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Cocktail」(2009/04/01 (水) 08:44:02) の最新版変更点

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*Cocktail ◆hhzYiwxC1. ワインボトルを拝借した民家に身を隠そうと、志緒里の死体をそのまま放置したまま、そこへ一目散に逃げた。平常を装おうとしても、焦りが募って来る。 少なくともこれで、弟の健二とは絶対に遭遇できなくなってしまった。 今となっては自分の軽率な行動を後悔してしまう。だけどももう後には引き返せないだろう。 できるだけ自分の手を汚したくない――――できれば自分が知らぬ存ぜぬような場所で、勝手に同士討ちになってほしいと願うばかりだ。 自分が軽い気持ちで立てた人殺しの覚悟よりも、きっと強固な覚悟を持った“イカレヤロー”がいてくれるはずだ。 だが、暮員さんは?彼女だけは―――そばにいてほしかった。 そんなことを思いながら、白崎篠一郎は、黴臭いワインセラーの中に蹲り、震えていた。 ---- 市街地まで、とぼとぼと歩みを進めていた。 少なくとも二人。太田太郎丸忠信とエルフィに、自分がこのゲームに乗っていると知られてしまった。 どうしてもっとよくあの場を捜さなかったのか、どうして執念深く殺しに掛からなかったのか後悔している。 保身のためではない。太田を始めとする“英人の敵”を、一人でも殺さなければ……英人は自分が護らなければ。 使命感にも似た志は、日常の中で得た全てを手放してでも、英人を護りたい。 「そのためなら、“英人の敵”でなくとも、私は躊躇なく殺すよ…」 だが、その強固な志も、一瞬だけ揺らいだ。 住宅街に差し掛かったところで、間由佳は、クラスメイトの一人である神崎志緒里の死体を発見した。 彼女の背中には、抉られたような刺し傷があり、尚且つ額には二発の弾痕があった。 辺りには嗅いだこともないような異臭が立ち込め、辺りは血が溢れだしていた。 そして、蝿が数匹彼女の傷口周辺を飛び交っていた。 死んでいることは確実。 その光景に、目を覆った。だが、そむけることは正しくないと言うことも、由佳は即時に理解した。 「これから、似たような光景を、私は見続ける……作り続けるんだ…」 由佳は、再び決心すると、ゆっくりと目を覆っていた両手を退け、死体のある場所から先を見つめた。 もうじき夜が明ける。暗くてよく見えなかった目も慣れてきた。 「……? 何かしら?」 由佳はふと、地面に目をやった。 血に濡れた足跡が、そこには克明に刻まれていた。それも、その足跡の血は微妙に錆びついている。 それを辿ると、一つの民家にたどりついた。10数m先の民家。 外に向けて歩いた足跡は見られない。 靴を変えたかもしれないし、裏口から出たのかもしれない。 それでも間由佳は、その民家に足を踏み入れていた。 白崎は、扉が再び開くのを耳で確認していた。 ギギギーと軋む古いドアの音が、彼の心や神経を逆撫でする。 そして、ゆっくりと近づいてくる足音が、床を少しだけ軋ませる。 軋み具合から判断して、体重が軽い男子か、女子と言う事が推測できる。 ひょっとして、暮員さんか?という淡い希望を少しだけ抱きもした。 足音は、相変わらずゆっくりとこちらに迫ってくる。 そうして、ワインセラーの前で、その足音がとまった。 扉の隙間から、光が見えている。淡く細い光。懐中電灯などの携帯灯のそれらしい。 扉が少しだけ開き、漏れる光が少しだけ大きくなった途端に、白崎は動いていた。 ---- ドアが完全に開き、由佳は部屋に足を踏み入れた。 どうやら誰もいないようだ。そして、入り口には、丁寧に揃えられた靴がわざとらしく置かれていた。 銃と懐中電灯を構え、部屋を見回す。この部屋はひどく狭いうえに、どことなく黴臭く、死体の放つ異臭とはまた違う臭いが立ち込めていた。 部屋の両端に懐中電灯を見ると、ワインが横に寝かされた状態でいくつも配置されていた。 「………誰もいないの?」 構えを持続したまま、部屋の奥へとどんどん進んでいく。 だが、由佳は突然足を止める。ギギギーと、あのドアが軋む音が、すぐ後ろで木霊した。 ドアが閉まり、部屋の中は完全に闇に染まった。 由佳は、ドアが閉まる直前に、懐中電灯を一瞬だけ向けたら、確かにそこに人がいたのだ。 クラスメイトの白崎篠一郎の姿が見えた。 「やあ…間さんでしたか」 「白崎君…………あなたがひょっとして……」 由佳は少しだけ驚いて、一歩後ずさると、再び銃と懐中電灯を彼に向けた。 「外の状況を見ましたか? ええ予想通りです。神崎さんは僕が殺しました」 白崎は、特に悪びれるわけでもなく、喜劇役者やコメディアンのような妙なそぶりを伴いながら言った。 「近寄らないで。殺すわよ」 「じゃあ間さん。こちらからも言わせてくれ。『まぶしいから懐中電灯をこちらに向けるな。殺すわよ』」 「うるさい!うるさい!うるさい! そんなこと関係ないわよ!あんたも殺す…どっちみち殺すんだから……」 白崎の奇妙な言動に、由佳は歯噛みしながら叫んだ。 「分かってないなあ間さん。状況は一緒なんですよ」 志緒里から奪った銃を、白崎は由佳に向けた。 「何よ……あんたも邪魔すんの?! 私はただ……」 「『英人に生きてほしいだけなのよ!!』」 「!?」 由佳は、言おうとした言葉がすでに白崎の口から放たれていることに驚いた。 「ふざけないで!」 「『殺すわよ!!』でしょう? 相変わらず陳腐なセリフばかり吐きますね」 「うるさい!もうあんたと話すことなんてないわ!」 「『死んで!!』でしょう? 少し考えるだけで思い浮かびますよ。まるでスランプの脚本家……」 白崎が、由佳にそう言いかけた瞬間、彼女は間髪いれずに発砲していた。 「死ねえ……あんたなんか死んじゃえ…………」 由佳は、蚊が飛び交うような声で呟きながら、再び銃口を白崎に向けた。 初撃を由佳は外したようだ。それは幸いだったが、もう既に次の引き金は、引かれようとしていた。 「英人以外みんな死んじゃえばいいんだ………死ねえぇぇぇえええええ」 とっさに、白崎は身を翻し弾丸を躱すと、棚からワインボトルを一つ手に取り、そのまま銃弾が外れたことに呆気に取られている由佳の頭を、ワインボトルで殴った。 ワインボトルは、その時点で割れ砕けた。飛び散る破片が由佳の頭を切り裂き、血が迸る。 そのまま由佳は鈍い唸り声と共に沈んだ。 「ひどい言い草だ……こちらとしては無駄に怒るのは疲れるから嫌なのに」 「間さんも無駄に叫んだりして喉乾いたでしょう? 幸いここには飲み物は沢山あるから呑むといいですよ」 倒れた由佳を起き上がらせると、白崎は、棚から適当に選んだワインボトルを取り出し、由佳の手元から奪い取った銃で、コルクごとボトルの先端を弾き飛ばし、そのまま溢れ出るワインを由佳の口に流し込んだ。 由佳は薄れゆく意識の中で、異常なほど甘ったるい吐き気を催していた。 「……う…ん……」 由佳は、暖かい感触を背中に感じ、目が覚めた。 目が覚めた。と言うべきだろうか?気絶していたと言うより記憶がすっぽり数分だけ抜け飛んだような、変な感じだった。 それと同時に、由佳はすぐさまある異変に気付いた。 世界が歪んで見えた。そして、自分は、落ちた。 落ちて、右肩を打った。 夢や現の類と思っていたが、痛みを経験しても、世界は尚歪みを維持している。 「まさか……」 そう思った言葉すら、口から吐き出されることはない。自分は、確実に、さっきの酒に酔っている。 あまり働かなくなってしまった脳でも、この事実だけはちゃんと認識できた。 どうやら、自分はリビングのソファーに寝かされていたようだ。 おまけに頭には包帯が巻かれていた。止血もちゃんとできているし、痛みはほとんどない(酔いの影響かもしれないが) 近くの部屋で、どこかで聞いたような鼻歌を口ずさみながら、白崎がこちらに向かってきた。 とっさに銃を取ろうとする。ソファーの近くのテーブルに置かれているはずの銃・グロック19を。 だが、取れないのだ。何故か。視界がブレる。世界が歪んでいるように。 これも 「意外と早く目が覚めましたね。」 白崎は、封が切られた魚肉ソーセージを2本盛りつけた皿をテーブルの上に置くと、由佳が座っていたソファーに腰かけた。 「……わらしを…ころすの?」 酔いの影響か、舌が回らない。冷静になろうとしても、気分が悪くなるだけだ。 覚悟するしかないのか? 自分は英人を護れないのか? 由佳は自分の不甲斐なさを悔いた。 悔いると同時に、少しでも生きていたいと思った。 「いえ。殺しません。利用価値がありますからね」 だが、白崎が発した言葉は違った。白崎は、テーブルの上の銃を由佳のデイパックの中に仕舞う、魚肉ソーセージを葉巻のように口の右側に銜えながら由佳にそう言ったのだ。 「今の間さんは、話すのが辛いでしょうね。だから勝手に自分語りますよ」 「貴方は玉堤君を捜している。僕は暮員さんを捜している。ここは大切な者と共に死地に立つ同志として…一時停戦とし、互いを利用し合いませんかね?」 「…………利用し合う…」 「いいじゃらいの。とりあえず…のったわ……」 床に這いつくばった状態で不敵な笑みを浮かべる白崎を見上げて、由佳もまた、それに類似した笑みを浮かべた。 【E-6 民家/一日目・黎明】 【女子二十三番:間由佳(はざま-ゆか)】 【1:あたし(達) 2:あんた(達) 3:あいつ、○○さん(達)】 [状態]:頭に切り傷(白崎が治療)、酩酊状態、呂律が回らない、まともに立てない [装備]:なし [道具]:支給品一式、グロック19(10/15)、グロック19のマガジン(2) [思考・状況] 基本思考:玉堤英人を生き残らせる(優勝させる) 0:白崎に協力してもらいたい(ムカつくので遅かれ早かれ殺したい) 1:英人を捜す 2:頭が………… [備考欄] ※酒に酔っています 【男子十五番:白崎篠一郎(しらさき-じょういちろう)】 【1:僕(ら) 2:貴方(たち) 3:○○(名字さん付け)】 [状態]:右肩に裂傷(応急処置済み) [装備]:なし [道具]:支給品一式、予備用38スペシャル弾(42/42) 、ボウイナイフ、S&W M10(2/6)、縫い針 [思考・状況] 基本思考:スタンスをコロコロ変える 0:暮員さんに会いたい。 1:由佳の酔いが醒めるまで待ち、玉堤英人捜しに協力する。 2:気が変わったら由佳を殺す。 *時系列順で読む Back:[[I am Genocider]] Next:[[殺戮行]] *投下順で読む Back:[[すくいきれないもの]] Next:[[殺戮行]] |[[虚ろな魂]]|間由佳|| |[[Two Face]]|白崎篠一郎||
*Cocktail ◆hhzYiwxC1. ワインボトルを拝借した民家に身を隠そうと、志緒里の死体をそのまま放置したまま、そこへ一目散に逃げた。平常を装おうとしても、焦りが募って来る。 少なくともこれで、弟の健二とは絶対に遭遇できなくなってしまった。 今となっては自分の軽率な行動を後悔してしまう。だけどももう後には引き返せないだろう。 できるだけ自分の手を汚したくない――――できれば自分が知らぬ存ぜぬような場所で、勝手に同士討ちになってほしいと願うばかりだ。 自分が軽い気持ちで立てた人殺しの覚悟よりも、きっと強固な覚悟を持った“イカレヤロー”がいてくれるはずだ。 だが、暮員さんは?彼女だけは―――そばにいてほしかった。 そんなことを思いながら、白崎篠一郎は、黴臭いワインセラーの中に蹲り、震えていた。 ---- 市街地まで、とぼとぼと歩みを進めていた。 少なくとも二人。太田太郎丸忠信とエルフィに、自分がこのゲームに乗っていると知られてしまった。 どうしてもっとよくあの場を捜さなかったのか、どうして執念深く殺しに掛からなかったのか後悔している。 保身のためではない。太田を始めとする“英人の敵”を、一人でも殺さなければ……英人は自分が護らなければ。 使命感にも似た志は、日常の中で得た全てを手放してでも、英人を護りたい。 「そのためなら、“英人の敵”でなくとも、私は躊躇なく殺すよ…」 だが、その強固な志も、一瞬だけ揺らいだ。 住宅街に差し掛かったところで、間由佳は、クラスメイトの一人である神崎志緒里の死体を発見した。 彼女の背中には、抉られたような刺し傷があり、尚且つ額には二発の弾痕があった。 辺りには嗅いだこともないような異臭が立ち込め、辺りは血が溢れだしていた。 そして、蝿が数匹彼女の傷口周辺を飛び交っていた。 死んでいることは確実。 その光景に、目を覆った。だが、そむけることは正しくないと言うことも、由佳は即時に理解した。 「これから、似たような光景を、私は見続ける……作り続けるんだ…」 由佳は、再び決心すると、ゆっくりと目を覆っていた両手を退け、死体のある場所から先を見つめた。 もうじき夜が明ける。暗くてよく見えなかった目も慣れてきた。 「……? 何かしら?」 由佳はふと、地面に目をやった。 血に濡れた足跡が、そこには克明に刻まれていた。それも、その足跡の血は微妙に錆びついている。 それを辿ると、一つの民家にたどりついた。10数m先の民家。 外に向けて歩いた足跡は見られない。 靴を変えたかもしれないし、裏口から出たのかもしれない。 それでも間由佳は、その民家に足を踏み入れていた。 白崎は、扉が再び開くのを耳で確認していた。 ギギギーと軋む古いドアの音が、彼の心や神経を逆撫でする。 そして、ゆっくりと近づいてくる足音が、床を少しだけ軋ませる。 軋み具合から判断して、体重が軽い男子か、女子と言う事が推測できる。 ひょっとして、暮員さんか?という淡い希望を少しだけ抱きもした。 足音は、相変わらずゆっくりとこちらに迫ってくる。 そうして、ワインセラーの前で、その足音がとまった。 扉の隙間から、光が見えている。淡く細い光。懐中電灯などの携帯灯のそれらしい。 扉が少しだけ開き、漏れる光が少しだけ大きくなった途端に、白崎は動いていた。 ---- ドアが完全に開き、由佳は部屋に足を踏み入れた。 どうやら誰もいないようだ。そして、入り口には、丁寧に揃えられた靴がわざとらしく置かれていた。 銃と懐中電灯を構え、部屋を見回す。この部屋はひどく狭いうえに、どことなく黴臭く、死体の放つ異臭とはまた違う臭いが立ち込めていた。 部屋の両端に懐中電灯を見ると、ワインが横に寝かされた状態でいくつも配置されていた。 「………誰もいないの?」 構えを持続したまま、部屋の奥へとどんどん進んでいく。 だが、由佳は突然足を止める。ギギギーと、あのドアが軋む音が、すぐ後ろで木霊した。 ドアが閉まり、部屋の中は完全に闇に染まった。 由佳は、ドアが閉まる直前に、懐中電灯を一瞬だけ向けたら、確かにそこに人がいたのだ。 クラスメイトの白崎篠一郎の姿が見えた。 「やあ…間さんでしたか」 「白崎君…………あなたがひょっとして……」 由佳は少しだけ驚いて、一歩後ずさると、再び銃と懐中電灯を彼に向けた。 「外の状況を見ましたか? ええ予想通りです。神崎さんは僕が殺しました」 白崎は、特に悪びれるわけでもなく、喜劇役者やコメディアンのような妙なそぶりを伴いながら言った。 「近寄らないで。殺すわよ」 「じゃあ間さん。こちらからも言わせてくれ。『まぶしいから懐中電灯をこちらに向けるな。殺すわよ』」 「うるさい!うるさい!うるさい! そんなこと関係ないわよ!あんたも殺す…どっちみち殺すんだから……」 白崎の奇妙な言動に、由佳は歯噛みしながら叫んだ。 「分かってないなあ間さん。状況は一緒なんですよ」 志緒里から奪った銃を、白崎は由佳に向けた。 「何よ……あんたも邪魔すんの?! 私はただ……」 「『英人に生きてほしいだけなのよ!!』」 「!?」 由佳は、言おうとした言葉がすでに白崎の口から放たれていることに驚いた。 「ふざけないで!」 「『殺すわよ!!』でしょう? 相変わらず陳腐なセリフばかり吐きますね」 「うるさい!もうあんたと話すことなんてないわ!」 「『死んで!!』でしょう? 少し考えるだけで思い浮かびますよ。まるでスランプの脚本家……」 白崎が、由佳にそう言いかけた瞬間、彼女は間髪いれずに発砲していた。 「死ねえ……あんたなんか死んじゃえ…………」 由佳は、蚊が飛び交うような声で呟きながら、再び銃口を白崎に向けた。 初撃を由佳は外したようだ。それは幸いだったが、もう既に次の引き金は、引かれようとしていた。 「英人以外みんな死んじゃえばいいんだ………死ねえぇぇぇえええええ」 とっさに、白崎は身を翻し弾丸を躱すと、棚からワインボトルを一つ手に取り、そのまま銃弾が外れたことに呆気に取られている由佳の頭を、ワインボトルで殴った。 ワインボトルは、その時点で割れ砕けた。飛び散る破片が由佳の頭を切り裂き、血が迸る。 そのまま由佳は鈍い唸り声と共に沈んだ。 「ひどい言い草だ……こちらとしては無駄に怒るのは疲れるから嫌なのに」 「間さんも無駄に叫んだりして喉乾いたでしょう? 幸いここには飲み物は沢山あるから呑むといいですよ」 倒れた由佳を起き上がらせると、白崎は、棚から適当に選んだワインボトルを取り出し、由佳の手元から奪い取った銃で、コルクごとボトルの先端を弾き飛ばし、そのまま溢れ出るワインを由佳の口に流し込んだ。 由佳は薄れゆく意識の中で、異常なほど甘ったるい吐き気を催していた。 「……う…ん……」 由佳は、暖かい感触を背中に感じ、目が覚めた。 目が覚めた。と言うべきだろうか?気絶していたと言うより記憶がすっぽり数分だけ抜け飛んだような、変な感じだった。 それと同時に、由佳はすぐさまある異変に気付いた。 世界が歪んで見えた。そして、自分は、落ちた。 落ちて、右肩を打った。 夢や現の類と思っていたが、痛みを経験しても、世界は尚歪みを維持している。 「まさか……」 そう思った言葉すら、口から吐き出されることはない。自分は、確実に、さっきの酒に酔っている。 あまり働かなくなってしまった脳でも、この事実だけはちゃんと認識できた。 どうやら、自分はリビングのソファーに寝かされていたようだ。 おまけに頭には包帯が巻かれていた。止血もちゃんとできているし、痛みはほとんどない(酔いの影響かもしれないが) 近くの部屋で、どこかで聞いたような鼻歌を口ずさみながら、白崎がこちらに向かってきた。 とっさに銃を取ろうとする。ソファーの近くのテーブルに置かれているはずの銃・グロック19を。 だが、取れないのだ。何故か。視界がブレる。世界が歪んでいるように。 これも 「意外と早く目が覚めましたね。」 白崎は、封が切られた魚肉ソーセージを2本盛りつけた皿をテーブルの上に置くと、由佳が座っていたソファーに腰かけた。 「……わらしを…ころすの?」 酔いの影響か、舌が回らない。冷静になろうとしても、気分が悪くなるだけだ。 覚悟するしかないのか? 自分は英人を護れないのか? 由佳は自分の不甲斐なさを悔いた。 悔いると同時に、少しでも生きていたいと思った。 「いえ。殺しません。利用価値がありますからね」 だが、白崎が発した言葉は違った。白崎は、テーブルの上の銃を由佳のデイパックの中に仕舞う、魚肉ソーセージを葉巻のように口の右側に銜えながら由佳にそう言ったのだ。 「今の間さんは、話すのが辛いでしょうね。だから勝手に自分語りますよ」 「貴方は玉堤君を捜している。僕は暮員さんを捜している。ここは大切な者と共に死地に立つ同志として…一時停戦とし、互いを利用し合いませんかね?」 「…………利用し合う…」 「いいじゃらいの。とりあえず…のったわ……」 床に這いつくばった状態で不敵な笑みを浮かべる白崎を見上げて、由佳もまた、それに類似した笑みを浮かべた。 【E-6 民家/一日目・黎明】 【女子二十三番:間由佳(はざま-ゆか)】 【1:あたし(達) 2:あんた(達) 3:あいつ、○○さん(達)】 [状態]:頭に切り傷(白崎が治療)、酩酊状態、呂律が回らない、まともに立てない [装備]:なし [道具]:支給品一式、グロック19(10/15)、グロック19のマガジン(2) [思考・状況] 基本思考:玉堤英人を生き残らせる(優勝させる) 0:白崎に協力してもらいたい(ムカつくので遅かれ早かれ殺したい) 1:英人を捜す 2:頭が………… [備考欄] ※酒に酔っています 【男子十五番:白崎篠一郎(しらさき-じょういちろう)】 【1:僕(ら) 2:貴方(たち) 3:○○(名字さん付け)】 [状態]:右肩に裂傷(応急処置済み) [装備]:なし [道具]:支給品一式、予備用38スペシャル弾(42/42) 、ボウイナイフ、S&W M10(2/6)、縫い針 [思考・状況] 基本思考:スタンスをコロコロ変える 0:暮員さんに会いたい。 1:由佳の酔いが醒めるまで待ち、玉堤英人捜しに協力する。 2:気が変わったら由佳を殺す。 *時系列順で読む Back:[[I am Genocider]] Next:[[殺戮行]] *投下順で読む Back:[[すくいきれないもの]] Next:[[殺戮行]] |[[虚ろな魂]]|間由佳|[[Panic Theater]]| |[[Two Face]]|白崎篠一郎|[[Panic Theater]]|

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