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 圭織と昼休みに入ると、生徒会室にメンバーが集まっていた。その中には、当然、矢口真里の姿もある。来客用のスペースでサンドイッチを頬張っていると、ドアがゆっくりと開いた。見ると、そこにいたのは生徒会長の浦澤美弓である。 「石川さん、いる?」 「あ、はい」  真里の隣で弁当を食べていた石川梨華が返事をして立ち上がると、「あっ……」と声を上げて、美弓の後ろにいる人物を凝視していた。 「……ひとみちゃん」  梨華と同じクラスの吉澤ひとみが、眉間に皺を寄せて立っていた。見るからに不機嫌か、あるいは何かを考えている表情だ。 「吉澤さんが、話があるそうよ。吉澤さん、隣の相談室を使っても構わないから」 「すみません、会長。お部屋お借りします」  ひとみは美弓に一礼すると、顔を上げて梨華を見た。 「梨華ちゃん、いい?」 「う……うん……」  弁当箱を片づけて机の端に寄せると、梨華はひとみの元へ向かった。ひとみは相談室に先に入り、追うように梨華も中へと消える。ドアが閉まる。 「美弓、どうしたの?」  真里は心配そうな顔をしている美弓に訪ねた。もちろん、ひとみについてだ。 「吉澤さんは、肝試しに反対みたいね」 「そうなの?」 「……正確には、石川さんが肝試しに参加するのが、嫌みたい」 「……どういうこと?」 「詳しくはわからないわ。ただ……説得するんじゃないかな。参加しないように」  梨華が相談室に入り、ドアを閉めた。それを確認するや否や、ひとみは口を開いた。 「梨華ちゃん。肝試し……するんだって?」 「う、うん……」 「……あたし、聞いてないよ」 「……言ったら、反対すると思って……」 「するに決まってるじゃん!」  ひとみが大声を出したので、梨華は目を丸くした。しかし向こうは鋭い目付きで睨み付けている。梨華は心臓の辺りに手を当てた。呼吸が荒くなっていく。 「梨華ちゃん、これがどういうことかわかってるの? 遊び半分でも、幽霊に関わったら……」 「わかってるよ! わかってる!」 「わかってない!」 「どうして言い切れるのよ!!」  梨華も大声を出す。それはとても珍しい事だ。 「……矢口先輩に、中止するように言ってくる」  ドアに向かおうとするひとみの前に立ちはだかる、梨華。 「私が言い出したの。矢口先輩は関係ないわ」 「……いい? 梨華ちゃん」  梨華の肩に手を置き、ひとみは諭すように話しかけた。 「梨華ちゃんが幽霊に接するって事はね? 梨華ちゃん自身も、周囲の人も危険なの。下手をしたら、あの時みたいな事になるかも知れないの。わかってる?」 「……わかってる。けど、もう大丈夫なの」  ひとみの手に自分の手を添えて、優しく、語り掛けるように言った。 「矢口先輩がいるから。私の呪いを解き放ってくれると信じてる」 「……矢口さんじゃ無理だよ。梨華ちゃんは、ずっと私が」  続きをひとみが言う事は出来なかった。  何度か、大声が聞こえた。真里も美弓も、食事どころではない。喧嘩をしているのなら止めに入った方がいいのでは、それとももう少し様子を見てからでも遅くないのでは、などと小声で話していると、乾いた音が相談室から聞こえた。 「……なに?」  真里がゆっくり立ち上がると、相談室のドアが開き、ひとみが出てきた。右の頬は真っ赤に染まり、唇の端を切ったのか、少し血が流れていた。無言で真里たちに礼をして、部屋を出ていった。  少しして、梨華が出てきた。涙をボロボロと零しながら、真里たちに歩み寄る。 「……い、石川……?」  返事はない。真里の隣に座ると、しかし大粒の涙を溢れさせながら、弁当を食べ始めた。  真里と美弓は頭上に大きなクエスチョンマークを浮かべたまま、そんな梨華をただ見ているだけだった。

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