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 ――機能停止まで、あと僅か。私は壁に背を預け、唯一動く左側のカメラを左右に動かしてみる。
 人間でいうところの右目は、暴走したディフェンダーの攻撃により、破壊されてしまった。侵入者の自由を奪う為の機能である硬質のワイヤーは、私の右頭部を貫通し、腕部を麻痺させた。
 私はディフェンダーを破壊し、この通路を進んだが、記憶回路にも影響していたらしく、行き止まりに辿り着いてしまった。
 私は倒れ、そして、迫る死を待つだけとなっていた。

 ――声が聞こえる。
 人間は既にいない。となると侵入者か。

「さっきのでかいヤツ、強かったなー」
「もう少し探索したら、一旦街へ戻ろうか」

 足音が迫る。

「ありゃ、こっちも行き止まりだ」
 片手に剣を持った少女だ。傷ついていたが、流血はしていない。
「……あそこ」
 青白い肌をした少女が、私を指差した。それに気付いたのは、眼鏡の女性だ。
「大変、腕が……!」
 彼女達は私に駆け寄ってきた。五人の女性だ。
 白衣の女性が、私を見て、表情を強ばらせた。
「人間じゃない……」
 その言葉と同時に、私の首に刃物が当たる。古い文献にあった、侍のような格好の少女だ。
「……下手な動きをしたら、我が刀の錆となるぞ」
 私は、早まった死を受け入れることにした。人間によって造られた私が、人間によって破壊される。これは決定されていたのかもしれない。

 ――だが、私に死は訪れなかった。
「……落ち着きなさい、洗濯板娘」
「だ、誰が洗濯板だ!」
 顔色の悪い少女が、侍少女の気を逸らさせた。
「……間違えたことは、何一つ言ってない」
「き、貴様!」
「大丈夫。これから大きくなるわよ」
「まだ若いんだから、気にしなくても……」
「あたし、蛍の薄い胸も大好きだよ?」
「……つるぺたはステータス。恥じることはない」
 周囲の四人に言われまくった侍少女は、奇声をあげながら仲間であろう四人に斬り掛かった。しかし。
「……和泉蛍に命ずる。畏れよ、我を。そして、自らを縛れ」
 顔色の悪い少女が呟いた言葉に従うように、侍少女は動かなくなり、自らの持ち物であろう糸玉で、手足を縛り、床に座ってしまった。
「……邪魔だったから、つい」
「し、縛られた蛍も好きだよ、あたし……」

「あなた、私たちの言葉がわかるの?」
 眼鏡の女性が聞いてくる。私は「――はい」と答えた。
「名前は?」
「――EV-08、Evolution Viosystem No.Eight、E.v.E.です」
「え、えぼ……何?」
「呼びにくいようでしたら、イヴ、とお呼びください」
 このやりとりの後、私は質問に答え、戦闘の意志が無いことや、これまでのいきさつを話した。
 眼鏡の女性はフラニーさま。白衣の女性はロゼさま。言葉遣いの少女はララさま。剣士の少女はパティさま。侍の少女は蛍さま。名前をインプットした。

 パティさまが私を背負い、街へと連れていってくれた。その後、フラニーさまが様々な部品をチェックしてくれた。
「うん、城の敵が落としたやつでなんとかなりそう。でも、右目は駄目だわ……ごめんね」
「いえ。私こそ、修理して下さいまして、ありがとうございます」
「いえいえ。あとその服どう? ウチのリーダーのお古なんだけど」
「文句はありません」
「そっか。よかった」
「――あの、フラニーさま」
「ん?」
「お礼がしたいのですが、何かございませんでしょうか――」


 ――私の名前はイヴ。
 Holicという名のギルドに所属している。
 弓矢を持ち、日々を樹海で過ごす。
 私を助けてくれた皆さんの、何より、フラニーさまの為に――。


 ――追伸。
 蛍さまですが、しばらく縛られたままでした。
 手足が自由になってからも、ララさまとロゼさまが面白がって何度も言葉でいじめていました。

「……命ず、ロゼに向かって上目遣いで決めゼリフ」
「はい。……甘くて美味しい私を食べて、ご主人さま」
「あらあら、蛍ちゃんがそういうなら遠慮なく……うふふ♪」