我輩は犬である。
名前はまだない。
そして今、我輩の前には一人の人間がいる。
シュ「おや、犬か・・・ふむ、首輪もタグも自爆装置も無いところを見ると野良のようだな」
そう言って我輩の前に手を差し出す。
シュ「ほーら、エサだぞー。これは米分とか米分とか米分とか炭水化物が取れる完全米養食品だぞー」
掌には何か生米が乗っていた…これは食べろということなのだろうか?
本来、我輩たち犬は生米など食わないのだが、今日の栄養もままならない野良の身としてはそんな贅沢は言っていられない。
ありがたく頂戴するとしよう。
うむ、やはり美味しくは無いな。
ところが、そんな我輩をよそに、人間はいたく感激した様子だ。
シュ「おお、素晴らしい!こんなところで米好きの犬と発見するとは!
よし君を同胞と認め、ウチで飼うことにしよう。
ふむ、とりあえず刺し当たっては名前だな、今日から君の名前はネコだ!」
…我輩はネコである。
#
我輩はネコである。
…そこ、不思議そうな顔をするな。
我輩とてまだ慣れてはいないのだ。
男「で、猫を飼い始めたって言ってたよな」
シュ「うむ、間違いなくネコを飼っているぞ」
男「んで、じゃぁお前が連れてきたそいつは何だ?」
シュ「ネコだ」
ネコ「ワン!」
男「猫?…犬じゃなくて?」
シュ「当然だ、コイツは正真正銘のネコだ」
男「えーっと…そいつの生物学上の種類は?」
シュ「ふむ、どうやら雑種のようだが、柴犬と秋田犬の血が濃いようだな」
男「…もう一度聞く、そいつは犬じゃないのか?」
シュ「何を馬鹿なことを言っているのだ?コイツは生粋のネコだ」
男「…そうか」
シュ「そうだ。なぁネコよ」
ネコ「ワン!」
…我輩はネコである。
#
我輩はネコである。
…いつまで不思議そうな顔をしている。
いい加減なれて欲しいのだが。
男「因みに何食わせてるんだ?」
シュ「ご飯に鰹節をふりかけたものが好物だ」
男「…マジで?」
シュ「マジだ」
ネコ「ワン!」
男「えーと…お前マジで猫なのか?」
ネコ「ワン!」
シュ「何度も言っているじゃないか」
男「…普段はどんなことして遊んでるんだ?」
シュ「毛糸球にじゃれ付くのがお気に入りのようだな。時々絡まってじたばたしているが」
男「…マタタビは好きか?」
シュ「何を馬鹿なことを言っているのだ?猫じゃあるまいし」
男「…は?」
シュ「なぁネコよ」
ネコ「ワン!」
…我輩はネコである。
#
我輩はネコである。
今日は主人と散歩中だ
暖かい室内もいいが、やはり外は落ち着くな。
シベ「こんにちわシューさん、あら?その子は?」
シュ「ああ、こいつはネコだ」
シベ「ネコちゃんですか、なんだか賢そうですね」
シュ「そうだな、どうやら人間の言葉を理解している節がある」
ネコ「ワン!」
シベ「本当にそんな感じですね。芸とかできるんですか?」
シュ「ふむ、まだ試したことは無かったな」
芸だと!?むむぅ、ここで芸ができなければ
シュ「なんだ、芸もできなかったのか。ネコ、君にはがっかりだ」
などと言われて野良に逆戻りやもしれん。
ここはなんとしても切り抜けねば!
シベ「ネコ、お手!」
ネコ「ワン!(右前足を手に乗せる)」
シベ&シュ「お~」
シベ「ネコ、お座り!」
ネコ「ワン!(お尻を地面につける)」
シベ&シュ「お~」
シベ「ネコ、ch シュ「召喚!」
ネコ「…」
しょ、召喚だと!? 私にそんなことできるはずは無いではないか!
むぅ、しかし、この窮地どうにかして乗り越えなければ明日の食事が心配だ!
そ、そうだ!ここは顔なじみの連中に頼もう!
ネコ「ワン!」
トテトテトテ
猫「ニャー」
シベ&シュ「……」
シベ「…ネコ、召喚!」
ネコ「ワン!」
猫「ニャー」
バサバサバサ
カラス「カー」
シベ&シュ「!?」
シベ「…す、すごいですね」
シュ「ま、まさかここまでやるとは…さすがネコだな!」
我輩はネコである。
#
我輩はネコである。
主人に拾われてから早一月ようやく環境にも慣れてきた。
そして今、我輩の前には一匹の子猫がいる。
シュ「ネコよ、この猫は人さまからの預かり物だ。決して襲ったり怯えさせたりしたらダメだからな、いいか、絶対ダメだからな」
そう言って我輩と子猫を部屋に2匹きりにして主人は出かけていった。
…ええと、結局のところ、我輩にどうしろというのだろうか?
あそこまで念を押されるとかえって前振りなのではないかと勘ぐってしまう。
まぁ、我輩に弱いものいじめの趣味は無いので、どちらにせよ脅かしたりはしないのだが。
さて、どうする?子猫よ。
子猫「ミー」
ふむ、腹が減っているのか。
…主人が何か置いて行ってはくれていないだろうか。
…あったにはあったが、缶詰を未開封で置いていかれても我輩手も足も出ない。
ついでに隣においてあった紙には何か書いてあるが、生憎と我輩には文字を読む能力も無い。
仕方ない、他を探してみるか。
むぅ、他には見事に何も無い。
子猫「ミー」
しかしてこの子猫を空腹のまま放っておくのは忍びない…。
そうだ!主人はあの機械を使って友人を呼び出していたな!
イチかバチか試してみるか!
えーと、あったあった。
なにやらこのボタンを適当に押して、音が止まらなくなったら成功のはず…。
南無三!えいや!
電話の子機「ピッ!…プルルルル、プルルルルル」
…なぜか知らんが一発で音が止まらなくなった。
ま、まぁ聞いた限りではこの音が鳴ったので大丈夫…だと思う。
男「はい、もしもし?シュー?」
おお!これはまさしく男氏の声!
ネコ「ワン!ワン!」
男「ん?この声は犬?あれ?猫だっけ?」
ネコ「ワンワン!」
男「何で猫が電話を…まさかシューに何かあったんじゃ!」
ネコ「ワン!ワン!」
男「い、今すぐそっちに行くから!」
電話の子機「プツッ。ツーツーツーツー」
ええと、ひとまず成功したようだ。
-
~10分後~
ガチャ!
男「シュー!大丈夫か!ってあれ?」
ネコ「ワンワン!」
おお!男氏よ!待っていたぞ!こっちだ!
男「猫!案内してくれのるか!」
ネコ「ワン!」
物分りの良い人物で助かった。そうだ!こっちだ!
男「待ってろよシュー!今助けてやるからな!」
タッタッタッタッタ
男「シュー!って、あれ?」
ネコ「ワンワン!」
男氏よ、すまないがこの猫缶を開けて欲しいのだ。
男「猫缶と置手紙…なになに?『召喚術で何とかしてみたまえ』なんだこりゃ?」
ネコ「ワン!ワン!」
おおい!子猫よ!もうすぐ食事にありつけるぞ!
子猫「ミー」
男「…まさかお前の子供?」
ネコ「ワン!」
そんな訳無かろう。
男「ま、マジかよ…とにかく腹が減ってるわけだ。今開けてやるから待ってろ」
カパッ!
子猫「ミー(がつがつ」
男「ん?お前は食わないのか?」
ネコ「ワン!」
んむ、我輩はまだまだ我慢できる故、主人の帰宅を待つのだ。
お、うわさをすれば何とやらだな。
ガチャ
シュ「ただいまー、む?男、何故君が来ているのだ?」
男「あー、いや、猫に…ワンと鳴くほうの猫に呼び出された」
シュ「そうか!君を召喚するなんてネコも気の効いた召喚術をつかえるものだ。
しかもちゃんと猫缶をあけて子猫にあげられたな。
偉いぞネコ。それでこそ召喚術師だ」
ネコ「ワン!」
おお、頭をなでてもらうのは気持ちがいいな。
男「…えーと、召喚術師?」
シュ「ああ、召喚術師だ」
…我輩はネコである。
-
#
男「おーい、シュー、なにして…ってお前!」
シュ「ん?どうした?突然声を荒げて」
ネコ「ワン!」
男「どうしたもこうしたも猫捨てるのかよ!」
シュ「なんだと?人聞きの悪い。どうして私がネコを捨てなければならないのだ」
ネコ「ワン!ワン!」
男「いや、だって『可愛がってください』って書いてあるダンボールに入れて持ち運んでるから…」
シュ「それと捨てることが何の関係があるのだ?私はネコをみんなに可愛がってほしいだけだ」
ネコ「ワンワン!」
男「え?ああ、そう…そうか…あれ?おかしいのは俺?」
シュ「そうだ、君がおかしいのだ」
ネコ「クゥ~ン(ペロペロ」
男「……猫。慰めてくれなくていいから」 -
¥ここまで元祖ネコ筆者¥
-
#
-
我輩はネコである。
何だか最近、主人がご機嫌斜めなようだ。
原因はわからんが…何だというのだ?男氏がなにか関係しているのではないか?
こないだなんか、主人は男氏と玄関先でひとしきり言い争ったあげく、拗ねて部屋に帰ってしまった。
それ以来…あの機械は…電話だったか?が鳴ると、始めは喜んで電話に出るのはいいが…段々声が下がっていくではないか。
そのたびに、主人の電話の手持ち無沙汰で我輩は、梅干しを額にくっつけられるのだ。
電話のやり取りが終わるまで、主人のそばで待っていなければならんのだ。
これでは困る。我輩、このまま額が酸っぱいままの犬生を送りたくはないぞ。
…仕方ない、ここは我輩一肌脱いで、主人の悩みを解決しようではないか!
いざ、調査に出発だ。差し当たって…当の男氏の匂いをたどってみよう!
…
…玄関から先に出れん。 - そうだ、こないだ主人は召喚とやら言っていたな、もう一度それをすればよいのだ!
ひとたびやればにどとは忘れぬ、犬の覚えは三年持つもの!さて、早速召喚だ。え…と、これこれこうして…
ピッ プルルルル…
ガチャ
*「もしもしー」
そらきた。うーむ、我輩もなかなかの手並みだな。
ネコ「ワン!ワン!」
*「…?あれ、しゅーサンじゃ…?犬…?あぁ、ネコちゃんかな。しゅーサンもお茶目なんだから。」
んん?なにか反応がちがうぞ?
ネコ「わふ…」
*「はいはい、なんですか?あぁ、こないだ借りてた料理本のコトね。今返しに行きますねー。」
…男氏、風邪でもひいたか?ま、まぁ来てくれれば分かる。我輩、それまで玄関で待機だ。
ん…待てよ、男氏がこのウチに来てどうなるというのだ?
いかん、何の意味もないではないか!
さて困った、主人と男氏がまた会ったとして…また主人が拗ねたりしたら…
次の電話では、額に何をくっつけられるのだろうか!?なんてことだ!!
- ピンポーン…
ああっ、そうこうしてる間に来てしまった!主人は…二階でふて寝中に違いない。
我輩が呼んどいて何だが、主人に気付かれる前に…ここはお引取り願うしかない!
ガチャ
シベリア「こんにちはー」
…ん?このお方は…たしか…主人の客人の…。
シベリア「あら、ネコちゃん!こんにちは。」
ネコ「ワン!」
なぜここに?ま、まあ…調度良い。このまま主人とこの客人と、どうにかして散歩にもちこめれば!
男氏がこのウチに来ても、鉢合わせになる事は避けられよう。
ネコ「ワン!ワン!」
シベリア「あら、案内してくれるの?なんてお利口サン♪」
ええい、のんびりした客人だ。早く主人の部屋まできてくれい!
ネコ「ワン!ワン!ワン!」
シュ「…ええぃ、うるさいぞネコ。一体何…」ガラガラッ
シベリア「こんにちはしゅーサン。はい、本ありがとう!助かったわ」
シュ「んん…?あれ、この本…シベリアに貸したんだっけ??」
シベリア「おかげさまで、ご飯もの料理、たくさん覚えられたの。」
シュ「……まいったなぁ…」
我輩抜きで話がすすんで、少し淋しい。無論我輩は喋れないが。
- 何やら、主人が困惑しているな。だが我輩にはさっぱりわからん。
シベリア「あぁ、てっきり男サンがこの本を持ってるものだと…」
シュ「うん…それでこの前ちょっと揉めてしまったんだよ。はぁ…なんて私はおっちょこちょいなんだ…」
ネコ「くぅん…」
…我輩が悪いのか?主人が泣きそうではないか。すまぬ、主人よ…
シベリア「でも、これでもう大丈夫ですよ。誤解は無くなったことだし。」
シュ「そうだな。素直に男に謝ろう。電話してくるよ…」
む、今度は主人から電話をかけるのか?しかしもう我輩が男氏を召喚してしまったはず。
一体電話で何をするのだ?…しまった!考え事をしていたらいつもの電話脇のポジションに!
また梅干しを額に…い、いや、今度は違う…何だアレは!レモンスライスではないか!
ああ…酸っぱい!額が酸っぱいのだ!客人、助けてくれぬか!?
シベリア「えー、ネコちゃん、レモンスライスでエステ?何だかかわいいな、私も貼ってあげる♪」
客人!違う!違うのだ!酸っぱいのだ!!
- …あうう、やっと電話も終わったのだ…
主人は何だか嬉しそうだ。話のかぎり、主人と男氏のちょっとした喧嘩だったのだな。
よかったよかった。これで主人も機嫌が直り、電話でも話し終えるまでニコニコしている。
今までの手持ち無沙汰もなくなり、我輩の額も酸っぱくならないですむのだな。
客人も何だか嬉しそうだし、男氏は我輩が召喚したはずだが…主人の召喚でこれからウチに来るのだな。
なんにせよ、お二方のいさかいなどもう真っ平だ。夫婦喧嘩など我輩には食えぬ。とても酸っぱいのだ。
先ほどから客人がキッチンで何かしているな。気になるな。主人のウチで何をしておる?
シベリア「はいネコちゃん、これなーんだ!」
ネコ「ワン!?」
ペロ…これはレモンスライス!
やめるのだ。やめてくれ!頼むから勘弁してくれ!
いやだ!酸っぱいのはもういやだ!!
ネコ「…!!!」
我輩は…ネコであ…る…
#
- 我輩はネコである。
今日は朝から桜の木の下にいる。
退屈ではあるが動くわけにはいかない。
シュ「ネコよ、今日は花見だ」
ネコ「ワン!」
シュ「しかし、私達は学校があるから場所取りができない」
ネコ「クゥン」
シュ「よって、君が花見の場所取り担当に任命された!」
ネコ「ワン!」
シュ「しっかり頼んだぞ!何かあったら召喚してくれ」
ネコ「ワンワン!」
という訳なのだ。
よってこの青い布の上で朝から留守番中。
しかし、電話が無い以上召喚などできないのだが…。
まぁ、深くは考えないようにしよう。
お昼頃になると徐々に我輩の周りにも同じように青い布を広げる人間が増えてきた。
DQN1「お、なんか犬が場所とってるぜwwwwww」
DQN2「マジウケるんですけどwwwwwwwwww」
DQN3「追っ払って占領しちまおうぜwwwwwww」
DQN4「うはwwwwwww賛成wwwwwwwww」
む、不埒な輩が我輩の仕事を邪魔しようとしている!
主人から任されたからにはここで引くわけにはいかない!
ネコ「ウー!ワンワン!」
ええい!出て行かないか!ここは我輩の縄張りだ!
DQN1「いっちょまえに番犬きどりかよwwwwww」
DQN2「あっちいけよwww人間様に逆らうなwww」
むぅ、流石に流石に多勢に無勢だ。
どうしたものか…そうだ!
ネコ「ワオーン!ワオーン!」
猫群「ニャオー!」
DQN1「ぬこの大群キターーーーー(・・)ーーーーー!」
DQN2「マジ多すぎなんですけどwwwwwwwww」
DQN3「ちょwwwwwwおまwwwwwwwwww」
DQN4「うはwwwwwww退散wwwwwwwww」
よし、不貞の輩は追っ払えた。感謝するぞ、猫達よ。
猫群「ニャー」
うむ、食料はもう少し待ってくれ。そのうち主人が来るから我輩が渡りをつけよう。
…おや?なにやら別の人間達が集まってきたぞ?
女1「猫いっぱいで超かわいーw」
女2「私もだっこする~」
女3「お菓子とか食べるかな~?」
女4「お弁当の残りあげちゃえw」
おお、みるみるうちに沢山の食料が。
猫群「ニャー」
そうか、満腹になったから戻るか。
また何かあったら頼むぞ!
- しかし、ずいぶんとお菓子が残ってしまった。
どうしたものか…お、主人達が来たようだ。
シュ「ネコよ、場所取りご苦労様。ちゃんとできたようだな」
シベ「ネコちゃんってほんとにお利口さんですね~」
男「…本当に猫に場所取りさせてたのかよ」
シュ「ところでネコよ、この大量のお菓子はどうしたんだ?」
ネコ「ワンワン!」
実はカクカクシカジカで…。
シュ「そうか、ついに無生物の召喚まで会得したか!すごいぞネコ!」
ネコ「ワン!」
いや、主人よそうではない!
シュ「よしよし(なでなで」
…ああ、頭をなでられるのは気持ちがいいな。
シュ「さて、花見を開始しようか。今日は腕によりをかけておにぎりを作ってきたぞ」
シベ「おいしそうですね~」
男「ああ、弁当といえばおにぎりだな」
シュ「ほら、ネコにもおにぎりだ」
ネコ「ワン!」
おお、我輩も空腹だったのだ。中身も気になるが早速いただくとしよう。
パク…これはレモンスライス!
ネコ「……!!」
…我輩はネコ…である…。
#
リクエスト -
65
圧倒的スケールで描かれる、スペクタクルアドベンチャー超大作
野球で世界を目指す男と、腕時計の修理に天才的才能を持つ女、
二人を見詰める猫、それら三角関係をkwsk -
我輩はネコである。
突然昼寝から叩き起こされた。
主人、一体何だというのだ。 -
シュ「>>65というわけだネコよ」
ネコ「クゥ?」
…いや、どういうわけなのかさっぱりわからないのだが。 -
シュ「私は手先が器用なほうだから勉強すれば何とかなると思う」
ネコ「ワン!」
確かに主人は器用だ。 -
シュ「しかし、根っからの帰宅部である男が今更野球を始めたところで草野球のエースがいいとこだろう」
ネコ「ワンワン!」
男氏はさほど運動が得意には見えないからな。
シュ「そこで、長らく空いている故、パンチョ伊藤氏のメジャー解説枠を狙ってもらう事にする!」
ネコ「ワン!」
詳しいことはわからないが、主人がそういうのならそれで問題ないのであろう。 - シュ「しかし大きな問題がある」
ネコ「わふ?」
シュ「私には米を極めるという命題があるために、日本を離れる訳にはいかない!」
ネコ「ワン!」
シュ「しかし、男はメジャーリーグの勉強のために渡米せねばなるまい」
ネコ「ワンワン!」
シュ「ここに『二人を見詰めるネコ』という条件に矛盾が生じてしまうのだ」
ネコ「クゥ?」
それは我輩にはどうしようもないぞ?
シュ「そこで、君には瞬間移動を覚えてもらう!」
ネコ「わふ!?」
主人!?突然何を言い出すのだ!
シュ「召喚術とは突き詰めれば召喚対象を自分の近くに瞬間移動させる術だ
よって、召喚術が使える君は瞬間移動が使える資質を備えているはずだ!」
ネコ「ワンワン!」
無理だ!無理に決まっているではないか!
そもそも我輩の召喚術とやらは一瞬で相手を移動させてなどいないのだ!
シュ「よーし、早速特訓だ!今からこの部屋に鍵をかける!おなかが空いたなら瞬間移動で居間に来ることだ!」
ネコ「ワン!ワン!ワン!」
無理なのだ!不可能なのだ!そんなことされたら我輩餓死するまで部屋から出られないのだ!
シュ「頑張れネコ!君はやればできる子だ!」
ネコ「ワォーン!」
主人!考え直してくれ!努力でどうにかできる範疇を軽々と超えているのだ!
シュ「あ、買い物してくるからついでに留守番を頼んだぞ」
ぎぃぃぃバタン…ガチャリ
…本当に行ってしまった。
うう、どうしたものか…。
頼みの電話とやらもここには無いし…。
とにかくどこかに出られそうな場所が無いか探してみるか。
カラカラカラ
…ベランダの窓があっさり開いた。
主人よ、無用心だぞ…おかげで助かったが。
ともかく、主人に考え直してもらわねばならない。買い物から戻るまで居間で待機していよう。
- ~30分後~
シュ「ただいまー」
ネコ「ワン!ワン!」
主人よ!我輩にはやはり不可能なのだ!考え直してはくれないか?
シュ「おおネコ!やったじゃないか!ついに瞬間移動まで会得したのだな!」
ネコ「わふ!?」
違う!違うのだ!たまたまベランダの窓が開いてたのだ!
シュ「よし、これで条件は満たせたな。リクエスト完了だ」
ネコ「クゥ?(鼻先でシューの腕時計をつつきながら」
主人よ、腕時計の修理はどうなったのだ?
シュ「ん?腕時計がどうした?私は腕時計に興味はないぞ?」
ネコ「……」
…我輩はネコである。
#
シュ「……」
シベ「……」
男「……」
ネコ(なんという緊迫感……!!最後の桜餅をはさんで無言の戦いが……!!)
- ネコ(まだ動かない……なれば我輩が!)
シュ「あ、こらネコ!」
シベ「あ~~、最後の桜餅が……」
男「それよりいいのか?ロシアンルーレット桜餅の最後の一個という事は……」
ネコ(パク……これは!レモンスライス……!)
シュ「流石だ、主人の危機に身を挺して……」
#
我輩はネコである。
主人のご学友の女性は我輩の言っていることを理解しているふしがある。
主人もある程度は理解してくれるのだが、その女性はまるで我輩たち犬と会話できるように話す。
何故だ。
……
突然後ろから撫でられた。
おやシベリア殿だったか。
「なあシベリア、君はなんでネコと会話できるんだ?」
「なんとなく、ネコちゃんが何を言いたいのかなーって理解しようとしてると、なんとなくですけど分かるんですよ」
シベリア殿は、主人と話している間もずっと我輩の頭を撫で続けていた。
「ネコちゃん可愛いですし、わかってあげたくなるじゃないですか」
「成程。思い遣り、か」
「そうですね」
ありがたいことだ。
頭を撫でていた手が首のあたりにおりてきて。
「犬の言葉が本当に分かるとかバラしたら、……バラしますからね?」
「ん? シベリア何か言ったか」
「いえ、何も」
恐いのだ。生殺与奪を握られているのだ。恐いのだ。やめてくれ。
「どうしたネコ、脅えているのか?」
「どうしたんでしょうね。大丈夫ですか?」
……ワ、ワン。
逆らいようもないのだ……。
#
- 筆者談
-
ネコがみんなに可愛がられますように。
親バカですか? はい、親バカです