「細川可南子はかく語る錆付いてしまった黄昏の館」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

細川可南子はかく語る錆付いてしまった黄昏の館」(2007/12/31 (月) 22:21:16) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「 夕暮れ。世界は赤く染まっていき、やがて闇に包まれる。 そんな全てが曖昧な雰囲気の時間帯、可南子は薔薇の館に向かっていた。 誰にも出会わない。 誰の声も聞こえない。 初めての感覚に、可南子は少し戸惑っている。 直前までは体育館で部活の仲間と一緒にいたのだが、ほんの数分でこの雰囲気になるとは思っていなかった。 振り向いてみる。既にバスケ部のメンバーはいなかった。 「……部長ー?」 不安になった。この声を聞いて、部長が顔を覗かせてくれれば安心できるのだが。 しかし、誰の姿も見えない。 ぐびり、と喉が鳴った。可南子は廊下を引き返して、体育館に向かった。 一分もかからずに戻れたその場所は、無音の世界だった。 ……可南子は駆け出した。スカートにもセーラーカラーにも構っていられない。 恐怖。この二文字しか頭には無かった。 誰かに呼び止められて欲しかった。先生でもシスターでも誰でもいい。怒られても構わない。 誰かの存在を確認できれば、それでよかった。 薔薇の館が視認できる場所に躍り出た。息が切れているのは、疲れではなく恐怖だ。 館に入る人物が見えた。その姿は、支倉令に似ていた。 「令、令さま!」 声を上げて、再び走り出す。靴が上履きのままだったが、構わずに土を踏む。芝生を踏む。 扉が閉まる、そこを閉じられたら二度と開かない気がする、扉が、扉が──。 可南子の手が空を切る。扉は音を立てて閉じられた。 「令さま! 令さまぁっ!!」 すぐに扉を開けたが、薔薇の館の一階は、体育館と同じ空気だった。 耳が痛くなりそうな、無音。 自分の息の音がうるさい。心臓の音が耳に付く。 二階に上がる。 大きな扉は閉じられていたが、中から声は聞こえる。 たぶん、祐巳の声であろう。 なんと言っているかわからないけれど、きっと。 可南子は扉を開けた。そして、三度同じ空気を感じた。 床に膝を付き、天井を見上げ、涙を流した。 ──マリア様。もし私が異形の世界に迷い込んでいるのなら、どうかお助けください── ……という内容でしたの」 「……それがあなたの見た夢? 夢の中でも私を不幸にして楽しいの?」 「いや、私はそういうつもりでは」 「じゃあどういうつもりなのよ!!」  ──ああ、いつもの光景だ。  乃梨子は、ハリガネVSドリルを間近で見ながら、今夜のおかずを考えていた。  ──うん。今日も平和。
「 夕暮れ。世界は赤く染まっていき、やがて闇に包まれる。 そんな全てが曖昧な雰囲気の時間帯、可南子は薔薇の館に向かっていた。 誰にも出会わない。 誰の声も聞こえない。 初めての感覚に、可南子は少し戸惑っている。 直前までは体育館で部活の仲間と一緒にいたのだが、ほんの数分でこの雰囲気になるとは思っていなかった。 振り向いてみる。既にバスケ部のメンバーはいなかった。 「……部長ー?」 不安になった。この声を聞いて、部長が顔を覗かせてくれれば安心できるのだが。 しかし、誰の姿も見えない。 ぐびり、と喉が鳴った。可南子は廊下を引き返して、体育館に向かった。 一分もかからずに戻れたその場所は、無音の世界だった。 ……可南子は駆け出した。スカートにもセーラーカラーにも構っていられない。 恐怖。この二文字しか頭には無かった。 誰かに呼び止められて欲しかった。先生でもシスターでも誰でもいい。怒られても構わない。 誰かの存在を確認できれば、それでよかった。 薔薇の館が視認できる場所に躍り出た。息が切れているのは、疲れではなく恐怖だ。 館に入る人物が見えた。その姿は、支倉令に似ていた。 「令、令さま!」 声を上げて、再び走り出す。靴が上履きのままだったが、構わずに土を踏む。芝生を踏む。 扉が閉まる、そこを閉じられたら二度と開かない気がする、扉が、扉が──。 可南子の手が空を切る。扉は音を立てて閉じられた。 「令さま! 令さまぁっ!!」 すぐに扉を開けたが、薔薇の館の一階は、体育館と同じ空気だった。 耳が痛くなりそうな、無音。 自分の息の音がうるさい。心臓の音が耳に付く。 二階に上がる。 大きな扉は閉じられていたが、中から声は聞こえる。 たぶん、祐巳の声であろう。 なんと言っているかわからないけれど、きっと。 可南子は扉を開けた。そして、三度同じ空気を感じた。 床に膝を付き、天井を見上げ、涙を流した。 ──マリア様。もし私が異形の世界に迷い込んでいるのなら、どうかお助けください── ……という内容でしたの」 「……それがあなたの見た夢? 夢の中でも私を不幸にして楽しいの?」 「いや、私はそういうつもりでは」 「じゃあどういうつもりなのよ!!」  ──ああ、いつもの光景だ。  乃梨子は、ハリガネVSドリルを間近で見ながら、今夜のおかずを考えていた。  ──うん。今日も平和。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: