【まどか☆マギカ】佐倉杏子はQBケーキ可愛い74個目





20 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/22(土) 00:07:47.65 ID:osSFO5KE0 [1/5]

紅葉のトンネル、真っ赤な落ち葉の絨毯を踏んでわたし達は進む
辺りは真っ暗でわたし達を照らすのは街灯と、三日月だけ
聞こえる音は足音と秋の虫の唄だけでもの静かな感じだ
隣の最愛の恋人の姿を見るとドキドキしてしまった
学ラン姿の杏子ちゃん
それは可愛いというよりは可憐で、凛々しかった
「どうした?顔赤いぞ?」と杏子ちゃんがわたしの瞳を覗きこむ
本当だ、わたしの顔は紅葉のように赤かった
「最近寒いからな、風邪ひいたんじゃねーのか?」
そう言うと杏子ちゃんはぴとっとわたしのおでこに手を当てる
「熱はないみたいだな」と杏子ちゃんは安心したように言った
別にわたしが風邪って決まったわけじゃないのに
でも、その心遣いはとっても温かいね

「それにしても学ランなんてどうしたんだ?」
聞かれたくないことを聞かれてしまった
「あんたは女子だから学ランなんて着ないだろ?」
えっと・・・もらったんだ!親の知り合いの洋服屋さんから
「・・・」
流石に苦しすぎただろうか
「アンタは人脈広いんだな~」
なんとか誤魔化せたようだ
まさか、杏子ちゃんに着せる為だけにコスプレショップに行ったなんて言えないしね

ビューと強い風が吹いてきた
うぅ・・・正直すごく寒いよ
身体が勝手にブルブルと震えてしまう
「ほら、これ着なよ」と杏子ちゃんが学ランの上を脱いで差し出してきた
悪いよ・・・そんなことしたら杏子ちゃんが風邪ひいちゃうよ!
「あたしは魔法少女で身体は丈━━ヘクチッ!」
杏子ちゃんは寒そうに身体を奮わせながらクシャミをした
カッコいい杏子ちゃんからいつもの可愛い杏子ちゃんに戻ってしまったようだ
残念なような嬉しいような・・・ おっと、そおんなことはどうでもいいね
わたしは杏子ちゃんの肩に学ランの上着をかける
そして、わたしもその学ランを肩にかける
ふたりでマントをつけているようだ
「お前いいのか?」と杏子ちゃん
こうした方が温かいでしょ?
「そうだな」

寒風に打たれながらわたし達は身を寄せ合って進んだ
そして、屋台のおでん屋さんに寄って一杯やって、おうちに帰ったのでした

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219 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/23(日) 00:02:37.48 ID:6QQm/ACI0 [1/5]

三千世界の鴉を殺し 貴女のもとで寝ていたい

まったく世の中は世知辛いもので何故わたしがこのような事をしなくてはならぬのか
確かにわたしは学生だ。故に学業に励まなくてはならぬことは百も承知であるが、いかんせん納得がいかぬ
街中の雑踏を見るとまるで彼らは機械のように決まった方向に流れていく
社会は運命の歯車と同じようなものでただただ流されていくだけのようだ
哀しいかな。これがわたしたちの人生というものか
哀しいかな。ここからわたしたちは抜け出ることはできぬのか
日の堕ちかけた空に無数の鴉が翼をひろげカァカァと喧しく啼いている
そんな意味のないことを考えながら黄昏時に帰路につくわたしの名を呼ぶ声があった
この声。おお、わたしの最愛の恋人。そう、佐倉杏子ちゃんだ
彼女はどうやら、わたしのお迎えに来てくれたようだ
杏子ちゃんはわたしに微笑みチラと八重歯を魅せながらわたしの手を握る
わたしは嬉しくなって、もう片方の手で彼女の頭を撫でる
昔は恥かしがって拒んでいた彼女も今では満面の笑みをわたしに見せてくれる
きっと杏子ちゃんこどがわたしをあの鉄の歯車から解放してくれる天使なのだと思った
それはとっても嬉しいなと思ってわたしは上機嫌になり、彼女にあることを提案した
今日の夕飯は杏子ちゃんの好きなものを食べに行こう、と提案したのだ
杏子ちゃんは好いのか、とわたしに聞いてきた
わたしが勿論と言うと彼女は飛び跳ねて喜んだ
給料前なので財布にとっては打撃となるが、どうしてそんなちっぽけな事と目の前の笑顔を天秤にかけられようか

結局、彼女はファミレスでの食事を所望した
わたしは寿司やステーキなどを提案したのだが、どうも彼女は庶民的なところが好きなようだ
店内は学生たちや家族連れたちが楽しそうに会話をしながらハンバーグやらパスタやらを食べている
確かにこのような雰囲気も悪くはないだろう
彼らの表情も歯車に囚われた冷たい奴隷のような顔はしておらず、生き生きとした表情であった
恐らく人間というものは最愛の人、最も其処にいたいと希う場所でのみ解放されるのだろう
わたしにとってのそれは目の前で美味しそうにチーズ入りハンバーグを頬張る杏子ちゃんなのだ
彼女の瞳を見るとこの世の嫌な事も全て忘れさせてくれる
まるで杏子ちゃんはわたしにとっての天使、否、神のようなものだ
崇拝にも近い愛をわたしは彼女に抱いている
だから、今晩も全力を持って彼女を抱き、愛し尽くそう

帰り道、膨れた腹をぽんぽんと叩きながらご機嫌な杏子ちゃん
わたしはそれを見て心の其処から幸せになった
もう無数の鴉は死んでいたのだ

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242 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/23(日) 02:45:23.30 ID:dp1/Asul0 [1/4]

おはよう杏子ちゃん目が覚めちまった
夢を見たよ。杏子ちゃんと一緒に、教会の近くの山を登っていって、展望台で星空を見た夢
昔、杏子ちゃんが子供の頃に、お父さんと母さんと手を繋いで、モモもお母さんと手を繋いで山を登って、家族みんなで星空を見たんだって
その一回しか行った事がないらしくて、そこに行こうって話になって
今度は俺が杏子ちゃんの手を握って暗い山を一緒に登って
何回か迷った末に展望台について。そこは杏子ちゃんの家族との思い出の場所で
杏子ちゃんは俺の胸でわんわん泣いたよ
幼い頃の想い出と、家族が戻らないという事実を改めて突きつけられて、ずっと泣いた
ずっとずっと、俺の胸で泣いた
夢はそこで途切れた

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273 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/23(日) 13:03:26.99 ID:fvYAm/j00

特別な事は何もなかった
ただ唐突に、杏子が珍しく自分の事を語ってくれたその日。家族と星を見たと言ったその時。俺は特に何も思わなかった
家族の話をするなんて珍しいなと思っただけだった
杏子は、何かを期待していたんだと思う。俺に何かを。けどその時の俺はそれに気づけなかった
特別な事は何もなかった
ただ、その晩。俺はFF10をクリアした
そして大作ゲームをクリアした時によくある事で、とほうもない喪失感が湧き上がった
壮大なストーリーを体験した後に、興奮冷めよらないまま現実に戻ったからだ
気がついたら俺は夜の街に駆け出していた
激情に身を任せ駆けた先に、気がついたら教会に来ていた
中にはいると深夜だっていうのに、杏子はボーッとして椅子に座りながらリンゴを齧っていた
そして俺に気づき驚く。杏子が何かを言う前に俺は言った

「星を観に行こう」

杏子は突然の言葉に驚き、そして、頷いた
よるの森は暗い。俺と杏子は自然に手を繋いでいた
細くて白いくて冷たい、杏子の手。でもそれはなによりもあったかくて、心強かった
展望台がどこにあるのかわからない。でも、今ならなんでもできる気がした。杏子と一緒なら、どこにでも行ける気がした
そして、着いた。切り立った崖に柵が張り、ベンチが置かれた展望台
果たして杏子は、それを見て、震えていた
「そうだ……ここだ……ここで、親父と、母さんと、モモが……」
そう言って、杏子は泣いた。俺が胸を貸すと、もっと泣いた
それは、俺の見る初めての杏子の涙で、多分、杏子が家族を失ってから、初めての涙だった
杏子は、ちゃんと泣く事ができた。家族を失って自分を責めるしかなくて
いつしか家族への感情を無理矢理抑えていた杏子が、今までの分を埋めるように、ずっと泣いていた
ずっとずっと、泣いていた

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274 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/23(日) 13:37:58.67 ID:+i5fEeWO0

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えし時
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

コメント:

354 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 00:17:42.19 ID:KW8VHMcr0 [1/4]

既に訪れるものはいないと言っても流石は教会といったところか
未だに神々しさや荘厳さは消え失せてはいない
きっと、彼女のお陰だろうとわたしは隣の杏子ちゃんを見る
神は救いを求めるものには手を差し伸べ存在し続けるのであろう
杏子ちゃんはまさしく聖職者であろう。惨劇を目の当たりにして一度は神を恨んだそうだが
現にわたしの隣の杏子ちゃんは敬虔な聖職者のようにしか見えない
かの有名なアウグスティヌスも元々はマニ教徒だったという
しかし彼は今では最大の教父と謳われているのだ
神の懐は広いものだ だから杏子ちゃんも再び神を信じることができたのだろう
神に祈りを捧げる美しい聖女はステンドグラスごしに神の御陵威を浴びていた
さて、彼女の祈りはひとまず終わったようだなので教会の掃除を済ませてしまうとするか

教会の一室でわたしは埃をかぶった一枚の紙切れを見つけた
埃を払って見てみるとそれは楽譜のようだ
五線譜に音符、それに歌詞が書かれているがそれは日本語でも英語でもない
わたしは気になってそれを持ち出した
確かオルガンがあったはずだから、そこでこの楽譜を奏でてみようと思ったのだ
この部屋の掃除は終わったので、少しくらい遊んでもいいだろうと思った次第である
ステンドグラスから差し込む光は夕日に変わっていた
まったく、時の流れとは速いものだなァと思いながらわたしは歩を進める

不思議な事にオルガンの音色は傷んでいなかった
適当に音を鳴らしてみたが気になるところは全くなかったのだ
これも彼女の祈りの賜物か、などと思いながらわたしは楽譜を譜面台に乗せながら音を奏でる
すると天使のような美しい歌声が聞こえてきた

Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, miserere nobis
世の罪を除き給う天主の子羊、われらをあわれみ給え
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, miserere nobis
世の罪を除き給う天主の子羊、われらをあわれみ給え
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, dona nobis pacem
世の罪を除き給う天主の子羊、われらに平安を与え給え

曲が終わると杏子ちゃんがわたしの方に歩み寄ってきて、その楽譜はどうしたのか、と訊いてきた
わたしは勝手に持ち出した事を詫びつつ、楽譜があったところを彼女に伝えた
すると一筋の涙を流しながら杏子ちゃんはわたしに、ありがとう、と言った
どうやら彼女の話を聞くところでは杏子ちゃんと家族のものは何一つここにはなかったらしいのだ
何処の家庭にでもありそうな家族の写真ですらもないという
というのも杏子ちゃん自身が全てを棄ててしまったらしいからなのだ
全てを自分の所為で失った杏子ちゃんは半ば自暴自棄になっており冷静な判断が出来なくなっていたらしいのだ
その所為で尊敬していた初めての友人とも決別してしまったらしい(今は再会して仲良くしているらしいが)
杏子ちゃんはとても後悔しているらしい
そして、今、彼女の家族と関わりのあるものはこの楽譜、いや、この賛美歌しかないようなのだ
それをわたしが見つけてここで奏でたことにより、彼女の家族のありし日々が蘇ってきたのだろう
わたしは涙を流し続ける杏子ちゃんの頭を撫でた
泣き已んだ杏子ちゃんはわたしに一つ願いをした
勿論、わたしは了承する

pie Jesu Domine
慈悲深き主、イエスよ
Dona eis requiem. Amen.
彼らに安息をお与えください エイメン

わたしは杏子ちゃんと共に祈った
わたし達の永遠の平安を

コメント:

613 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/25(火) 00:10:40.24 ID:T7IF03Bv0 [1/6]

あれは昨日の昼の事であった。重々しい雲が空一面を覆い尽くし太陽の光は届かない不気味な天気。
雨が降りそうだ、と思いわたしはいつもの通学路と外れた人気のない道を進んだ。
そこは廃屋のそばで、あまり好き好んで通ろうと思うことはない処。
夜中にはよく不良どもの集会所になっているらしく、余り好い評判の道ではない。
しかし、まだ昼であるのでそれほど危険なことはなかろうと思ってこの道を選択したわけであるのだが、些か浅はかだった。
確かにわたしは不良どもには遭遇することはなかったが、もっと厄介なモノに出くわして仕舞ったようだ。
そういえばわたしの最愛の恋人が、人気の少ない所や嫌な雰囲気のする処には行くな、と言っていたがこういうことだったのか。
わたしの立つ道はグニャリと歪みその空間自体がコンクリート色に変化し、空と地の境が無くなったかのように思えた。
そして、白黒の道化師のようなモノが現れて、わたしのそばに近寄ってくる。
嗚呼、わたしは此処で死ぬのだと直感的にそう思い全てを諦めた。最愛の恋人の忠告を聞かぬわたしが悪いのだ。
しかし、わたしが死ぬ事はなかった。何故ならわたしに触れる前に道化師は穢れた赤の流れる薔薇の花弁を散らし無残に崩壊していたのだ。
よく見るとその身体は棍のような棒や槍の刃で切り刻まれ、分解され、宙を舞っていたのだ。
その崩れ去る死骸を真紅の槍使いがグシャリと踏みつけた。そう、彼女こそわたしの最愛の杏子ちゃんだ。
彼女はわたしの方に近づいてくるとわたしの胸元を乱暴に掴んで、なんであんたがここにいるのか、と訊いてきた。
わたしは戸惑いながらもここに至る全ての経緯を杏子ちゃんに曝けだした。杏子ちゃんの言いつけを守らなかった事も誤った。
すると杏子ちゃんはわたしを抱きしめて泣き崩れ涙を零しながら、あんたが無事でよかった、と言った。
わたしは初めて自分の犯した罪の重大さを知り、わたしも泣きながら杏子ちゃんに謝った。
すると、彼女は涙を拭きながらわたしの頭を撫でてこう言ったのだ。
あんたは目を離すと何をするかわからない、だからあたしが世話してやんないとな、と
これが全ての始まりだった

とある深夜、わたしは束縛されていた。赤い結界のようなもので身体を磔にされ身動きがとれない。
昨日、帰って来てからすっとこのように杏子ちゃんに縛られているので、今日は学び舎にはいっていない。
しかし、別に痛みを感じるだとか束縛されて苦しいだとか、杏子ちゃんを憎むだとかそういう気分にはならなかった。
寧ろ、心の何処かで悦んでいるわたしがいた。
このままずっと杏子ちゃんに縛られ続けていたい、と願うわたしが。
食べ物も杏子ちゃんが口移しで与えてくれる。お風呂だってちゃんと入れてくれる。
眠い時は子守唄を歌ってわたしを安心させてくれる。人恋しい時はわたしを愛でてくれる。
どうして、今の状態に文句を云う必要があるのだろうか。

杏子ちゃんは云った。
あたしは寂しいのは嫌いなんだ、って。もう大切な人を失うのは嫌なんだって。
あの活発で元気いっぱいの杏子ちゃんが涙を流しながら。
わたしはその時、心に決めたんだ。
何があっても、わたしは杏子ちゃんのそばにい続けるって。
何があっても、わたしは杏子ちゃんの寂しさを和らげるって。
何があっても、わたしは杏子ちゃんに愛を囁き続けるって。
たとえ、永遠にこの身が束縛されようとも、心はいつも杏子ちゃんと一緒だから不自由という事はない。
寧ろそれは何よりも自由な事なのかもしれない。

わたしの心は充たされていた。

コメント:

757 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 00:18:38.24 ID:mdeN1Xof0

杏子ちゃんに催眠術をかけてみた
杏子ちゃんはぼーっとした虚ろな目でわたしのことを見ている
そう、催眠療法というやつだ
これで杏子ちゃんの苦しみを取り除いてあげよう
では治療を始めよう

 貴女の名前は何ですか?
「佐倉杏子」
 貴女に普通の人と異なる点はありますか
「はい、魔法少女をやってます」
 いままで生きてきて特に嬉しかったことは何ですか?
「学校で珍しく100点取れて父さんに頭を撫でてもらったことと・・・」
 まだあるのですか?
「初めてまどかと一緒にご飯を食べたことです」
どうやら、催眠術は効いているようだ・・・
それにしても杏子ちゃん、嬉しいこといってくれるね
わたしコーフンしてきちゃったよ・・・
おっと、まだ終わってなかったね、じゃあそろそろ本題に入ろうかな

 貴女が今まで生きてきて最も辛かったことは何ですか?
「家族があたし一人を置いて心中したことです」
 その時のことを出来るだけ詳しく教えてください
「お父さんが首を吊っていました。口から汚いものが出ていました
モモとお母さんはお腹をナイフで刺されていて血が川のように流れていました
辺りは刺激臭や死臭が混ざって頭がくらくらするような臭いでした」
以前に杏子ちゃんから聞いていたとは言え、想像以上に凄惨な様子だったようだ
きっと、これが杏子ちゃんを苦しめているのだろう
でも、大丈夫・・・わたしが救ってあげるからね
 では、最後の質問です。嫌な記憶を全て忘れてラクになりたいですか?
「いいえ、忘れたくありません」
 えっ・・・!?
わたしの想像していた答えと違っていた

 何故、忘れたくないんですか?
「全部、わたしの所為だからです」
 全部忘れてしまえば、もうそのように良心の呵責に悩む事もないんだよ!?
いつの間にかにわたしは声を荒げていた。わたしは理解できなかったのだ
「最期は最悪の結末で終わっちまったけど、それでも家族と過ごして嬉しかったことがあったから・・・
だから、あたしは全てを忘れちまうなんてイヤだ・・・」
杏子ちゃんの口調がいつものものに戻ってきている、催眠術が解け始めているのだろうか
 でも━━━ッ!
「いいんだ。ありがとな、まどか・・・。あたしのことを思ってくれてのことなんだよな?」
杏子ちゃんの眼に光が戻ってきた。あぁ、どうやら完全に催眠は解けてしまったようだ
杏子ちゃんがわたしの肩に手を置いて優しい口調で語りかける
「あれはあたしの罪と記憶だから墓場まであたし自身が持っていかねーといけねーんだ」
 でもっ!杏子ちゃんが苦しみ続けるのは━━
「あたしは苦しんでなんかいないさ」
杏子ちゃんがわたしに顔を近づける
「あんたがそばにいてくれるんだからな」
杏子ちゃんの唇がわたしの頬に優しく触れた

わたしはいつの間にか泣いていた

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894 名前:†[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 00:17:23.74 ID:9dNLEtMZ0 [1/2]

どうやら木枯らしが吹いたようだ、もう冬になってしまうというのだろうか
猛き風は空を切り裂きながら冷気を伴い頬を切る
用があったとは言え、こんな寒い日に山の道を通らなくてはならないなんて、全く困ったことだ
そんなわたしの気持ちも知らずに冷たく暴れる山風はぐしゃぐしゃと隣の杏子ちゃんのの髪を乱していく
彼女の髪が激しく揺れているが、杏子ちゃん自身は嫌がっている様子はない
折角の美しく麗しい髪の毛が荒れてしまうような気がして、ちょっと不愉快だ
またもや風はわたしの思いを無視し辺りに吹きつける
山の風に秋の草も木の葉も激しく荒らされ、狂ったように踊らされているようだ
なるほど、『吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ』とはよく言ったものだ
でも、この寒さだと秋というより冬という感じだよ・・・

わたしがブルブルと身体を震わせていると杏子ちゃんがわたしに魔法をかけてくれた
身体も心もポカポカしてきた
これはどんな魔法かと聞いてみると、どうやら感覚遮断というのだろうか
ある麻酔のようなもので寒さや痛みを感じにくくしてくれる代物らしい
彼女の話によると、昔、杏子ちゃんの先輩だった魔法少女から教わったものらしい
誰だろう、と考えていると、わたしに教えてくれた
どうやら、わたしの知っている人らしい  誰だろう?
教えて、とわたしが頼むと嫌だよと断られてしまった
シュンとするわたしだが、すぐに機嫌を取り直した
彼女がいうには、その先輩という人はとても優しくて綺麗な人らしい
だから、その先輩にわたしを取られたくないのだという
嬉しいこと言ってくれるじゃないの、とわたしは杏子ちゃんの手を握る

何故だろう、身体が熱くなってきた
わたしの様子を見ると杏子ちゃんは、やっと効いてきたかと呟いた
どういうことかと説明を求めると彼女は言った
どうやら、わたしにかけた魔法は麻酔魔法なんかではなく愛の媚薬魔法だったらしい
身体が火照り、汗がわたしの身体を駆け巡る
さっきの寒さが嘘のように感じる
そんなわたしを見ると杏子ちゃんは野獣のように目を滾らせ、わたしの身体に手を回してきた
恥かしくて死にそうだが、不思議と嫌な感じはしない
だから、わたしは杏子ちゃんに全てを委ね差し出した

その日の夕暮れ、わたしと杏子ちゃんの唄は風に乗って何処までも響き渡ったという

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最終更新:2012年02月26日 22:24