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<2次会での素敵な出会い>

盛り上がった2次会は終盤を迎えていた。
私は前田の高校の友人である『河上』と飲んでいた。
ウイスキーを一気したため、かなり視界がぶれる。

私は肩を叩かれて、振り向いた。なぜだかわからないが、渡邉が
俺の手を引っ張って、前の方に進んでいく。そこではもっちゃん
が、ブーケを持って立っていた。ふふふ。もっちゃんかわいいな
ぁ。

よく見ると、ブーケの下に数十本の白い糸束があった。その糸束
の一本を左手の小指に結び付けている男がいた。山田だ。何をし
ているのだろうか・・・。渡邉が私にも同じことを勧めている。
私は状況がなかなか把握できなかった。

小指に糸を結びつけると、もっちゃんが
「堅結びしないと駄目よ!」
と優しい微笑みを向ける。

気が付くと、目の前に多くの美しい女性が集まってきているでは
ないか!おおお。こんなことがあっていいのだろうか。私はまぶ
しさのあまり正視することができなかった。

「ブーケ以外にも売れ残ったクリスの男性とつながっております
ので、見事に糸がつながった場合は、是非電話番号を交換してく
ださい」

渡邉のアナウンスが響く。

あーそういえば、さっきそんなアイデアを出していたっけ・・・
。俺も参加することになってたんだ・・・。

糸束がスルッと解け、霧が晴れた。私の目の前に美しい女性が現
れた。山田がうれしそうにこっちを見ている。素敵な出会いがあ
ったようだ。周りの人間が今できた2つのカップルを称えている
。神の思し召しだ。

ブーケを受け取った人。私と山田につながった人。それぞれが感
想を述べる。

「これからふたりで、つらい壁を乗り越えていきます!!!」

私は大きく言い放った。(前田ありがとう!こんな形で僕にも春
が訪れるとは。僕たち頑張っていくよ!)そんな思いで胸がいっ
ぱいになった。山田はとなりで泣いている。苦節30年。今宵、
二人に春が訪れたのだ。こんな演出をするなんて、神様も意地悪
だ。あはは。

 ・・・・・

「どうもありがとうございました」

ハッとして、落としていた目線を彼女に向けた。

私の小指につながった糸を丁寧に両手で返してくれた。白くて優
しい手が私の手からするりと抜けた。私は上ずった声で返答した

「いえいえこちらこそ」

えええっ!?!そ、そんな。あれぇー?そーいうこと?
もしかして、前田が馬で、俺は「当て馬」?

 ・・・・・

(ふっ。俺としたことが本気になっちまったぜ。どうせ俺は哀れ
なピエロさ。)そう思い、気を取り直そうとした。

しかし、いくら気を落ち着けようとしても、濡れた心まではすぐ
に乾かせない。私は動揺して、彼女が返してくれた糸先を手から
落としてしまった。

慌てて拾おうとしたとき、寸前で拾ってくれる人がいた。手が少
し触れ合った。

「あっ!ご、ごめん」
「ありがとう」

山田だった。小指に糸を結びつけた山田が、俺の糸先を拾ってい
た。山田の小指につながった糸は、ゆらゆらと揺らめき、床に垂
れ下がっていた。哀れにも、その先に相手はいなかった。沈黙が
二人の空間を支配した。哀れな光景だった。

こんなカップルを誕生させるとは神様も捨てたもんじゃないな。
ハネムーンはコスタリカでいいかな。確か、あそこの海で山田が
溺れたっけか。

 ・・・・・・

その後、夜の帳に消えていく、ガタイのいい二人の姿があった。

(前田!僕たちこれからもふたりで頑張っていくよ!)