――最近、龍宮の様子がおかしい。
仕事だと言って部屋を出るのはいいが、向かう場所はいつも同じだ。
逢引き、か。相手は毎回違うが、場所は一緒。
あいつはわかっているんだ。私が気付いていることを。知っていながら、私を挑発するかのように。
可哀想なのは相手だ。私を妬かせたいがために、その気持ちを弄ばれているのだから。
しかし、いつ龍宮が本気で相手に溺れるかわからない。それだけは私も嫌だ。
どうしたらいいのか。浮気現場に飛び込めば、龍宮の思う壺だ。
――あぁ、そうか。動けなくすればいいのか。
どうせ仕事じゃないんだ。動けなくても、たいした支障はない。
手足を折っても治るからなぁ。切り落とすか。ふむ。私の愛刀を、研いでおくかな……。
――刹那には気付かれているんだろうな。
でも、あいつに贈るプレゼントをあいつ自身に訊くのは何か嫌だ。
だからといって、手当たり次第にみんなに訊ねたはいいが、あまり役には立たなかった。
最初から近衛に相談すればよかったんだよ。まったく、私は馬鹿だな。
ここ最近は不必要にコソコソしてしまったが、今日からはその必要も無くなる。
ドアを開けて、あいつに言うんだ。「誕生日、おめでとう」って。
……部屋に入ると、真っ暗だった。おや、寝るにはまだ早い時間だが。
出かけているのか? しかし鍵は開いていた。
「刹那? おーい、刹那」
少しすると、背後から抱き締められた。
「刹那か?」
背後から抱きついた桜咲刹那の顔には、作り物のような笑顔。
その手には、愛用の刀。刄は龍宮真名の喉に食い込む。
龍宮は「何故?」といった顔で、目だけを動かした。口を開くと、鮮血が溢れる。
「龍宮……、愛してるよ」
刹那がささやいた。
真名の手から、指輪の入ったケースがこぼれ落ちた。
最終更新:2008年04月02日 02:20