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ハワイのピジョンは元気でした


【プロローグ】
何年前かは忘れた。
そんなことは、さして問題じゃない。
あの夏たしかに、あいつとオレは一つだったのだから。
今オレは、こぼれ落ちそうな記憶をすくい集め、この手紙を書いている。
窓からさしこむ光は、あのときの輝きに似て、目の前の景色をぼやけさせる。
そんなセンチメンタルなリフレインを感じながら、回りすぎた時計を巻き戻そう・・・。

【前夜】
出発前夜、荷物をパッキングしようとしていた。
そんなとき、ふと気付く。
「あれ?行き先は・・・?」
今回の旅行の全てを、彼に託していた。
そんなオレに、ちょっとした憤りを感じていた彼は、行き先を教えてくれようとしなかった。
「どこに行くんだよ?」
と言っても、
「ないしょ」
としか答えない。
でも、今日は出発前夜。このままじゃパッキングができない。
仕方なく彼の携帯に電話する。
トゥルルル、トゥルルル・・・
じらすかのような数度のコールのあと、彼が出た。
「なに?」
「もしもし・・・?あのさ、せめて暑いか寒いかだけ教えてくれない?」
「うーーーーん、暑い・・・・プチっ、トゥーーー、トゥーーー、トゥーーー」
き・・・切りやがった。
ど・・・どこなんだ・・・・っていうか、荷物は・・・・・。

【空港】
「おはよう」
今までの不機嫌さが消え、軽く高揚した彼の顔を見ていると、今までの不安が消えていく。
「で、行き先は?」
「ハワイ」
「・・・・・・・え?南国?」
「そう、ハワイ」
はっきりとしておこう。
彼とオレとは単なる男友達で2人ともノンケだ。
俗に言う野郎2人というやつだ。
まして、オレはハワイが似合わない人達のエースストライカーのようなものだ。
そんな二人がハワイ・・・・・・。
っていうか、水着がない。
ハワイ行きの便に乗る乗客の中で、水着をもっていないのはオレだけだろう。
っていうか、念のためフリースを持ってきたのはオレだけだろう・・・。

【初夜】
日中、アラモワナショッピングセンターで水着を買い、散々常夏を満喫した。
水深1メートルのスキューバや、発情期を迎えた馬での散歩等、ハワイの
隅から隅だけ楽しみまくった。
夜、部屋に戻ってコロナビールを飲みつづける。
つまみはスナックとトマトソース。
そろそろ寝ようとベッドに向かう。
すると、背後から怒声が・・・。
「おいっ!!!!」
事情もわからず振り返った私の目に、酒のためか怒りのためか、目を真っ赤にさせた渡辺が仁王立ちしている。
「ちゃんとトマトソースの便の蓋を閉めろよっ!」
なっ!なんて細かいやつだ。
わざわざ非日常の世界に来て、そんなことはどうでもいいだろうに。
と思うも、結構おいしいトマトソースだったので素直に従う。
「ハイハイ、しまいますよ。」
「なんだっ、その態度はっ!!
 それにスナック菓子も湿っけないようにしとけよっ!」
がっ!
そのスナックを明日食べる可能性はゼロだ。
そんなどうでもいいようなことのために、ハワイで怒鳴られるとは。
軽く頭に来た私は復讐を誓うのであった。

【最終日】
私たちの部屋にはちょっとしたでっぱりがある。
頑張ればベランダと呼んでもいいだろう。
が、バルコニーとは言いがたい。
そこに毎日のように鳩が群がっていた。
ポップコーンで餌付けをしていたからだ。
最終日の朝、復讐を実行に移す。
その朝も、ベランダに鳩がやってきている。
そこに通じる窓ガラスの、部屋側へポップコーンをまく。
ベランダの鳩達は大騒ぎで窓ガラスを叩いている。
そこから転々とポップコーンを置いていく。
ベッドで熟睡している渡邊の口元までポップコーンを置いた。
そして、一気に窓をあける。
ワサ、ワサ、ワサッ!
数十羽の鳩が部屋に舞い込む。圧巻だ。
コンマ数秒でやりすぎたことに気付くも、時すでに遅し。
その大群が、そのまま彼の顔面に殺到する。
バイオハザードだっ!と思うも、本気で死んでしまうんじゃなかろうかと
心配になった私は、懸命に救助に向かう。
鳩を追い立てようと近づくと、数匹が彼の唇をついばんでいた。
「ドゥワーーーーっ!」
彼の叫びが聞こえる。
私はこみあげる笑いとやりすぎたという後悔の念に捕らわれたが、
コンマ数秒で笑いが勝利を得、笑い転げているだけであった。
無事、復讐を終えた私は、ベッドから転げ落ちた渡邊に
「窓を開けたら鳩が襲ってきたんだ。大丈夫か、災難だったな。」
と声をかける。
一応、鳩を追い払うフリをしていた私に、渡邊は感謝の念で一杯だ。
「おお、ありがとう。さすがハワイの鳩は元気だな。暑いからかな?」
そうじゃないよ、渡邊くん。

【帰国】
っていうか、長すぎるのでカット。