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電波黒令(18禁)」(2007/12/31 (月) 22:21:31) の最新版変更点

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 ──それは、放課後のとある一室での出来事。 「私の神様がそう告げるのよ」  令の指先が、白色の表面を撫ぜる。  志摩子はその指の動きを目で追いながら、小さく口を開いた。 「聞こえないよ。もう一度」  今度は乱暴に、指先に力を込める。 「──あっ、令さま」 「なに?」 「そんな……乱暴に……」  志摩子の表情を見て、令は微笑んだ。 「志摩子は可愛いね」 「えっ」 「可愛いって言ったのよ」 「そんな──嘘です」  志摩子は身体を強張らせた。令が再び乱暴にしたのだ。 「──見て、志摩子。私が、映ってる」 「ここからでは……見えません」 「じゃあ、もっと近づけばいい」  令が強く引っ張ったので、志摩子は慌てて身体を前に出した。 「おっと」  ふわり。  令の手の中に白薔薇が。 「いい香り」 「令さま」 「なに」 「あの……床が」 「ん? ああ、床がびしょびしょだ」  足元は濡れていた。思った以上に流れ出たんだな、と令は思った。  砕け散ってしまった器は、もう元には戻らない。 「じゃあ、綺麗にしようか」  令は優しく、指先を動かす。  白。白。時折、黒。  指が動くたび、とても心地よい音が奏でられていく。  その時、部屋の入り口に立っていたのは、 「……由乃さん」 「そう。私の神様」  志摩子は慌てて立ち上がり、令は笑顔を浮かべたままだ。 「──令、ちゃん?」 「由乃もおいで。一緒に、さぁ」 「駄目、由乃さん、こないで」 「令ちゃん、また……」 「うん、やっちゃった」  悪びれもせず、令は微笑んで言った。  指をそっと伸ばす。白い、まるで大理石のようなそれを撫ぜていた指を。 「志摩子さん」 「……はい」 「ごめんね」 「いえ、いいのよ。令さまの曲、私も好きだし」 「でもたまにおかしくなっちゃうのよね」  由乃は歩み寄る。 「あっ、そんなに」 「いいのよ。花瓶、割れちゃったね」  床に散らばる花瓶のかけら。中に入っていた水は全て床に広がり、それは 令の足元にも届いていた。  中に入っていた白薔薇は、令が左手に持っていた。その右手はせわしなく鍵盤を叩いている。 「ちょっと令ちゃん、手伝ってよ」 「え?」 「え、じゃないわよ、全く。ねぇ志摩子さん、なんで花瓶割れちゃったの?」 「令さまが、急にピアノを動かしたの」 「なんでそんなことするのよ、令ちゃん」 「だって由乃、手入れが凄い丁寧で、私の顔が映るんだよ、ほら」 「手入れが丁寧でも、令ちゃんが乱暴にしたら意味ないでしょうが!」  由乃は一番低いオクターヴを強く押した。志摩子は身体を強張らせる。 「あ、ごめん……志摩子さん」 「折角、上手く弾けていたのに」 「いいから、令ちゃんも手伝う!」 「はーい」  ──これは、放課後の音楽室での、出来事。
 ──それは、放課後のとある一室での出来事。 「私の神様がそう告げるのよ」  令の指先が、白色の表面を撫ぜる。  志摩子はその指の動きを目で追いながら、小さく口を開いた。 「聞こえないよ。もう一度」  今度は乱暴に、指先に力を込める。 「──あっ、令さま」 「なに?」 「そんな……乱暴に……」  志摩子の表情を見て、令は微笑んだ。 「志摩子は可愛いね」 「えっ」 「可愛いって言ったのよ」 「そんな──嘘です」  志摩子は身体を強張らせた。令が再び乱暴にしたのだ。 「──見て、志摩子。私が、映ってる」 「ここからでは……見えません」 「じゃあ、もっと近づけばいい」  令が強く引っ張ったので、志摩子は慌てて身体を前に出した。 「おっと」  ふわり。  令の手の中に白薔薇が。 「いい香り」 「令さま」 「なに」 「あの……床が」 「ん? ああ、床がびしょびしょだ」  足元は濡れていた。思った以上に流れ出たんだな、と令は思った。  砕け散ってしまった器は、もう元には戻らない。 「じゃあ、綺麗にしようか」  令は優しく、指先を動かす。  白。白。時折、黒。  指が動くたび、とても心地よい音が奏でられていく。  その時、部屋の入り口に立っていたのは、 「……由乃さん」 「そう。私の神様」  志摩子は慌てて立ち上がり、令は笑顔を浮かべたままだ。 「──令、ちゃん?」 「由乃もおいで。一緒に、さぁ」 「駄目、由乃さん、こないで」 「令ちゃん、また……」 「うん、やっちゃった」  悪びれもせず、令は微笑んで言った。  指をそっと伸ばす。白い、まるで大理石のようなそれを撫ぜていた指を。 「志摩子さん」 「……はい」 「ごめんね」 「いえ、いいのよ。令さまの曲、私も好きだし」 「でもたまにおかしくなっちゃうのよね」  由乃は歩み寄る。 「あっ、そんなに」 「いいのよ。花瓶、割れちゃったね」  床に散らばる花瓶のかけら。中に入っていた水は全て床に広がり、それは 令の足元にも届いていた。  中に入っていた白薔薇は、令が左手に持っていた。その右手はせわしなく鍵盤を叩いている。 「ちょっと令ちゃん、手伝ってよ」 「え?」 「え、じゃないわよ、全く。ねぇ志摩子さん、なんで花瓶割れちゃったの?」 「令さまが、急にピアノを動かしたの」 「なんでそんなことするのよ、令ちゃん」 「だって由乃、手入れが凄い丁寧で、私の顔が映るんだよ、ほら」 「手入れが丁寧でも、令ちゃんが乱暴にしたら意味ないでしょうが!」  由乃は一番低いオクターヴを強く押した。志摩子は身体を強張らせる。 「あ、ごめん……志摩子さん」 「折角、上手く弾けていたのに」 「いいから、令ちゃんも手伝う!」 「はーい」  ──これは、放課後の音楽室での、出来事。

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