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深夜のロザリオ超絶・絶叫」(2007/12/31 (月) 23:26:06) の最新版変更点

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 私は、数年前に悲劇が起きた島に向かっている。  ただでさえ人の寄り付かない、いわば「穴場」でもあった島は、あの凄惨な事件で更に人の寄り付かない孤島となってしまった。  私は、今から何をしに行くのだろうか。  供養か。  いや、それとも──。 「有馬菜々さん」  名前を呼ばれて振り返ると、そこには珍しくファインダーを覗かない武嶋蔦子さまがいた。奥には山口真美さまもいる。 「そろそろ、到着するわね」  無理を言って手配してもらった、小笠原家のクルーザー。私たちはそれに乗り、由乃さまたちが命を落とした島へ向かっている。  犯人は未だわからず、狂人の犯行ともメンバーの中の誰かが殺害したとも言われているが、真相はわからないままだった。 「そう、ですね」  会話が無くなる。  何を話していいのか。 「……あの時、祐巳さんもこんな風に話をしていたのかしらね」 「──どうなんでしょうか」  蔦子さまも真美さまも、あの時の合宿に誘われていたらしいのだが。  会話は無いまま、船は島へと進む。 「何かあったら、すぐに無線を使って下さいね」  クルーザーの舵を取っていたのは、小笠原グループで働いている須藤という女の人で、彼女はクルーザーに残るという。 「三時間もあれば十分です」 「そう。──お嬢様に、よろしくね」 「わかりました」  真美さまが言葉を交わし、人数分の無線機を受け取る。 「では、行ってきます」 「行ってらっしゃい。気をつけてね」  無言のまま道を進むと、そこには「城」があった。  内装は当時のまま、けれども外見は荒れ果てている。 「……菜々さん」  真美さまの声だ。 「入るわよ」 「はい」  扉を開けて、三人で中に入ったことまでは覚えている。  けれども、その後からの記憶がない。 「……ん、ここは……」  見知らぬ部屋。  広さから言って、ここは恐らく広間だろう。  蔦子さまも真美さまもいない。私は広間の椅子に座っていたのだ。 「……」  昔の私ならきっと、不思議な体験をした、と喜んでいたのだろう。  だが、今の私はただ恐怖を覚えるだけだった。  震える手で、無線機を作動させる。 「……もしもし、有馬です──」 ----  時間はさかのぼって、菜々たちがクルーザーを離れてから少し経った頃。 「……?」  人の気配がする。菜々たちが戻ってきたのだろうか。  須藤久美子は、くわえていた煙草を灰皿に押し付けて、クルーザーのデッキに出た。しかしそこには菜々たちの姿はない。 「──気のせい、か」  呟いて振り向いた。その直後に、久美子は信じられないものを見てしまう。  下着姿の少女が背後に立っていた。精気を感じられない肌、うつむいた顔。久美子は表情を凍りつかせ、その場に座り込んでしまった。 「あ、あ……あなた……」  数日前に渡された資料にあった少女だ。特徴的な髪型なので、すぐにわかる。 「松平の──」  少女が顔を上げた。落ち窪んだ目に、白目が無く真っ黒な瞳。縦ロールと呼ばれる髪型をしていた、松平家の娘──。  久美子が慌てて逃げるより速く、松平瞳子の両手が伸びていた。 「いやっ! いやあっ!!」  両手を闇雲に振り回す久美子。しかし、少女の手は久美子の首をしっかりとつかんでいた。 「──あなたも、いらっしゃい──」  少女がそう言った直後、久美子の全身から力が抜けた。  自力で進んだのか、あるいはそこまで引き摺られてきたのか。  須藤久美子は、クルーザーの操舵室にいた。濁った瞳と、半開きの口。そして、あらぬ方向に折り曲げられた細い首。死んでいるのは明らかである。  ケタケタと笑う瞳子は、ぐるぐると操舵室を歩き回っている。  そこに響いたのは、無線の声。 「──もしもし──」  瞳子の笑いは消え、しかしべったりと表情に笑みを貼り付けたまま、クルーザーから出て行く。無線の先にいる、生きている人間に向かって。

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