数学的な説明

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ここではEuler Getterの数学的な側面を説明する。 もちろんゲームをプレイする分には理解しておく必要はない。 [[本家の説明>http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~yasuda/Takehiko_Yasudas_homepage/Euler_Getter.html]]は英語であるが大変分かりやすい。 **盤面の取り決めついて ---- 「点対称な位置にある縁のマスは同じマスと見なす。」 という Euler Getter の盤面の取り決めは、 盤面のトポロジーを(実)射影平面 $$\mathbf{P}^2$$ にするための取り決めである。 ここでは、射影空間 $$\mathbf{P}^n$$ について紹介する。 これは数学において大切な空間の1つである。 まず、「ユークリッド空間」について確認しておこう。 これは点や直線,平面といった普通の平らな空間のことである。 一般に $$n$$ 次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^n$$ を $$n$$ 個の実数の組の集合と定める。 私たちの住むこの空間も $$(x, y, z)$$ という3つの実数の組と位置が対応しており、 3次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^3$$ だと見なすことが出来る。 $$n + 1$$ 次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^{n+1}$$ において 原点を通る直線の集合のことを $$n$$ 次元射影空間 $$\mathbf{P}^n$$ と呼ぶ。 例えば、$$\mathbf{R}^1$$ はただの直線であるから、 原点を通る直線は1本しかない。 すなわち、 $$\mathbf{P}^0$$ は1点である。 1つ次元を上げてみる。 平面 $$\mathbf{R}^2$$ の中で原点を通る直線の集合が $$\mathbf{P}^1$$ である。 原点中心の円を考えると、このような直線が常にこの円上の2点を通ることが分かる。 #image(p1.png,width=210,height=200) したがって図のように半円上の点と直線が1対1で対応している。 #image(p1_2.png,width=210,height=200) 境界の2点は同じ直線を定めるので同じ点だと見なせば、 結局 $$\mathbf{P}^1$$ が円であることが分かる。 #image(p1_circ.png,width=500,height=150) もう1 つ次元を上げてみる。 先と同様にユークリッド空間 $$\mathbf{R}^3$$ 内で 原点を通る直線は半球上の点と対応する。 ここで境界は対点が同一視された円である。 これが $$\mathbf{P}^2$$ であるが、この図形もまた球面になるだろうか? #image(p2.png,width=380,height=150) 試しに $$\mathbf{P}^2$$ のオイラー数を計算してみる。 オイラー数とは図形に対して定まる量で、例えば多面体の場合、 頂点の数 - 辺の数 + 面の数 を計算したもののことである。 通常の多面体について計算するとその値は常に 2 となる。 この事実を&bold(){オイラーの多面体定理}などと呼ぶが、 実は多面体とは球面をセル分割した図形であり、 2 というのは球面のオイラー数なのだ。 そこで下の図のように $$\mathbf{P}^2$$ もセルに分割し、 同一視に注意しながら頂点、辺、面の数の交代和を計算してみる。 #image(cell.png,width=200,height=150) 答えは2 - 2 + 1 = 1 である。 様々なセル分割が同じ値1 を導くことを確認してほしい。 この計算は $$\mathbf{P}^2$$ が球面と異なる図形であることを示している。 こうして $$\mathbf{P}^2$$ が新しい図形であることが確認できたわけだが、 オイラー数が奇数であることはEuler Getter において重要である。 なぜなら2 人で $$\mathbf{P}^2$$ のオイラー数を取り合えば必ず勝負がつくからである。 このことがEuler Getter における盤面の取り決め 「点対称な位置にある縁のマスは同じマスと見なす。」 を採用する理由なのである。 **決着について ----
ここではEuler Getterの数学的な側面を説明する。 もちろんゲームをプレイする分には理解しておく必要はない。 [[本家の説明>http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~yasuda/Takehiko_Yasudas_homepage/Euler_Getter.html]]は英語であるが大変分かりやすい。 **盤面の取り決めついて ---- 「点対称な位置にある縁のマスは同じマスと見なす。」 という Euler Getter の盤面の取り決めは、 盤面のトポロジーを(実)射影平面 $$\mathbf{P}^2$$ にするための取り決めである。 ここでは、射影空間 $$\mathbf{P}^n$$ について紹介する。 これは数学において大切な空間の1つである。 まず、「ユークリッド空間」について確認しておこう。 これは点や直線,平面といった普通の平らな空間のことである。 一般に $$n$$ 次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^n$$ を $$n$$ 個の実数の組の集合と定める。 私たちの住むこの空間も $$(x, y, z)$$ という3つの実数の組と位置が対応しており、 3次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^3$$ だと見なすことが出来る。 $$n + 1$$ 次元ユークリッド空間 $$\mathbf{R}^{n+1}$$ において 原点を通る直線の集合のことを $$n$$ 次元射影空間 $$\mathbf{P}^n$$ と呼ぶ。 例えば、$$\mathbf{R}^1$$ はただの直線であるから、 原点を通る直線は1本しかない。 すなわち、 $$\mathbf{P}^0$$ は1点である。 1つ次元を上げてみる。 平面 $$\mathbf{R}^2$$ の中で原点を通る直線の集合が $$\mathbf{P}^1$$ である。 原点中心の円を考えると、このような直線が常にこの円上の2点を通ることが分かる。 #image(p1.png,width=210,height=200) したがって図のように半円上の点と直線が1対1で対応している。 #image(p1_2.png,width=210,height=200) 境界の2点は同じ直線を定めるので同じ点だと見なせば、 結局 $$\mathbf{P}^1$$ が円であることが分かる。 #image(p1_circ.png,width=500,height=150) もう1 つ次元を上げてみる。 先と同様にユークリッド空間 $$\mathbf{R}^3$$ 内で 原点を通る直線は半球上の点と対応する。 ここで境界は対点が同一視された円である。 これが $$\mathbf{P}^2$$ であるが、この図形もまた球面になるだろうか? #image(p2.png,width=380,height=150) 試しに $$\mathbf{P}^2$$ のオイラー数を計算してみる。 オイラー数とは図形に対して定まる量で、例えば多面体の場合、 頂点の数 - 辺の数 + 面の数 を計算したもののことである。 通常の多面体について計算するとその値は常に 2 となる。 この事実を&bold(){オイラーの多面体定理}などと呼ぶが、 実は多面体とは球面をセル分割した図形であり、 2 というのは球面のオイラー数なのだ。 そこで下の図のように $$\mathbf{P}^2$$ もセルに分割し、 同一視に注意しながら頂点、辺、面の数の交代和を計算してみる。 #image(cell.png,width=200,height=150) 答えは2 - 2 + 1 = 1 である。 様々なセル分割が同じ値1 を導くことを確認してほしい。 この計算は $$\mathbf{P}^2$$ が球面と異なる図形であることを示している。 こうして $$\mathbf{P}^2$$ が新しい図形であることが確認できたわけだが、 オイラー数が奇数であることはEuler Getter において重要である。 なぜなら2 人で $$\mathbf{P}^2$$ のオイラー数を取り合えば必ず勝負がつくからである。 このことがEuler Getter における盤面の取り決め 「点対称な位置にある縁のマスは同じマスと見なす。」 を採用する理由なのである。 **決着について ---- **偶数マスEuler Getterが先手必勝であること ---- 2012年2月、数学者のChristian Schnellによって偶数マスEuler Getterが先手必勝であることが示された。

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