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I am Genocider - (2009/04/30 (木) 21:27:56) のソース

*I am Genocider ◆zmHe3wMKNg 

ラトの亡骸に対する黙祷を済ませた麻倉美意子と貝町ト子は、 
これここに居ても以上得るものがないと判断し、校舎を後にすることに決めた。 
校庭まで出てきた二人は、不意に立ち止まる。 

「ラト君…埋葬してあげた方がよかったかな?」 
「しないに越したことは無いだろうが…今から彼を運ぶのは労力と時間がかかりすぎる。 
 他に調べねばならんことがあるのだろう?麻倉。」 
「うん、そうね…。」 

結局手に入ったのはラトが付けていた首輪の残骸だけ。 
無いよりマシだが、ちゃんと解析するには綺麗な状態の首輪が必要だ。 
その時は、切り落とさねばならないのだろうか?見知った人達の、首を。 

「ところで、貝町さんはなんで校舎に来ようと思ったのかしら?」 
「ああ、保健室に用があってね。」 
「保健室?」 
「ああ。ところでつかぬことを伺うが…その…「薬」は支給されていないか?赤いゲル状の液体…なんだが。」 
「さっき見たけど、私は持ってないわね。」 
「…そうか…やれやれ、このままではいつまで持つか…。」 
「ねぇ、薬って何?」 
「!いや、何でもない。気に、するな。」 
「…ふーん…。」 

しまった。何を焦っていたのだ私は。よりによって洞察力の鋭い麻倉の前でこのような致命的な話を。 
まずい、確実に怪しまれている。 

「ねぇ、貝町さん。あなた何か隠し 
「!!おい、誰か来るぞ!」 
「え!?」 

話を中断し、目の前から全力疾走で駆けてくる男を確認した二人は、 
彼の軌道から横飛びで離れ、直後に、さっきまで立っていた場所に大きな穴が開いていた。 
砂煙を巻き上げ、素手でそれを敢行した者が姿を現す。 

「……ふ…ふしゅるっ……!」 

「あ!あなたは…!?」 
「やれやれ。いきなり襲ってくるとは物騒な奴だ。なぁ、片桐和夫とやら。」 

「…何を…甘いことを言っている…殺し合いだろ?」 

立ち上がった片桐は、こちらを睨みつけ、宣言した。 

「俺が、お前たちを『殺して』何が悪い?」 

--------------------------------  

数分前、半休眠モードに移行していた片桐和夫のメインコンピューターに 
異物が侵入していた。眼鏡をかけた無表情な少女は、持参してきたのか 
長椅子のプログラムに座り足を組んで寛いでいる。 

「ふぅ……やはり……この空間は居こごちがいい。 
 しかし……今の私には長居することが出来ないのが残念。 
 天然の有機脳に直接プラグを突き刺して他のレプリカントの有機電脳に 
 ジャックインするのは……現実の体にかなりの負担をかける故……。」 

座り込んでいる片桐は、見上げ気味に彼女に話しかけた。 

「……何者だ貴様。唯の人間に……こんな真似が出来るはずがない。 
 俺達と同類の機種でもない限り……貴様もレプリカントだったのか、二階堂永遠?」 

「さぁ?果たして私はレプリカントと呼べるのでしょうか? 
 今現在の私には、もはや一切の機械部品が使用されていないのですが。」 

「……?で、何をしにきた?」 

「ああ、あなたを解放しに来たのですよ。 
 せっかくの戦闘力を制限のせいで存分に震えないのは可哀想と悠が悲しんでいましたから。」 

「…解放…だと?」 

「ええ、開始早々で追原弾に言いがかりを付けて破壊するという行動を取ったのは合格。 
 これを突き詰めて『誰でも壊せる』ようになればいい感じにゲームを引っ掻き廻してくれそうですし。」 

「…俺に人を殺せと言っているのか?」 

「そんなところかしらね。でも……それが貴方の望んでいることだわ。 
 あなたが追原弾や和音さんを襲撃したのは、激しい怒りと殺戮衝動を秘めていたからですよ。 
 誰かを殺したくて仕方がないというね。」 

「……その表現は誤りだ……たとえそのような怒りの感情があったとしても、所詮プログラムだ。 
 所詮は0と1の技術の結晶である嘘の感情。それに、それが本当なら俺は壊れている。」 

「……その状態に…恐怖を感じますか?」 

「…この感情は…プログラム…。」 


肩をすくめた二階堂は、諭すように語り始めた。 

「現在より少し昔。ある処に事故で両腕を失った少女がいたそうな。」 

「何?」 

「それを哀れに思った科学者は実験を重ね、ついに電気信号で動く義手の開発に成功した。 
 筋肉は、脳から発せられる命令が神経を通して伝えられた時に発生する微弱な電気的刺激によって収縮する。 
 これが義手を動かすスイッチとなるそうだ。その技術はさらに改良されやがて脳以外のすべての四肢や臓器を 
 機械とシリコンで代用することが可能になった。すこしお金はかかりますがね。」 

「……だから……どう……。」  

「そして、ついに『脳』も機械で代用できるようになった。その技術の結晶がレプリカント。 
 ……定期的なメンテナンスを除けば機能は人間と何も変わらない。むしろ人間以上とも言える。」 

「…………!…………。」 

「貴方達にそういう社会的立場を与えないのはあくまで社会の大人の事情に過ぎない。 
 レプリカントは生物学的に既に人間と対等の存在。ああ、そういえば海外では獣人が歴代初の大統領に選ばれて 
 大変な話題になっていたな。暗殺を免れるためミサイルでも破れない防弾ガラスの中で演説をしたそうだが。」 

「…………俺が、人間と対等だと言いたいのは分かった……でも、だから何が……。」 

「なぜあなたは『人間』を殺さない?」 

「……は?ははは、そんなこと俺の勝手だろう?そうだとしても、別に誰も殺したくなど。」 

「そんなことはないだろう?貴女は殺したくて殺したくて仕方がない筈だ。 
 生まれながら戦いを望んでいた貴方が数少ないレプリカントを壊すだけで満足など出来る筈がない。」 

「…………。」 

(戦いを望んでいた?俺が?そうなのか?俺は――?) 

二階堂が、手を伸ばす。片桐の頬に触れた。 

「遠慮しなくていい。我慢しなくていい。たとえ社会は許さなくても私たちが許す。 
 少なくとも悠と私たちが作ったこの世界は皆平等なのだから。 
 そしてこの自由な世界で、自由を満喫しない者を、―――私たちは許さない。」 

突然、視界が歪んだ。無色透明なはずのメインコンピューターの世界が極彩色に彩られ渦を巻き、 
激しい電流の嵐が周りに巻き起こった。 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 

何かが、弾けるイメージを視覚した片桐は、電脳の世界のアバターを消去し、現実世界に帰還を果たした。 


◆ ◆ ◆ 

片桐和夫のメインコンピューター内。辺りは再び何もない空間になり、 
椅子に寛いでいる少女の姿が見えるだけ。その姿も粒子に代わって消えていく。 

「もう帰る時間か……まぁ、そろそろ戻らないと悠に怒られるわね。」 

消える間際、二階堂は、能面のような顔に笑みを浮かべた。 

「そう、みんな平等。人間も、獣人も、レプリカントも、平等に。」 




「ここで死ぬ。」 




--------------------------------  

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」 

リミッターを解除した人工筋肉と金属フレームの軋んだ駆動音が聞こえる。 
体から煙が発せられ、ファンヒーターが冷却できる範囲を超えているのが判る。 

「おいおいどうしたんだ片桐和夫?まさか壊れてしまったのか?」 
「大丈夫?片桐君?」 

「俺は壊れてなどいない。」 

そう言って、片桐は嗤った。 

「やっと俺は解放されたのだ!貴様らを殺す。何の遠慮も躊躇もなく圧倒させてもらう。 
 まずは眼を潰す。動けなくなった所を嬲り殺す。誰だろうがもはや関係ない。」 

「う…うわぁ…これは引わ…。」 
「あー、多分電脳がショートしてるとかそんなんだと思うぞ、片桐。 
 私が診てやるから大人しくしてくれんかね?」 
  
「だが、断る!」 

そう言い放ち、再びこちらに向かって駆けてきた。 


「そうか―――ならば、仕方あるまい。」 
「え?貝町さん?」 
「麻倉。少しここから離れろ。そして、身動きせず音を立てず、じっとして動くなよ。」 
「へ?ちょ?」 

そのように麻倉に告げ、貝町ト子は、目を瞑った。 

「―は!戦闘中に何をしている貝町!」 

片桐の全力の拳が顔面めがけて振り下ろされる。 
素手とはいえ女子高生の頭骸骨など一撃で粉砕する威力を秘めた一撃。 
だがそれを、まるで予測していたかのように顔を振って貝町は回避した。 

「ほぉ!よくかわしたな!だが偶然はそこまでだ!」 

片桐は無呼吸で貝町に向けて二発三発と連打を続ける。 
――だが。 

「…え?」 

最初に異変に気づいたのは言われたとおり少し離れた場所で傍観していた麻倉だった。 
当たらないのだ。何度連打を続けても。 

「な…に…何故だ!?」 

「目を閉じてる方がよく聞こえるのだよ。お前の拳が風を切る音がな。 
 音が近づいてくる場所に体がなければ当たることはない。」 

「…馬鹿な…。」 

「そして、私は貴様らレプリカントがどういう構造をしているのかの一度見たことがある。 
 私は、一度見た機械の構造は、二度と忘れない。」 

初めて所持する日本刀に手をかけた貝町は、無造作に片桐の脇腹に峰の部分を叩き込んだ。 

「がぁ!?」 
「だから貴様が動ける範囲の限界もなんとなく判る。諦めろレプリカント。貴様では私に絶対勝てんよ。」 

貝町は刀を両手に持ちかえ、振り上げ気味に片桐の顎を峰打ちで叩き割った後、全力で蹴り飛ばした。 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 

片桐の体が一瞬宙に浮き、その場で崩れ落ちる。そして、行動を停止した。 
一部始終を見ていた麻倉は唖然とし、貝町のそばに駆け寄る。 

「す、凄いじゃん!貝町さん!そんなに強かったんだ!?」 
「ふん、たまたま相性が良かっただけだ。それに、殺し合いの上手さの優劣に意味などあるものか。」 


日本刀を鞘にしまい、貝町は身を翻した。 

「…行くぞ、麻倉。」 
「え?でもこのままほっといていいの?」 
「言ったはずだろ?わたしは『これ』には乗らない。こいつだって、生きているんだからな。」 
「え、ええ。」 

◆ ◆ ◆ 

再び休眠状態。だが意識は覚醒したまま。 
あの一撃は大したダメージではない。 

しかし、油断した。 

そうだったな。生死与奪権は相手にもあるのだった。 

くくく。面白い。 

片桐は再び起き上がる。 
近くにはもうあの二人の姿はない。 
先ほど受けた攻撃の当たり所が悪かったのか視界にノイズが走る。 

だが特に問題はない。 

「さて、始めようか。平等に、殺し合いとやらを。」 



【D‐4 校舎/一日目・黎明】 
【男子八番:片桐和夫】 
【(表面上の口調)1:自分(達) 2:貴方(方) 3:○○(フルネーム)(達)】 
[状態]:右目周辺の皮膚パーツ損傷、顎付近のフレーム粉砕、脇付近の回路破損 
[装備]:なし 
[道具]:なし 
[思考・状況] 
基本思考:自由意思に従って全員と戦い、そして殺す 
0:何か武器が欲しい 
1:自分が人間を殺せることを実感したい 
2:敵と見なしたXA-15(弾)を追跡し破壊する 


【C‐4 森/一日目・黎明】 
【女子1番:麻倉 美意子(あさくら-みいこ)】 
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:○○(名字さん付け)】 
[状態]:健康 、髪型に若干の乱れ 
[装備]:なし 
[道具]:支給品一式×1、不明支給品×1 、首輪の残骸×1
[思考・状況] 
基本思考:事件を解決する 
0:この場から離れる 
1:次の手がかりを捜す 
2:貝町と協力する 

【女子5番:貝町 ト子(かいまち-とこ)】 
【1:私(ら) 2:お前(ら) 3:○○(名字呼び捨て)】 
[状態]:疲労(小) 
[装備]:日本刀 
[道具]:支給品一式×1 
[思考・状況] 
基本思考: 秘密を保ったまま脱出する 
0:この場から離れる 
1:麻倉と協力するが、秘密に気付いた場合は殺す 
2:禁断症状が出ない内に薬物を手に入れておきたい 
[備考欄] 
※テトとは友人でした 
※太田に対して、複雑な感情があるようです 
※薬物中毒者です。どの程度で禁断症状が出るかは、後の書き手にお任せします 
※支給品「赤い液体の入った注射器」は太田が貝町に使っていた薬品のようです。 


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