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 双方の部隊が激突してから、まだ数分しか経っていないのに、もう一時間も戦っているように感じる。
 可南子の右側から悲鳴が聞こえた。落馬する音が聞こえたのと同時に、剣をその方向に振るう。鈍い感触と共に、今度は男の悲鳴が聞こえた。
 長い髪は後頭部でまとめ、兜に何とか治めている。その兜に、凄まじい衝撃が伝わった。
 一瞬、可南子は命を落としたと錯覚した。兜の前面が砕ける。
 落馬する寸前、鉄砲隊の姿が見えた。そこでようやく、自分が撃たれたことに気づいた。

 瞳子の目の前で、可南子が落馬した。
「可南子さんっ!!」
 彼女は派手に地面に叩きつけられ、後方に転がっていく。

 瞳子は、キレた。
 自らの魔力を剣に集め、大きく目と口を開け、雄たけびを上げながら、敵の真ん中に攻め込んだ。
 瞳子は、可南子と違って兜をかぶっていない。トレードマークである縦ロールは隠さず、額当てのみとなっていた。
 それはきっと、これからもそうであったに違いない。
 それまでは、何があろうと、可南子が守ってくれたから。
 瞳子たちの部隊まで敵を行かせないよう、可南子が食いとどめていてくれたから。

 離れた場所の鉄砲隊が、瞳子に照準を合わせた。

 瞬間、敵本隊の群れが崩れた。瞳子に銃弾は飛んでこなかった。
 黒い塊に、淡い黄色が広がる。
「あれは」
 傷ついた身体を起こしながら、可南子が呟いた。
 遥か向こうに見えるのは、『剣聖』と呼ばれる──。
「かかれぇ!!」
 剣を振り下ろすと同時に、周囲の兵士が敵軍を殲滅しだした。
 不適な微笑みを浮かべる女が、馬から降りる。そして、よく通る声で言う。
「フェティダ自由国が総大将、支倉令! リリアン女王国の助太刀に参上した!!」
 可南子が立ち上がる。自分の剣を手にする。
 瞳子が剣を構えなおす。勝利を確信する。
 令が更に続ける。全ての流れが、止まる。
「リリアンを攻め落とすならば、この支倉令を倒してからにするがいい!!」

 再び動き出した流れは、全てが好転に向かっていた。