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男「なあ、シュー」
女「ん? 私はゾウよりもキリンが好きだが」
男「それは聞いてねえよ。シューってさ、いつもそれ(〒)付けてるよな」
女「ああ、これか」
男「気に入ってるの?」
女「これはとても大切なものだからな」
男「もらいもの?」
女「うむ、君には聞いてもらおうか。回想開始」



クリスマスの翌日のことだ。
クー姉が風邪を引いた。

ク「…油断した」
シ「昨日は寒かったから」
ク「うむ、彼と一緒で浮かれすぎた。反省」
シ「風邪のときはネギを焼いて短冊を吊るすと願いが叶うらしい」
ク「私の知ってる話と少し違うんだが」
シ「些細な違いは気にしない。というわけで短冊を用意したから書いといて」
ク「…把握した」

私はクー姉の食事を作るために席を外した。
幸いながらたいした風邪では無いようだ。
早く直ってもらうためにも美味しいお粥を作らなくては。

シ「シューの三分クッキングー。まずお粥を用意します。
 次に食べやすいように三分間ふーふーします。できあがりー」




シ「クー姉、お粥作ったよ」
ク「ありがとう。出来る妹で本当に助かるよ」
シ「そんな言葉を私が望んでいると思ったか? 望んでいたから嬉しい」
ク「…美味しい」
シ「それは良かった。体の調子は?」
ク「少し体が重いな」
シ「じゃあそれを食べたらゆっくり寝ててね」
ク「彼氏と約束があるのだが」
シ「ダメ」
ク「でも」
シ「サンダーバード愛好会の人たちのためにも寝てて」
ク「さすがに知らない人のためには」
シ「ついでに私のためにも」
ク「しかし」
シ「寝ててくれなきゃ、舌噛んで痛いって言ってやる」
ク「…わかった」
シ「いたい」

わかってくれた様でクー姉は静かに寝てる。
しかし辛そうだったな。
体が重いって……そうか、私も体も重くすれば良いんだな。
やっぱり姉妹だからなクー姉の辛さは分かち合いたい。
というわけで両手足に10kgの重りを付けてみた。



約束があったようだし、クー姉の彼氏に電話をしておくか。
プルルルル
「はい、もしもし」
「シューです」
「あ、シューちゃん? どうしたの」
「うちのクー姉は預かった。返して欲しくて返してやらない」
「はい?」
「つまりクー姉が風邪引いた」
「え! クーは大丈夫なの?」
「2、3日休めば大丈夫」
「そうか、でも困ったな」
「困った?」
「あ、いやなんでもないんだ。クーは今どうしてる」
「ぜっとぜっとぜっと」
「寝てるのか、じゃあお大事にと伝えて」
「今年中にな」
ガチャ

うむ、これでよし。
クー姉は寝てるようだし、私も静かにしておくか。
…………もう、こんな時間か。

そろそろ夕飯を作らないといけない。
その前にクー姉の様子を見に行くか。




シ「クー姉、調子はどう………いない」
布団はまだ暖かい。
トイレかと思って少し待ってみたが違うようだ。
そう言えばクー姉が妙に出かけたがってたな。
と考えたところで机の上に短冊が置いてあるのを発見した。
少し出かけます。 クー
シ「…あれほど言ったのに」
次の瞬間、私は家を飛び出していた。

シ「どこにいったんだ……クー姉」
私は走った。
近所のコンビニやスーパー、ハローワーク、若い女性が行きそうな場所はすべて探した。
シ「…いない」
クー姉が他に行きそうな場所はどこだ。
最初に思いつくのが彼氏の家だ。
でもそれはないだろう。
彼はクー姉が風邪を引いていることを知っている。
それを知っていてクー姉を連れまわすような人ではない。
くそ、いつもより体が重い。
気温が低いせいだろうか、まるで重りをつけている気分だ。

その後、二時間は探し続けたがとうとうクー姉は見つからなかった。
もう帰っているかもしてない。
私は一旦、家に戻ってみることにした。
家の近くまで帰ると玄関に明かりがついていることに気が付いた。
安堵の息をついてドアを開けると、そこには顔を真っ青にして倒れているクー姉がいた。



シ「クー姉!」
ク「……シューか」
シ「クー姉、すごい熱だ」
ク「下がったと…思ったんだがな……油断した」
シ「この寒い中、出歩いたりするから」
私も今にも倒れそうなクー姉を抱きしめた。
ク「心配かけたな」
シ「それはこっちのセリフだ」
ク「……私であってるよ」
シ「どうして外に出たんだ」
ク「本当は男と一緒に買いに行く予定だったんだけど」
そう言ってクー姉は私に小さな小包をを手渡した
ク「今日は……シューの誕生日だろ」
シ「…!?」
ク「店が閉まってたから、こんな物しか買えなかった。すまない」
シ「そ、そんなことで」
ク「私には大切なことだよ」
とても耐え切れないほどの涙が出た。
嬉しくてたまらないことを姉に伝えたかったが、嗚咽にかき消されて言葉にはならなかった。
だから私は精一杯、クー姉を抱きしめた。
大切な人の冷たくなった体が少しで暖かくなるように。
少しでも大好きな姉の鼓動を感じられるように。



女「……というわけだ」
男「へー、じゃあそれ(〒)がそのときの小包?」
女「いや、これは関係ない」
男「今までの話の意味は!?」
女「嘘だよ。冗談だ」
男「だよな」
女「今までの話が」
男「マジで!?」
女「それも嘘だ」
男「もう訳わかんねえよ!!」

あの頃はクー姉が世界一だったけど、今は同率一位になってしまった。
クー姉と同じくらい大切な人が出来るなんて思いもしなかったけど
だから今年の誕生日はいつもより二倍楽しくなる、そんな気がする。

fin