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 乃梨子ちゃんが「面白いですよ」と言って貸してくれたDVDを観ながら、由乃は腹を抱えて笑っていた。北海道の一ローカル番組だったのだが、その人気は口コミで広まり、今や日本中で大人気となったバラエティ番組である。  面白いと思うが、それと同時に、自分たちがこれをやったらどうなるだろう、と言った疑問あるいは好奇心がムクムクと膨らんでくる。そうなると由乃は止まらない。これをやりたくて仕方がない。 (ああ、おあつらえ向きの人がいるじゃない)  由乃は目に涙を溜めながら、画面の中の二人の言動や行動に笑い転げていた。 「……由乃ぉ、本当にやるの?」  令ちゃんの不安そうな声。土曜日の朝。二連休の初日である。由乃と令ちゃんは島津家の庭にいた。二人だけではない。乃梨子ちゃんと祐巳さんもいる。 「当たり前じゃない」  何を言っているのか、といった感じで返事をすると、由乃は祐巳さんたちを見た。 「二人とも、今日はよろしくね」 「うん、よろしく」  いつ見ても可愛らしい笑顔で、祐巳さんが答えた。 「こちらこそ、よろしくお願いします」  乃梨子ちゃんはいつも礼儀正しい。 「それにしても、由乃さま」 「うん?」 「まさか昨日の今日で、こんなことを考えるとは思ってもみなかったです」  乃梨子ちゃんの呆れたような声。しかし、電話で企画を説明したときに一番盛り上がったのは乃梨子ちゃんである。 「ふふ、今日は西日本を制覇するわよ」 「そればかりは勘弁して下さい」 「西日本? 制覇? ね、ねぇ由乃ぉ」  令ちゃんはあの番組を知らないらしかった。名前だけは聞いたことがある、と言っていたが。まぁ、内容を知っていたらきっと反対しただろう。 「それじゃあ乃梨子ちゃん、例のものを」 「はいっ」  乃梨子ちゃんが取り出したスケッチブックには、六つの項目が書かれていた。 「1:リリアン女学園、2:小笠原邸……なにこれ?」  令ちゃんの顔を見て、由乃はニヤリと笑った。 「それは、これを見ればわかるわよ。ジャーン」 「……サイコロキャラメル?」  由乃が手にしているのは赤いサイコロ──を模した小さな箱である。中にはキャラメルが入っているはずだが。 「キャラメルは昨日食べちゃった。使うのはこれ自体だから、いいんだけど」 「使うって、サイコロを? スゴロクでもするの?」 「ある意味では正解。じゃあ令ちゃん」  由乃がサイコロを令ちゃんに手渡すと、にっこり微笑んで、 「振って?」  出た目は2であり、目的地は小笠原邸であった。 「ね、ねぇ、本当に行くの?」 「そりゃそうよ。サイコロの目は絶対なのよ?」  四人はバスに乗り、最寄の停留所を目指していた。  乃梨子ちゃんは祐巳さんと一緒に、次の目的地を色々と検討しているようだ。 「二人は何をしているの」 「見ちゃだめ」 「由乃ぉ、そろそろちゃんとした説明してくれないかな。いくら私と祥子が友達でも、急に行ったらご家族にも迷惑だろうし」 「何うろたえてるのよ、ミスター」 「そう、それ! どうして急に私をミスターって呼び出したの?」 「いいじゃない、たまには。ね、ミスター?」 「私それあまり好きじゃない」 「もう、つべこべうるさいわねぇ。いいから上手く祥子さまを言いくるめるネタでも考えておいてよ」 「由乃ぉ~」  ミスターリリアンである令ちゃんの情けない声が、車内に響いた。 ──リリアンどうでしょう サイコロの旅 第一夜 終了 -[[第二夜へ>]]
 乃梨子ちゃんが「面白いですよ」と言って貸してくれたDVDを観ながら、由乃は腹を抱えて笑っていた。北海道の一ローカル番組だったのだが、その人気は口コミで広まり、今や日本中で大人気となったバラエティ番組である。  面白いと思うが、それと同時に、自分たちがこれをやったらどうなるだろう、と言った疑問あるいは好奇心がムクムクと膨らんでくる。そうなると由乃は止まらない。これをやりたくて仕方がない。 (ああ、おあつらえ向きの人がいるじゃない)  由乃は目に涙を溜めながら、画面の中の二人の言動や行動に笑い転げていた。 「……由乃ぉ、本当にやるの?」  令ちゃんの不安そうな声。土曜日の朝。二連休の初日である。由乃と令ちゃんは島津家の庭にいた。二人だけではない。乃梨子ちゃんと祐巳さんもいる。 「当たり前じゃない」  何を言っているのか、といった感じで返事をすると、由乃は祐巳さんたちを見た。 「二人とも、今日はよろしくね」 「うん、よろしく」  いつ見ても可愛らしい笑顔で、祐巳さんが答えた。 「こちらこそ、よろしくお願いします」  乃梨子ちゃんはいつも礼儀正しい。 「それにしても、由乃さま」 「うん?」 「まさか昨日の今日で、こんなことを考えるとは思ってもみなかったです」  乃梨子ちゃんの呆れたような声。しかし、電話で企画を説明したときに一番盛り上がったのは乃梨子ちゃんである。 「ふふ、今日は西日本を制覇するわよ」 「そればかりは勘弁して下さい」 「西日本? 制覇? ね、ねぇ由乃ぉ」  令ちゃんはあの番組を知らないらしかった。名前だけは聞いたことがある、と言っていたが。まぁ、内容を知っていたらきっと反対しただろう。 「それじゃあ乃梨子ちゃん、例のものを」 「はいっ」  乃梨子ちゃんが取り出したスケッチブックには、六つの項目が書かれていた。 「1:リリアン女学園、2:小笠原邸……なにこれ?」  令ちゃんの顔を見て、由乃はニヤリと笑った。 「それは、これを見ればわかるわよ。ジャーン」 「……サイコロキャラメル?」  由乃が手にしているのは赤いサイコロ──を模した小さな箱である。中にはキャラメルが入っているはずだが。 「キャラメルは昨日食べちゃった。使うのはこれ自体だから、いいんだけど」 「使うって、サイコロを? スゴロクでもするの?」 「ある意味では正解。じゃあ令ちゃん」  由乃がサイコロを令ちゃんに手渡すと、にっこり微笑んで、 「振って?」  出た目は2であり、目的地は小笠原邸であった。 「ね、ねぇ、本当に行くの?」 「そりゃそうよ。サイコロの目は絶対なのよ?」  四人はバスに乗り、最寄の停留所を目指していた。  乃梨子ちゃんは祐巳さんと一緒に、次の目的地を色々と検討しているようだ。 「二人は何をしているの」 「見ちゃだめ」 「由乃ぉ、そろそろちゃんとした説明してくれないかな。いくら私と祥子が友達でも、急に行ったらご家族にも迷惑だろうし」 「何うろたえてるのよ、ミスター」 「そう、それ! どうして急に私をミスターって呼び出したの?」 「いいじゃない、たまには。ね、ミスター?」 「私それあまり好きじゃない」 「もう、つべこべうるさいわねぇ。いいから上手く祥子さまを言いくるめるネタでも考えておいてよ」 「由乃ぉ~」  ミスターリリアンである令ちゃんの情けない声が、車内に響いた。 ──リリアンどうでしょう サイコロの旅 第一夜 終了 -[[第二夜へ>祐巳の決断眠れぬ夜の演奏会]]

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