ちょっとまじめな話しになるけど、IT業界の流れが大分動きつつあるような気がする。
ここでいうIT業界は、対企業のシステム開発をするようなSIベンダーの世界に限定した話し。

ちょっと前に、TISがインテックと提携したニュースが流れました。
元々TISって、M&Aをベースにグループ会社を統合して、規模を大きくしてきた会社。
今回の動きも、グループ規模を追求したもの。
(正確に言うと、今回はM&Aじゃなくて提携だけど)
例えば、弱い分野の補填とかといった二次的な効果を狙ったものじゃないんだよね。

実際、TISの社長は「インテックよりTISの方が技術力は高いので、まずはインテックにTISの技術力に追いついてもらうのが先決」と宣言してる。
さぞかしインテックの社員は腹が立っているだろうけどね。
もっと言い方があるだろうに。

まあ、いずれにせよ、規模のみを追求した動きなわけです。


が、それと対照的な動きをしたニュースが飛び込んできました。


NTTデータは22日、4月1日付で本社社員の約2割に相当する2010人を子会社に転籍、300人が3月末で早期退職すると発表した。転職と早期退職に伴い、一時金などの費用約370億円を2008年3月期連結決算に特別損失として計上する予定。同社の今期の業績は増収増益見通しだが、国内企業向けの情報システム受注に先行き不透明感が増している。転籍などによる人件費圧縮で財務体質を強化する。子会社転籍や早期退職に伴い、人件費を09年3月期に90億円、10年3月期に80億円圧縮できるとみている。 (19:03)

理由がすごいよね。
「不透明」ってだけで、大量リストラ。
2割だよ、2割。

でも、このニュースが出る直前に、こんなインタビュー記事が出てました。


低い利益率、グローバル企業の不在、就職人気の低迷など情報サービス産業は多くの課題を抱えている。情報サービスで最大手であるNTTデータ取締役相談役で、情報サービス産業協会(JISA)の会長を務める浜口友一氏に課題の本質と今後業界が目指すべき方向性について聞いた。

――日本の情報サービス産業は世界的に見ると特異な状態で「ガラパゴス諸島」のように独自の進化、もしくは退化を遂げているという指摘があるようだ。問題はどこにあるのか。

 1つはスクラッチと言われるような企業個別に一から作るシステムが多いのが問題だろう。お客さんの話をよく聞いて業務に合わせたシステムを企業ごとに作ってしまう。しかしそれは世界のやり方ではない。システムはそもそもBPR(Business Process Reengineering、業務改革)をしてからでないと、導入しても投資した効果のリターンが十分に得られない。それぞれの業務にシステムを合わせるようなやり方ではいけない。ただ、もちろん、すべての産業が個別のシステム作りにこだわっているばかりではない。例えば、64ある地方銀行のうち75%は、独自ではなく他行と同じシステムを利用する共同センター方式を採用している。30年前は個別に作っていたが、そういう方向に持って行くことができないわけではないのだ。

 2つ目はアウトソーシングが進んでいないことだろう。米国に競馬場のシステムを見に行ったことがある。競馬は毎日やるものではないから、システムの運用担当者が、開催される競馬場に移動しては運用をしていた。これをそれぞれの競馬場で運用者を雇っていたら、効率が悪い。アウトソーシングできるところは、したほうが良いのだ。

 また、重要なのは契約の問題だろう。システムにかける予算が決まってからその内容を決めるという顧客企業が多い。何のためにシステムを導入するのだろうか。その反対でなければいけない。

――では、どう取り組んでいくべきか。

 グローバルで通用する方法を志向していくしかないだろう。スクラッチで作るのではなく、全体でコストパフォーマンスのよいものを提案していく。そうしないとグローバルで競争している日本企業の足を引っ張ることになる。実際の動きとして、日本企業が海外の企業をM&Aして、その買収した企業のシステムを採用するということが起きている。例えば、米国企業を買収してそのシステムを利用するとなったら、これまではなかなか日本市場に入れていないインド企業も、米国企業のシステムでは実績があるから攻め込みやすくなってくる。インドや中国がITサービスで成長していると言っても、コスト面ではそのうち上昇するので人件費の差による勝負はないだろう。グローバルでのサポート力や技術力も重要だ。


このインタビューは、「おお、その通りだなぁ」と思って切り抜いてたんだけど、その直後にNTTデータの大量リストラ。

要は、いちいち人手がかかるスクラッチなんか辞めて、SAASとかパッケージとかをガバって入れて、運用はアウトソーシング。グローバルでのサポート力や技術力で勝負していかないと、その内、やってけなくなるって言ってる。
そういうやり方が世界では当たり前で、日本のシステム導入は前時代的だってこと。
確かに、ニュースで取り上げられてる流れを見れば、納得感がすごいある。
そのためのインフラ支援も、仮想化の方向で統一されてる。
2日に一度は、仮想化の新技術のニュースが取りざたされてる。

この考えを必要となる社員の数で考えると、

「これまでやってきた仕事の仕方でかかる人員の数ほど、上のやり方をしたときの人員の数はいらない。余計な人員は囲えばリスクを増大するだけ。」

ってことになる。

じゃあ、TISの規模拡大路線ってどうなの?って思うわけです。

規模が大きいと、大きな仕事を取ってきたときの人員集めや、トラブルがあったときの人海戦術などで非常に有利になる。
実際、自分がPMやってても、パートナー会社に求めるのは、技術力・価格もあるけど、規模って面もやっぱり大きい。
何かあったときに、小さい規模の会社だとギブアップされちゃうからね。
こうなっちゃうと、どうしようもない。
30人月程度の案件なら、パートナー会社と協力して何とでもなる。
でも100人月を越えてくると、パートナー会社云々ではなく、自社としてのリソース供給のバックアップがないと、正直、PMとしても手が出せなくなることがある。

これはお客さんの立場からも言えて、ある程度の規模を持つって事は非常に安心感を与える。逆に規模がないと、ビジネスチャンスを逃がしちゃうことになる。
ということを考えて、TISは規模を追求してきたわけです。

だけど、NTTデータの考えからすると、極端な言い方をすれば、TISの仕事の取り方が前時代的でグローバルでなく、日本固有の文化だということになる。
だから人が必要になるんだってこと。

もちろん、NTTデータは国内最大規模のSI事業者で、2位以下を猛烈に引き離してるマンモス企業なので、減らしたところで、マンモスはマンモス。
以前、大規模です。


と、つらつらと整理することもなく羅列したけど、その企業にとっての適切な規模がどのくらいかは、それぞれで別なので、どの規模がいいかというのは非常に難しい。

しかし、少なくとも

「前時代的な仕事のやり方を前提とした企業規模の追求」

はNGだと思う。

「グローバルスタンダードな仕事のやり方を意識した企業規模の適正化を進める」

必要がある。

NTTデータのリストラは、完全に後者だと思います。
やっぱり、なんだかんだといって、さすがなんだなぁと思う。

TISの大規模拡張は、前者か、後者か?
仕事のやり方をグローバル化することも織り込んでの人員増加(適正化)なのか?
それとも、前時代的な仕事のやり方を前提としているので、規模を追求せざるをえないのか?
っていうような話しをしたいんだけど、辞めてしまう俺がその手の話しを同僚とすると、良からぬことになるのでできないんだよね。

だから、ここに書いてみました。


まあ、いずれにせよ、変革期を迎えてるのは確かで、今までの常識は通用しなくなるかもね。


にしても、2割のリストラって。。。
怖い、怖い。。。




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最終更新:2008年02月26日 12:18