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JASTICE HEART」(2009/01/03 (土) 17:39:11) の最新版変更点

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*JASTICE HEART ◆zmHe3wMKNg 「…さて、どうしたものかな?」 海岸を当てもなく一つの影がある。彼の名は鈴木正一郎 (男子十八番)。 もちろん、このような理不尽な殺し合いを強いる「悪」はこの手で絶対倒さなければならないが、 爆発する首輪をかけられ命を他人に握られている今の状況ははっきり言って非常に厳しい。 特に、クラスメイトを上手く纏めて先導してくれそうだったラトが真っ先に殺されたのが痛すぎる。 一人じゃ反抗して脱出するなんてどう考えたって無謀。 ラトの他にリーダーになれそうなそうな奴といえば… …銀鏖院水晶(十番)…だっけ? あの電波教祖様は率先してリーダーに成りたがるんだろうが… あいつは駄目だな、素で思想が危険すぎる。 ていうか、奴が参加してないクラスメイトの一人だったら 疑う余地もなく黒幕認定してるぞ。 (黒幕か…若狭の野郎の話じゃ居るんだよな…あの三人か…?いや、それは無い。) 卜部はちょっと小うるさいだけで全然普通の奴だったし、 二階堂は喋ったことないけど教室の片隅で本を読んでるだけの大人しい娘だった。 大体あまり目立ってなかったけど、 見た感じブラコンでラトにべったりだったテトが居る時点でありえねぇ。 そうだ、身内を躊躇なく殺す奴なんて、いる筈がない。 …ちなみに… 彼は勘違いしているが、ラトとテトは名前が似ているだけの 違う部族の出身の獣人で別に兄妹でも何でもなく、 確かに二人が一緒に並んで喋っていたことはあったが 彼らがその腹の内に何を秘めていたのか、 遠くから眺めていただけの正一郎が知る余地は無い。 この男が今現在知り得る情報は、残念ながらその程度である。 「…ところでさぁ、さっきから俺を付けてるお前は誰よ?」 考えるのを一旦止め、後方の岩陰に向かって喋りかけた。 「…ほぅ、気付いていたか!」 突然、物陰から何かが恐ろしい速度で飛び出してきた。 正一郎は後ろに転がり間一髪でそれをかわす。 「危ねぇなおい!いきなり襲うか普通?」 「すまんな、まあ、今ので死ぬような輩になど最初から用はないがな。」 飛び出してきたもの―バイクのチェーン―が戻っていった先に、 岩陰から姿を現した宍戸亮太郎(男子十五番)が立っていた。 「鈴木、鎖鎌はお前に支給されてないか?」 「残念だけど。それがおまえに渡された武器か?」 「いや、さっきゴミ捨て場を漁っていたら見つかったものだ。  俺の技を出し切るには不十分だが、まあそれでも十分に使える。」 そう言い終わると、宍戸はチェーンを鞭のようにしならせた。 パシンと、小気味いい破裂音が辺りに響く。 「おぉ、すげぇじゃん、鎖が全然見えねぇよ。」 先端の速度が音速を越えている証拠だ。その根拠が正しいのかは忘れたが。 「…で、それでさっき俺に何しようとした訳?打ちどころが悪かったら  死んでても可笑しくなかったんだけど?」 宍戸の口元が歪んだ。 「さっきの動きで分かった。貴様も俺と同類だ。一度、真剣勝負してみないか?  どちらかが死ぬまで。」 「…はぁ?」 「今の時代なかなか無いぞこういう機会は。  我が家の一子一伝の兵法は本気で使ったら人を死に至らしめる様な技が多くてな。  せっかくだから思う存分使ってみようかと思っている。お前もそうだろう?  ここならヤクザや警察の心配もない…まさに聖域だ。」 彼の眼をよく見てみると、充血し瞳孔が開いている。 いわば「前向き狂っている」といった感じか。 正一郎は半場呆れ気味に肩をすくめた。 「お前はいいよな。そうやって趣味に走ってりゃそれで幸せなんだからよ。」 そして、鞄の中から錆びついた鉄パイプを取り出し、構えた。 「いいぜ、やってやるよ。正々堂々とな。」 「それが貴様の支給品か?」 「いや、ゴミ捨て場に落ちてたやつ。」 「そうか、では見せてやろう、宍戸流鎖鎌術をな!」 宍戸は驚異的な速度で鎖を自分の周りを囲むように振り回した。 近づくのは容易ではないだろう。 しかしこちらの得物を使うにはあの中に飛び込むしかない。 正一郎は鉄パイプを両手に構えた姿勢のまま鎖の藩流へ向かって疾走し、 ――そのままの勢いで宍戸に向けて鉄パイプを投げつけた。 「―な!?」 想定外の動きに戸惑い、思わずチェーンで飛んできた鉄パイプを絡め取ってしまう。 その隙に至近距離まで接近した正一郎は振り被った拳を―― 「お前さぁ、俺より馬鹿だろ?」 叩き込まず、手の中に隠していた砂を彼の顔面に全力でぶつける。 「がぁ!?ぷっ!ぺっ!?」 砂が口に入って咽返る宍戸の側頭部に、 腰を捻って十分な勢いをつけた正一郎の回し蹴りが綺麗に入り、 脳振蕩を起こした彼の意識はここより遥か遠い世界へと旅立っていった。 …どこまで史実か明確でないが 宮本武蔵の生涯無敗の要因はその型に縛られない戦法にこそある。 宍戸梅軒との戦いでは両手にそれぞれ太刀と脇差をもって挑み、 佐々木小次郎の時は小次郎の物干竿よりさらに長い木刀を船の舵を掘り出して作り 勝利した。 鎖鎌は、鎖で相手の武器を絡め取り、鎌で反撃する、という二動作が基本の動きである。 チェーンのみでは本人も言っていたように流派のすべてを出しきるには不完全であり、 よって接近された時の対処を失念していると見抜かれた時点で勝敗は決まっていた。 ◆ ◆ ◆ 鈴木正一郎の路上格闘(ストリートファイト)での実戦経験は多岐に渡る。 ヤンキー狩りと称して不良グループとの喧嘩に明け暮れてたある日 ヤクザの組の若い連中と揉めたのをきっかけに目をつけられ、 多人数でチャカやドスを持ち出しても素人では彼に太刀打ちできないと 判断されてからは元プロ格闘技経験者や元軍人の戦術格闘技者、 外国人のバウンサー、果ては桐原重工が裏で密売しているらしい サイボーグゾンビやら肉食獣型獣人の用心棒まで駆り出してきて 夜の街に出てきた彼を捕まえようとし、すべてをなんとか切り抜けてきた。 …そして先日、遂に身の程知らずな五人のチンピラを誤って殺害してしまったのだ。 「だからさぁ、殺し合いは別に初めてじゃねーんだわ。悪いけど。」 「…そうだったか、格上に愚かな真似をしていたのだな、俺は。」 「犯罪行為で格上とかいわれてもなぁ…まあ、実を言うとここに連れてこられて  ホッとしてるんだわ。俺が殺人罪で捕まったらじいちゃんに迷惑かかるし。  だから、俺はここで死んでもいい。」 目を覚まし、後ろ手をチェーンで縛った宍戸に己の経歴を語っていた 正一郎は、そこでいったん区切り、遠くを見つめた。 「でも他の…クラスの連中に死んでいい奴なんて居るわけないだろ?  だから俺は殺し合いを止めて、このゲームの黒幕をぶち殺す。」 「そうか…鈴木正一郎、今更許してくれとは言わんが、俺も同行させてくれないか?  俺は未熟だが、必ず役に立ってみせる。」 「・・・。」 正一郎は何も言わず、宍戸の後ろに回り、縛っていた鎖を解いた。 「…かたじけない。」 「気にすんなって。  ――――――――――――ところでさぁ。」 手に持っている鎖を、宍戸の首に巻きつけ、全力で締め付けた。 「がぎょぉ!?」 「……チェーンはさぁ、こうやって使った方がいいと思うんだよな。」 「な…げ……ご…げ…」 「さっき喋ってて分かったけどさぁ、どうせこれが実戦だとか言って他の奴を殺す気だろ?  で、頃合い見計らって裏切る気だろお前?そんな奴と組んで何のメリットがあるんだ?え?」 「ぢ……ぐぁ…」 逃れようともがく宍戸の両手に力が入る。 相当鍛えているのは確かなのか思わず手を離してしまいそうになり …仕方がないので背負い投げの要領で抱え上げて一気に全体重をかけた。  ぐきっ …首から嫌な音がした。途端に宍戸の力が弱まり、 引き剥がそうとしていた腕に力がなくなってだらりと垂れ下がる。 己の全てをぶつけて戦う事を望んだ男、 宍戸亮太郎は遂にその夢を叶えること無くここに息絶えた。 「・・・。」 チェーンを外し、倒れた宍戸の躯に冷たい視線を投げかける。 (…流石に殺ったのが6人目ともなると見慣れてくるな。) 所詮、人間なんて脳みそが電気信号を送って動かしてるだけの ただの肉の塊にすぎないということを嫌でも認識させられる。 …もちろん自分も。社会において人殺しが重罪なのは こういう真実から目を背ける為なのだろう。 しかし、だからこそ、人を人たらしめるルールを厳守する人間は今の正一郎に とっては愛すべき「正義」であり。 少々気が動転気味だったとはいえ軽々しく殺し合いに乗ったこの男は、 もはや許されざる、死んでしかるべき「悪」だった。 (クラスの連中に死んでいい奴なんて居る筈ないと思いたいが…こういう奴もいるんだな。  そうだよな…「本当にいい奴」が危険にさらされるのは避けねぇと。銀鏖院水晶とか、  ヤクザと絡んでるとか言われてる内木聡右や鬼崎喜佳も、  用心しといたほうがいいかもな。場合によっては―――――――――。) 彼の、時代錯誤的な厳格さを持った祖父に叩き込まれた脅迫概念ともいえる正義感は、 ここに来る以前、「殺人」という禁忌を犯した辺りから徐々に常軌を逸脱し始めている。 しかし彼はもはや気づくことはないのだろう。正義による殺人などありはしないが、 この場は既にそういう社会ではないのだから。 (―――そうだよな、死んだ方がいい奴らを「制裁」して、何が悪い。) 亡骸を一眼だにせず、その場を立ち去った。 &color(red){【男子十五番:宍戸 亮太郎 死亡】} &color(red){【残り46人】} ※A-8の砂浜に、宍戸 亮太郎の死体が横たわっています。 【A-8 砂浜/一日目・深夜】 【男子十五番:鈴木 正一郎(すずき-せいいちろう)】 【1:俺(ら) 2:あんた(たち) 3:○○(名字さん付け)】 [状態]:健康 [装備]:錆びた鉄パイプ(現地調達) [道具]:支給品一式×2、不明支給品×2、バイクのチェーン(現地調達) [思考・状況] 基本思考:脱出派(危険思想対主催) 0:危険人物と判断した奴を殺しながら脱出の道を探す 1:脱出不可能なら自分以外の誰か一人を生き残らせる [備考欄] ※彼はクラスメイトの人間関係を色々誤解しています。 *時系列順で読む Back:[[遠く流されて~EXILE~]] Next:[[かけひきは、BRのはじまり ]] *投下順で読む Back:[[遠く流されて~EXILE~]] Next:[[かけひきは、BRのはじまり]] |&color(cyan){GAME START}|鈴木 正一郎|| |&color(cyan){GAME START}|宍戸 亮太郎|&color(RED){死亡}|
*JASTICE HEART ◆zmHe3wMKNg 「…さて、どうしたものかな?」 海岸を当てもなく一つの影がある。彼の名は鈴木正一郎 (男子十八番)。 もちろん、このような理不尽な殺し合いを強いる「悪」はこの手で絶対倒さなければならないが、 爆発する首輪をかけられ命を他人に握られている今の状況ははっきり言って非常に厳しい。 特に、クラスメイトを上手く纏めて先導してくれそうだったラトが真っ先に殺されたのが痛すぎる。 一人じゃ反抗して脱出するなんてどう考えたって無謀。 ラトの他にリーダーになれそうなそうな奴といえば… …銀鏖院水晶(十番)…だっけ? あの電波教祖様は率先してリーダーに成りたがるんだろうが… あいつは駄目だな、素で思想が危険すぎる。 ていうか、奴が参加してないクラスメイトの一人だったら 疑う余地もなく黒幕認定してるぞ。 (黒幕か…若狭の野郎の話じゃ居るんだよな…あの三人か…?いや、それは無い。) 卜部はちょっと小うるさいだけで全然普通の奴だったし、 二階堂は喋ったことないけど教室の片隅で本を読んでるだけの大人しい娘だった。 大体あまり目立ってなかったけど、 見た感じブラコンでラトにべったりだったテトが居る時点でありえねぇ。 そうだ、身内を躊躇なく殺す奴なんて、いる筈がない。 …ちなみに… 彼は勘違いしているが、ラトとテトは名前が似ているだけの 違う部族の出身の獣人で別に兄妹でも何でもなく、 確かに二人が一緒に並んで喋っていたことはあったが 彼らがその腹の内に何を秘めていたのか、 遠くから眺めていただけの正一郎が知る余地は無い。 この男が今現在知り得る情報は、残念ながらその程度である。 「…ところでさぁ、さっきから俺を付けてるお前は誰よ?」 考えるのを一旦止め、後方の岩陰に向かって喋りかけた。 「…ほぅ、気付いていたか!」 突然、物陰から何かが恐ろしい速度で飛び出してきた。 正一郎は後ろに転がり間一髪でそれをかわす。 「危ねぇなおい!いきなり襲うか普通?」 「すまんな、まあ、今ので死ぬような輩になど最初から用はないがな。」 飛び出してきたもの―バイクのチェーン―が戻っていった先に、 岩陰から姿を現した宍戸亮太郎(男子十五番)が立っていた。 「鈴木、鎖鎌はお前に支給されてないか?」 「残念だけど。それがおまえに渡された武器か?」 「いや、さっきゴミ捨て場を漁っていたら見つかったものだ。  俺の技を出し切るには不十分だが、まあそれでも十分に使える。」 そう言い終わると、宍戸はチェーンを鞭のようにしならせた。 パシンと、小気味いい破裂音が辺りに響く。 「おぉ、すげぇじゃん、鎖が全然見えねぇよ。」 先端の速度が音速を越えている証拠だ。その根拠が正しいのかは忘れたが。 「…で、それでさっき俺に何しようとした訳?打ちどころが悪かったら  死んでても可笑しくなかったんだけど?」 宍戸の口元が歪んだ。 「さっきの動きで分かった。貴様も俺と同類だ。一度、真剣勝負してみないか?  どちらかが死ぬまで。」 「…はぁ?」 「今の時代なかなか無いぞこういう機会は。  我が家の一子一伝の兵法は本気で使ったら人を死に至らしめる様な技が多くてな。  せっかくだから思う存分使ってみようかと思っている。お前もそうだろう?  ここならヤクザや警察の心配もない…まさに聖域だ。」 彼の眼をよく見てみると、充血し瞳孔が開いている。 いわば「前向き狂っている」といった感じか。 正一郎は半場呆れ気味に肩をすくめた。 「お前はいいよな。そうやって趣味に走ってりゃそれで幸せなんだからよ。」 そして、鞄の中から錆びついた鉄パイプを取り出し、構えた。 「いいぜ、やってやるよ。正々堂々とな。」 「それが貴様の支給品か?」 「いや、ゴミ捨て場に落ちてたやつ。」 「そうか、では見せてやろう、宍戸流鎖鎌術をな!」 宍戸は驚異的な速度で鎖を自分の周りを囲むように振り回した。 近づくのは容易ではないだろう。 しかしこちらの得物を使うにはあの中に飛び込むしかない。 正一郎は鉄パイプを両手に構えた姿勢のまま鎖の藩流へ向かって疾走し、 ――そのままの勢いで宍戸に向けて鉄パイプを投げつけた。 「―な!?」 想定外の動きに戸惑い、思わずチェーンで飛んできた鉄パイプを絡め取ってしまう。 その隙に至近距離まで接近した正一郎は振り被った拳を―― 「お前さぁ、俺より馬鹿だろ?」 叩き込まず、手の中に隠していた砂を彼の顔面に全力でぶつける。 「がぁ!?ぷっ!ぺっ!?」 砂が口に入って咽返る宍戸の側頭部に、 腰を捻って十分な勢いをつけた正一郎の回し蹴りが綺麗に入り、 脳振蕩を起こした彼の意識はここより遥か遠い世界へと旅立っていった。 …どこまで史実か明確でないが 宮本武蔵の生涯無敗の要因はその型に縛られない戦法にこそある。 宍戸梅軒との戦いでは両手にそれぞれ太刀と脇差をもって挑み、 佐々木小次郎の時は小次郎の物干竿よりさらに長い木刀を船の舵を掘り出して作り 勝利した。 鎖鎌は、鎖で相手の武器を絡め取り、鎌で反撃する、という二動作が基本の動きである。 チェーンのみでは本人も言っていたように流派のすべてを出しきるには不完全であり、 よって接近された時の対処を失念していると見抜かれた時点で勝敗は決まっていた。 ◆ ◆ ◆ 鈴木正一郎の路上格闘(ストリートファイト)での実戦経験は多岐に渡る。 ヤンキー狩りと称して不良グループとの喧嘩に明け暮れてたある日 ヤクザの組の若い連中と揉めたのをきっかけに目をつけられ、 多人数でチャカやドスを持ち出しても素人では彼に太刀打ちできないと 判断されてからは元プロ格闘技経験者や元軍人の戦術格闘技者、 外国人のバウンサー、果ては桐原重工が裏で密売しているらしい サイボーグゾンビやら肉食獣型獣人の用心棒まで駆り出してきて 夜の街に出てきた彼を捕まえようとし、すべてをなんとか切り抜けてきた。 …そして先日、遂に身の程知らずな五人のチンピラを誤って殺害してしまったのだ。 「だからさぁ、殺し合いは別に初めてじゃねーんだわ。悪いけど。」 「…そうだったか、格上に愚かな真似をしていたのだな、俺は。」 「犯罪行為で格上とかいわれてもなぁ…まあ、実を言うとここに連れてこられて  ホッとしてるんだわ。俺が殺人罪で捕まったらじいちゃんに迷惑かかるし。  だから、俺はここで死んでもいい。」 目を覚まし、後ろ手をチェーンで縛った宍戸に己の経歴を語っていた 正一郎は、そこでいったん区切り、遠くを見つめた。 「でも他の…クラスの連中に死んでいい奴なんて居るわけないだろ?  だから俺は殺し合いを止めて、このゲームの黒幕をぶち殺す。」 「そうか…鈴木正一郎、今更許してくれとは言わんが、俺も同行させてくれないか?  俺は未熟だが、必ず役に立ってみせる。」 「・・・。」 正一郎は何も言わず、宍戸の後ろに回り、縛っていた鎖を解いた。 「…かたじけない。」 「気にすんなって。  ――――――――――――ところでさぁ。」 手に持っている鎖を、宍戸の首に巻きつけ、全力で締め付けた。 「がぎょぉ!?」 「……チェーンはさぁ、こうやって使った方がいいと思うんだよな。」 「な…げ……ご…げ…」 「さっき喋ってて分かったけどさぁ、どうせこれが実戦だとか言って他の奴を殺す気だろ?  で、頃合い見計らって裏切る気だろお前?そんな奴と組んで何のメリットがあるんだ?え?」 「ぢ……ぐぁ…」 逃れようともがく宍戸の両手に力が入る。 相当鍛えているのは確かなのか思わず手を離してしまいそうになり …仕方がないので背負い投げの要領で抱え上げて一気に全体重をかけた。  ぐきっ …首から嫌な音がした。途端に宍戸の力が弱まり、 引き剥がそうとしていた腕に力がなくなってだらりと垂れ下がる。 己の全てをぶつけて戦う事を望んだ男、 宍戸亮太郎は遂にその夢を叶えること無くここに息絶えた。 「・・・。」 チェーンを外し、倒れた宍戸の躯に冷たい視線を投げかける。 (…流石に殺ったのが6人目ともなると見慣れてくるな。) 所詮、人間なんて脳みそが電気信号を送って動かしてるだけの ただの肉の塊にすぎないということを嫌でも認識させられる。 …もちろん自分も。社会において人殺しが重罪なのは こういう真実から目を背ける為なのだろう。 しかし、だからこそ、人を人たらしめるルールを厳守する人間は今の正一郎に とっては愛すべき「正義」であり。 少々気が動転気味だったとはいえ軽々しく殺し合いに乗ったこの男は、 もはや許されざる、死んでしかるべき「悪」だった。 (クラスの連中に死んでいい奴なんて居る筈ないと思いたいが…こういう奴もいるんだな。  そうだよな…「本当にいい奴」が危険にさらされるのは避けねぇと。銀鏖院水晶とか、  ヤクザと絡んでるとか言われてる内木聡右や鬼崎喜佳も、  用心しといたほうがいいかもな。場合によっては―――――――――。) 彼の、時代錯誤的な厳格さを持った祖父に叩き込まれた脅迫概念ともいえる正義感は、 ここに来る以前、「殺人」という禁忌を犯した辺りから徐々に常軌を逸脱し始めている。 しかし彼はもはや気づくことはないのだろう。正義による殺人などありはしないが、 この場は既にそういう社会ではないのだから。 (―――そうだよな、死んだ方がいい奴らを「制裁」して、何が悪い。) 亡骸を一眼だにせず、その場を立ち去った。 &color(red){【男子十五番:宍戸 亮太郎 死亡】} &color(red){【残り46人】} ※A-8の砂浜に、宍戸 亮太郎の死体が横たわっています。 【A-8 砂浜/一日目・深夜】 【男子十五番:鈴木 正一郎(すずき-せいいちろう)】 【1:俺(ら) 2:あんた(たち) 3:○○(名字さん付け)】 [状態]:健康 [装備]:錆びた鉄パイプ(現地調達) [道具]:支給品一式×2、不明支給品×2、バイクのチェーン(現地調達) [思考・状況] 基本思考:脱出派(危険思想対主催) 0:危険人物と判断した奴を殺しながら脱出の道を探す 1:脱出不可能なら自分以外の誰か一人を生き残らせる [備考欄] ※彼はクラスメイトの人間関係を色々誤解しています。 *時系列順で読む Back:[[遠く流されて~EXILE~]] Next:[[かけひきは、BRのはじまり ]] *投下順で読む Back:[[遠く流されて~EXILE~]] Next:[[かけひきは、BRのはじまり]] |&color(cyan){GAME START}|鈴木正一郎|| |&color(cyan){GAME START}|&color(RED){宍戸亮太郎}|&color(RED){死亡}|

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