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 ──長い、とても長い一年が終わった。
 祐巳さまと出会い、瞳子さんや乃梨子さんとも出会い、夕子さんやお父さんとの問題もある程度解決して──。

 私は、二度目の一年生を繰り返す。

「ごきげんよう」
 二度目の出会いは完璧だった。何故なら、私はこれから起こる全ての事を知っている。
 目の前には、天使がいる。私の天使さまを、二度も失いたくはない。
 このままいい関係を築いていき、そして──。

 ──私は神に感謝した。いや、この場合はマリア様か。
 とにかく、何者かの悪戯によって巻き戻った時間は、私を『紅薔薇のつぼみの妹』と呼ばれる存在に変えてくれた。
 最高の親友となった瞳子さんは笑って送ってくれた。
 共に薔薇の館の住人となった乃梨子さんも嬉しそうに笑う。
 志摩子さまや由乃さま、令さまそして祥子さま……。二度目ともなると癖もわかるし好みだってバッチリ。これからも、上手くやっていける……。

 ──可南子ちゃんは終始嬉しそうだった。少しはしゃぎすぎてカップを割ってしまったくらいだけど、そこは私は「姉」。保健室に連れて行き、少し切った指の手当てをして、今日は帰してあげた。
 初日でお茶会を早退というのに不満そうだったけど、聖さま仕込の「静かにさせる方法」で、可南子ちゃんは黙って私のいう事を聞いてくれた。”天使のキス”は効いたみたい──。

「祐巳、可南子ちゃんはどう?」
 お姉さまはそう問いかけてきた。
「そうですね、さすがに三回も瞳子ちゃんが妹っていうのも可哀想ですから」
「あら、私はここまでずっと祐巳を妹にしてきたわよ?」
 自信を持ってそう言うけれど、私にはそれを知る術はなくて。
「まぁ、可南子ちゃんも、これで私達の仲間ね」
「そうですね。これからずっと……ですね」
 あの梅雨の悲劇だって原因がわかっているから回避できるし、どんな困難も乗り越えることができた。
 毎回新しいトラブルは起きても、それはまぁ、一度起きれば次の年の自分は回避できるだろうし。

 私達はこのまま先を生きていき、普通に大学生になっていくけれど、来年の4月にはまた新しい”私”が生まれるんだろう。
 これまでの記憶を持った新たな私達は、どんな一年を送るのだろうか。
 そして次の私達は、どんな未来を作っていくのだろうか。

「それにしても、瞳子ちゃんがまだ目覚めてなくてよかったですよ」
「あら、どうして?」
「だって、三年連続私の妹なのに、次は妹じゃないんですよ?」
 お姉さまがずっと私を選んでいる理由には気づいている。
 だって、もし私がお姉さまの妹じゃなくなったら、私、笑顔でいれる自信がありませんから──。

 神か悪魔か、はたまたずっと子羊を見守ってきたマリア様の悪戯か。
 時間を狂わせ、世界を歪めたこの一年は、次々と増殖しつつあった。