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過去から未来へと繋ぐ異伝永遠に交わる事の無い」(2007/12/31 (月) 22:46:37) の最新版変更点

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「お弓、お弓はおらぬか」  倖姫が障子を少し開けて、廊下に顔を出して声を上げる。すると音も無く、黒一色の装束の女性が現れた。 「お呼びで」 「おお、お弓!」  倖姫は嬉しそうにお弓を見て、障子をピシャリと閉めた。 「姫さま。某は影の者。呼び付ければ直ちに参りますが、こうも大声で呼ばれると」 「お弓は、わらわに呼ばれるのが嫌か?」 「……いえ」 「ならばよいであろ? さ、お弓。今日はどんな面白い話をしてくれるのじゃ?」  お弓は、苦笑いを浮かべてため息をつき、無邪気に微笑む倖姫を見て、言った。 「ならば、不思議な話をしましょう。ずっと、ずっと先の世の話を──」 ---- 「へぇ、随分と不思議な夢を見たものね」 「それが、夢じゃない気がするのよ」  祥子は箸を置いた。食欲がないようである。 「その玉子焼き貰っていい?」 「いいわよ。好きなだけ食べてちょうだい」  令に弁当箱を渡して、うつむいてしまう。 「……実はね、祥子」 「……なに?」 「私も、変な夢を見てるんだ」 ---- 「……と思ったのですが」 「なんじゃ?」 「姫さまはどこかにお隠れになった方がよいかと」 「え?」  お弓は倖姫を抱えて、天井裏に隠れた。 「お召し物が汚れますが、ご容赦を」 「よいよい。わくわくするのぅ」  天板の隙間から部屋を見ていると、声と足音が近づいてきた。 「姫さま! 剣の稽古の時間ですよ!」 「なんと。麗蘭じゃ」 「彼女は気配を隠すのが下手ですから」  異国の剣士・麗蘭が部屋に入ってくる。 「麗蘭は好きじゃが、稽古は嫌じゃ」 「まーた逃げられた……。お弓、お弓は?」  お弓は倖姫に片目をつむって合図をし、 「ここに」  倖姫を天井裏に残して、お弓は部屋に下りる。  なんだかんだと麗蘭を言いくるめて、見事部屋から追い返した。 ---- 「もぅね、すっごく令ちゃんがかっこいいの!」 「へぇ。これあげる」  祐巳は自分のラーメンから美味しそうなチャーシューを一枚つまんで由乃さんのラーメンに乗せて言った。 「なによこれ」 「お祝い」 「ありがと」  麺食堂でラーメンをすすっていた二人は、昨日見た夢の話で盛り上がっていた。  なんでも、江戸時代かそこらへんの時代背景で、令さまがやけにかっこいい異国の剣士さまだったらしい。 「私もなんか変わった夢見てたんだけど。覚えてないのよね」 「残念」 「私がテキパキしてたというか、なんというか」 「あ、それはないわ」 「ちょっと、由乃さん」 「はい」 「なにこれ」 「慰め」 「ありがと」  祐巳のチャーシューが帰ってきた。 ---- 「遥か先の未来でも、わらわはお弓と一緒がよいのう」 「……某もです」 「わらわは自立しているのかのう。父上や母上の栄光を受けずとも、立派に生きていけるかのう」 「おそらくは」 「……お弓」 「はい」 「伴天連から贈られたものじゃ。これをお弓にやろう」 「これは」 「るざりおとか言うやつでの。首から提げておくものじゃ」 「よろしいのですか」 「これが、わらわとお弓を繋ぐ絆じゃ」 「姫さま……」  月明かりの下、少しおてんばな姫と表情豊かな忍が、絆を深めた。 ---- 「……詳細を聞いた私が馬鹿だった」  令は天井を仰いだ。祥子は笑顔で話を続ける。 「もうね、胸がいっぱいでご飯も喉を通らないのよ♪ ああ、きっとあれは祐巳なんだわ! 前世かしら? ねぇ、令?」 「知らないよ、そうなんじゃない?」 「そうよねぇ、私と祐巳ったら、前世でも一緒だったなんて♪」 「……助けて、由乃ぉ……」  異国の剣士の生まれ変わりは、随分とヘタれた声を上げた。

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