コミックス

日本


蒼き鋼のアルペジオ

  • 著者:Ark Performance 出版:少年画報社
  • 時は気象変動により海面が上昇し、大幅に陸の減少してしまった近未来。人類は、このわずかな陸地に閉じ込められていた。謎の敵性存在、"霧の艦隊”によって。人類のあらゆる反撃を無効化し、17年前の大戦で圧倒的な火力を見せ付けた完全自動兵器群、霧の艦隊。だが、人類もただ閉じ込められているだけではなかった。霧の艦隊を離反した潜水艦、イ401に乗り込んだ千早群像とその仲間たち、そして長い間牙を研いできた人類の反抗が、今、始まる……!!
  • 無敵のバリアー強制波動装甲やらそれをぶち抜ける超兵器侵蝕魚雷やら艦の化身の美少女メンタルモデルやらあらゆる物質に擬態するナノマテリアルやら常に重力崩壊を起こしている謎の物質タナトニウムやら人類の超高性能潜水艦白鯨やら、これでもか!!というほどロマン溢れるワード満載の痛快海洋娯楽SF漫画である。
  • 多くの伏線を散りばめながらもテンポよく進む作品なので、戦艦少女たちを愛でながら楽しもう。

混淆世界ボルドー

  • 著者:市川博文
  • 平凡な高校生、木崎和馬は、謎めいた美女ゴルディロック少尉によって地球の隠された第二衛星ボルドーへと飛ばされた。そこは剣と超科学、魔法と騎士道が共存する異世界だった!!100年前のボルドーへと飛ばされ、ボルドーを統べる王となっていた父の後を継ぎ、最強の竜神兵ブランゼラーの騎士となった和馬は、敵国との戦争を端緒として様々な戦いに巻き込まれていく。一夜にして文字通り星の王子様となった和馬の運命はいかに!!
  • かつて、サイバーコミックスに連載されていた幻にして未完の作品。入手は極めて困難だが、手に入れる価値はあるだろう。
  • 地球のあらゆる時代、あらゆる場所から飛ばされてきた人々によって形作られた文化を持つボルドーはまさに混淆世界の名に相応しい。40年代の米兵と戦国時代の侍が同じ軍で肩を並べて戦い、原始生活を営む傭兵部族の長ルーガンが先祖代々伝わる伝説の武器と言いながらサブマシンガンを持ち出したかと思えば(魔力遮断物質“鉄”製の銃弾を連射できるSMGは最強の歩兵用対悪魔兵器なのだ!!)、魔法が10億メガワットのX線レーザーすらも無力化し、そして悪魔が擬態した軌道エレベーターの下で空想具現化装置ブラグマタイザーが咆哮を上げる!
  • 主役メカブランゼラーを初めとした、「一市民としての巨大ロボット」や、「あらゆる時代から来たフォーリナーだけで形成された社会」など様々な場面がカオスフレアをする際に非常に参考になるだろう。何せ爵位持ちの巨大ロボさえいるのだ。
  • そして何と言っても見物なのは戦闘シーン。魔法遮断物質である鉄装甲が使い魔を蒸発させたかと思えば、「確かに魔法で貴様自身をアヒルに変えることはできん。だがそれだけのことだ!!」と浮遊させた巨岩をぶつけるブランゼラー。かと思えばその足元でロボット歩兵がフレイルで叩き潰され、砲撃を転移魔法で距離を詰めてやり過ごすといった戦いが繰り広げられる。防御属性の演出としても実に優れた戦いの数々は緻密で、感動的でさえある。
  • タイプ・ムーン作品群の「空想具現化」や「固有時制御」といった技の元ネタでもある本作品。一度は読んでおいて損はないだろう。というかあえて言う。読め!!
  • …とは云うものの絶版で読みたくても…状態だったが、2010年末に復刊ドットコムでのリクエストが適い遂に復刊が実現した模様。この機会に是非。

プロレス・スターウォーズ

  • 原案:原康史 漫画:みのもけんじ
  • 198X年――日本プロレス界に危機が迫っていた。空前の動員力を誇る日本のプロレス市場を牛耳らんと、アメリカのプロレス団体が手を組み「アメリカン・プロレス」を結成。綺羅星の如きスーパースター達による興行侵攻で、日本のプロレスファンを虜にせんとしたのだ。この非常事態に際し、日本プロレスの二大巨頭であるアントニオ猪木とジャイアント馬場が動く。日米の誇るプロレスラー達を結集させての対抗戦をブチ上げ、アメリカン・プロレスに挑戦状を叩き付けたのだ!
    今ここに、最強にして最高のプロレス・スターウォーズの幕が開く!!
  • シンプルで分かり易い時代――嘗てアメリカンコミック界にそう呼ばれた様に、日本のプロレス界にもそんな時代が存在した。パワーも体格も遥かに勝る外国人レスラーを、日本人レスラーが迎え討つ。力道山が道を拓き、その弟子である馬場と猪木が磐石に築いた日本プロレスの黄金期。本作は、その末期に描かれたプロレス架空戦記である。
  • 共通の敵に対し、主義の違いや対立を越えて共闘するプロレスラー達(それは団体の利害を超えて手を組むアメリカン・プロレス側も同じだ!)が繰り広げる戦いは、漫画ならではの演出も加わって実にカオスフレア的である。レスラー三人相手に一瞬で関節技を決める藤原喜明、笛一つで60体ものマシーン軍団を操るKYワカマツ、炎を纏って攻撃するバンバン・ビガロ、会場全体を飛び回り4体に分身するミッシング・リンク、最新鋭攻撃ヘリ・ブルーサンダーで会場に乗り付けるザ・ロード・ウォリアーズ、猪木の延髄切りを受け止め片手で振り回すブロディ、そのブロディに倒されながらもアストラル状態でナックルを叩き込む猪木…… クライムファイターに留まらず、アスリートやフィストウォーリアーでプロレスラーを演じるなら、是非参考にして頂きたい描写が満載だ。
  • 本作が世に出てから少し後、現実の日本プロレスは緩やかに、やがて急速に黄昏期に向かう。従来のプロレススタイルを否定したUWFの台頭に端を発する団体細分化が招いたプロレスファンの拡散、K-1/PRIDE等の総合格闘技ブームに対する焦りが生んだ対総格路線の迷走と失敗、TV視聴率低下によるゴールデンタイムからの撤退、中継時間短縮、そして終了…… アメリカンコミックと同様に、日本のプロレス界もまた複雑・多様化と云う名の斜陽の道を辿り―――それは今も続いている。
  • 否定され、迫害され、管理され、時に迷い、それでも、己の正義を信じて戦う―――クライムファイターとプロレスラーの姿は、その点において共に正しくヒーローと呼べるのではないだろうか?
  • 本作の再版時に、故・三沢光晴氏はこのようなメッセージを寄せている。
    「プロレスだけが伝える事ができる物を探して、レスラーはリングに上がります。
    リングで広がる世界は、皆さんの勇気になると信じています」

ゼブラーマン

  • 「先生。あたし、あなたみたいな大人になりたくない」
  • 平凡な小学校教師、市川新市(42)。彼の暮らす八千代町では女子高生切り裂き殺人、動物の惨殺、主婦の焼死殺人など、奇妙な怪事件が頻発していた。また、新市の担当クラスは学級崩壊し、女子高生の娘は非行に走り、小学生の息子は心を閉ざし、妻は若い男との不倫に耽る。それでも何もしない新市にとって唯一の趣味が、32年前にたった七回で打ち切られた特撮ヒーロー『ゼブラーマン』のコスプレだった。ある晩、ゼブラーマンのコスプレをして街に出た新市は、そこで女子高生を襲う蟹の怪人――かつてゼブラマンに登場した「カニジャック」に遭遇する! 辛くもその場を切り抜けて女子高生を助けた後、ヒーローマニアの登校拒否少年、浅野に説得された新市は、満月の晩『ゼブラーマン』のシナリオをなぞるかのように再びカニジャックと対決する。そこで今にも殺されようとしている娘の姿を目にした新市は、ついにゼブラーマンとして立ち上がった! だが、街では次々に『ゼブラーマン』のシナリオ通りの事件が起こり、その背後にはかつて街に墜落した発光体と、『銀河教会』なる存在が浮かび上がり……
  • 何の特殊能力も持たないのに「白黒つける」《コスチュームヒーロー》ゼブラーマンと、その姿に憧れながら「白黒つけない」灰色の大人になってしまった新市の姿、そして様々な苦しみから「怪人」と成り果てた人々の対決を通し、「君の人生はそれで良いのか?」というテーマを貫き通した、近年の日本ヒーロー漫画における大傑作。映画の『ゼブラーマン』が「夢はきっと叶う」という事をテーマに、ヒーローと宇宙人との対決を描いたエンタメ作品であるのに対し、根幹設定を同じにしつつも「苦しくても悲しくても自分の手でしか夢は叶わない」というテーマに添い「心に闇を抱えた人間との対決」を見事に描ききった。
  • 日本の何処にでもある平凡な街に起きる怪事件というモチーフは美酒町のイメージソースにぴったり。また、心に闇を抱えて「怪人」となった彼らは、様々な装備で武装した平凡な人間とはいえ、その行動様式はまさにダスクフレアそのものである。「娘が非行に走るのを恐れて」援助交際をする女子高生を殺す、「かつて不倫をした母親に見捨てられたから」浮気をする妻たちを標的とする、「世界を守りたいから」自然を破壊する大人を狙う、など……ダスクフレアにも葛藤があり、怒りや憎しみがあり、戦っているのだ。
  • そして、そう言った怪人達に対して、ゼブラーマンはこう告げる。「間違えるのは、寂しかった人だから」と。ダスクフレアは倒すべき存在であると同時に、救いを求めている人々でもあるのだ。そして、いったい誰が怪人=ダスクフレアを作ってしまったのか…… 白黒つけず、全てをなあなあで済ませ、何事も自分の好きなように生きてきた、平凡で慎ましい一般市民達こそが、世界を灰色に変えてしまったのではないか?
  • そう言った様々な問題を投げかけつつも、ゼブラーマンが如何にして「白黒つける」のか。前述の通り、美酒町を舞台にしたシナリオソースとしても最適なので、ぜひとも一度読んで頂きたい。

マップス

  • 現代日本の何処にでもいるような少年、十鬼島ゲン。しかし彼は幼馴染の星見と共に女宇宙海賊リプミラによって誘拐されてしまった。ゲンこそは、かつて二万年以上前に宇宙を旅した"さまよえる星人"の子孫であり、その背中に伝説の"風まく光"へ至る地図を刻まれたマップマンなのであった。謎の秘密結社スペースパトロールのニュウ・エイプ、超重力惑星の王子ツキメ、リプミラの妹であるシアン、リプリムらと共に宇宙を旅するゲンは、やがて銀河を影から支配する超越種"伝承族"に対し、伝説の勇者"ダイナック"として戦いを挑む事に……
  • 長谷川祐一氏の初期作品にして最高傑作ともいえる、痛快SF漫画である。銀河どころか宇宙全体にまで及ぶ壮大なスケールの物語を、全17巻+外伝2巻を経て風呂敷を畳んでのけた手腕は凄まじい。キャンペーンかくあるべしと言ったところか。
  • 様々な種族、文化、異星人達が、戦争や民族問題といった軋轢を乗り越え、強大な敵へと立ち向かっていく姿は実にカオスフレア的と言えるが、何よりも素晴らしいのは主人公ゲンの行動であろう。本質的にフォーリナーである彼が、生まれて初めて見る異世界、異種族たちに対し、自分の認識と判断でもって接し、「正しいと思う事」を貫こうと努力する姿は、フォーリナーの参考にはもってこいだ。

ドラゴンクエストモンスターズ+

  • 著者:吉崎観音 出版:エニックス
  • 勇者に憧れている平凡な少年クリオ。彼はある日、わたぼうという名の精霊に導かれ、大きな樹の上にあるタイジュの国を訪れる。そこはモンスターと人間が共に暮らし、モンスターと一緒に戦うモンスターマスターのいる不思議な世界であった。しかし、かつて星降りの夜の大会で優勝したマスター、テリーが行方不明となって以来、タイジュは枯れ始めていた。クリオはタイジュを救う為に、モンスターマスターとなり、テリーを探して旅に出る。
    • 突如として現れた竜王を追って、スライムの「スラお」と旅の扉に飛び込んだクリオは、夜に閉ざされた異世界へと辿り着く。其処は人とモンスターが争い、殺しあっている争いの世界。そして、ドラゴンとたった一人で戦う最強の剣士――「勇者」と出会った。「勇者」と共に竜王の城を目指すクリオは、その戦いの果てに大きく成長しながらも、テリーが邪悪なモンスターを作り出す「邪配合」に手を染めた事を知る……
    • マスターとしての経験を積み重ねたクリオは、今日も今日とて旅の扉へと向かう。今度の冒険の舞台は、吹雪に閉ざされた極寒の地。ザラキによって仲間を失ったクリオだったが、力のみで魔物と互角に戦う青年に助けられ、「勇者」に何処か似た面影を持つ彼と共に、双子の塔を目指す。其処でクリオは、圧倒的な魔力を持つが故に人々から疎まれた、孤独なモンスターマスターの少女と出会う。 一方、かつて自身が葬ったモンスター、バズスと再び邂逅した青年は、自分が「破壊神を破壊した怪物」として人々から恐れられ、拒まれた事実を突きつけられる……
  • 現在『ケロロ軍曹』で大ヒット中の吉崎観音が描く、ドラゴンクエストモンスターズの外伝的作品。で、ありながら、その出来栄えは原作を凌ぐ程。そもそもからして歴代ドラクエモンスターが一緒に戦うという原作ゲーム自体がクロスオーバーなのだが、「勇者に憧れる少年」クリオを主役に据える事で、等身大の目線で、我々がわくわくしたドラゴンクエストの世界を体感する事が出来る。また知っていればニヤリとできる小ネタも満載であり、特に第二部とでも言うべき極寒の地でのクライマックスは燃え滾る事間違いなし。惜しむらくは、どうした訳か連載が打ち切りになってしまった事だが……
  • 切り札でもなく、装着者でもない――「勇者」ではないクリオ。本質的にフォーリナーである彼が、協力者/デーモンロードとして戦っていく姿は、実にカオスフレア的だと言える。ロールプレイの参考としても是非一度読んで頂きたい。

ジョジョの奇妙な冒険

  • 著者:荒木比呂彦 出版:集英社
  • 第一部:ファントムブラッド
    • 19世紀イギリス。立派な紳士となる事を志すジョナサン・ジョースターと、総てを押し退けてでも頂点を目指すディオ・ブランドーが運命的な出会いを果たした。ジョースター家の養子となったディオは、やがて『石仮面』と呼ばれる遺物の秘密に気がついていく。そう、それは人間を吸血鬼へと変える恐るべき能力を持っていたのだ。「俺は人間をやめるぞ、ジョジョーッ!!」 吸血鬼と化したディオを倒すべく、謎の紳士ツェペリから太陽の力を生み出す『波紋法』を習得したジョナサンは、親友イエローワゴンと共にディオに立ち向かう!
  • 第二部:戦闘潮流
    • ディオとの戦いから半世紀。ジョナサンの孫ジョセフは、石仮面を作り出した『柱の男たち』の存在を知る。ツェペリの孫シーザーと共に波紋法を学んだジョセフは、ナチス士官シュトロハイムらと共に赤石を守る為に奔走する。『柱の男たち』が赤石を得て究極生物となれば、人類に勝ち目はない。「次にお前は『これも計算の内かジョジョ』と言う!」 サンタナ、エシディシ、ワムウ、カーズと言った恐るべき強敵を前にしてジョセフの策略が冴え渡る!
  • 第三部:スターダスト・クルセイダーズ
    • 百年の時を経て遂にディオが帝王DIOとして蘇った。時を同じくして『スタンド能力』に目覚めた空条承太郎は、祖父ジョセフ、炎の魔術師アブドゥルと共にDIOを倒すべく、エジプトを目指して旅立つ。花京院、ポルナレフ、イギーと仲間を増やしていく彼らの前に、次々と立ちはだかるスタンド使いたち。「裁くのは俺のスタンドだ……!」 未だ謎を秘めたDIOのスタンドTHE・ワールドに、果たして承太郎たちは勝てるのか!
  • 第四部:ダイヤモンドは砕けない
    • M県杜王町に暮らす東方仗助は、ジョセフの隠し子であった。ジョースターの血統からかスタンド能力に覚醒した彼の周囲に、その力に惹かれるかのように次々とスタンド使い達が現れる。そして暗躍を続ける謎の殺人鬼、吉良吉影。「おれが、この町とおふくろを守りますよ。この人の代わりに……どんなことが起ころうと…」 故郷を守る為、広瀬康一、虹村億泰、漫画家の岸辺露伴といった仲間達と共に仗助は立ち上がった!
  • 第五部:黄金の風
    • イタリア、ベネツィア。DIOの息子という呪われた出生を持つジョルノ・ジョバーナは、人を信じるという大切な事を、両親や友人ではなく、ある一人の男から教わった。普通の子供がサッカー選手に憧れるのと同じように、やがて成長したジョルノは彼と同じ――ギャングスターとなる事を志す。「このジョルノ・ジョバーナには夢がある!」 麻薬に手を出したギャング組織パッショーネを倒そうと決意し、ボスの娘トリッシュを守るジョルノと同志ブチャラティの前に、暗殺チーム、直属親衛隊と言った面々が襲い掛かる!
  • 第六部:ストーン・オーシャン
    • 2011年アメリカ。承太郎の娘ジョリーンは、無実の罪を着せられてG.D.st刑務所へと収容されてしまう。しかしそれはDIOの仇討ちとして承太郎を狙う、プッチ神父の策略であった。記憶とスタンド能力とを奪われて仮死状態になった父を救うべく、ジョリーンは仲間となった囚人達と共に戦いを開始する。「素数を数えるんだ。素数は孤独な数字……私に勇気を与えてくれる!」 DIOから与えられ、承太郎に奪われた『天国に行く方法』を取り戻すべく、時を加速させるプッチ神父。果たしてジョリーンはどう戦うのか!
  • 第七部:スティール・ボール・ラン
    • 19世紀末のアメリカ。下半身不随となった競馬騎手ジョニィ・ジョースターは、鉄球を操る不可思議な男ジャイロ・ツェペリと共に大陸横断レースへと参加する。しかしその背後には、所有者にスタンド能力を発現させる『遺体』と、大統領の陰謀が存在していた。大統領から放たれた刺客と戦いながら走り続ける二人、そして社会に復讐する為には手段を選ばない男ディエゴ・ブランドーが襲い掛かる!
  • 1987年から20年以上にわたって連載が続いている長寿漫画。この手の作品にありがちなパワーインフレが一切起こっておらず、逆転に次ぐ逆転という凄まじい戦術、そして特徴的な言い回しで人気を博した。そのバトルや舞台、次々に現れる敵役などはシナリオのネタとしても十分に魅力的だが、何をおいてもスタンド能力は顕現者の参考にならないはずがない!
  • とはいえ、この紹介を見てもわかる通り、非常にアクの強い作品でもある為、ファンも多いが嫌いな人も多い。ネタとして使用する際は、全員が楽しめるように考慮する必要がある。

ヘルマドンナ

  • 著者:原口清志 出版:講談社
  • 現代の闇に潜み、様々な怪異を巻き起こす怪物たちを狩り歩く謎の女、魔物(デアボリカ)ハンター・古杣夕湖。彼女はいったい何者で、何のために己の命を賭けて戦うのか? そんな読者の疑問をよそに、彼女の前には次々と怪事件が、そして新たな化物が姿を現す。ゴーレム、ガーゴイル、人狼、反魂人形、人蟲……ホラーやオカルトを描く腕前に関しては間違いなくひとかどの物を持つ作者が『自身の好きなテーマ』に拘って作り上げた作品。
    • 当初は古杣夕湖vs魔物の飽くなき戦いが繰り広げられているだけだったが、途中から魔物を影で操る謎の美女『ヤルダバオト』が登場して話は転がり出す。実はヤルダバオトはこの世界を築いた偉大なる創造主・デミウルゴスに嫉妬してその創造の力を真似ようとした『似非造物主』であり、古杣夕湖はその手から世界を守護する使命を帯びた大地母神ソフィアの娘だった。ヤルダバオトが自らの力を裂いて生み出した魔物を次々と狩ることで、夕湖はかつてヤルダバオトの姦計により失った守護者の力を取り戻し、ヤルダバオトに対抗する高みへ上り詰める事が出来るのだ。
  • カオスフレアのイメージソースであるグノーシス神話の要素を内包しつつ、多彩な怪物との丁々発止にスポットを置いた退魔モノの佳作。特に初期の、完全に1話完結型であった頃の「物語を魅せるセンス」は素晴らしい。戦う強い女キャラの参考に。

ムダヅモなき改革

  • 著者:大和田秀樹 出版:竹書房
  • この作品はフィクションです。実在の人物とはあまり関係ありません。……あまり!?
    • 注:本当に書いてあります。
  • という訳で実在の人物達がひたすら麻雀をやるお話。誰が出てるかはあまりにもやばすぎて言えません。テポドン飛んだりするしな! 麻○タ○ーが狙撃して来た相手を逆に狙撃し返したりするしな! パパ○ッシュとプー●ンがバトルマンガ繰り広げるしな!
  • と言う訳で途轍も無くカオスな物語である。アスリートをするなら参考になるだろう。色んな意味で。
  • とりあえず読め!!
  • このままではあまりにもあまりなので、余談ながら解説を。
  • 訪日中であった大統領とマージャンをする事になった、新人国会議員のタイゾー。罠にはめられたタイゾーを救う為、点F16の高額レートでマージャンに挑むのは――総理大臣であった! しかしそれは大いなる戦いの幕開けに過ぎない。某国将軍との海上での激闘、某共和国の首相率いるバルチック艦隊……次々に迫り来る強敵に対し、総理大臣の国士無双(ライジングサン)が唸りを上げる!
  • 全篇通してコーポレイト/アスリートな政治家たちが、国際問題の悉くをマージャンで解決していく、凄まじい一品。アスリートの可能性の一端を、あなたは目の当たりにするだろう。
  • 同著者による『楽しい甲子園』『野獣社員ツキシマ』も、本作とほぼ同じ、破天荒な男達が脇目も振らず己の道を突き進む物語である。三作共にお勧め度は大差無いので読め。

ガンドライバー

  • アメリカと呼ばれる土地、開拓時代と呼ばれる頃。人型機械ガンドライバーに憧れる黒人種ブラニアンの少年ディックは、『紅の神像』を狙って現れた無法者ワイルド・バンチによって父を殺され、妹を攫われた挙句、片腕さえも奪われてしまった。娼舘ジュエルパレスの美女達によって命を救われたディックは、亡き父――伝説の英雄ジェロニモの遺志と腕を受け継ぎ、恐るべき力を秘めたオリジナル・ガンドライバー『紅の神像』アーノン・ディガスを駆って荒野を駆け抜ける!
  • 日本では殆ど唯一の西部開拓時代を舞台にしたロボット物であると同時に、やはり数少ない堂々と真正面から「問題」に立ち向かった傑作である。主人公ディックは妹を探し、父の仇を討つ冒険の最中、幾度と無く障害に阻まれる。それは悪漢や犯罪者と言った分かりやすいものから、徐々に差別、奴隷制度、歴史、戦争と言ったどうしようもないモノへと変化していく。最終的には惑星全体、世界自体の生い立ちにさえ及ぶ「問題」に対し、ディック達は一歩ずつ状況を打破する為に進んでいくのだ。実にカオスフレア的だと言える。
  • また登場する人型機械ガンドライバーは、『トロイの巨人像』をレストアした産物であり、つまりは発掘兵器だったりする。現実世界における銃器の名前をつけられ、また様々にカスタムを施されたガンドライバーはMTの参考資料として最適だ。また冒険の過程でディックと出逢う人々は、その多くが西部開拓時代――1890年代に実際に活躍した偉人やアウトローばかり! 後半になるとガンドライバー「陸奥守吉行」を駆る謎の日本人、才谷屋梅太郎こと坂本龍馬なんかまで登場する。こういった要素は実にカオスフレア的と言えるだろう。
    • 余談だが。娼館ジュエルパレスの面々は実にバラエティに富んでおり、様々な過去や事情を秘めている。シナリオヒロインの参考としても十分だろう。色々と、その、エロいし!

バットマン-チルドレン・オブ・ドリーム

  • 著者:麻宮騎亜
  • 『ある人物』を取材する為にゴッサムシティを訪れた、日本人女性アナウンサー八木優子。怪人トゥーフェイスによる犯行現場に居合わせた事から人質となってしまった優子を救出した男こそ、彼女が追いかけていた男――バットマンだった! それから時を同じくして次々に現れるペンギン、リドラー、ジョーカーといった悪漢達によって、ゴッサムシティは混乱の渦に巻き込まれていく。しかし、その誰もが現在は投獄中の身――――暴れているのはフェイクなのだ。事件を追跡するバットマンの前に現れる、フェイク・バットマン。そして舞台は日本、東京へと移り――!
  • 日本人初のアメコミライターとなった麻宮騎亜の描く、初の和製バットマンである。DC社と共同で作成されたストーリーは、多少なりとも大味な面があるとはいえ、バットマンそのもの。アメコミの入門篇としてお勧めしつつ、カオスフレアの参考作品としてあげるのは、違う理由があるからだ。
  • 現れる「フェイク」達――彼らは「エラーハ」なのだ。エラーハとして作られたのでもなく、エラーハと「なった」人々。それが果たしてどういう事なのか。他人の複製となる事に抱いた希望や願い、夢が如何なるものなのか。カオスフレアでは経験点を消費する事により、実際に「エラーハになる」事が出来るゲームである。一読しておいて損は無い筈だ。

史上最強の弟子ケンイチ

  • 元いじめられっ子、白浜兼一はヒロイン風林寺美羽と出会い、史上最強の活人拳集団「梁山泊」へと弟子入りする。自衛の為の武術がやがて強敵を呼び、兼一は達人への道を崖を転がり落ちる様に邁進する。更に敵は街の不良少年から最強の殺人拳集団「闇」の弟子集団へとグレードアップ。兼一は否応なく活人拳と殺人拳の戦いに巻き込まれていく。
  • ブランチ:フィストウォーリアーが追加されたので参考作品として是非。
  • 設定や描写は如何にも漫画的でオーバーなものながら、描かれる武術そのものについては実際の取材に基づく正確な部分が多い。出て来る武術も空手や柔術、中国拳法、ムエタイの様なオーソドックスなものからシラットやコマンドサンボ、ルチャ・リブレのようなマニアックなものまで様々。
  • フィストウォーリアーには興味があるけれど格ゲーは苦手、という方は是非参考にするとよいだろう。

ミカるんX

  • 著者:高遠るい
  • 聖アグリッパ学園に通うふたりの女子高生、超優等生の鯨岡ミカ(江戸っ子、ガチレズ)と、超天然ボケの南るんな(福井県民)。謎の青年から貰った魔法のブレスレットの力で、全裸の巨人“ミカるんX”に“合大”する力を得た彼女らは、防衛組織CUBEの一員として、異星より迫り来る超銀河霊長(ソウルボイジャー)たちとの壮絶な戦いに身を投じるのであった。
  • “秋田書店の赤い核実験場”ことチャンピオンREDで先日第一部が完結し、現在は第二部が連載中の、超大型バトルヒロイン空想特撮伝綺漫画。エヴァ、ウテナ、ウルトラシリーズ(しかも二期)、セーラームーン、グラップラー刃牙、そしてグノーシス思想……過剰なまでのパロディと畸形的ガジェットの数々、オタク文化への愛と耽溺を、萌えと百合のオブラートで包み(時々破けているが)、なおかつそのことに極めて自覚的な本作は、庵野秀明言うところの“コピー世代”の典型にして、おそらくそこからしか生み出し得ない強烈な熱気と麻薬的魅力を放っている。「ひと昔前のノリとネタ」を「洗練された最新の漫画技法(システム)」に乗せて繰り出す手法、過剰なまでのサービス精神、自重しない創作姿勢など、さまざまな意味でカオスフレアとは同じ親から生まれた生き別れの兄弟のような存在であろう。小太刀氏がブログで熱烈なエールを送っているのも肯ける、世紀の怪作である。
  • もちろん、単に「リオフレード学園に通う《光の巨人》の戦いと日常の描写」「さまざまな理由でオリジン人と敵対/共闘するコラプサー」「多様な価値観や行動様式を持つディエティ」などの参考文献としても強くお勧めできる。
  • 長らくエールを送り続けた成果か、小太刀氏デザインのTRPG『天下繚乱』にりプレイPL&挿絵師として参戦。「携帯電話で変身するキュアムーンライト風味の美形剣士(裏切ったり川に落ちてシーン退場したりのムーブ付)」と云う、大方の予想を裏切らないキャラとロールを炸裂させた。巻末掲載の設定資料集は平成特撮好きなら必見である。
    • そして最近は同リプレイGMの加納氏とカラオケ配信で張り合う仲に。・・・魂の兄弟って結構居るもんだなぁ・・・。

鎌倉ものがたり

  • 著者:西岸良平
  • 推理小説家一色正和と結婚し、彼の住む鎌倉市に住むことになった亜紀子。彼女がやって来た鎌倉はこの世とあの世・人間世界と魔界との境界が薄く様々な不思議な事が起こる街だった。一色夫婦は鎌倉やとなりの葉山町で様々な事件や怪異に遭遇することに…。
  • 西岸良平が『三丁目の夕日』と共に現在でも書き続けているもう一つの代表作。基本は正和が様々な事件を解決するミステリー兼オカルト物だが、一色夫妻が遭遇した不思議な事や夫妻がほとんど出てこない話などバラエティに富んでおり、超常的なものが関わってくる話が多いのが特徴的である。また作品全体の雰囲気はどこかほのぼのとしているが時折どうしようもなく救われない話(おもに不思議な力を悪用しようとしたり禁忌に触れてしまったりして破滅)やかなりグロイ絵がある(作者の短編作品だとよくあることだが)。
  • この作品での鎌倉は「なつかしさと不思議が共存する街」とも言える。街に潜む怪盗やマッド・サイエンティスト、ほっとけない身内の為に現世に残る死者たち、河童の子や霊媒など超常現象に対処できる人材のいる警察、街に迷い込んだりこっそり商売したりする魔界の妖怪たち、猫型宇宙人の経営する宅配ピザ屋、狸がたくさん住み最近では狸の刑事が警察に入ったとても平和な葉山町…そして様々な不思議に驚きながらも普通に日常を送る人々など、美酒町の参考になる部分が多々ある作品。「昭和ノスタルジー」な『三丁目の夕日』だけではない西岸良平の世界を堪能しよう。
    • まあ『三丁目の夕日』にもレトロではあるがSF話や妖怪の話があるし、単行本に収録されている本流とは関係ない短編にはかなり怖い話もある。


海外

WATCHMEN

  • 作画:デイブ・ギボンズ 原作:アラン・ムーア
  • 誰が見張りを見張るのか?――Who watches The WATCH-MEN?
  • 1985年10月、一人の男がビルから落ちて死んだ。彼の名はエドワード・ブレイク。合衆国特務諜報員にして、政府公認ヒーローのコメディアンだった男。1977年に成立したキーン条例によって自警行為が禁止され、多くのヒーローが引退した世界で、ただ一人活動を継続していた男、ロールシャッハ。彼はブレイク殺害事件を何者かによるヒーロー狩りではないかと考え、密かに調査を開始する。昔の仲間達に警告を与えながら。……その背後に恐るべき計画がある事を、彼はまだ知らない。
  • アメコミ史上最高傑作と評され、コミックにして唯一ヒューゴー賞(もっとも優れたSF作品に贈られる賞)を受賞した、伝説的作品。本当にヒーローが登場したら、そしてその中に一人だけ真の超人が現れたら、アメリカ――ひいては世界がどうなっただろうかという架空の歴史を描きながら、ヒーローの存在や精神に疑問を投げかけた問題作である。
  • 全ての原子を操り、再構成する事が可能な超人の力によって、アメリカはベトナム戦争に勝利し、現実以上の繁栄を手にする事に成功した。しかしその一方で米ソの緊張は高まり、核戦争の恐怖はより身近に迫りつつある。社会には暗い影が差し、不良や麻薬中毒者による犯罪は途絶える気配が無い。そう言った状況下において、ヒーローの存在意義とは何か。ただ悪役と戦うだけではなく、何をすべきなのか。優れた力を持っているならば、果たさねばならない義務があるのではないか。こういった問題は超人たるカオスフレアをロールプレイする以上、一度は考えて見なければならないだろう。
  • 多数のヒーローが同時に存在するという世界観は、クロスオーバーの参考資料としても最適。それぞれの濃密な設定。特に、ただの人間が《コスチュームヒーロー》を取得し、戦うに至るまでの道筋が如何なるものか。引退したヒーローの伝記、そしてある男がヒーローからクライムファイターへと転じるまでの過程。この特技を取得するならば是非読んで欲しい。
  • 喜ばしい事に映画化が進行しており、2009年3月28日に日本でも公開された。それに合わせて2月28日、ついに原作が再販! 第一章だけならばamazonで試し読みも可能な上、旧版には無かった設定資料までつき、更に価格は安くなっている。マスト買うべし。
  • 因みにTRPGやカオスフレアとも、実は深い関わりがあったりする。ガープスのヒーロー物のサプリメント(未訳)ではウォッチメン・ワールドについてのデータが登場しているし、『サタスペ』に登場するクライムファイターの「犯罪者のみを標的とした通り魔」という解釈はウォッチメンによるものだ。更に田中天、井上純一らの面々はALGを使ってウォッチメン・キャンペーンをやっているし、『ダブルクロス』の追加ステージには、そのままウォッチメン世界が登場している。加えて翻訳を担当した海法紀光氏は卓上ゲーマーの上、小太刀右京氏の友人なのだ。
  • 登場する《コスチュームヒーロー》について軽く解説を。
    • ナイトオウル二世
      • 親の遺産でハイテク装備を揃えた、ロールシャッハのかつての相棒。ステルス飛行船、各種防護服、小型レーザー、ホバーバイクなどを保有する。現在は初代と思い出話をする以外は、情熱を押さえ込んだ鬱屈した日々を送っている。本名はダン・ドライバーグ。
    • オジマンディアス
      • 世界で最も賢い男にして卓越したアスリート。究極の頭脳と精神を持って、肉体を完璧に制御する。条例成立前に引退し、現在は大企業ヴェイト社の経営者となった。本名はエイドリアン・ヴェイト。
    • コメディアン
      • アメリカ合衆国の特務諜報員=政府公認ヒーロー。1930年代から活躍する最古参のヒーロー。銃器を駆使しての行動、性格は過激で粗暴。合衆国の敵国に潜入しての破壊工作も多数行い、その為に敵も多かった。本名はエドワード・ブレイク。彼の死が物語の発端となる。
    • Dr.マンハッタン
      • もう一人の政府公認ヒーロー。核物理学実験の事故で誕生した世界唯一の「超人」。あらゆる原子を操作し、その能力は神にも匹敵する。彼のお陰でアメリカの科学は急速に発展し、ソ連に対する抑止力、国防の要として活動を許可されている。本名はジョン・オスターマン。
    • 二代目シルクスペクター
      • 母親から英才教育を受けたヒロインにして、Drマンハッタンの恋人である。母親から押し付けられた道としてヒーロー活動に拒否感を抱いており、またかつて母を傷つけたコメディアンの事を深く憎んでいる。本名はローリー・ジュスピツェク。
    • ロールシャッハ
      • そして……ただ一人、違法に活動を続けているヒーロー。狂気にも似た正義感によって行動し、世界を善と悪、白と黒の二分化することで辛うじて受け入れている。二件の殺人容疑がかけられており、警察にも追われている。正体は謎。壮絶な過去を持っているが……

ダークナイト

  • ゴッサムシティから暗黒の騎士バットマンが消えて10年、引退した55歳の大富豪ブルース・ウェインは、ありあまる情熱を抱えながらも、一市民として平穏な生活を送っていた。だが、エスカレートする犯罪行為によって荒廃していく街の姿、そしてかつて両親が殺された街灯の下で暴れる暴漢達。その光景を目の当たりにして、ブルースはついに復活を決意する。かつての仇敵も犯罪活動を再開し、再び戦いの中に身を投じたバットマンだったが、その活躍は以前のようには世間から受けいれてもらえなかった。政府の管理下にないスーパーヒーローの存在を認めない米国政府は、ついに対バットマンの切札として一人の戦士を送り込む。それは、米国政府の指揮下に下り、「政府のイヌ」と化したかつてのヒーロー、スーパーマンだった……。
  • 『ウォッチメン』と並んでアメコミ最高傑作と名高い『ダークナイト・リターンズ』『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』。ヒーローとは何かという事を読者に強く訴えかけると共に、バットマンVSスーパーマンの一大クロスオーバーでもあるという素晴らしい作品である。クライムファイターのブランチが登場し、超人委員会に賛同する者、しない者とヒーローが大きく二つに分かれている状況を理解するのに、素晴らしいイメージソースとして役立つだろう。
  • 長らく絶版だった二冊を一冊にまとめて設定資料も付けて、の再販である。『ウォッチメン』同様、この機会を逃すと二度と手に入らないかもしれないので、興味のある人は是非とも手にとって頂きたい。

アストロシティ:コンフェッション

  • アメリカの何処かにある大都市、アストロシティ。数多くのヒーロー達が活躍するこの街に、一人の少年が現れた。無償で人を治す医者として尊敬していた父が、故郷の住人からは負け犬と蔑まされていた事を知り、自分はそうはなるまいと決意して。ふとした偶然から少年は、暗黒街を震え上がらせる黒衣のヒーロー「コンフェッサー」に認められ、彼のサイドキック「オルターボーイ」となる。悪人を狩る術を学び、街の住人から尊敬される、申し分ない日々。しかし時を同じくして街の一角シャドウヒルでは連続猟奇殺人が発生。神の御使いであるウィングド・ビクトリーは宗教論争を引き起こしており、派手好きなクラッカー・ジャックは犯罪に手を染めて評判を落としていた。ヒーロー達への不満が徐々に高まっていくなか、コンフェッサーにも隠された秘密が……
  • 『ウォッチメン』がヒーローの存在に疑問を投げかけた問題作であるならば、此方は「それでも尚進む」というヒーロー賛歌へと転じていく傑作だ。尊敬されたいからヒーローになるのか? 自分たちへ敵意を向ける市民を守る意味はあるのか? 真のヒーローとは何だろう? ただの少年が《コスチュームヒーロー》となるまでを描ききり、そのラストシーンを見れば、あなたも《コスチュームヒーロー》を取得したくなるだろう。
  • 舞台となるアストロシティには、様々なヒーロー達がいる。「青い」ケープと「赤い」スーツで空を飛ぶ超人や、犯罪者を狩り立てる「黒衣」の男…… ウォッチメンと違い超人ばかりの都市は、ある意味でニューマンハッタンそのものだと言える。或いは実にカオスフレア的だ、とも。
  • 本作は主人公のオルターボーイの目を通して描かれる長編だが、街の様々な住民の目を通してアストロシティを描く短編連作「ライフ・イン・ザ・ビッグシティ」もお勧めである。ひょんな事からヒーローの正体を知ってしまった小悪党や、過労気味のヒーローの一日、街に暮らすOL、熟練編集長が新人時代に手にした最初のスクープ、或いは密かに侵略を企むインベーダー……ニューマンハッタンもといアストロシティで暮らす人々の、生き生きとした日常が伝わってくる筈だ。

トップ10

  • 第二次世界大戦終結後、大量に発生したヒーローやヴィラン……サイエンス人達の起こす諸々の問題に対処するため、特別に作られた多層都市ネオポリス。ホームレスから大企業の社長、野良犬やネズミまで、住人全員がスーパーパワーを持っている驚異の街の治安を護るため、多次元警察機構第10分署・通称“トップ10”のメンバーは、今日も奇想天外な事件を解決すべく奔走する!
  • 超人のいる――というか『超人しかいない都市』の日常を、新米婦人警官“トイボックス”の眼を通して描く、アラン・ムーアの笑いと涙とパロディたっぷりのポリスストーリー。非行に走って補導された息子を取り戻すため大怪獣『ゴグラ』が街にやってきたり、神々の集まる会員制バーで発生した「バルドル殺人事件」の犯人を捜したり、自分をサンタだと思い込んだ超能力者を説得したり、とかく日常的に発生する事件のスケールが大きくかつ面白い。またコマの隅々にまで張り巡らされた細かいネタや世界観(さすがムーアといわざるを得ない!)を追っていくだけでも楽しめる、濃密な情報量も特徴的。
  • 強化外骨格を着た犬や、青い肌のスーパーマンなど、様々な面々が一同に集い「刑事」として事件を追って行く様は実にカオスフレア的だといえる。彼らの中には悪魔崇拝者もいればレズビアンもいるし、私生活でも色々で、スーパーパワーを持っていてもヒーローじゃない。だけど警官という一点だけで彼らは協力して事件を追い、熱い絆で結ばれているのだ。 ニューマンハッタン……にしては遥かにスケールが大きいものの、宿命管理局や超人委員会などの雰囲気を掴むにはピッタリの作品だろう。

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最終更新:2012年08月27日 17:45
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