死屍累々としている戦場の真ん中。 ここは、姉川の地。四方を固めていた砦は全て落とされ、残るは中心の本陣のみ。 「正義の名において、貴女を削除します!」 「みんな死んでいく……これも、志摩子のせい……」 銀色と赤色を主体にした鎧を着て、大きな剣を振りかざしたのは二条乃梨子。 薙刀を抱きしめるようにして、うつむいているのは藤堂志摩子。 そして。 「……お姉さま……」 「ふん。知らないね。私に剣を向ける女なんて」 佐藤聖は黒いオーラを纏った剣を振りかざし、二人をにらみつけた。 「志摩子さん。貴女の姉は、志摩子さんをも殺そうとしてます」 「……お姉さま、乃梨子とお話をして……」 「──この、うつけがぁっ!!」 聖と乃梨子の剣が交差する。硬い音が鳴り、互いの剣をはじいた。 「……お姉さま……」 「めそめそ泣かないで! 志摩子さん!」 「……お姉さま……くすくす……うふふ、ふふふふふふふふふふふふふふ」 「くくっ……あはは……あはははは、ははははははははははははは」 「「是非もなし!!」」 聖は笑いながら、二人を──。 ──コントローラーの振動で、乃梨子は目を覚ました。 寝転がってゲームをしながら眠っていたようだ。 画面の中では、織田信長が浅井長政とお市を撃破した状態で、ポーズがかかっている。 「……おぉ、寝てた」 独り言。 「すごい、変な夢見た……」 夢の内容を思い出しつつ、画面を見る。 浅井長政とお市は撃破されている。プレイヤーが信長なのでそれは仕方ないのだが。 「……あの人に、勝てないんだろうな」 佐藤聖。織田信長。 浅井長政は、義理の兄を倒そうと決意した時、勝てぬ戦とわかっていたのかも知れない。 いろんな未来があるんだ。あの瞬間に分かれた未来の中に、信長と仲良くする浅井がいてもいいじゃないか。 乃梨子はそう思い、ゲームの電源を切った。 志摩子さんもお市も、争いは望んでいないと思うから。