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 目覚まし時計が、アラームを鳴らし始めた。大きなニワトリの形をした時計は、耳障りな音をわめき散らす。
 布団から、手が伸びてきた。そっと時計を掴むと、
「うるっせぇっ!!!!!!!!」
 思いっきり壁に叩き付けた。ニワトリは沈黙。部品が床に散らばり、部屋は再び静かになった。
 と、今度は廊下を歩く音が聞こえる。部屋のドアが開いた。
「お姉ちゃん!? また目覚まし壊したでしょ!!」
 明日葉緑(ミドリ)は開口一番、ベッドの上で布団にくるまる姉に向かって怒鳴った。姉は布団から顔を出し、眠そうに言う。
「止めたんだよー」
「これは壊したって言うの!!!!」
「壊れたんだよ。最近の目覚ましは脆くていけないね」
「どっちでもいいから、起きなさいよ!!」
「今日は創立記念日で休みでしょー」
「毎週毎週創立記念日な学校があるかぁ!!」
 ミドリは布団をひっぺがすと、姉の頬を掴んだ。
「いひゃい、いひゃいれふ」
「起きないと、遅刻だよ」
「あい。おきまふ」
 明日葉縁(ユカリ)はそう言うと、大きく伸びをした。
「今日のご飯はなにー」
「アジの開きとお味噌汁」
「えー、パスタがいいー」
「じゃあ夜はパスタね」
「わーい、だからミドちゃん好きよ」
「……さっさと着替えて、降りてきてね」
「了解しましたー」
 ぽややんとした笑顔のユカリを置いて、ミドリは部屋を出た。

   *****

「ごちそうさまー」
「お粗末様でした」
「本当にミドちゃんは料理上手よねー」
「お姉ちゃんが出来なさすぎなのよ」
「ねぇ、私の嫁に来てよ」
「女同士だし姉妹だし、もう私お姉ちゃんのお嫁さんみたいなもんじゃないのよ」
「まだ婚姻届出してないよ」
「ああもう! お茶飲んだら歯磨いてね!!」
「うい」
 毎日がこのような会話である。
 姉はどこまでが素で喋っているのかわからないが、ミドリにベタ惚れというのはわかる。
 その度にミドリは顔を赤くしつつも、まんざらでもない表情で会話をしていくのだ。
 しかし、とミドリは思う。
 姉の着ている制服は、どうにかならないのだろうか。
 もうユカリは23歳である。胸やお尻だって大人のプロポーションだし、無駄にフェロモンも出ている。そんな大人の女性が、セーラー服はいかがなものだろう。
 別にユカリは仕事場でコスプレをしている訳ではない。ユカリは希望が丘女子高等学校に通う、高校一年生なのだ。ミドリとはクラスメートでもある。
 ユカリは今、鼻歌交じりでハイソックスを履いている。その格好はかなり際どいが、似合っているのも事実である。
 ちょっとため息をつき、自分も準備を始めた。
 玄関を出て、鍵を閉める。
「さ、行こうか」
「はーい」
 ユカリはいつも、登校する時は張り切っている。ミドリは思い切って聞いてみた。
「ねぇお姉ちゃん。なんで毎朝元気なの?」
「だって、ミドちゃんと一緒に学校行けるんだよ?」
「~~~~っ!!!!」
 ミドリは顔を真っ赤にして、歩みを早めた。
「あらっ、少々スピードが速いですよ!?」
「速くしたの!」
「待って、待ってよぉ」
 そんな切ない声を出されちゃ、待つしかない。ミドリは歩みを止めると、今度はユカリに抱き着かれた。
「うあっ!!!!」
「えっへっへ、捕まえたぁ」
「ちょ、放してよ!!」
 公衆の面前で、セーラー服の少女とセーラー服のコスプレをした女性が抱き合っている姿は、かなり怪しかった。