いて、ケトルの全身が震え始めた。 傷つけた訳でもないのに胸が痛みを訴え始める。 誰が禁止エリアに入れた? 誰がフラウを殺した? 紛れも無くケトルだ。 僕が―フラウを殺した。 「わあああああああっ」 ケトルはひざまずいて泣いた。 ただ泣く事しかできなかった。 殺してしまった。 親友を殺してしまった。 殺したくなどなかったのに。 生きててほしかったのに。 フラウを説得できなかった自分が悪いのか? 苗村の時の様に逃げ切れなかった自分が悪いのか? しかしフラウを殺さなければ死んでいたのは間違いなくケトルだ。 自分の命を喜んで渡せる程僕は強くはない。 情けない自分の瞳からぼろぼろ涙がこぼれだして手の毛皮に吸い込まれていく。 「僕は…僕は…」 フラウを守りたかっただけなのに。 フラウ。 大好きだったフラウ。 笑顔が素敵だったフラウ。 パソコンをやっている姿も料理を作っている姿も、ケトルは好きだった。 それは当たり前のことだった。 ずっと昔から。 そんなフラウを僕はたった今殺した。 でも― 「…」 こんな時だというのになぜかまたあの夢の少女、テトの事が気になり始めた。 フラウを失った悲しみの中に沈んでいっている一方でどうしてもテトに会いたい、会わなければならない気が大きく渦巻いてきている。 テトが全てを握っているのだと無意識にケトルは感じ取りつつあった。 根拠は無い。 ただ自分の奥の奥でなにか―第六感っていうのかな? ―がケトルにそう指示している気がしたのだ。 悲しんでいる暇などない。 今すぐ動かなければならないと。 だから。 「僕は…」 【F-3 神社/一日目・午前】 【男子十三番:ケトル】 【1:僕(達) 2:君(達) 3:あの人(達)、○○さん】  [状態]:やや疲労、悲しみ  [装備]:サーベル  [道具]:支給品一式、M79グレネードランチャー (0/1)、チャフグレネード予備擲弾×4  [思考・状況]   基本思考:どうにかして殺し合いを止めさせる   0:テトのことを知りたい   1:仲間を探す   2:やる気になっている相手の説得が無理だと思ったら逃げる  [備考] ※夢など様々な要素からテトがなにかを知っていると悟りました &color(RED){【E-3 崖下/一日目・午前】} &color(RED){【女子二十五番:フラウ 死亡】} &color(RED){【残り31人】} *時系列順で読む Back:[[Life was like a box of chocolates]] Next:[[高校生デストロイヤー]] *投下順で読む Back:[[大いなる遺産]] Next:[[Panic Theater]] |[[記憶の監獄]]|ケトル|[[楠森昭哉は苦悩する/内木聡右は疑心する/そしてケトルは盲進する]]| |[[記憶の監獄]]|&color(RED){フラウ}|&color(RED){死亡}|

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